夢幻界廊 玖アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
7万円
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参加人数 |
9人
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サポート |
0人
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期間 |
04/25〜04/28
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●本文
『猶予はない、全てが失われる前に間に合うか?!』
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「儀式の準備はまだか?」
夢幻壊廊の崩壊が続く中、輝夜は苛立ちを隠せぬように他の夢魔に問いかける。
「申し訳ありません、もうすぐで準備が終わるかと‥」
「急げ、深層部まで崩壊してからでは遅いのだぞ」
輝夜が急かすように指示をすると、夢魔も慌てて準備に取り掛かる。
「‥いいザマだな。気分はどうだ?」
牢の中で自分を睨みつける久樹に輝夜は笑みを交えて問いかけた。
「‥‥最悪だな」
「そうか、時期にその『最悪』も終わるだろう。光栄に思え、時期王の贄に選ばれたことを」
隣では紫雨も牢の中に入れられているが、緊迫感は感じられない。
全てを諦めている‥わけではなさそうだ。
「休める時に休んでおかないと、動けなくなるもの」
そう言う所を見れば、大人しく器となる気もないようだ。
「しかし、二人ではこの厳重な監視から逃げる事は不可能だな」
そう、二人が入れられている牢の周りには数十人の夢魔が配置され、その手前側にも同じだけの夢魔が監視の為に配置されている。
「‥さて、どうしたものかな」
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●募集事項
◎映画「夢幻界廊」では出演してくださる方を募集しています。
◎今回の必須配役は以下の通りです。
・久樹(夢喰い/一名)
・紫雨(夢魔/一名)
・夢喰い(必須/何名でも可)
※しかし夢幻壊廊に突入の際は目立たないように少人数で行動する事が望ましいです。
※他に適役がありましたら、他の参加者の皆様と話し合っての役柄追加&設定追加はOKです。
◎夢喰いには『属性』と『属性系統に技』が一つあります。それらは参加された皆様が決める事ができるのですが『技』は必ず属性系統のものにしてください。
◎夢喰いには表の顔があります。夢喰いと言えど特殊な能力を持った『普通の人間』と変わりありません。生活をしていくのに仕事をしたり、学生だったら学校に通っていたりとしています。
◎逆に夢魔は人の生気をさえあれば生きていけるので、表の顔を持つ夢魔はほとんど存在しません。
※夢喰いの仲介所:毎回『夢猫』になっていますので今回も『夢猫』になります。
●リプレイ本文
「狭い、暗い、暑苦しい。嫌な三拍子が揃っているな」
牢の中でぶつぶつと文句を言うのは久樹(橘・月兎(fa0470))だった。
「牢の中なんてこんな物でしょ」
クス、と紫雨(月・美鈴(fa3366))が久樹に笑みを向けながら呟いた。
「これは‥壊そうと思えば壊せるわね?すぐに逃げてもいいんだけど、様子を見た方がいいのかしら‥」
確かに現状が把握出来ていない今、無闇に動くのは得策ではない。
「仕方ない、暫くは大人しくしているか‥」
久樹もため息混じりに冷たい壁へと背を預けた。
「久樹ちゃん一人の犠牲で世界が安定するなら代償としては安い‥ですって」
ふざけるんじゃないわよ!とテーブルを強く叩きながら柚香(ユフィア・ドール(fa4031))が叫んだ。
「お互いに逆らってこの結果ですね‥」
