Oriental Darkness 土アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 6.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 05/10〜05/13

●本文

『自分の国は自分で護ってみせる、余計な手出しはするでないわ』

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遥か東に黄金の都あり

かの都は『ジパング』と呼ばれていて、人と妖しの者が共存する平和で不思議な都

しかし―‥今、その平和を打ち崩そうとする者が現れた


※※※


「黒き星が各国に降り立ちました」

空の国の中央塔で祈りを捧げる『星詠姫(ほしよみひめ)』の予言から一週間が経とうとしていた。

予言と同時に火の国、水の国、大地の国、風の国に魔物が降り立ち、各国を支配していた。

それぞれの国には、国を平和に導く『輝玉』があり、魔物は輝玉を奉る奉納殿を拠点としていた。

輝玉は周りの気によって性質を変える不思議な玉で、心清き者が祈りを捧げれば平和をもたらし、心悪しき者の手に渡れば魔物を生み出す恐ろしい物へと姿を変える。

星詠姫はジパングを救うための勇者を選び出した。

果たして彼らはジパングを救えるのか!?


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〜土の章〜

火、水、風を支配する魔物を打ち倒し、勇者達は土の国へとやってきていた。

しかし、待ちの入り口には奇妙な看板が立てられている。

『勇者達へ、この国を救おうとする気持ちは有難いのだが自分の国は自分で護ってみせる。余計な手出しは無用、即刻立ち去るがいい』

何だ、これは―‥と勇者達が互いの顔を見合わせながら首を傾げる。

「とにかく街へ入ってみよう」

一人の勇者の言葉に、一行は街の中へと足を踏み入れる。

その途端に感じる魔物の気配、勇者達はすぐに武器を構えるが、住人は慌てる様子もなく、普通に生活していた。

「こんなに魔物の気配が充満している中で、何故みんなは笑っているんだろう‥」

そう呟くと「本当に来たのか、意外と暇人なのじゃな」と杖を持った姫巫女が現れた。

「この魔物の気配に驚いているのじゃろう、しかし心配するでない。明日この世界に現れるのは、我らの味方である」

魔物が味方?どういう事か説明を願うと「ふふん」と姫巫女は嘲笑しながら答え始める。

「毒を制すには毒を使えば良い。魔界から魔物を呼び出す召喚術を行っているのじゃ」

「魔物を呼び出す!?」

「そう、誰も考えつかなった事だろう?それゆえに今まで勇者如きに頼らねばならなかったのじゃ」

「‥勇者、如き?」

一人の勇者がむっときたのか、少し強く睨みながら反論する。

「魔物が大人しく言う事を聞くとは思えませんが、もし失敗した時の策はあるのでしょうか?」

「呼び出した者に対して逆らうはずもなかろう?」

そう言って姫巫女は高らかに笑い、奉納殿へと戻っていった。

「十中八九、失敗するでしょうね」

魔物は人間を見下し、家畜と同等に考えているような輩が多い。

そんな魔物、しかも土の国を支配しているボスを倒せる程の強い魔物を呼び出す気ならば、なおさら人間の言う事など聞かないような気がする。

さぁ、勇者諸君‥己が行いを信じて疑わない姫巫女をどうする?

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●募集事項
◎映画「Oriental Darkness」では出演者を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は以下の通りです。
 ・勇者(何名でも可)
 ・姫巫女(性別はどちらでもOKです)
 ・呼び出そうとしている魔物(一名)
 ・土の国を支配するボス(一名)
※話の進み方次第ではボスを魔物が倒し、新たなボスになる事もあります。
※必須配役は上記のみですが、他にも適役がありましたら他の参加者様と話し合い、設定追加&役柄追加はOKです。
※勇者を演じられる方で『火』『水』『風』に出演されていた方は同じ役でもOKです。
※今回『星詠姫』は登場しませんので、演じることはできません。



●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。

●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。

●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。

●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。

●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。

●花人‥扱える術は妖術
体の中に幾つもの植物が植わっており、補助系の術を得意とする種族。
回復役に最適な種族です。
植物の蔓などで攻撃するため、武器を装備する事ができません。
(風の章から追加の種族です)


※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。

『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。

※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。

●今回の参加者

 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3599 七瀬七海(11歳・♂・猫)
 fa4123 豊浦 まつり(24歳・♀・猫)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4961 真紅櫻(16歳・♀・猫)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5574 丙 十哉(24歳・♂・猫)

●リプレイ本文

「さぁ、次に行きますわよ!」
 毎度の如く十尾流(トール・エル(fa0406))がポーンと重力操作で多々良(伝ノ助(fa0430))と渡(高柳 徹平(fa5394))を土の国へと運んだ。


