Oriental Darkness 風アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 8.4万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 04/12〜04/15

●本文

『支配するもののいない国、そして変わり始めた姫巫女―‥』

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

遥か東に黄金の都あり

かの都は『ジパング』と呼ばれていて、人と妖しの者が共存する平和で不思議な都

しかし―‥今、その平和を打ち崩そうとする者が現れた


※※※


「黒き星が各国に降り立ちました」

空の国の中央塔で祈りを捧げる『星詠姫(ほしよみひめ)』の予言から一週間が経とうとしていた。

予言と同時に火の国、水の国、大地の国、風の国に魔物が降り立ち、各国を支配していた。

それぞれの国には、国を平和に導く『輝玉』があり、魔物は輝玉を奉る奉納殿を拠点としていた。

輝玉は周りの気によって性質を変える不思議な玉で、心清き者が祈りを捧げれば平和をもたらし、心悪しき者の手に渡れば魔物を生み出す恐ろしい物へと姿を変える。

星詠姫はジパングを救うための勇者を選び出した。

果たして彼らはジパングを救えるのか!?


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

〜風の章〜

四つの国を支配していた魔物たちも半分が破れ、魔物の残る国は風の国と大地の国のみへとなっていた。

しかし―‥。

ここ、風の国では奇妙な事が起きていた。

風の国で一番大きな都であり、輝玉を奉る奉納殿がある街『風流我(フルーガ)』

「姫巫女様は一体どうされたというのだろう」

街の住人達は口を揃えて言う。

「風の国は魔物の支配を受けずに良かったと思った―‥姫巫女様があんな事をなさるなんて‥」

そう、この国には支配する魔物は存在しない。

その代わり、国を、輝玉を守るはずの姫巫女が暴虐の限りを尽くしていた。

自分に逆らう者は処刑し、自分の欲だけを満たす生活をしていた。

「昔の姫巫女様は慈悲深く、お優しい方であったというのに‥」

風の国を支配する魔物が存在せず、変わり始めた姫巫女、これらは一体何を意味するのか?

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎この話は出演者のみを募集します。
◎この話は一章が二話完結であり、今回は風の一話目です。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
 ・勇者(必須/何名でも可)
 ・風の国の姫巫女(必須/性別はどちらでもOK/一名)
※勇者は『火』『水』で演じた役がありましたら、そちらを演じていただいて結構です。
※とりあえず、今回の必須役柄は上記二つのみです。
※他に適役がありましたら、他の参加者様方と話し合っての役柄追加&設定追加はOKです。
※今回、星詠姫は登場しませんので演じることはできません。


●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。

●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。

●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。

●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。

●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。

●花人‥扱える術は妖術
体の中に幾つもの植物が植わっており、補助系の術を得意とする種族。
回復役に最適な種族です。
植物の蔓などで攻撃するため、武器を装備する事ができません。
(風の章から追加の種族です)


※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。

『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。

※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)
 fa5498 雅・G・アカツキ(29歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

