夢幻界廊 拾アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
2.8万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
05/16〜05/19
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●本文
『夢喰い・夢魔・世界・全てに決着がつき、終わる瞬間――‥』
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「流石に彰姫の姿では戦う気力も失せたようね」
輝夜は牢の中で、未だ目を覚まさない久樹に問いかけて冷たい笑みを浮かべながら呟いた。
「しかし、久樹は以前の彰姫を手にかけています。今回も始末される可能性は高いのでは‥?」
輝夜の隣にいた夢魔が心配そうに呟く。
「‥さぁ、どうだろうな‥この男は以前の事を今でも引きずっている、そう簡単には手にかけられる筈もない。どちらにせよ、儀式が終わればいいのだ」
準備を急げ、そう言って輝夜は牢の前から姿を消した。
※※※
「漣様!今、何と言われましたか!?」
夢喰い本家も今、騒ぎの真っ只中だった。
「‥ですから、夢幻壊廊の復活の為に夢心を使う‥と言ったのです」
「馬鹿馬鹿しい!たかが夢喰い一人の為に夢心を危険に曝すというのですか!」
たかが夢喰い一人、その言葉に漣は「黙りなさい!」と大きな声で叫んだ。
普段は周りの顔色をうかがうように生きている漣が怒鳴り声をあげた事で場はシンと静まり返った。
「誰かの犠牲の上に成り立つ平和なんてあってはならないのです!貴方達に意見はさせません。時期当主として、私個人として決めた事です」
よろしいですね?と漣は背後に立つ夢魔・隠者に問いかける。
彼は夢幻壊廊から逃げてきて、柚香を通して本家へとやってきた。
「‥信じても宜しいんですよね?久樹さんは必ず助かると―‥」
「命を賭けてもいいよ、絶対に誰も犠牲にならない方法で夢幻壊廊は復活できる」
そう呟き、隠者は柚香達を見て「キミ達にも手伝ってもらうよ」と呟く。
「早く行こうよ、こんな夢喰いクサイ場所、早く出たいんだから」
アリスが挑発的に呟くと本家の人間は「何だと!」と威嚇するように叫ぶ。
「べ〜、姉様もそう思うでしょ?」
アリスは紫雨の背後に隠れながら笑いながら問う。
「そうね、夢喰いクサイはともかく、早く出たいという意見はアリスと同じね」
紫雨もため息混じりに呟く。
「じゃあ、行くわよ!」
柚香と三守は隠者が見つけた方法で夢幻壊廊を復活させ、久樹を助ける為に再び夢幻壊廊へと向かった――‥。
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●募集事項
◎映画「夢幻界廊」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回、募集している役柄は以下の通りです。
・久樹(必須/夢喰い/男性一名)
・夢喰い(必須/何人でも可)
・夢魔(必須/何名でも可)
・隠者(必須/夢魔/男性一名)
※上記が必須配役です、他に適役がありましたらそちらを演じていただいても結構です。
◎夢喰いには『属性』と『属性系統に技』が一つあります。それらは参加された皆様が決める事ができるのですが『技』は必ず属性系統のものにしてください。
◎夢喰いには表の顔があります。夢喰いと言えど特殊な能力を持った『普通の人間』と変わりありません。生活をしていくのに仕事をしたり、学生だったら学校に通っていたりとしています。
◎逆に夢魔は人の生気をさえあれば生きていけるので、表の顔を持つ夢魔はほとんど存在しません。
●リプレイ本文
「気を失っていたのか‥」
ひやりとした感覚に目が覚め、久樹(橘・月兎(fa0470))は体を起こしながら呟いた。周りの慌しさから儀式決行が近いのだと悟る。
「目が覚めたか、牢から出てもらう」
目の前までやってきたのは輝夜(紅雪(fa0607))、これから行う儀式の為に久樹連れにやって来たのだ。
「自ら死を願いながら死んだ者を今更甦らせても、結局は同じ結果しか生み出さない事さえ分からないのか?」
久樹の言葉に視線だけを向け、大して気にしていないのか返事する事なく久樹を引きずり出し、儀式の場へと連れて行く。
