destiny〜Last Day〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 3.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/15〜05/18

●本文

『今日が最後の仕事―‥どんな日になるんだろう?』

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その街は昼と夜とで全く正反対の顔を持つ―‥。
朝は爽やか街も、夜になれば一変する。
その中でも独特の雰囲気を持つ店が1軒存在した。

―destiny‥

「え、要さん‥今日までってホントですか?!」

destiny、ナンバー1ホストの『要』に慌てて近寄るのは新人ホスト『茂』だった。

「あぁ、少し前に店長から皆に話があったろ、聞いてなかったのか?」

ため息混じりに要が言うと、茂は「へへ‥」とバツが悪そうに笑った。

「実家に残してる母親が倒れてね、帰って面倒を見なくちゃいけないんだ」

俺は一人息子だから、と苦笑交じりに要は答える。

「‥そうですか、残念です‥俺は要さんに憧れてこの店に入ったのに‥」

しゅんとしながら茂が呟くと「何言ってんだよ」と頭をポンと叩く。

「誰かを追いかけてるようじゃ、一人前のホストにゃなれねぇぞ」

「そうなんですけど‥」

「おら、いつまでもシケた面してんじゃねーよ、もうすぐ開店だろ」

きりきり働け、そう言って要はバシンと茂の背中を叩いた。

ナンバー1ホスト、要の最後の夜―‥それは一体どんな夜になるのだろう?

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●募集事項
◎映画「destiny」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な必須配役は以下の通りです。
 ・ナンバー1ホスト『要』
 ・新人ホスト『茂』
※ホストクラブにやってくる女性も一応必須配役ですが、女性の参加者様がいなかった時がいけないので、必須配役にはしません。
※来店客で女性役の方がいない場合はNPC『ユリアナ・マクレイン』を女性客にして構いません。
※女性の参加者様がいらっしゃった場合はユリアナは雑用係にでもしますので。
 ・他にホストクラブにいそうな人
(バーテン、ピアニストなどなど)
※もちろん必須配役以外は参加された皆様でお好きに演じてくださって構いません。
◎今回も毎回の如く、自由度がかなり高めで決める事などが沢山あり、大変かもしれませんが、が‥頑張ってください!!

●今回の参加者

 fa0597 仁和 環(27歳・♂・蝙蝠)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa3797 四條 キリエ(26歳・♀・アライグマ)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa5196 羽生丹(17歳・♂・一角獣)
 fa5461 榊 菫(21歳・♀・竜)

●リプレイ本文

「要ちゃん(蘇芳蒼緋(fa2044))!今日が最後なんですってね、寂しくなるわぁ‥私の要ちゃああん!」
 そう言ってナンバー1ホスト・要に抱きつくのは麗香(仁和 環(fa0597)だった。彼、いや彼女はゲイバー『音匣』のママであり、要の常連指名客でもあった。
「いらっしゃい、麗香さん、ほらほら涙を拭いて。美人が台無しですよ?」
 せっかく来たんですから楽しみましょう、そう言って要は麗香を席へと案内しようとする――‥しかしその時に成(四篠 キリエ(fa3797))が「兄さん!」と叫びながら此方へとやってくる。
「店はどうしたんだよ!」
「やん、要ちゃんの最後の日だって言うのにやってられないわよ、そんなの」
「やってられないって‥それダメだろ!兄さん!」
 先程から連呼される「兄さん」という言葉に麗香は「兄さんじゃなくて姉さんと呼びなさいって言ってるでしょ!成次郎!」
「成次郎って言うなってば!店では成って呼べよ!兄さん!」
 果てしなく終わりの見えない口論に「まぁまぁ、二人とも落ち着いて‥」と要が仲裁に入る。
「喉渇きません?何か飲みませんか?」
 要がそう言うと「要ちゃんがそう言うなら♪」と要の額を指でツンとしながら呟く。
「じゃあ、席へ行きましょう」
 要が麗香を席まで案内しているのを見て、桂(椿(fa2495))が「賑やかなお客様がいらっしゃいましたねぇ‥」とのほほんと呟いている。
「賑やかねぇ、此処っていつもこうなの?」
 奥の席で茂(羽生丹(fa5196))に問いかけるのは柊(榊 菫(fa5461))、一般客のように見えるが実際は取材で店に来ているのだ。
「え?そうですね、いつもこんな感じで賑やかですね」
 茂は要が辞めてしまう事に対してショックを隠しきれずに少し暗い表情になる。
「私なんかより、もっとお金になる客の相手したら?私は会話も苦手だし、暇でしょ」
 柊が言うと「い、いえ‥そんな事は‥」と誤魔化す。しかし別なホストから「俺が代わるから要さんの所に行けよ」と言われ、茂は柊の席を立った。

