夜叉の瞳アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/10〜10/14

●本文

募集要項

◎この度『夜叉の瞳』という映画を撮影する事になりました。
そこで、出演者とスタッフを募集したいと思います。
出来れば出演者を多く募集したいと思っております。

映画の内容は以下の通りです。

数日前、とある美術館から一つの宝石が盗まれた。
宝石は『夜叉の瞳』と呼ばれるルビーで、色々と良くない噂がある代物だった。
夜叉の瞳は遥か昔に魔女が愛用していたと言われる。
その魔女は血と殺戮を好み、人の手によって処刑されたと伝えられている。
だが、魔女の意思を継ぐモノがあった。
それこそが『夜叉の瞳』である。
彼女が死の間際まで握り締めていた夜叉の瞳に自分の意思を封じ込めたのだと言う。
それから数百年の間、人から人の手に渡り己を血に染めてきた。
夜叉の瞳を手にしたものは、かつての所有者である魔女に意識をのっとられてしまうのだ。
身体を手にした『魔女』は欲望のままに行動を始める。
果たして『魔女』に支配されているのは誰か?


以上が簡単ではありますが、内容の説明です。
ジャンル的にはホラーになります。

●今回の参加者

 fa0959 シルクリア(20歳・♀・猫)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa4040 蕪木薫(29歳・♀・熊)
 fa4287 帯刀橘(8歳・♂・蝙蝠)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4350 苅部・愛純(13歳・♀・蝙蝠)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)

●リプレイ本文

「綺麗!」
 空を仰ぎながら叫んだのは武内(武越ゆか(fa3306))だった。今日は流星群を見る為に学園サークル『星を見る会』の皆で集まった。
「足元に気をつけてね」
 生徒の面倒を見るのは高遠(蕪木・薫(fa4040))、生徒の引率の一人としてやってきた。もう一人は一番後ろで生徒を見ている冬木(グリモア(fa4713))の合計二人。
「あれ‥何だろ」
 呟いて列から離れたのは小学五年生の白岩(タブラ・ラサ(fa3802))。何かを見つけたらしく海岸の方へと歩み寄っていった。
「どうした?何かあったのか?」
 冬木が白岩に話しかけると「何でもなかった」と呟き一同の中に戻ってきた。
 暫く歩いた所で少し大きめの家に到着した。元々この島には誰かが住んでいたのだろうが、今は学園所有の合宿施設となっている。一同は荷物を各場所に置きリビングへと集まる。
「ねぇ。この前にあった宝石泥棒が遺体で発見されたって」
 武内がテレビを見ながら驚いたように言う。
「場所は近くだわ‥」
 口元に手を当て、驚いた様子を見せるのは北梶(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))だった。同じく橘(帯刃・橘(fa4287))も関西(苅部・愛純(fa4350))も驚いた表情を見せる。
「島から近い場所ですって‥怖いわね」
 不安そうな表情を見せるのは大川(シルクリア(fa0959))。
「うち、トイレ」
 関西は小さく呟くと高遠にトイレの場所を聞いて向かった。他の皆は屋敷の中を見回るなど各自好きな事をし始めた。

 武内は白岩と一緒に屋敷内を散策していた。しかし好奇心からか先に行ってしまった白岩を追いかける途中でとんでもない物を見つけてしまったのだ。それは‥多量の血痕。尋常ではない量に武内は暫くの間、言葉を失った。皆に知らせる為に戻ろうとした時、突然屋敷の中に悲鳴が響き渡った。