はぁ、とため息をつきながら呟くのは三守(ウォンサマー淳平(fa2832))、柚香と三守は『久樹を助けに行く』と犠牲論に反発して、大きな部屋に閉じ込めれてしまったのだ。
「確かに世界は安定して欲しいわ、えぇ、してほしいですとも!けど誰かを犠牲にした上で本当に安定って言えるのかしら」
いつの間にか夢魔二人はいないし!と柚香はこの場にいないアリス(真紅櫻(fa4961))と木蓮(森ヶ岡 樹(fa3225))にも腹が立っていた。
「どの道、大人しく幽閉されている気はないんでしょう?」
「当たり前よ、三守ちゃん、行けるわね?」
三守の能力は視界内、強く思い浮かべる事の出来る場所への瞬間移動、この能力を使えば閉じ込められている本家から脱出でき、夢幻壊廊へ赴く事が出来る。
「今、行くからね、久樹ちゃん!」
柚香が叫び、三守が能力を使うと同時に二人は部屋から消え、近くの公園へときていた。
「‥とは言ったものの‥どうやって夢幻壊廊へ向かうつもりですか?俺は策なんてないですよ?」
そう‥二人は武器などを持ち出してきたまでは良かったのだが肝心の夢幻壊廊まで行く道を知らなかった――‥。
「ボス〜!輝夜(紅雪(fa0607))の奴が姉様を攫っていきやがった!!」
アリスと木蓮は柚香達の所から居なくなったと思えば、夢幻壊廊に戻ってきていた。
夢喰い本家に二人も連れられていったのだが、アリスは紫雨を助けたくて一足早く夢幻壊廊へと戻ったのだ。戻れる事を知らなかった木蓮はキョトンとした顔で「ぼ、僕もいくよぉ!」と先を歩くアリスの後ろを走っていく。
そして、夢魔王に直談判しにきたのだ。他の夢魔なら考えもつかないこの方法に木蓮はがたがたと体を震わせている。
「何震えてんの、ボス、僕は姉様を助けたいんだよ!せめて何処にいるのかくらい教えてよ‥」
「おおおお王様に迷惑かかるから、もう行こうってば〜‥」
「‥‥お願いだよ、ボス‥」
今にも泣きそうなアリスに流石の夢魔王も焦ったのか深層部の牢に入れてあると白状してしまう。
「へー、そうなんだ?木蓮。じゃ♪ありがとね、ボス♪」
泣き真似だったのか、紫雨の居場所を聞いた途端にコロッと態度を変えて「早く行くよ」と木蓮の腕を引っ張りながら深層部まで走っていく。
「‥で、深層部の牢って何処?」
夢幻壊廊の深層部、簡単に言うがその広さはただ事ではない。仕方ないと考えたアリスは一度夢猫に戻り、夢幻界廊経由で深層部に入る事にした。
「直接、夢幻壊廊に向かおうとするから方法がないのよ。夢幻界廊を経由して行けば何とかなるんじゃないかしら?」
柚香が夢幻壊廊へ行く方法を提案していると「僕達も同じ意見だね」とアリスと木蓮が現れた。
「いきなりいなくなって何処に行ってたのよ!」
「夢幻壊廊、姉様と久樹は深層部の牢に入れられているらしいよ、聞いてきてあげたんだから感謝してほしいね」
アリスが鼻で笑うように言うと柚香が「何ですってぇ‥」と怒りマークを浮かべながらアリスに食って掛かる。
「柚香さん、落ち着いて‥今は言い争いをしている場合じゃないでしょう」
「そうだよぉ‥今は紫雨さんとかの方が先でしょ〜‥」
三守と木蓮が柚香とアリスを宥める。確かにそれもそうだ、と思った二人は同じ目的を持つ者同士『共同戦線』を張ることにした。
「原因は分かったけど‥じいちゃん‥」
呟くのは隠者(K・ケイ(fa4786))、彼は夢幻壊廊崩壊の原因究明の為に走り回っていたが、法王の死を知り、やりきれない思いの中呟いていた。
「これは‥じいちゃんの剣‥そうか、分かったよ!じいちゃん」
法王の残した剣を見て、夢幻壊廊崩壊を止める手立てを思いついた。しかしどうやってその方法を実行するのか考えていると夢幻壊廊内に侵入者を報せる警報音が鳴り響く。
「‥侵入者!?‥そうか、アリスと夢喰い達かな‥どちらにせよ僕の考えた方法は夢喰いの協力がなければ‥」
そこへ襲い来る夢魔達から逃げてきた四人が現れる。
「隠者!?」
何でここに、とアリスが呟く。木蓮はアリスの影に隠れながら「わわわ‥」と怯えている。
「邪魔よ、退いて。私達は久樹ちゃんを助けに来たんだから」
