Oriental Darkness 風2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 6.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 04/26〜04/29

●本文

『全てが許されるには、全てが遅すぎた――‥?』

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遥か東に黄金の都あり

かの都は『ジパング』と呼ばれていて、人と妖しの者が共存する平和で不思議な都

しかし―‥今、その平和を打ち崩そうとする者が現れた


※※※


「黒き星が各国に降り立ちました」

空の国の中央塔で祈りを捧げる『星詠姫(ほしよみひめ)』の予言から一週間が経とうとしていた。

予言と同時に火の国、水の国、大地の国、風の国に魔物が降り立ち、各国を支配していた。

それぞれの国には、国を平和に導く『輝玉』があり、魔物は輝玉を奉る奉納殿を拠点としていた。

輝玉は周りの気によって性質を変える不思議な玉で、心清き者が祈りを捧げれば平和をもたらし、心悪しき者の手に渡れば魔物を生み出す恐ろしい物へと姿を変える。

星詠姫はジパングを救うための勇者を選び出した。

果たして彼らはジパングを救えるのか!?


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〜風の章 2〜

「罪が大きすぎますわ」

勇者一人は言う。

確かに嘘は言っていない。操られていたとはいえ暴虐の限りを尽くしてきたのだ。

操られていた、その一言で許されるには血が流れすぎたのだ。

いくら輝玉の力をもってしても死者は生き返らせる事などできない。

民衆が望むのは、暴虐人・聖辰の死―‥。

「けれど、ここで簡単に終わらせるには安すぎる罰ですわね」

「生きて、罪を償って欲しい―‥」

そのためにはまず、姫巫女を操る魔物を倒すほかない。

勇者達よ、聖辰を元に戻し、風の国に安寧を取り戻せるか!

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●募集事項
◎映画「Oriental Darkness」では出演者を募集しています。
◎この話は一章が二話完結であり、今回は風の二話目です。
◎今回の必須配役は以下の通りです。
 ・勇者(必須/何名でも可)
※火・水で演じた勇者役でもOKです。
 ・聖辰(必須/女性一名)
※姫巫女は性別不問ですが、風1で女性が演じていらっしゃったので女性になっています。女性がいない場合は‥女装でお願いします!
 ・邪楽(必須/男性一名)
※邪楽は姫巫女を操り、風の支配を企む魔物です。風の国の大ボスになります。
※他に適役がありましたら、他の参加者様方と話し合っての役柄追加&設定追加はOKです。
※今回、星詠姫は登場しませんので演じることはできません。


●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。

●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。

●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。

●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。

●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。

●花人‥扱える術は妖術
体の中に幾つもの植物が植わっており、補助系の術を得意とする種族。
回復役に最適な種族です。
植物の蔓などで攻撃するため、武器を装備する事ができません。
(風の章から追加の種族です)


※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。

『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。

※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。
 

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)
 fa5498 雅・G・アカツキ(29歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

「あら、皆さん悩んでいらっしゃるようですわね」
 楽しげに呟くのは十尾流(トール・エル(fa0406))、姫巫女・聖辰(星辰(fa3578))は誰かに操られている事が判明した。しかし肝心の魔物の姿が見えない。操っている本人を引きずりださない事には聖辰を解放する事も出来ない。
「姫巫女様を操っている魔物は、きっと姫巫女様の近くにいると思うだ」
 この先どうするかという話し合いの中、多々良(伝ノ助(fa0430))はそう叫ぶ。その意見には渡(高柳 徹平(fa5394))、劉藍(雅・G・アカツキ(fa5498))も自分も同じだと首を縦に振る。
「魔物を倒せば聖辰様は正気を取り戻される、恐らく魔物は奉納殿にいるであろう」
 遠くに見える奉納殿を見ながら呟くのは根虞(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))、しかし十尾流が小さく呟く。
「姫巫女が正気に戻っても、彼女が行った暴虐によって亡くなった人は戻ってきませんわ、彼らは報われないですわね」
 果たして民衆は聖辰を許すのか―‥。


