Melodearアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 2.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/29〜05/02

●本文

『迷い込んだ先は、楽器を奏でる事で会話する不思議な街だった』

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「参ったな‥迷ったのかな‥」

俺達は学校の吹奏楽部の部活生で、今回は顧問の親戚が所持する山奥の別荘に来ていた。

もうすぐ、大会があるからそれの合宿だったのだけど、半分以上は旅行気分で遊んでいる人間がほとんどだ。

「森の奥にはメロディアという街があると昔から言われているんだよ」

顧問教師が俺達に言う。

彼が言うには『メロディア』の住人は言葉を話す事が出来ずに楽器で会話をするのだという。

「楽器で?何それー」

女子生徒は信じられない、といったようにけらけらと笑い出した。

「先生も行った事はないけど、この辺で有名な言い伝えだよ」

他の皆は、笑って馬鹿にしていたけれど俺は行ってみたいなと思った。

演奏する事が大好きな俺にとっては、天国のような場所に感じられたからだ。

そこで次の日、休憩時間を利用してメロディアを探しに行こうと数人の仲間を誘って別荘を後にした。

こんな話を信じている自分は馬鹿だと笑われるかと思っていたが、何人かは「あったらいいよね」と馬鹿にする事なく、ついてきてくれた。

そして、山の中で迷い込んだあげく、雨が降ってきて途方にくれている時だった。

「ねぇ、奥に何かあるよ?」

雨を凌ぐ為に俺達はそちらへと走っていく。

『ようこそ、メロディアへ――』

そんな看板を横目に見ながら―‥。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
●募集事項
◎映画「Melodear」では出演者の皆様を募集しています。
◎話に必要な必須配役は以下の通りです。
 ・OPの「俺」とその仲間たち
 ・メロディアの住人
※上記二つが必須配役ですが、他にも適役がありましたら、他の参加者様と話し合っての役柄追加&設定追加はOKです。
※メロディアでは楽器を奏でる事で会話します‥という事で楽器を持参してもいいし、スタッフが用意してもいので、何の楽器を使用するかをプレイングに書いて下さい。
※以上が{Melodear」で決まっている話です。

●今回の参加者

 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa4181 南央(17歳・♀・ハムスター)
 fa5035 ラファエロ・フラナガン(12歳・♂・狼)
 fa5167 悠闇・ワルプルギス(22歳・♀・蝙蝠)
 fa5316 希蝶(22歳・♂・鴉)
 fa5404 橋都 有(22歳・♂・兎)
 fa5480 ヒノエ カンナ(22歳・♀・猫)

●リプレイ本文

「ここがメロディア‥?」
 持っていたクラリネットが雨に濡れぬように抱きしめながら響一(南央(fa4181))が家の軒下まで走る。
「‥あれ?皆は――‥」
 その時に初めて響一は自分以外誰もいない事に気づいた。どうしようかと考えていた時に背後からアコースティックギターの音が聞こえてきた。穏やかな曲調に響一は心が落ち着くのを感じていた。
 しかし、演奏に対して何も反応を返さない響一に目の前の男性・ユーイ(篠田裕貴(fa0441))は考え込むように手を口元に置き一度家の中へ入っていく。
「‥何だろ‥って言うか何も話さなかったな、あの人」
 暫くすると彼は玄関口に戻ってきた。

初めまして、俺はユーイ。メロディアへようこそ

 目の前に差し出された紙にはそう書かれていて、響一は紙とユーイとを見比べた。

 とりあえず雨が止むまでうちにおいで。温かいお茶を煎れてあげよう

 ユーイに促されて響一は家の中へと入っていく。中は特に変わった所もなく、本当にメロディアなのだろうかという思いを響一に与えた。やがてユーイが響一の前にやってきて、温かいお茶とタオルを差し出してきた。
「あ、ありがとう」
 響一はタオルとお茶を受け取ると感謝の言葉を言うが、ユーイは困ったように笑っているだけだった。