「何か言い残す事はあるか?」
「‥‥‥」
輝夜の言葉に久樹は無言で睨みつける。
「何もないなら儀式を始める」
言い終わると輝夜は祝詞を唱え始める、それと同時に奪われていく久樹の生気、次第に立っている事すら出来ずに膝を折り、その場に倒れる。
「最愛の女が甦ったのだ、嬉しかろう?もう聞こえていないだろうがな」
輝夜は倒れた久樹を冷たい目で見下ろしながら呟いた。
「ねぇ、漣(ルナティア(fa5030))本当に夢心を持ち出す許可を貰ったの?」
柚香(ユフィア・ドール(fa4031))が夢幻壊廊に向かう途中で問いかける。
「えぇ、先代当主が現当主を説得してくださり、時間制限付きで持ち出す事を許可してくれたの」
ふぅん、と柚香は呟き後ろから来る夢魔・紫雨(月 美鈴(fa3366))とアリス(真紅櫻(fa4961))を一瞥し「早く助けないと‥」と呟く。
「だったら夢幻壊廊の復活班と捜索班と別れた方がいいんじゃねぇの?」
アリスの言葉に「そうね」と月菜(敷島ポーレット(fa3611))も賛同の意を示す。
「急いだ方がいいね、結構ヤバい感じがするよ」
隠者(K・ケイ(fa4786))が体に伝わってくる大気を感じ取り、嫌な汗を流しながら呟く。
「夢幻壊廊を復活させる為に僕と漣は一緒に行くよ」
「私達は久樹ちゃんの捜索ね、任せたわよ、二人とも」
そう告げてそれぞれの行動を開始しようとした時に木蓮(森ヶ岡 樹(fa3225))が「僕は隠者さん達と行きたいなぁ‥」と呟いた。
ただ単に彼の考えは夢喰い時期当主の漣・法王の名を継いだ隠者、この二人の方についていった方が危険な目に合わないだろうと考えての事だ。
「別にいいけど、それじゃお互いの検討を祈るわ」
紫雨が呟き、二組はそれぞれの方向へと向かっていった。
「此処にはいないか」
アリスが呟く。この間と同じ牢に入れられているかもしれないと考えたが、やはり牢にはいない。
「あっちが何か光ってるけど‥」
月菜が指差した方向は強い輝きを放つ場所があった、しかしその手前には夥しい数の夢魔達が待機している。
「仲間とは‥やりあいたくないけれど‥この場合はしょうがないわね」
紫雨はため息混じりに呟くと自分の技・氷舞を繰り出して夢魔達に向けて放った。珍しく本気を出しているのか攻撃力などが数段上がっている。
「あ、あそこ!」
夢魔達が段々と倒され、奥の部屋が次第に見えてきて月菜が驚いたように叫んだ。視線を向けて入ってきたものは―‥倒れている久樹、そして儀式中の輝夜だった。
「久樹ちゃん!!」
柚香が叫び、能力で夢魔をなぎ倒しながら久樹の傍まで走る。
「遅かったな、久樹は既に死んだ、間に合わなかったのだよ」
勝ち誇ったように言う輝夜の手に持たれているのは久樹の生気を奪い作り上げた『核』があった。
「彰姫か、傀儡と言えど生きる道を選ばなかったのだな、哀れで愚かな女だ」
輝夜が言うには傀儡の体で甦った彰姫は核を作り出した後に己の消滅を願い、消えていったのだとか‥。
「私の役目は終わった‥これはお前達で起動させろ」
輝夜は核を紫雨に手渡し、それだけ言い残すと消えていった。
「俺の恨みは誰が受け止めてくれるってんだ?」
輝夜から前法王が死んだと聞かされ、トレイター(天霧 浮谷(fa1024))は自嘲気味に呟いた。
「あのおいぼれ‥最後の最後まで腹の立つ奴だ!」
最初は輝夜の所へ夢喰い・夢魔達を誘導しようかと思っていたが、儀式は既に失敗に終わっている。その時に現法王の隠者達を見つけ、其方を襲撃しようと考えたのだ。
「さぁて‥あのおいぼれの分まで恨み、晴らさせてもらうぜ」
それだけ呟くとトレイターは動き出した。
「木蓮さん、ダミーは大丈夫ですか?」
夢心を護る為、木蓮に夢心のダミーを作らせていた、その際にアリスの能力も使い、見た目も質感も全てが本物と変わらぬ精度の夢心のダミーが作り出された。
そして、本物を漣が、ダミーを木蓮が所持する事でいざと言う時に敵を撹乱させようという作戦なのだ。
「よし、この辺で儀式を始めよう」
そう隠者が呟いた時、目の前に雷が落ちてくる。
「いよぉ、楽しそうな事してんじゃねーか、悪ぃけど‥阻止させてもらうぜ?俺の恨みの事もあるしなあ?」
きゃあ、トレイターが二度目の雷を放った時に漣が叫ぶ。
