動物使い 陸アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 2.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/09〜05/12

●本文

『何を信じたらいいのか、もう分からない――‥』

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「ナギ、全てを知った白達はどうするのでしょうね?こちら側‥黒に来ると思いますか?」

ふふ、と氷煉が珍しく無表情を崩して呟く。

「さぁね‥どうだろう?僕の目的はあくまで統括府の連中だけだからね。別に他はどうなっても構わないよ」

オリジナルのイザナミが眠る棺を見ながら呟く。

「‥‥もう少しで僕は――‥」

「何か言いましたか?ナギ」

小さく呟かれたイザナギの言葉が聞き取れなかったのか氷煉が聞き返すと「何でもないよ」と短い言葉が返ってきた。

「でも気になるのは、統括府の連中が切り札として持っている『龍』の存在ですね。こちら側に伝言を残すような事をするから、余計に混乱してしまいます」

氷煉はため息混じりに呟き、棺の中のイザナミを見た。

「氷煉、いつものようにナミの世話は任せるよ」

そう言って棺の間からイザナギは出て行く。

「‥‥私は怖いです、ナミ。いつか貴方がナギを何処か遠くへ連れて行ってしまいそうだから――‥」


※※※


白の統括府が行っていた非道な人体実験、それは一部の動物使いだけが知る事実となっていた。

「何であんなことを!?」

「白の動物使いが最強であるためにだ、人形使いという敵も現れた以上、弱いという事は許されないのだ」

「だからって同じ仲間をバラすのか!」

「物の数ではなかろう?今後の白のためを思えばこその行いだ」

統括府の連中には何を言っても通じなかった。

何かの本で読んだことがある、自分の行いが正しいと思い込んだ人間には『罪悪感』など存在しないのだと‥。

「さて、黒の行動が活発化してきた今となっては計画を急がねばなるまいな」

「‥計画‥?」

「そう―‥最強の動物使いには、最強のツカワレをあてがうのが筋だろう?流石にイザナギもこの事には気がついていなかったようだ」

そう言って見せられた紙には一人の少女の写真が写っていた。

「この子の名前はレイ、イザナギとイザナミの遺伝子を合わせた彼らの『子供』だ」

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●募集事項
◎映画「動物使い」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な配役は以下の通りです。
 ・白の動物使い(必須/何名でも可)
 ・ツカワレ(必須/何名でも可)
※白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。
 ・イザナギ(必須配役ではありません)
 ・氷煉(必須配役ではありません)
 ・イザナミ(必須配役ではありません)
 ・黒の動物使い(必須配役ではありません)
 ・魔(必須配役ではありません)



●動物使いの設定など

◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。

◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。

◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。

◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。

◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。

◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。

◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。

◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
ですが、必ず描写されるという訳ではありませんので、その辺はご了承下さい。

◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)

◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。

◎ツカワレには動物使いは必須ですが、動物使いにツカワレは必須ではありません。
契約を済ませていない動物使い、まだ覚醒していない動物使いなどがいますので。

◎黒の動物使いですが、魔と契約した場合、契約した魔が何らかの理由で消失しない限りは契約は続行になり、次の魔と契約できません。

※ですが、イザナギは黒の動物使いの中で一番強い能力の持ち主で、彼の場合は複数の魔を使役する事が可能です。
複数の魔を使役できる能力ゆえに、彼は黒の中で最強となっています。

※イザナミはイザナギが人工的に作り出した魔です。それ故にイザナギ以外と契約を結ぶことが出来ません。

◎動物使いにも特殊能力はあります、ですがほとんどがツカワレの戦力を上げる能力になります。

◎黒の動物使いが魔を製作する時に必要なのは、己の魔力が満タン状態なのと、魔を生み出す赤い月が出ている事の二つのみです。



※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)

例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)

‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。

対となる動物使い&ツカワレが決まった時点でもいいので、仮プレを提出していてほしいです。
白紙となった場合は相方との連携が出来なくなりますので、ご協力お願いします。


●今回の参加者

 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4264 月白・蒼葵(13歳・♀・猫)
 fa4265 月白・緋桜(13歳・♂・猫)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa5196 羽生丹(17歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