俺達メロディアの人間は普通の言葉が分からないんだ、だからキミの言ってる事も分からない、ごめんね

そう書かれた紙が目の前に差し出され、響一は『ここはやっぱりメロディアなんだ‥』と改めて実感をした。しかしお礼を言おうにも此処での言葉が分からない、ただ演奏するだけという事なら有難いのだけれど、残念ながら違うようだ。目の前でオロオロとする響一にユーイはクスと笑って『簡単な言葉を教えてあげるよ、他の住人と会った時に困るだろうから』と紙を差し出してきた。
 それからユーイに簡単な『言葉』を教わっていると、いつの間にか雨も止んでおり、ユーイが外を指差す。どうやら街の案内をしてくれるようだ。
「うぉら!待たんかーーーー!」
 家の外に出ると同時に、物凄い形相でヴァイオリンを弾きながら走るアラード(希蝶(fa5316))と追いかけられているツヴァイ(ラファエロ・フラナガン(fa5035))が響一とユーイの前を凄い速さで通り過ぎていった。
「‥な、何!?」
 突然の出来事に響一が驚いていると、ユーイは『またか‥』と言ったようなため息をもらした。
「気にしなくていいよ、あの二人はいつもああだから」
 先程『言葉』を教えてもらったおかげか、ユーイの演奏が言葉となって響一の頭に入ってくる。‥まあ『聞く』方は何とかなるが『話す』となると響一にはまだ難しいものがあった。
「‥あれ、ミシェル君(ヒノエ カンナ(fa5480))」
 ユーイが呟き、視線を移した方を見るとミシェルと呼ばれた少女が何やら周りをキョロキョロとしている。
「‥コレは‥限定プリン!うそぉ!何でアラードが限定プリンを!?‥‥貰っちゃっていいよね? ウン、イイヨ、ありがとう!食べちゃえ!」
 何やら一人で二役してプリンを手に取り「いただきます」と食べていると「ああああああ!」とアラードがミシェルを見ながら叫び、追いかけの対象をツヴァイからミシェルへと変更した。
「きゃ〜〜〜!見つかった、でも食べちゃったモンね。ご馳走様〜」
 けらけらと笑いながら逃げるミシェルとは真逆にアラードは泣きそうである。しかし追いかけてくるアラードの顔が半泣きで怒っている為か物凄く怖い光景である。
「ご、ごめんなさい〜い!」
 逃げる途中で響一に気づき「かくまってぇぇ」と響一とユーイの後ろに隠れる。余程怖いのか吹いているコルネットの音が外れている。
「俺のプリン、プリン、プリン、プリン!!!」
 アラードはぎこぎことヴァイオリンを奏でながらこちらへと近づいてくる。その時に悲しそうなオカリナの音が響いてきた。
「フィーナ(姫乃 舞(fa0634))」
 必死に喧嘩(アラードの怒り)を静めようとたどたどしくオカリナを吹くフィーナに響一も怒りを静める為にクラリネットを取り出して演奏を始める。
「‥‥‥‥??」
 懸命に演奏しているのだろうが、はっきり言って響一の演奏に言葉は感じられない。通じていない事に気がついていないのか、響一はそれでも懸命に演奏する、その姿にアラードの怒りも段々と収まってきたのか、響一の前に体育座りで演奏を聴いている。言葉のない演奏にシルヴィア(悠闇・ワルプルギス(fa5167))もいつの間にかやってきて響一の演奏を聴いている。
「‥喧嘩が収まった‥?」
 自分の言葉を聞いてくれたのだと安心した響一が見た物は‥『で、何て言ってたの?』とアラードから差し出された紙切れ一枚だった。
(「しまった!!紙に書けば言葉が通じるんだった!っていうか来る前に看板もあったし、ユーイさんとも紙で会話してたじゃないか、俺の馬鹿――っ!」)
 ガーン‥とショックを受ける響一にその場にいた全員がけらけらと笑い出した。
「とりあえず、俺から一つだけ言葉を教えてあげるね」
 そう言ってアラードはヴァイオリンを短く弾き「泥棒!」とツヴァイとミシェルを指差しながら答えた。
「ねぇ、私達は楽器での会話しか知らないの、外での会話の仕方に興味があるわ、教えてもらえる?」
 シルヴィアの言葉にフィーナも「私も外から来た貴方に会えて嬉しい、話を聞かせて」と笑顔でオカリナを吹いている。
 しかし、メロディアの住人は口から『言葉』を発する事が出来ない為か、外での会話をする事は出来ない。それを考えるとメロディアの住人は不便なのかもしれない。
「どうしたのー?元気ないけど」
 ミシェルが響一の顔を覗きながらコルネットを演奏して問いかける。