「さぁて、行きますわよ!」
 そう言って十尾流(トール・エル(fa0406))は重力操作で風の国へとやってきた。
「あ、相変わらずこの移動手法は頭がくらくらするだ〜‥」
 多々良(伝ノ助(fa0430))は頭を押さえながら呟く。渡(高柳 徹平(fa5394))は移動中「いや〜落ちる〜助けて〜」などと絶叫をあげながら空の上を飛んでいっていた。きっと下の人から見れば新手の魔物!?と思われていたに違いない。
 しかし、風流我の街はおかしかった。民を、国を護るべき筈の姫巫女・聖辰(星辰(fa3578))が民を苦しめ、暴虐を繰り返していると言うのだ。
「姫巫女が輝玉を闇に染めるのか‥?」
 渡は信じられない現実に落胆したように呟く。そんな渡を見て「魔物に操られている可能性もあるだよ」と呟く。
「だけど‥魔物の影すら感じませんわよ?」
 確かに街に魔物の気配は感じない。民は姫巫女への不信感でいつ暴動が起きてもおかしくない状況に陥っている。
「誰かに話を聞いてみるだよ」
 多々良は街の人に話を聞くべく、周りを見渡した。すると、甘味処で頬に手を当てて「美味しい〜」と呟く劉藍(雅・G・アカツキ(fa5498))の姿を発見する。
「なぁ、ちょっとそこの人‥」
 多々良が話しかけるが気がついてもらえず向こう側へと歩いていってしまう。
「ちょ‥」
 待ってと叫ぶと「ん?」と劉藍がいきなり止まり後ろを振り向く、その所為で二人は派手に転んでしまった。
「いたた‥」
「多々良、大丈夫か?」
 渡と十尾流は駆け寄り、手にある『証』を見て劉藍が「貴方達、もしかして‥」と近寄ってくる。その途端、証が劉藍の証と共鳴を始めた。
「あ、あんたもしかして勇者じゃねぇか?」
「やっぱり、私は劉藍‥こう見えても貴方達と同じ花人の勇者よ」
 黒い花柄の着物を翻しながら劉藍はクスと笑み、答える。多々良は初めて見る『花人』に興味津々のようで「へー‥」と感心したように見ていた。
「見た所‥この国の勇者じゃないわね?」
「えーと、俺は多々良、火の国から来たんだ‥ところで‥この国に魔物はいないんだか?」
 多々良の質問に劉藍は「そうねぇ‥この街では見かけてないわね」と答えた。
「そうか‥やはり姫巫女の暴虐は本当なのか‥」
 渡が残念そうに呟く。その姿を見て「聖辰様は突然変わられたわね」と思い出したように呟く。その言葉を聞いて火の国勇者達は緋織と藍刹主の事を思い出す。
「とりあえず、奉納殿に行くしかないようですわね。早く姫巫女に会ってみたいわ」
 いつになくやる気な十尾流に「何かあったんですか?」と渡が問いかける。
「暴虐を繰り返す姫巫女なんて楽しいじゃないですの」
 そう言って扇子を口元にあてながら凄く楽しそうに答えた。
「私はずっとここに住んでいたんだから、案内なら任せて」
 こうして新たな仲間、劉藍と共に奉納殿を目指す事になった。


「まぁ、私に口答えをなさるの?火あぶりね」
 自分に逆らった民に冷たい言葉を投げかけるのは件の姫巫女。楽しそうに笑う彼女を見て複雑そうな顔をするのは紗由羅(豊浦 あやね(fa3371))、以前は優しかった聖辰と同一人物とはとても思えない程の豹変ぶりだった。
「‥なぁ、童虎さん(烈飛龍(fa0225))、聖辰はどないしたんやろ‥」
 自分と同じく聖辰を守る為に存在する童虎に問いかけるも「俺達はただ従うのみだ」と短く返してきた。
「でも、あんなんは‥」
「俺達がすべき事は姫巫女を害する者から守りぬく、それだけを考えていればいい筈だ」
 自分とは違って迷いのない童虎に返す言葉もなく、そのまま外へと出かける。
「どこへ行く?」
「偵察や‥」
 そう言って紗由羅は奉納殿の外へと出て行ってしまった。


「‥勇者共が集まって参りましたか‥相変わらず鬱陶しい輩ですよ。しかし‥暴虐を繰り返すのは私ではなく姫巫女‥さぁ、どうしますか?」
 水鏡を通して勇者達の動向を図るのは、姫巫女を影で操る邪楽(Rickey(fa3846))だった。
「ここまで私の術が上手く行くとは、嬉しい誤算でしたねぇ。あの姫巫女も案外猫を被っていただけかもしれませんねぇ‥允密(長瀬 匠(fa5416))」
 邪楽が呼ぶと「何か御用でしょうか?」と闇の中から一人の男が現れた。彼・允密は姫巫女の名の下に暴虐を行う鬼なのだが、実際の主人は邪楽なのだ。
「いつものようにお願いしますよ?」
 邪楽がそう呟くと允密は「了解しました」と答え、闇の中へと消えていった。