そう言って弓を構える柚香と拳を構える。そんな二人を見て「今日は戦うつもりはないよ」と両手を挙げながら苦笑を交えて答える。
「アリス、君の姉さんも捕まっているんだろ?手伝ってあげると言っているんだ」
そう言いながら隠者は能力『隠者』を四人に発動させる。その後ろからは四人を探してやってきた夢魔達が走り寄ってくる。
「先に行け!誰も犠牲になんかさせない、犠牲になっちゃいけないんだ!」
そう言って隠者は剣を構えながら叫んだ。そしてある程度時間稼ぎをした所に輝夜がつかつかと歩いてくる。
「何やら騒がしいと思えば‥隠者‥いや、今は法王か、何故邪魔をする?夢幻壊廊が崩壊しても構わないと言うのか?」
輝夜が問いかけると「まさか」とおどけたように答えてみせた。
「僕が見つけた方法、教えるよ。僕が発見した誰も犠牲にならない方法を」
その言葉に輝夜は眉間に皺を寄せながら「‥何?」と呟く。
「夢心――‥夢心を数人の夢魔とそれと同数の夢喰いの魔力で夢心と核を合わせて修復する、これは誰も犠牲にならずに夢幻壊廊を救える」
隠者が言うと輝夜は「ははは、理想論だな」と言葉を返してきた。
「夢喰いが敵対する我らの夢幻壊廊を救う手助けをすると思うのか?それに紫雨を使う計画は夢魔王たっての頼みで取り消しになった。器は現在製作している傀儡を使う、儀式は――‥決行だ」
それだけ言い残すと隠者の前から立ち去ろうとする。
「待て!決め付けで考えるから夢喰いと夢魔が歩み寄る事もできない事に気がつかないのか!」
隠者の言葉に耳を傾ける事もなく、輝夜は牢へと向かっていった――。
「久樹ちゃん!」
「柚香?」
隠者の手助けを借りて、四人は紫雨と久樹が捕らわれている牢へと辿り着いた。
「木蓮、アンタの出番だよ」
アリスが木蓮に視線を向けながら呟く。
「木蓮?」
隣の牢で紫雨も驚いたように木蓮とアリスを見ている。
「‥全く無茶をして怪我でもしたらどうするの‥」
ため息をつきながら紫雨はアリスの頬に手を伸ばす。
「助けに来ました〜‥というワケで能力使います」
木蓮はそう言うと能力を使い、紫雨と久樹を卵に入れる、そしてバレないように二人の姿を映したトリックアート調の卵を牢の隅へと置く。
「とりあえずはコレで一時の時間稼ぎは出来ると思うよ〜‥」
「早く逃げましょう、追っ手が来ます」
三守が近づいてくる足音に気がついたのか急ぐようにと促す。
「行きましょう―――皆心配してるわ、帰りましょう、久樹ちゃん」
そう言って互いの目的を果たした四人は紫雨と久樹と一緒に夢幻壊廊を出る為に来た道を戻る。
「‥ねぇ、久樹がいないけど」
もうすぐで出口、そこまで来てアリスが突然呟いた。
「え‥久樹さん?」
一旦引き返すか迷っていた五人だったが、後ろからは大勢の夢魔が追いかけてきており、とても無事に久樹の所まで行けそうにもなかった。
「‥一旦退くわよ、じゃないとこっちまで全滅だわ」
柚香は唇を噛み締めながら低い声で呟く。それに「でも!」と三守が反対しようとしたが「こっちが全滅したら助けられるものも助けられなくなるわ!」と柚香は叫ぶ。その様子を夢魔三人は言葉を発する事なく黙って見ていた。
やりきれない思いを残しながら―――。
久樹は目の前のモノを信じられないような目で見ていた。
「驚いたか?これは時期王の器となる為に創られた傀儡だ」
逃げる時に久樹は、とある部屋で輝夜を見つけ仲間の所から離れた。そして今に至る。
「コレが‥時期王の器‥ふざけるな‥これは‥この姿は!」
「そう、だから贄はお前が一番相応しいのだよ」
久樹はあまりの出来事に背後からやってきた夢魔に気がつかずに殴られて気を失ってしまう。
「‥愛する女の為だもの、喜んで贄になってくれるでしょう?久樹――」
輝夜は倒れた久樹の姿を見ながら、冷たく残忍な笑みを浮かべて呟いた。
そう、器となるべく作られた傀儡の姿は紛れもなく――‥かつて久樹を愛し、久樹が愛した女『彰姫』の姿だった。
―‥誰だ、泣いているのは‥彰姫‥?俺の命も力も全てくれてやる‥だから、もう泣かないでくれ―――‥。
END