「‥‥へ?この‥‥」
 多々良は看板の文字を見て、困ったように頭を掻き「俺、難しい字読めねぇんだ」と看板を指差しながら呟いた。
「これ何て書いてあるんだ?」
 多々良が問いかけると「勇者は必要ないと書いてあるのですわ」と十尾流が笑みを浮かべて呟く。その姿は物凄く楽しそうだ。
「とりあえず街の方へも行って見ようか」
 渡が遠くに見える街を指差し、二人に話しかける。しかし街の方へ進むにつれて魔物の気配は濃くなる一方。
「何だか中央広場の方が騒がしいみたいだね」
 渡が人だかりの出来ている広場を見て呟く。何があるのだろうと覗いてみると数人の人間が広場へと連れ出されている。
「何やら楽しそうな感じですわね」
 十尾流ガ呟くと「いつものお遊びだよ‥」と老婆が疲れたように答えてくる。老婆が言うには、傀儡操(草壁・蛍(fa3072))が殺し合いを人間同士でさせており、人質として家族を奪われているのだと言う、生き残った方の家族だけが解放され、負けた方には――‥。
「‥何て惨い事するだ‥」
 多々良が呟き、渡と二人で殺し合いを止めさせようと広場に乱入する。
「あら‥見ない顔ね、何の用かしら?」
「こんな下らない事はやめるんだ!」
 渡が篭手から剣を出し、傀儡操に向けて叫ぶ。
「‥下らない?力在る者が無き者を支配する、それが豪烈皇様(モヒカン(fa2944))の定めたルールよ」
 クス、と呟き「興ざめね、日を改めるわ」と言い残して勇者達の前から姿を消した。そしてそれを見ていた人物が二人‥姫巫女の弟・時人(七瀬七海(fa3599))と最(豊浦 まつり(fa4123))だった。
「あら、大道芸人ですわ」
 十尾流が向こうを指差しながら呟く。十尾流が指差した人物こそ土の国の勇者である最だった。彼女はこの国での勇者の扱いが酷い為か勇者である事を周りに隠していた。
「こんな状況で大道芸人とは珍しいです―‥ね‥え?」
 渡が少し興味あるのか近づいてみようとした時、最は壷を一瞬にして砂に変えてしまう。それと同時に三人と共鳴する証――。
「あの人、勇者なんだか?」
 多々良が驚いたように呟くと「あちゃー‥」と頭を掻きながらため息混じりに此方を見る。
「バレちゃしょうがない、確かに私は勇者‥らしいね」
「この国は一体どうなっているんですか、看板といい国中を漂う魔物の気配といい‥この国を護る姫巫女は何をしているんですか」
 渡が頭の中にある疑問全てを最に投げかける。
「姫巫女・貴莉恵(真紅櫻(fa4961))が何を考えているか‥それは国中の人間が思っているだろうね」
 それに勇者を必要としてないのは看板を見ての通り、そう言いながら最は三人に背中を向けて歩き出す。
「あんたは‥姫巫女様に会って何か進言しようとすらしないまま‥国を見捨てるだか?」
 多々良が問いかけると、最はため息混じりに顔を此方へと向けて呟く。
「‥私達の話を聞いてくれるような姫巫女なら―‥とっくの昔にこんな状況は打破できているさ、会っても無駄なんだよ」
 最はそれだけ言うと「仕事あるから」と言って元いた場所へと戻っていく。
「何なんだ、この国は――‥」
「あの人の言う通りです、この国は根本的に間違っている」
 静かに呟きながら此方へ来るのは姫巫女・貴莉恵の弟、時人だった。
「姉・貴莉恵は‥毒を制すには毒を使う、この方法で魔物を呼び出し、この国を支配している豪烈皇を倒させるつもりなのです」
 毒を制すには、この言葉に「‥それって結局は毒なんじゃねぇだか?」と率直な疑問を投げかける。
「そうです、しかし今の姉に‥その事を理解するだけの冷静さがない、このままでは姉が呼び出した魔物が土の国を滅ぼさないとも言い切れません」
 ですから、力を貸してください―‥時人は頭を下げて三人に協力を願う。
「とりあえず、奉納殿で姫巫女様に会ってみねぇだか?」
 多々良の提案に一行は、姫巫女が待つ奉納殿へと向けて歩き出した。


