動物使い 伍アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/21〜04/24

●本文

『誰一人として許すものか‥彼女を死に追いやった統括府も、護れなかった自分自身も!』

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今日も悪夢を見る。

最愛の彼女を失った日の夢、無力で愚かだった頃の自分の夢―‥。


※※第五夜※※

「ナミ!」

何で、何でこんな事になってしまったのだろう?

僕とナミはいつものように、魔を倒しに来ていただけだったのに―‥。

「イザナギ、彼女はツカワレとして非常に高い能力を持っている。その能力を解明する為に研究させてもらうぞ」

白の統括府直属の研究学者達はそう言って嫌がるナミを連れて行ってしまった。

その時の僕は愚かだった。

統括府の行動に疑問を持ちながらも、逆らう事をしなかったのだから。

それから数ヶ月が過ぎてもナミは帰ってこなかった。

「どうなっているんですか、ナミを、ナミを返してください」

「彼女の能力を解析して、何か分かればこれからの魔との戦いに有利になる、分かってくれ。イザナギ―‥」

何度もナミを返してくれ、ナミに会わせてくれと頼んだが返ってくる言葉はいつも同じものだった。

だから、僕は悪いとは思いつつもナミがいる研究塔に忍び込んだのだ。

「ナ――ギ‥―‥」

「ナミ!?何処だ、何処に‥」

研究塔の一室からナミの声が響き、僕は慌てて照明をつけ、真っ暗だった室内を照らした。

「‥ナ、ギ‥」

「―――‥ナミ?」

そこにいたのは紛れもナミだった。培養液に満たされたポッドに入れられ、既に原型をとどめていないナミの姿―‥。

「な、んだよ‥これは!ナミ!何で‥」

「見てしまったのかね」

突然、背後から声をかけられたかと思うと頭に鈍痛が響き、僕は意識を失った。

そして、数日後―‥目を覚ました僕がナミの所まで行くと、ナミが入れられていたポッドには『処分済』と紙が貼られていた。

その後の事はよく覚えていない。焼却処分されかけていたナミの遺体を奪い、数十人の研究員を殺し、僕は白をやめ、黒の動物使いを作った。

いつの日か、白の統括府の人間全てを殺してやる為に。

「さて、そろそろ復讐を果たさせてもらおうかな‥ねぇ?ナミ」

そう言ってイザナギは冷たい棺に眠るオリジナルのイザナミを見て呟いた。


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●募集事項
◎映画『動物使い』では出演者を募集しています。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
 ・白の動物使い(必須/何名でも可)
 ・ツカワレ(必須/何名でも可)
※白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。
 ・イザナギ(必須/男性一名)
※イザナミは今回は必須役ではありません。
※黒の動物使い・魔も必須役ではありません。



●動物使いの設定など

◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。

◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。

◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。

◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。

◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。

◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。

◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。

◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
ですが、必ず描写されるという訳ではありませんので、その辺はご了承下さい。

◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)

◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。

◎ツカワレには動物使いは必須ですが、動物使いにツカワレは必須ではありません。
契約を済ませていない動物使い、まだ覚醒していない動物使いなどがいますので。

◎黒の動物使いですが、魔と契約した場合、契約した魔が何らかの理由で消失しない限りは契約は続行になり、次の魔と契約できません。

※ですが、イザナギは黒の動物使いの中で一番強い能力の持ち主で、彼の場合は複数の魔を使役する事が可能です。
複数の魔を使役できる能力ゆえに、彼は黒の中で最強となっています。

※イザナミはイザナギが人工的に作り出した魔です。それ故にイザナギ以外と契約を結ぶことが出来ません。

◎動物使いにも特殊能力はあります、ですがほとんどがツカワレの戦力を上げる能力になります。

◎黒の動物使いが魔を製作する時に必要なのは、己の魔力が満タン状態なのと、魔を生み出す赤い月が出ている事の二つのみです。



※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)

例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)

‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。

対となる動物使い&ツカワレが決まった時点でもいいので、仮プレを提出していてほしいです。
白紙となった場合は相方との連携が出来なくなりますので、ご協力お願いします。

●今回の参加者

 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa5625 雫紅石(21歳・♂・ハムスター)

●リプレイ本文

「さて、そろそろ教えてあげようか?平和ボケした哀れな子供達に真実を」
 自分の魔・氷煉(ユフィア・ドール(fa4031))に笑みを浮かべて呟くのはイザナギ(橘・月兎(fa0470))だった。その隣には翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))と、翠嵐の魔・砌(雅楽川 陽向(fa4371))も立っている。
「また面白そうな事考えるよな〜?いつもなら手を貸さんが、今回は貸しにしておくからな?」
 翠嵐がクッと笑いながら言うと「あぁ、構わないよ」とイザナギは短い言葉を返した。
「それじゃ僕はこっちへ行くから、君はそっち側を頼むよ」
「あぁ、行くぞ。砌」
「分かった、なるべく早めに終わらせたいの」
 そう呟き、翠嵐と砌は統括府の研究施設側へと向かっていった。
「さて―‥僕達も行こうか、氷煉」
「分かりました」
 にっこりと氷煉は笑み、統括府へ向けて攻撃を開始した――。