「そ、そんな〜‥こっちは絶対に安全だと思ってたのにーーっ!しかも恨みとか僕には関係ないいいいっ!僕みたいな関係ない一般人はほっといてよおお!」
喚く木蓮がオロオロとしながら半泣きで叫んでいる。
漣・木蓮、共に戦闘向きの能力ではない、ここは自分が何とかしないと‥と隠者は呟き「漣さん」と呼びかける。
「儀式準備は任せるよ、僕は―‥こいつを何とかする」
そう言って剣を取り出し、トレイターに向かって走り出す。
「誰も犠牲にはさせない!」
隠者が叫び、剣で斬りつける。それから暫く互いの攻防戦が続き、そこに柚香達が核を持って現れた。
「こっちは任せて!貴方は儀式に集中して!」
月菜と柚香が隠者の前に立ち、トレイターに弓を向ける。
「此処からは私達が相手よ」
そう呟いて柚香は矢を放つが、避けられるか、トレイターの雷によって破壊されるかのどちらかだった。
「ねぇ‥柚香さん‥」
月菜が何か作戦を思いついたのか柚香に耳打ちをする。
「‥成程‥確かにそれなら何とかなるかも‥」
「恐らく大丈夫だと思います」
「じゃ、行くよ」
月菜が柚香の矢に『無』の属性を追加して、矢を複数放つ。
「なっ‥!」
月菜の能力は『見えなくする』というものだ。しかし本当に消えているわけではなく、対象のみが見えなくなるという能力、それ故トレイターのみが見えない状態だったのだ。
「うわあああっ!」
見えない物を避ける事が出来なかったトレイターは全ての矢を体に受け、その場に倒れてしまう。
「‥死んだんですか?」
木蓮が問いかけると「急所は全てはずしてあるわ」と短く言い残す。
「儀式は?」
アリスが問いかけると「戦闘があったせいで少し遅れている」と隠者が言葉を返す。紫雨から渡された核を夢心で活性化させ、核を完全に完成させる。
「さぁ!みんな魔力を一つにして!」
隠者が叫び、みんなから集まってくる魔力を核へと詰める、それと同時に力を取り戻した夢幻壊廊は瞬時に元の姿を取り戻した。
「元に戻ったね‥って言っても『形』が元に戻ったまでで、そこに存在したものなどが全て消えている状態だった。強いて言うなら白紙の状態に戻ったのだ。
「もう元に戻ったんだから、現実世界の異変も治まっているはずだろ?さっさと帰れ」
アリスは夢喰い達を一瞥すると、人間界へと強制的に帰還させた。
「あらあら、冷たいのね。トレイターと戦っている間、彼女達を護っていたわりには」
そう、アリスは誰にも気づかれないように柚香、月菜、儀式を遂行する漣に攻撃が当たらぬように護っていたのだ。
「ね、姉様、気づいていたのか」
「当たり前でしょう」
クス、と笑いながら紫雨は「さて、彼はどうするの?」とトレイターを見て隠者に問いかける。
「‥僕は誰にも犠牲になってほしくない、もちろん彼にも」
隠者はそれだけ言うとトレイターの前に立ち「夢幻壊廊が嫌なら出て行けばいい、僕は止めないよ」と言い残してその場を離れた。
「待て!今度は‥お前を恨むぞ!」
トレイターの言葉に立ち止まり、隠者は振り返る事すらなく「どうぞ、ご自由に」と呟いた。
「ま、どうなろうと僕は姉様さえいればそれでいいんだけどね♪」
そう言ってアリスは紫雨の後ろに引っ付き、いつも通りの日常が姿を現した。
「む、夢幻壊廊は元に戻ったけど‥僕の部屋がなくなってる‥また一から揃えないと‥」
うな垂れながら木蓮は小さく呟いた。
そして人間界へと帰還した夢喰い達は―‥。
「何よ、これ、誰も犠牲にならないんじゃなかったの!?何で久樹ちゃんが死ななくちゃいけないのよ!」
柚香が夢猫の地下で泣き喚く。
「私達が無力だって分かってる‥でも、それでも私は護りたかったのよ!」
久樹の死に皆が心を痛めている時、夢心が淡く輝いている。その光りが久樹を包んだかと思うと、止まっていた久樹の心臓が再び動き出したのだ。
「久樹さん!」
月菜、漣も慌てて駆け寄る。
「‥電気でも消しているのか?真っ暗だ‥」
久樹が呟いた言葉に全員が動きを止める、電気は点いている、しかし久樹の瞳には何も映らないのだ。
「視力を‥なくしてしまったんですか‥」
月菜、漣が涙を流し哀しんでいると「別にどうって事ないわよ」と涙を拭きながら呟く。
「生きてさえいれば、何とでもなるんだから」
これにて一件落着したかのようだが、全ては振り出しに戻っただけなのだ。これから幾つもの障害が彼らを待ち受けるだろう。
だけど、彼らなら――‥。
END