や、何でもない。外の事より俺は此処の事を知りたい。演奏して教えてくれよ

 響一は紙に書いて皆に話す。その際にアラードが演奏して「これはプリン!」と誇らしげに威張って見せた。
「アラード、プリンからそろそろ離れなよ、しつこいなぁ」
 ツヴァイが呆れたようにエレキギターを弾くと「お前らが俺の限定プリンを食うからだろおお」と再び半泣きになりながら答える。


 そして楽しい時間が過ぎるには早いもので、気がつけば日が暮れかけている。
「‥そろそろ帰らないと‥」
 響一が小さく呟く。するとその場にシンとした空気が流れる、言葉は通じなくても響一が『帰る』という事には気がついたのだろう。
「‥元の世界に戻るんだね、入り口まで送っていくよ」
 ユーイが寂しそうに呟き、フィーナも「此処にきてくれてありがとう」と寂しそうな演奏を響一に向けて演奏した。
「‥また来て欲しいわ」
 シルヴィアも眉をさげながら寂しそうに呟いた。
 全員で響一を入り口まで見送り、別れの演奏を始める。
「さよなら、此処で得た事が君の道行の糧となる事を祈っているよ」
 響一も別れを惜しんではいたが、逸れてしまった仲間の事も気がかりとなっていて、元の世界へと戻っていった。
「次に‥メロディアに選ばれるのはどんな人間かな‥」
 ミシェルとフィーナは小さくなっていく響一の姿を見ながら寂しそうに呟いた。


「馬鹿野郎!何処に行ってたんだ!」
 メロディアから出た後、どうやって帰ろうかと迷っていた時に教育実習生の大向(橋都・有(fa5404))に見つけられ、その場で怒鳴られてしまう。
「‥‥メロディアに行ってきた。皆も一緒だったんだけど―‥」
 皆、という言葉に大向は「お前以外は戻ってきたよ」と短い言葉を返した。
「え?」
「誰かのお茶目だったらしい看板に踊らされてだいぶ疲れていたけどな」
 ため息混じりに呟かれる言葉に「皆は今何処に?」と響一は問いかけた。
「別荘にいるよ、また迷われても困るからな、お前がいないって皆心配してるぞ」
 そうだったのか、と響一は納得して「でも俺はメロディアに行ったんだ」と小さな声で呟く。
「メロディアか‥俺も昔は信じてたよ」
「今は?」
「え?」
「今は信じてないんですか?」
 響一の質問に「俺は探しても行けなかったからな」と苦笑混じりに答えた。
「お前は音楽に対する気持ちは純粋だからな、お前くらい‥純真だったら行けたのかもしれないけど――‥」
 響一がやってきた方向を見ながら小さく大向は呟く。
「そうだ、先生にメロディアで教わった言葉を教えるよ、えーっと‥」
 そう言って響一は『プリン』の言葉を演奏する。
「ちょ、ちょっと待った!」
 大向は慌てて自分の楽器を取り出して、響一と同じように演奏してみる。
「これで『プリン』か、はは、そっか‥凄いな」
 あはは、と大向は楽しそうに笑う。しかしそれは響一を馬鹿にするような笑いではなく、心から楽しんでいるような笑いだった。
「信じてくれるんですか?」
「‥信じるさ、聞かせてくれよ、いつか―‥俺が教師になれたら生徒に話したいから」
 さぁ、帰ろう、そう大向に言われ響一は皆が待つ場所へと足を向ける。
「‥あ、そうだ‥」
 響一は後ろを向き『ありがとう』の気持ちがメロディアの皆に届くように吹く。
「ありがとうって言葉、教えてもらっとけば良かったな‥今度行けたら‥こっちの食べ物でも差し入れに持っていこう」

 そう呟きながら響一はみんなの待つ場所へと戻っていった。
 メロディアの話を聞かせたら驚くだろうな、と心の中で呟きながら――。


END