「やれやれ‥宗太郎!お店から帰れコール来てるわよ、適当に誤魔化しといたから」
 そう言いながら宗太郎‥麗香の席にやってきたのは男物のスーツに身を包んだ女店長・春日(桜・美琴(fa3369))だった。
「いいのよ!今日は特別な日なんだからお店なんて!それより!宗太郎って呼ばないで頂戴!私はレディ・麗香なのよ!」
 ばちーん、と春日を叩きながら叫ぶ。
「レディに何を‥誤魔化した礼としてココにいる子、全員にドンペリね♪もちろん私も含めて♪」
 春日が悪戯っぽく笑いながら言うと「何しみったれた事言ってるのよ!」とパチンと指を鳴らしながら叫ぶ。
「要ちゃんの最後の晴れ舞台よ?お店にいる全員好きなモノを頼みなさいな!ドンペリでもルイでも!」
 ほら、アンタも飲むのよ!と麗香は春日も無理矢理席に座らせてグラスを渡す。
「サンキュ♪麗香さん、皆さん、ドンペリ入りま〜す」
 要の言葉に店全体から歓喜の声があがる。
「要、良かったですねぇ‥華やかな門出になって」
 にこ、と笑みを浮かべながら桂が呟く。
「そうそう、今でこそ堂々としてますが、昔は要も会話噛みまくりだったんですよ〜」
 ねぇ?要、桂が話を振ると「なっ!」と要は明らかに動揺している。
「確かに‥あの時は凄い噛みっぷりだったな」
 クク、と笑いながら此方へやってきたのはバーテンの小谷(グリモア(fa4713))だった。
「小谷さんまで‥桂!そ、そういうお前は昔から噛みようのないスローな話し方だったからな」
 最初は桂の方が上だったんだぜ?要の言葉に麗香が「嘘ぉ、そうなの?」と驚きながら叫ぶ。
それに対して桂は「‥そうでしたっけ?」と本気で忘れている口調だ。桂と要の新人時代の話に興味津々なのか成は「へぇー」と呟きながら聞いている。
「なぁ、やっぱ要さんにも俺達みたいな時代が―‥って茂!?」
 成が茂の方を振り返って驚きの声をあげる。何故なら‥酒を飲みすぎて既に机に突っ伏す茂の姿があったからだ。
「ホストが酔いつぶれてどうすんだよ‥」
 呆れながら小谷が「大丈夫か?」と話しかけるが「全然大丈夫らないれすよ」と既に呂律が回っていない。
「酒が‥酒がしょっぱいれすよ‥」
「はいはい、大丈夫か?‥にしても相変わらず二十歳超えてるとは思えない可愛い声だよな」
 要が笑いながら言うと「笑い事じゃないれすよ!」と今にも泣きそうな顔で叫ぶ。
「俺は明日から‥誰を目指して頑張ればいいんですか‥って最後まで俺、かっこ悪いですね」
 ぐす、と鼻を啜る茂の頭に要は手を置き「俺は結構お前に期待してるんだぜ?」と話しかけた。
「そうそう、茂が要の心意気を継ぐ者でしょうし」
「いや、お前が継げよ‥全くウチのナンバー2は欲がないわね、それが魅力なんでしょうけど」
 桂の言葉に春日がため息混じりに突っ込みをいれる。
「‥っとそろそろ俺はお開きかな」
 時計を見て要が呟く。席を立った要は柊の所まで歩み寄り「お騒がせしました、この後もお楽しみ下さい」と丁寧に頭を下げて、自分の席へと戻る。
「そろそろお別れの時間なのね‥要ちゃん、私の事を忘れちゃイヤよ?」
 うる、と瞳を潤ませながら麗香が要に呟く。しかしその他のホスト達は『忘れられねぇだろ』と心の中で毒づく。
「皆さん!今までお世話になりました!皆は‥明日からも頑張れよ?」
 そして要は涙を浮かばせる茂の前で立ち止まり「俺の所まで名前が届くくらいイイ男になれよ?」とこっそりと呟く。
「いつか‥いつか要さんの前にロールスロイスで乗り付けて勝利宣言して見せます!勝ち逃げは許さないっすよ!」
 茂が叫ぶと「頼もしいわね」と春日も満足そうに笑う。
「アンタの弟も結構イイ線いってるんだけどね、アンタの弟だから‥」
 春日が麗香を見ながら呟くと「どういう意味よ!私はレディよ!」とキッと睨みながら答える。その会話を聞いていた成だったが、あえて聞かない事にした。
「要さん!お元気で!俺達も頑張ります!」
 二度と会えないワケじゃないと信じている為か、成は『さよなら』という言葉を口にしない。
「またね、要」
 桂が手を差し出しながら呟く。
「あぁ、お前も元気でな、桂」
 そう言って要は店を出ようとする、そこに春日が「小谷!アンタも別れの挨拶くらいしなさいよ!」と叫ぶが、小谷は此方へ来る事はしなかった。あくまでいつも通りの態度。
 しかしコップを磨きながら視線で「またな」と訴えているのが要には分かったのか「構わないよ、春日姐さん」と要も笑って答え、店を出て行った。
「またねえええ!要ちゃああん!」
 バタン、と扉が閉まると同時に麗香は後ろを振り向き「お前ら、要の男気を確り継げよ?」と低い声で呟く。ドスの聞いたその声はいつもの『女』としての麗香の声ではなく『男』として‥宗太郎としての声そのものだった。
「要さんの前と態度が全然違うし‥」
 呆れたように成が呟く、そして今から帰ろうとする柊に気づく。
「すみません、ロクにお相手も出来ずに‥」
「いいえ、見ていて楽しかったです。それでは‥後日をお楽しみにしてくださいませ」
 不思議な言葉を残して柊はdestinyから出て行った。