「統括府がイザナギ達に攻撃を受けている!?」
 突然鳴り響いた電話、ウィリィ(ウィン・フレシェット(fa2029))が出ると統括府に配属されている白の動物使いで、緊急応援要請の電話だった。
「ウィリィちゃん、誰から〜?」
 向こう側からウィリィを呼ぶのは、彼のツカワレ・アルカナ(雫紅石(fa5625))で、ファッション雑誌を読みながら問いかけている。
「‥アルカナ、すぐに出かけるよ‥統括府が黒に襲われている」
 ウィリィが真剣な顔で呟くと「分かったわ、すぐに準備をする」と言って準備を始めた。


 涼子(ブリッツ・アスカ(fa2321))とジーナ(ティタネス(fa3251))は本業である私立探偵の仕事で『黒』に関しての情報を入手した為、統括府に来ていた。
「まさか俺達を追って来た―‥とかじゃないだろうな?そんな大事なネタならとっとくんだったぜ」
 黒が攻めてきた以上、自分達も動かざるをえなくなった二人は攻撃されている場所へと向かう。
「戦うのは得意じゃないのに!」
 ジーナはそう叫びながら現場へと向かう。


「翠嵐は派手に暴れてくれているようですね」
 氷煉が統括府本部側を攻撃しながら無表情のまま呟く。イザナギ達の攻撃を阻止しようとヴィイとアルカナ、涼子とジーナがイザナギ達の前に立ちはだかった。
「止めろ!」
 突然現れて攻撃を仕掛けるイザナギの意図が分からずにウィリィ困惑気味に叫んだ。
「氷煉、手加減をして相手してやりなさい」
 イザナギが氷煉に言うと「分かりました」と言ってウィリィに襲い掛かる。
「ウィリィちゃん!」
 攻撃を受ける間際、アルカナがウィリィを助ける為に『電光石火』を使う。
「あ、アルカナ‥」
 目で追う事すら出来なかった氷煉の動きにウィリィは少し戸惑っている。
「止めて見せるんでしょう?」
 そう言って再び氷煉は襲い掛かる、だがその攻撃はアルカナ達に当たる事はなかった。何故ならジーナの爪が氷煉の腕に傷を負わせていたから。
「‥雑魚と侮りすぎましたね‥ナギ?」
 氷煉が視線だけをイザナギに移動し、問いかけるように名前を呼ぶ。すると「全力で行け」と短い言葉が下される。
「分かりました、さぁ―‥覚悟しなさい!」


 ズン、と建物全体が揺れるような感覚が翠嵐と砌を襲う。
「始まったみたいだな、さて‥こっちも間に合うように急ごうか。砌、行けるか?」
 翠嵐が問いかけると「これを全て消せばいいのじゃな?」と目の前のドアを指差す。そして『侵蝕』を使い、目の前に立ち並ぶドアを全て風化させていった。それと同時に建物全体に響く警報音、おそらくドアが破壊される、もしかしたら触れるだけで鳴る警報なのかもしれない。
「さて、イザナギもこの音に気づいているだろうから白達を連れて来るだろうからよ」
「これで最後かえ、随分あっけないのう‥」
 砌はドアの奥に隠された『立入禁止』と書かれた紙の貼ってあるドアを風化させる。
「砌、ご苦労さん。後は役者が揃うのを待とうぜ」