「何だ?」
 冬木が悲鳴の聞こえた方向を見ながら呟く。
「今の声は関西さんよ!」
 高遠が言うと同時に橘が向かったトイレに向かって走り出した。後の皆もそれに続いて走り始める。
「せき‥」
 トイレに駆け込み、高遠は言葉を失った。洗面台の前で倒れているのは‥無残なものへと姿を変えた関西だった。高遠を追ってきたもの、悲鳴を聞きつけてやってきたもの、それぞれが大きな叫び声をあげる。高遠はすぐに心肺蘇生を試みるが即死状態の為、意味はなかった。
「‥高遠先生」
 冬木は関西の死を嘆き悲しむ高遠にかける言葉が見つからない。だが、ここで皆がパニックに陥ればそれこそ危険だと感じ手分けして屋敷内の戸締りをするように生徒達に指示をした。
「最低二人で行動しろよ!犯人がいるかもしれないから」
 冬木は関西に白い布をかけてやり、高遠と一緒に玄関の入り口などを閉める。
「武内さん、大丈夫‥?」
「ひっ」
 高遠が肩に手を置いた瞬間、武内は言葉にならない小さな悲鳴をあげた。その行動に疑問を感じたが、友人が殺されて気が高ぶっているのだろうと思いこんだ。
「俺は屋敷内を見回ってくるよ。犯人が潜んでいるかもしれないから」
 冬木は高遠と武内を残し、一人歩いていってしまった。


「やっぱり圏外か」
 屋敷内を見回っている途中で携帯を見つめながら呟く。屋敷に設置されていた電話や無線の類は全て壊されていた。そこで携帯電話の存在を思い出し、連絡をしようとしたが圏外で使う事は出来なかった。
「血痕?」
 とある部屋の前にやってきた時、転々と続く血痕を見つけた。どうやら血痕は部屋の中へと続いているらしく、冬木は躊躇う事なく扉を開けた。
「っ!」
 扉を開けると同時に腹部に激しい痛みが走る。目線を下ろすと自分の腹を斧が貫いている。ごふ、と血を吐きながら床へと倒れた。
「‥あーぁ」
 意識を失う瞬間に聞いた声、それは―‥。


「‥冬木先生、遅いね」
 戸締りを終えたメンバーは最初のリビングへと集まった。しかしその中に冬木の姿はなかった。
「関西さんの事もありますし心配ですね。探しに行った方がいいんじゃないでしょうか?」
 北梶の言葉に全員が頷く。高遠も「そうしましょうか」と言い、冬木を探しに行く事になった。
「武内さん?‥大丈夫ですか?顔色が悪いですけど‥」
 大川が心配そうに言うが「‥大丈夫よ」という短い返事ばかりが返ってきた。いつもの武内らしくないと疑問に思うが冬木を探す事が先決だと深く考えずにいた。

 探し始めて数十分が経った頃、大川の悲鳴が響いた。
「大川さん!どうしたの?」
 高遠が真っ先に駆けつけ、震えてしゃがみ込んだ大川の肩を抱く。すると大川は「あれ‥」と顔を背けながら指をさす。皆がゆっくりと視線をそちらに向けた時―‥。
「冬木‥せ、んせ‥?」
 腹部を斧に貫かれた冬木の姿があった。斧の先には紐が付けられていて扉を開けたら斧が落ちてくる罠にしてあったようだ。
「もう嫌!こんな所!」
 半狂乱で叫んだのは大川で、高遠の手を大きく振り払った。
「大川さん!」
 止める北梶の声も聞かずに皆から離れるように屋敷の外へと走っていってしまう。
「先生、外は危ないよ!皆で手分けして探した方がいいよ」
 白岩の提案に選択の余地はなく「皆、気をつけてね」とだけ言って別れた。


「はぁ、はぁ」
 無我夢中で走った先は深い森の中だった。途中で足を挫き地面だという事も構わずに座り込んだ。その時、大川の背後から一つの影が忍び寄る。
「‥え」
 ドスと背中に何かが突きたてられる。痛みに顔を歪めながら、恐る恐ると後ろを振り返る。
「あな、た‥だった、の‥‥」
 大川が最後に見た人物は満足そうに笑みを浮かべていた―‥。