 後日―‥
 柊の使いという事で女性(ユリアナ・マクレイン(fz1039)が一冊の雑誌を持ってきた。その雑誌には『ホストクラブ特集』がされていて、destiny‥しかも要の最後の日の様子が写されていた。
「記念になるね、これは」
 桂が雑誌を見ながらポツリと呟く。
「そうね、これは大事にしましょうか」
 春日は雑誌に掲載されている馬鹿騒ぎの写真を見て、小さく笑みを浮かべた。

 destinyから要という名のホストはいなくなった
 しかし、彼が残した心意気、意思、それを受け継ぐものが存在する限りホスト達の中から『要』は消える事はないのだ―――‥。


END




●撮影終了後―‥
「仁和さん!そこ(隅っこ)に座ってちょうだい」
 仁和さんは「またか‥」とがっくり肩を落とす。
「‥こ、こんな感じ?」
 諦めたように隅っこに座る仁和さんに「それが見たかったのよ!」と背中合わせに桜さんも同じように隅っこポーズで座る。どうやら隅っこコンビ結成のようだ。
「蘇芳!今よ――っ!」
 カメラを持ってスタンバイしていた蘇芳さんがばっちりと撮影する。
「また写真を‥現像したら焼き増し宜しく!」
 半ば自棄になったように仁和さんは泣きながら撤退。
「珍獣扱いで良かったネ!」
 去っていく仁和さんを見ながら椿さんが呟く。
しかしその手には榊さんが差し入れてきた有名店のシュークリーム、結構な数があったにも関わらず全てが椿さんの腹の中に入ったとか‥。
「ある意味、椿さんの胃袋も珍獣なみだよね‥」
 シュークリームを食べる椿さんの姿を見ながら監督は小さく呟いたのだった。

おしまい