「何だと?もう一度言ってみろ‥允密(長瀬 匠(fa5416))」
 奉納殿のとある一室で童虎(烈飛龍(fa0225))は允密に低い声で問いかける。
「ですから、勇者達が聖辰様を殺そうとしている‥と申したのですよ」
 ククと允密は笑いながら部屋から出て行く。
「勇者が‥聖辰を‥」
 その言葉を聞いてショックを受けているのは紗由羅(豊浦 あやね(fa3371))だった。
「紗由羅‥お前はどうする?」
 童虎が問いかけると「‥もう迷わない、決めた」と呟き、童虎の目を見てはっきりと答える。
「姫巫女も勇者も関係ない‥ウチはただ‥聖辰の傍にいたいだけ‥せやから聖辰を‥護る」
 言い切る紗由羅の瞳に迷いは微塵も見られない。童虎さんはどうするんや?と紗由羅が問いかける。
「無論、盟約に従うのみ、それこそが我ら一族の誇りだ‥一族の長である俺がどうして盟約を破れようか‥」
 恐らく彼はわかっている、自分の行いが間違っている事に。真っ先にしなくてはならない事は聖辰を止める事だったのだ、しかし盟約に縛られる彼・そして友人と失いたくないという彼女はそれを出来ずにいた。
「‥やっぱウチ、アホなんやろな‥童虎さんにどうするのかと聞かれて、悩んだ末に決めた事はこれだけです」
 聖辰は殺させない―‥それが彼ら二人に出た答えだった――‥。


「やはり‥こういう事になりましたか。ほっほっほ‥わたくしの考えていた通り勇者殿はお優しい事です。輝玉が闇に染まるのも時間の問題でしょう‥彼らの甘さが民衆を更に苦しめる事になるというのに!」
 水鏡で紗由羅達の動向を見ているのは聖辰を操る魔物・邪楽(Rickey(fa3846))、彼は安全な場所に身を隠し、勇者の困る様を見てほくそ笑んでいた。
「私は以後どうしたらよいでしょうか?」
 允密が邪楽の前に控え、頭を下げながら問いかける。
「‥そうですね、他国から来た勇者達は姫巫女の解放に此処へやってくるでしょう、紗由羅・童虎と共に彼らを倒しなさい」
 邪楽が指示を出すと「分かりました」と允密は言い残して邪楽の部屋から出て行った。


「結局皆様は姫巫女をどうしたいんですの?」
 聖辰の事で長く話し合いが続いているが、中々進まない事に痺れを切らした十尾流がため息混じりに呟く。
「俺は姫巫女様を助けたいと思うだ」
「僕だって姫巫女を死なせる為に旅を続けているわけじゃない」
 多々良と渡は十尾流の顔を見て、はっきりと答える。
「理想を言えば生きて罪を償って欲しいのである」
「そうね、私も同じ意見よ。生きても死んでも結果が変わらないのなら、生きて罪を償うべきだと私は思っているわ」
「十尾流さんはどう思うだ?」
 多々良が問いかけると「わたくしは観客ですわよ」と表情を読ませない笑顔で答えた。
「どちらにしても奉納殿に行くしかなさそうね」
 劉藍は呟き、勇者一行は再び奉納殿へ向かう事となった。



「やはり来たか‥」
「出来れば来て欲しくなかったね」
 奉納殿の前に立ち、勇者を出迎えたのは紗由羅・童虎・允密の三人だった。
「ここは二手に別れましょう、あの三人を相手にする者、そして魔物と聖辰様の方を解決する方と―‥に」
 劉藍は「多々良・根虞、貴方達が行くのよ」と呟く。
「劉藍さん?わたくしもお二人と一緒に行って構いませんこと?きっとお役に立ちますわ‥‥面白ければ‥ですけど」
 クス、と十尾流が言うと劉藍は少し考え「‥そうね、同じ幻覚系の術を使う貴方だもの」と十尾流も邪楽達の方へ行くメンバーに同行する事になった。
「行け!」
 渡が叫び、童虎に襲い掛かる。劉藍も「同じ勇者同士、あまり戦いたくないけれど‥」と呟きながら草の鞭を出現させる。
「聖辰は死なせへん!大切な友達を傷つけさせるわけにはいかへんのや!」
 紗由羅は叫び風を巻き起こす。
「その大切な友達が魔物に操られていても構わないの!?」
 劉藍の言葉に紗由羅は一瞬躊躇うが「どちらにしても聖辰様は許されない!」と允密が攻撃を仕掛けながら叫ぶ。許されない、その言葉は紗由羅の決心を鈍らせぬように允密がわざと言ったもの。
「俺達は殺しに来た訳じゃない!」
 渡は叫び、神通力を発動させた凍結吹雪を允密に向けて放つ。その攻撃は允密の頬を掠め、血が滴り落ちる。
「‥傷‥?貴様!」
 突然激昂した允密の姿に驚く、人間の姿をしていた彼が見る見るうちに魔物のそれに変貌していくからだ。
「何で‥?」
 仲間が魔物だった、その事に驚いた紗由羅は攻撃を止めてしまう。
「‥ゴメンナサイね、手加減はしておくわ!」
 余裕のなかった劉藍が申し訳なさそうに呟き、草の鞭で彼女を気絶させる。それと同時にもう一つ鞭を取り出し童虎の体を縛り付けた。
「魔物‥許さない、貴様らのせいでどれだけの人間が‥!これで、終わりだ!」
 そう言って全力で放った凍結吹雪は允密の体を覆い、致命傷を与えた。
「‥私が、負けた?負けるはずがない‥邪楽様ああぁっ!!」
「魔物の気配にすら気づかないとは‥情けないな、俺も」
 童虎が自嘲気味に呟く。渡が何か言葉を掛けようとした時「敗者に語る言葉など‥ないか」と呟いた。
「‥お前達はお前達の正義を貫け!願わくば‥よりよき結末が迎えられる事を祈る‥聖辰様を‥頼む」