「大川さん、どこにいるんでしょう‥」
 屋敷の周りを探し終え、森の中へと足を踏み入れた北梶だったが、陽が落ちたせいで視界が悪く何も見えなかった。時折、動物の声であろう不気味な泣き声が森の中に響き渡る。一休みをしようと大きな木に背中を預けていると、木の上でニィと笑みを浮かべる人物がいた。手にはナイフ、真新しい血がこびり付いている。位置はちょうど北梶の真上。ナイフを下に向けて飛び降りようとした時‥。
「北梶さん、大川さんは見つかった?」
 森の奥を探していた高遠に声を掛けられる。
「いいえ‥視界が悪くて‥」
「こっちも同じ、誰か見つけてるかもしれないし屋敷に一旦戻りましょうか」
 そう会話を交わして二人は屋敷へと戻っていった。


「トオルん、大川さんは見つけましたか?」
 橘は大川を探している途中で白岩と合流していた。一人で心細かった所に仲の良い友人人と合流できて、橘はホッとしていた。
「いや、そっちは?」
「僕も見つからなかった」
 それから二人で回りを探したが、結局大川を見つける事が出来ずに屋敷へと帰る事になった。


 その頃の武内は‥真犯人を裏付ける証拠を探していた。真犯人は武内を犯人に仕立て上げる策を考えていたのだろう。その証拠に動き回るたびに犠牲者とぶつかり、疑われる状況に陥っていた。
「‥まさか」
 武内の脳裏を過ぎったのはある物の存在。考えている通りだとしたら突然の変貌も何もかもが一本に繋がる。その時、外が騒がしくなる。武内は反射的に隠れてしまい、それを皆に見られてしまう。
「何で隠れるんですか?」
 北梶が疑うような視線で見つめてくる。他のメンバーもやっぱりと言った表情で武内を見ていた。
「違う!」
 必死に言うが今までの行動が不審すぎたためか誰も武内を庇う人間がいなかった。結局小部屋に閉じ込められてしまう。
「‥ふふっ」
 小さく響いた声にハッとすると、扉がキィと開き真犯人の姿が光に照らされていく。
「やっぱり‥。真犯人はトオル、貴方だったのね!」
 そう、武内の目の前に現れたのはナイフを持った白岩だった。
「‥トオルじゃない。夜叉の瞳に宿った魔女‥が正解ね」
 武内の言葉に白岩の手がピクリと反応する。
「予定が狂っちゃったなぁ。朝になれば海水で沈んだ道が復活する‥さっさとやってしまうか」
 ぶつぶつと独り言のように呟いた後「おやすみ」といい、ナイフを振り上げた。


「悲鳴?」
 深夜に響き渡った悲鳴にメンバーが飛び起きる。そしてベッドを確認すると白岩のベッドだけがガランとしていた。
「トオルん?」
 橘が呟くが返事はない。その代わりに扉が開き、血まみれのナイフを持った白岩が姿を現した。反対の手には赤い宝石を持っている。
「‥テレビで言っていた夜叉の瞳?」
 夜叉の瞳、手にした人間は宝石に宿りし魔女に乗っ取られる。テレビで騒いでいたが、今この瞬間までは誰も信じていなかった。夜叉の瞳に乗っ取られてると考えなければ、白岩が殺人を犯すなど考えられないからだ。
「ばいばい」
 そう言ってナイフを橘に向けて投げつける。
「嘘だよね‥?トオ‥」
「危ない!」
 北梶が叫び、高遠が橘を庇い代わりに傷を負ってしまう。
「先生、捕まって。逃げなきゃ‥」
 北梶が高遠に肩を貸し、この場から逃げるようにと提案する。反対の手で橘の手を掴み、海岸へと逃げだす。白岩は幼い身体で無理をしすぎたのか、ふらふらとした足取りで追いかけようとするが見失い、海岸とは反対の崖に来てしまった。
「くそぅ」
 呟いた所で、足を滑らせてしまう。身体に夜叉の瞳を投げさせようとするが、間に合わずに白岩は夜叉の瞳ごと海へと落ちていった。


 それから三人は海岸で倒れていた所を助けられて病院で目を覚ました。しかし夜叉の瞳は、とある海岸に流れつき‥人影が被さる‥。悲劇は繰り返すのだ。