 その日の統括府は慌しい夜を迎えていた。黒の行動が活発化・人形使いの存在が統括府を焦らせ、神をも冒涜する行為を続けさせていたのだ。
「‥私はもう‥雛姫(月白・蒼葵(fa4264))、白雪(月白・緋桜(fa4265))‥貴方達だけでも逃げて下さい‥」
 背後から追ってくる統括府の人間にレイ(ユフィア・ドール(fa4031))は少し諦めたように呟いた。
「そこまでだ、一緒に来てもらおうか、レイ」
 背後から追っ手が迫り、一緒に逃げていた白雪を捕まえて一人の男が低い声で呟く。
「私はどうなっても構いません‥でもその子達には手出ししないで‥」
 それはお前次第だ、そう言われレイは白雪の自由と引き換えに自分の身を統括府に明け渡す事を決意した。
「ミレディ!逃げてください!」
 雛姫が叫ぶが「私に白雪を見捨てる事は出来ません」と寂しそうな笑みを浮かべて男の方へと歩いて行く。男は白雪を捕まえていた手を放し「行け」と短く呟いた。
「ミレディ!」
「‥あぁ、そうだ。全館の警備に伝えろ、邪魔な双子を消せ‥とな」
 男は通信機で上層部と連絡をして白雪・雛姫の処分を言い渡した。
「な‥約束が違います!二人に手出しを―‥!」
「‥口での約束など意味を成さない、知らなかったのなら覚えておくといい」
 そう言って男は「白雪!雛姫!」と叫ぶレイを無理矢理に実験室へと連れて行く。


「イザナギが‥そう、分かりましたわ」
 そう呟いて炯都(橘・朔耶(fa0467))は電話を切る。奥の調理場で料理をしていた翡焔(ヴォルフェ(fa0612))は「どうかしたのか?」と顔だけを覗かせて問いかける。
「統括府が襲われたらしいんよ、イザナギに―‥翡焔!」
 説明の途中で炯都が叫び、店の入り口を指差す。するとそこには怪我を負って倒れている白雪の姿があった。


「‥白雪が‥いない‥何処だろう‥」
 雛姫は怪我をした腹を押さえながら消え入りそうな声で呟く。自分達を処分しようと襲い掛かってくる人間達から逃げている時に、雛姫は自分の半身でもある白雪とも逸れてしまった、白雪も怪我をしているので雛姫は心配で仕方なかった。
「おい、どうしたんだ?こんな所で‥ってよく見たら白かよ」
 しょうがねえな、面倒そうに呟くのは翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))だった。話しかけても意識のない雛姫を担ぎ、自宅まで運ぶ。
「‥う‥此処は‥」
 自宅まで運び、傷の手当てなどをしていると雛姫が目を覚ます。
「気がついたのか?ここは、俺の家だ。いつもなら、こんな事、やらないんだがな。一応応急手当だから、他の奴によく見てもらえ‥ったく黒の俺が何で白のお前を助けなきゃならんのかね」
 ぶつぶつと文句を言いながら包帯を巻いてやると「黒‥なのか?」と呟いてきた。
「‥ぁ‥白雪とミレディを探しに行かなきゃ‥」
 聞き覚えのない名前に「誰だ、それ」と翠嵐が問いかけると「白雪は俺の双子の兄弟」と呟く。
「‥そしてミレディは‥レイ様はイザナギ様のお嬢様なんだ」
 雛姫の言葉に翠嵐は驚きを隠せなかったが、それを顔に出す事はせずにドアを開けて一言呟く。
「ダエグって店にお前を預かってくれそうな奴らがいる、そいつらを頼れ」
 いいな?と翠嵐は地図を渡して雛姫を自宅から追いやった。そしてため息混じりに「‥知らせた方がいいのかね」と呟いた。


「イザナギとイザナミの遺伝子を‥?」
 傷の手当てが終わり、白雪から話を聞いている時に翡焔が驚いたように呟く。
(「‥まだ、そんなくだらない事をしているのか‥」)
 翡焔がチラリと炯都を見ながらため息を吐く。
「統括府の哥さんら、今度は何を始める気やろね?」
 白雪の話を聞き、炯都が呟く。その時に白雪が勢いよく入り口を見る、すると遠慮がちに雛姫が入ってきた。
「雛姫!良かった‥無事だったんだ」
 白雪は雛姫の前まで行き、安堵したように呟いた。
「白雪も無事でよかった‥でもミレディは‥」
 ミレディ、その名前を呟き白雪と雛姫は口を閉ざして下を俯く。
「翡焔、統括府へ行く準備をしい、レイを救出に向かうで」
 炯都の言葉に驚きながらも翡焔は「‥分かった」と短く答えた。