「貴莉恵様、火の国からやってきた勇者様方と弟君が謁見を求めています」
 奉納殿、最深部で鳴(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))が頭を下げながら貴莉恵に話しかける。
「‥時人が?それに―‥勇者じゃと?」
 派手に装飾の施された椅子に座りながら貴莉恵が怪訝そうに呟く。
「仕方ない、通せ」
 貴莉恵の言葉に「かしこまりました」といい、勇者達を貴莉恵の前へと通した。
「何用じゃ、手短に話せ、私は忙しい身なのでな」
「魔物を呼ぶと聞きましたわ、何方を呼ぶおつもりですの?」
 十尾流が問いかけると「聞いて驚くが良いぞ」と貴莉恵は誇らしげに呟く。
「闇を司り、自由に操る摩訶(丙 十哉(fa5574))を呼び出すつもりじゃ、私の力を持ってすれば容易い事じゃろう」
「その通りですね、貴莉恵様」
 鳴はにっこりと笑いながら相槌を打つ。
「そうですの、わたくしは先に此処を出させて頂くわね、また後でお会いしましょう」
 十尾流はそれだけ言い残すと奉納殿から出て行ってしまう。
「姉様!どうしてもやめるつもりはないのですか」
「くどいぞ、時人、下がれ、私は今から儀式に取り掛からねばならんのだ」
 そう言って貴莉恵は鳴と共に姿を消した―‥。


「姫巫女は摩訶を呼び出すつもりらしいですわよ、制御なんて出来ないでしょうけど、このままでは貴方は負けますわね」
 十尾流はあれから豪烈皇の居城まで赴いていた。
「わたくしに良い考えがありますの、のりません?」
 そう十尾流は不敵に笑む、そこで傀儡操が「私が様子を見て参ります」と言って城から出て行く。


「それでは儀式を始める」
 貴莉恵は勇者達が見ている前で魔物召喚の儀式を始める。結局追いかけてきた勇者達に「手出しはしない」という約束で儀式に立ち会う事を許したのだ。
「あんたは魔物召喚を認めるのか?」
 儀式の最中に多々良が鳴に問いかける。だが彼女は言葉を返す事はなく、困ったように笑みを浮かべているのみである。
「我は‥汝に力を与えし者‥土の気を抱きし姫巫女よ、汝の望みを申すが良い」
 暫く経った後に魔物・摩訶が現れて貴莉恵に話しかけてきた。
「私は汝に命ずる、土の国を支配する豪烈皇を打ち倒せ!」
「魔物とて人に従なすを望む者ばかりではない、貴奴等の行いは我らの行動をも枷となり縛り付ける‥これは契約ぞ」
 顔を隠している為、摩訶の表情は読み取れないが勇者達は全身に鳥肌が立っていた、それほどまでに摩訶は強いのだ。
「私の言う事を聞け、さもなくば叩き返すぞ!」
「‥良かろう、姫巫女よ、我は汝に力を与えよう、汝は我に生きる場所を与えるがいい」
 そう摩訶が呟いた時に傀儡操が土中から姿を現す。
「貴方が呼び出された魔物ね‥私は傀儡操、豪烈皇様の部下よ」
 そう言いながら傀儡操は摩訶に向かって攻撃を繰り出す、そして―‥。
「嘘‥何で貴方――‥」
 摩訶の姿を見て、傀儡操は激しく動揺し、その隙を突いた摩訶により壁へと叩きつけられる。
「汝らに思う所はないが、姫巫女が望むでの――‥」
 呟く摩訶の声は恐ろしい程に低く、冷たいものだった。
 その時―‥天空から隕石の如く落下して豪烈皇が姿を現す。摩訶の姿、そして姫巫女、勇者と順に視線を移し、全てを悟ったように「そういう事か」と呟く。
「傀儡操、退け」
 豪烈皇は呟き、地面を殴打爆砕して土煙と共に姿を消した、続いて傀儡操も無言でその場を離れる。
「ふふふ、やはり私の考えは正しかったのじゃ、いくら土の国を支配する魔物でも、お前の力には怯んだようじゃの、しかし何故追わぬ?」
 貴莉恵が摩訶に問いかける。
「一度に終えては面白みもなかろう?土の国の主よ、もう一度‥相見えようぞ」
 そう呟き、摩訶も姿を消した。
 豪烈皇、摩訶、傀儡操、今までの事を見ていて多々良は何か違和感のようなものを感じていた。
(「何かおかしいだ‥」)
 その『何か』が何なのかはわからなかったが、このまま全てが上手くいくとは‥どうしても思えなかった。
「‥このまま全てが終わるとは‥思えません」
 多々良が感じた事を時人も感じていたのか、胸の辺りを押えながら小さく呟く。
「‥‥‥‥‥クッ」
 魔物達がいなくなった後、誇らしげに笑う貴莉恵を見て鳴が―――‥妖しく笑った。


「召喚は失敗していますわよ、誰も気づいていませんけれど」
 豪烈皇に十尾流が楽しげに呟く。
「お前は何故俺に加担するのだ、勇者だろう?」
 豪烈皇が十尾流に問いかけると「強い者が全て、という考えには共感できるからですわ」と答える。十尾流が裏切り行為に出ている事など、多々良も渡もまだ知らなかった。


「‥やっちゃった、みたいだね‥」
 強い魔物の気を感じて最が小さく呟く。彼女もこの先に起こる事を察知しているのだろうか、その顔は真剣そのものだった。


 果たして―‥土の国に平和は戻るのか――‥?



END