「待て!この先は――行き止まり――‥え?」
 ジーナが叫びながら氷煉を追いかける。氷煉が破壊活動をしながら、向かった先は統括府内の地図では行き止まりとされている場所、しかしそこは壁が破壊されており、その奥からは階段が見えていた。
「‥階段?どういう事、ここに階段なんてあったかしら?」
 アルカナが不思議そうな顔をしながらウィリィに問いかける。
「‥おれも知らない‥」
 そっちは?と視線だけで涼子とジーナに問いかける、しかし二人から帰ってきた言葉も「知らない」という言葉のみだった。
「やはり白の本質に何も気づいていないんですね」
 イザナギがため息混じりに呟く。
「世の中、叩いて埃の出ない奴なんていないって事か‥世知辛い世の中だな‥」
 隠されていた階段に涼子は驚いたが、探偵という仕事のせいか好奇心の方が先立っている。
「おせ〜ぞ」
 突然、奥から声が響き、翠嵐と砌が現れる。
「珍しいじゃないか?手こずるなんて」
 クックッと笑いながらイザナギに言う、しかしイザナギは反応を返さない。
「あいつらも消せばいいのか?」
 砌が翠嵐に問い、翠嵐は首を横に振る。
「いーや、あいつらには地下に行ってもらわなくちゃな」
 翠嵐が呟くと同時にイザナギが地下へと下りていく。背中を見せた瞬間に攻撃を仕掛けようとしたジーナだが「貴方達も来るのです」と氷煉が冷たい口調で話してくる。
「この先、貴方達は白の本質に最も近い場所へ降りる事になるでしょう。それを見ても―‥貴方達は『白』でいられるかしらね」
 そう言って氷煉も先に行ったイザナギを追いかけて階段を下りていく。
「ウィリィちゃん、私の後ろにいてね。何か嫌な感じがするわ」
 私が護るから、そう言ってウィリィの前に手を伸ばす。
「何でそこまで‥」
「だって私、ウィリィちゃんを愛してるもの♪ウィリィちゃんを護る為に戦う事が、私の誇りであり、プライド」
 ね?と言いながら手を伸ばすアルカナに「‥ん」と短い返事を返し、手を伸ばした。
「涼子さん、とりあえずあたし達も行こう。嫌な感じはするけど‥このままにはできないし」
「そうだな‥白の本質ってのも気になるし」
 この先に何が待ち受けているか予想も出来ない四人だが、イザナギ達を放っておく事も出来ずに階段を下りていく。
 その下りていく様を見て翠嵐がクククと冷たい笑みを浮かべる。
「これで白側は混乱確実だな」
 そう呟きながら砌と一緒に統括府から姿を消す。この先に待ち受けるモノを見た白の驚愕の表情を想像しながら――‥。


「な、なんだよ‥これ‥!?」
 地下で待ち受けていたものを見て、最初に声をあげたのはジーナ。驚くのも無理はない。広い地下には所狭しと並べられた培養ポッド。その中には人間の形をしているモノ、既に原型が何だったのか分からないものまで多数存在していた。
「なんだ‥これは‥」
 ガクンと膝折ながら呟くのはウィリィ、地面に倒れこむ間際にアルカナが抱き止めてウィリィは中途半端な格好で目の前の現実を見ていた。
「アルカナ、これは何?これは――‥」
 パニック状態に陥っているウィリィは何度も目の前の惨劇をアルカナに問いかける。そんなウィリィを見て「‥ウィリィちゃん」と掛ける言葉が見つからなかった。
「もしかして―‥これを見せるのが目的だったのか?」
 涼子がイザナギを見ながら呟く。
「‥そうですね。白を信用しきっている貴方達に我慢がならなかった。氷煉、ここの施設全てを破壊しろ」
 それだけ言い残し、イザナギは先に姿を消した。
「‥という事ですので全て破壊させていただきます」
 先程戦った時以上に力を解放し、氷煉は培養ポッド、メインコンピュータ、全てを破壊していく。
「涼子さん!」
「ウィリィちゃん!」
 ツカワレ二人は自分のパートナーを助ける為に能力を解放する。爆破に巻き込まれないように破壊を続ける氷煉を残し、地上へと向かう。
「やれやれ‥こいつは食えないネタを仕入れちまったな‥食えないが‥とことんでかいネタを‥」
「これから―‥どうするんだ‥?」
「分からない、でも白の統括府を完全に信用する事は出来なくなったな‥」
 涼子とジーナは動揺を隠せないままに呟く。
「‥アルカナ、僕は両親を黒に殺された‥だけど白にこんな真実があったなんて―‥」
「ウィリィちゃん‥今は思いっきり悩んでいいわ‥どんな事があっても私はウィリィちゃんについていくから―‥例えそれがもっと悲惨な結末を生み出す事になったとしてもね」
 ウィリィを抱きしめながらアルカナは励ますように呟いた。


「これくらいでいいでしょうか」
 一通り破壊を終えた氷煉はイザナギを追う為に地上へ向かって走り出す。しかし途中に不自然に開いている扉を見つけ、そこも破壊をしておく。
「‥これは―‥?」
 破壊を終えた後にひらりと紙が舞ってくる。それを取り、内容を見ると『貴方達の御心のままに、どうか自由に』とだけ書かれている。
「‥何でしょう、これ‥」
 紙が落ちてきた上を見ると『龍』と赤い文字で書かれた大きな扉が視界に入ってくる。しかしその扉はまるで封印でもするかのように鎖が幾重にも巻きつけられていた。
「龍からの伝言―‥?」

 一方、イザナギもイザナミのクローン培養施設を発見し、破壊した後で「奪去偶人翻(奪った人形は返す)」と書かれた手紙を見つけていた。

 龍の真意は――‥?


END