「もうすぐで奉納殿よ、ほら‥ここから建物が見えるでしょう?」
 劉藍が指差す方に視線を見ると、街の奥に立派な建物が見える。あれが奉納殿なのだろう。
「あっ‥人が!」
 奉納殿に行く道の途中、允密が住人を襲っている姿を見かけ、渡が走り向かっていく。
「何をしている!」
 渡が左腕の篭手から伸びる剣を振るう。しかしそれは避けられてしまい剣は空気を切る音を響かせた。
「私の行いは姫巫女の行いと同じです、それを邪魔立てしてどうするつもりです?」
 允密は邪魔された事に苛立ちを募らせ、勇者達をジロリと睨む。
「嘘だ!国を‥民を護るべき姫巫女がこんな行動を許すなどあり得る筈がない!」
 そう言って渡は再び剣を振るった。その時の渡の脳裏には緋織、そして民を護る為に自刃した水月の事が浮かんだ。
「姫巫女全てが全て聖女だと思う事が間違いなんですよ。彼女の望みは民を苦しめ、国を滅びへ向かわせる事だ!」
 そう言って渡に攻撃を仕掛け、そのまま奉納殿へと帰還してしまった。
「‥あのー‥」
 允密が去った後、草むらから現れた根虞(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))を魔物と勘違いした渡、そして多々良は武器を身構える。
「おのれ、まだ魔物が!」
「‥魔物!?」
 魔物呼ばわりされた事で根虞はガンとショックを受け、やや凹み気味である。毒々しい花を纏わせる姿は花人を見た事のない勇者達にとっては魔物に見えても仕方ないだろう。
「わしは魔物ではなく、勇者である!」
 嘘だ、そう否定され何をすれば信じてもらえるかを根虞は考える。
「‥もし本当に勇者なら証がある筈ですわ」
 十尾流の言葉に「そうだ!」と根虞は右腕を見せる。確かに巻きついた蔓の下にはひっそりと証が存在していた。
「本当に勇者!」
「ごごごご、ごめん!」
 慌てて謝る渡と多々良だった。彼の話を聞けば豹変した姫巫女に、その真意を問いただす為に一族の里から下りてきたのだと言う。
「じゃあ、目的は一緒じゃないの。皆で行けばいいと思うわ。一応勇者なんだし、姫巫女も邪険には扱わないでしょう」
 劉藍の言葉に根虞を迎えて、再び奉納殿を目指す事にした。
「待って」
 突然、後ろから声を掛けられる。今回は色々な出来事が起きるな、そう思いながら声の方へ視線を向けると紗由羅が立っていた。
「黙って聞いていれば、姫巫女の事を悪ぅ言うて‥何が分かるん?」
 紗由羅は『友達』が悪く言われているのが我慢できずに勇者達の前に姿を現したのだ。
「‥でも、そう言われても仕方ない事をしているのはお宅の姫巫女じゃないんですの?」
 十尾流が呟くと、紗由羅は「‥それは」と言葉を詰まらせる。そして「きっと何か訳があるんや!」と言って飛び去っていった。
「‥何か、今回の国は想像以上に厄介事ばかりですわねぇ」
 困りましたわ、そう言いながらも十尾流は楽しそうだった。


「‥戻ったのか。どうだった、偵察は?」
 奉納殿に戻ると童虎が話しかけてきて「‥別に何もない」と短く答える。
「お前は今の姫巫女に納得していないようだが、どうしたいんだ?」
「‥ウチ、アホやから‥どないしたらいいのか‥よう分からん」
 そう寂しげに呟いて紗由羅は自室へと戻っていった。その姿を見た童虎もため息をつき「俺もどうしたらいいか、分からないんだよ」と呟いたのだった。
 その時に奉納殿に侵入警報が鳴り響き、童虎は慌てて表へと出た。
「お前達は‥」
 奉納殿入り口にいたのは勇者一行。彼らは姫巫女に会わせろと申し出てきた。しかしそれを断る童虎に「貴方は姫巫女を止めないのか!」と渡が叫ぶ。
「‥俺は姫巫女を護る一族の長、それがどんな事であれ、止める権利はない。姫巫女に危害を加えるなら―‥勇者であろうとねじ伏せる!」
「いいのよ、会うだけならしてあげるわ」
 奥から高い声が聞こえ、姿を現したのは聖辰だった。聖辰を見て十尾流は「へぇ‥魔物も色々考えているわね」と一人納得したように呟いた。
「貴方は!輝玉を闇に染める気か!」
 渡が叫ぶ。最初は多々良も礼儀正しくしていたが、姫巫女から感じる何かに違和感を覚え、魔物ではないかと疑い始める。
「皆さん、ここは一時退却ですわよ」
 え?と言う間もなく十尾流は重力操作を使い、奉納殿から遠く離れた場所へと全員を運んだ。


「突然どうしたんだべ、十尾流さん」
 十尾流の行動の意図が見えずに多々良が問いかける。
「そうである、姫巫女に話を聞く絶好の機会だったというのに」
 根虞も多々良の言葉に賛同しながら話した。
「あの姫巫女、魔物の類でもなさそうですわよ。ただ―‥精神操作をかけられている点を除けば本物ですわ」
 同じ精神操作系の術を使う十尾流だからこそ見破れた術。つまり―‥風の国を支配していたのは操られてこそいるが、本物の姫巫女だと言うのだ。
「‥全てが終わった後で、操られてました‥で済まされるかしら?で、あなた方はどうするのかしら?」


END