「なぁ‥塩華(羽生丹(fa5196))おれ達は何を信じていけばいいんだろう‥」
 呟くのはウィリィ(ウィン・フレシェット(fa2029))、先日見た統括府での出来事が頭から離れないのだ。白への疑惑・属する自分への疑問、それらは彼を段々と黒へと染めていく。
「‥仲間っぽい気を感じたと思ったら、堕ちかけか」
 ウィリィの気を感じてやってきたのは翠嵐だった、彼を見て「‥それもいいな」と呟く。
「ウィリィ‥?」
「判ってくれ、塩華‥おれはもう白と息をしたくないんだ」
 塩華は来てくれるよな?と空ろな瞳を向けて呟く。
「大局を見ろ、大局を‥な?」
「‥考えたさ、それが大局なら――‥おれはいらない」
 ウィリィの決意は固いらしく「判った、ついていくよ‥」と塩華はため息混じりに呟く。
「‥ようこそ、黒へ?」
 クッと翠嵐は茶化すように呟き、新たな仲間を歓迎した――‥。


「俺達はミレディを救出に向かう、そっちは好きにしてくれ」
 そう言って白雪と雛姫はレイ救出へと向かう。そして炯都と翡焔は統括府の幹部と接触をして今回の出来事を聞きだそうとしたが‥ろくな答えを貰えぬまま追い返されてしまう。
「炯都、俺は龍の所へと行ってくる‥一人で‥大丈夫だな?」
 いつもと違う翡焔の言葉に「‥?大丈夫やで?」と不思議そうな顔で答え、翡焔を見送った。


「ミレディ!」
「‥白雪?雛姫‥何故ここに‥?」
 信じられない、というような顔でレイは二人を見る。
「助けに来たんです、早く逃げましょう!」
 雛姫が牢の鍵を開け、逃げる為に来た道を戻る――‥しかし。
「‥雛姫、追っ手が‥」
 逃げる為の唯一の道には大勢の警備が立っている。
「‥このままじゃ‥」
 ぐ、と白雪と雛姫は唇を噛み締めてレイの方を見て呟く。
「この裏には遠回りになりますが、外への道があります。今は使われていない旧階段です、そこから逃げてください!」
「貴方達は‥?」
 レイが心配そうに呟くと「俺たちもすぐに追いかけます」と呟き「早く!」と叫ぶ。レイは苦しそうに顔を歪めながら旧階段の方へと走り出す。それと同時に「逃がすか!」と警備員がレイに向かって発砲する、それを見た白雪は――弾丸がレイに当たらぬように自分の体を犠牲にしてレイを庇う。
「白雪―――――っ!」
 慌てて雛姫は白雪に駆け寄る、しかし弾丸は白雪の心臓を貫いており、気味の悪い息をひゅーひゅーと吐いている。
「‥これで、ご恩返しが‥できたかな?」
 儚げに笑うと白雪は息絶えてしまう。
「お前も此処で死んでもらう」
 そう言って警備員は雛姫の頭に銃を向ける。
「‥ふざけるな‥ふざけるな!俺達はお前らの道具なんかじゃない!」
 絶望・怒りが雛姫を黒へと変貌させ、その場にいた警備員達を全て殺してしまう。
「‥白雪‥ミレディ‥」
 後に残ったのは狂ったように喚く雛姫の姿だった―‥。


「なるほど‥龍の対としてレイを使うつもりやったんやな‥」
 統括府の人間に聞いても答えてもらえない為、炯都は自分のパソコンで統括府のパソコンへとハッキングをした。そこには色々と吐き気が出そうな計画書がずらりと並べられていた。
「‥龍‥なんやろ、私は‥大事な何かを‥忘れてるような‥」
 炯都は小さく呟く。それは過去に封じた筈の記憶が戻りかけているのかもしれない。


「‥以上が今回の事だ」
 重々しい扉越しに翡焔は龍へ今回の事を報告する。
「母様はお元気ですか?」
「‥変わりありません」
「レイの事を助けてください、彼女もまた―‥被害者なのです」
 了解、その言葉だけを残して扉の前から姿を消した。


「遅いで、翡焔」
 入り口の所で炯都が不満たっぷりに呟いた。
「‥何人かは黒に堕ちてしもうたで」
「黒に‥堕ちたいか?炯都―‥」
「‥白には龍がおる、翡焔は龍を見捨てられへんのやろ?」
 見捨てられるはずがない、と翡焔は心の中で呟く。龍は炯都の子供なのだから―‥。
「私には翡焔が選ぶ事が正しいと思うてる、それだけでいいわ」
「‥‥俺は‥自分が正しいと思った事は‥一度もないよ」
 寂しそうに翡焔が呟き、炯都はそれを言葉なく見ていた。


「あー‥俺だけど、一応耳に入れといた方がいい事を聞いたからよ」
 イザナミの棺の前で佇むイザナギに翠嵐が話しかける。そしてその内容を聞いたいイザナギは激昂し、本部から飛び出していった。


「‥龍―‥貴方の事は気になりますが‥私はイザナギと会ってみたいと思います」
 統括府の建物を見上げながら、レイは小さく呟き、イザナギに会う為に歩き出した。


END