「やれやれ‥わたくし自らが煩い蠅を叩き落してあげましょう」
 そう言いながら多々良達の前に現れたのは聖辰と邪楽だった。
「姫巫女様!」
 多々良が必死に話しかけるが、彼女からの返答はない。邪楽に操られている為だろう。
「‥人と話す時はもう少し前に出るものですわ」
 遠くから高笑いをする邪楽が気に入らなかったのか十尾流は重力操作で邪楽を近くまで引きずり出してきた。
「ふふふ‥仲間同士で殺しあうがいい!」
 そう強く叫び、邪楽は勇者達を操る為の術を発動させた。
「根虞さん!?」
 突然襲い掛かってきたのは根虞、表情を見ると聖辰と同じように空ろな瞳をしている。
「く‥俺も‥」
 多々良も意識を失い、根虞と戦い始める。それを見て楽しそうに高笑いをする邪楽。
「さぁ、お前も仲間同士殺しあうがいい!」
 そう言って十尾流に命令するが、十尾流は動く事はしない。
「‥楽しい余興でしたわ、最後に――‥上には上がいる事を思い知らせてあげますわ」
 呟くと同時に十尾流の尾が増え、瞳が強く輝く。
「さぁ、自害なさいな‥、操られる人の気持ちを分かるというのも面白いでしょう?」
 わざと邪楽の意識を残したまま、体のみを操り十尾流は邪楽を自害させた。
「‥なっ‥わたくしとした事が‥‥油断しました‥しかし―‥民衆は、既に姫巫女の死を願っています――。どうしますか?」
 下卑た笑みを浮かべ、邪楽は塵となって消えた。



 全てが終わり、正気を取り戻した聖辰は小さく呟く。
「操られていたなんて‥言い訳になりません。私の心に隙があった証拠です。私は自分の極刑を望みます」
「そんな!待ってよ、聖辰!」
 紗由羅が必死になって止めるが、彼女の決意は固いらしい。国を護るべき自分が民衆を苦しめていた、その事実が彼女の胸に深く突き刺さるのだろう。
「駄目よ、聖辰様」
 そこに赤い飾り紐を靡かせながら劉藍が聖辰の前に立つ。
「貴方が本気で罪を償いたいというのなら‥生きて償わなくては駄目よ、死に逃げるなんて‥それこそ許されないわ」
「聖晨様、これからは一族の盟約の為じゃなく‥童虎個人として貴方を護っていきたい、どうか‥考え直してください」
 童虎は跪きながら呟き、紗由羅は泣きながら「死なないで」と縋る。
「でも‥民衆は私の死を望んでいます」
「だったら、処刑を行えばいいんですわ‥と言ってもわたくしの幻術を最大限に使っての偽処刑になりますけれど」
 十尾流の提案により、聖辰は暴虐の罪で処刑させることになった。邪楽を操るほどの幻術の使い手だ、多少の苦労はあるかもしれないが、十尾流になら風の国の民衆に幻覚を見せる事も可能だろう。


 数日後に聖辰の公開処刑が行われ、偽りの姫巫女をでっち上げ、聖辰は奉納殿の地下深くで祈りを捧げる事になった。
「彼女達にとっては‥これからが始まりなんだよな‥」
 渡がポツリと呟く、それを見た多々良は「さ、土の国を目指すべ」と渡の背中を強く叩きながら叫んだ。
「でも十尾流さん、何で直に姫巫女様を元に戻さなかったんだ?」
 多々良の問いに十尾流は極上の笑みで「それでは、わたくしが楽しめないじゃない」と答えた。


END