Oriental Darkness 土2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 7.3万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 05/24〜05/27

●本文

『こんな筈じゃ――‥なかった‥』

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「さすがの豪烈皇も摩訶の力には敵わぬと思い、逃げおったわ」

あははは、と奉納殿の玉座に座り、高笑いをあげるのは姫巫女・貴莉恵だった。

「そうですわ、貴莉恵様のお力の賜物です」

鳴も尊敬するように貴莉恵をおだてあげた。


※※※

「あの魔物はヤバイだよ‥」

街の宿屋で身体を休ませているときに多々良が呟く。

「確かに―‥あれほどの力を持つ魔物が素直に人間の言う事を聞くとは、とても思えない‥」

「十尾流さんもいないだし‥何処に行っただか‥」

奉納殿で別れたきり十尾流は宿屋にも帰ってこなかった。

そのとき、カタンと物音がして二人が視線をそちらに向けると‥。

「十尾流さん!」

そう、ふらりと十尾流が戻ってきたのだ。

「魔物召喚、失敗していますわよ」

最初の言葉がそれで多々良と渡は「え?」と聞き返す。

「今のところは大人しくしているみたいですけれどね、もうじき‥楽しいことが始まりますわ」

それだけ言い残すと十尾流は宿屋から出て行った。

「‥なぁ、十尾流さんの楽しいことって――‥」

「あぁ‥逆で毎回厄介なことになっているよな‥」


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●募集事項
◎映画「Oriental Darkness」では出演者の皆様を募集しています。

◎今回の話に必要な配役は以下の通りです。
 ・勇者(必須/何名でも可)
※火・水・風で演じた勇者役でもOKです。
 ・姫巫女・貴莉恵(必須/女性一名)
※姫巫女は基本的に性別はどちらでも構いませんが、前回演じていた方が女性だったので『女性一名』とさせていただきました。女性がいなければ‥女装でお願いします!
 ・豪烈皇(必須/土の国を支配するボス・男性一名)
 ・摩訶(必須/豪烈皇を倒す為に呼び出された魔物/男性一名)
※今回「星詠姫」は登場しませんので、演じることは出来ません。



●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。

●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。

●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。

●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。

●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。

●花人‥扱える術は妖術
体の中に幾つもの植物が植わっており、補助系の術を得意とする種族。
回復役に最適な種族です。
植物の蔓などで攻撃するため、武器を装備する事ができません。
(風の章から追加の種族です)


※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。

『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。

※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。



●今回の参加者

 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3599 七瀬七海(11歳・♂・猫)
 fa4123 豊浦 まつり(24歳・♀・猫)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4961 真紅櫻(16歳・♀・猫)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「貴莉恵(真紅櫻(fa4961))の背後にいた鳴(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))という女が摩訶の本体ですわ」
 豪烈皇(モヒカン(fa2944))の前で言うのは十尾流(トール・エル(fa0406))だった。
「成程‥奴らは我を倒す為に此処へとやってくるだろう」
 豪烈皇は呟くと、静かに瞳を伏せる。
「貴方はどうするんですの?」
 十尾流が傀儡操(草壁 蛍(fa3072))に問いかけると「知れた事」と短く言葉を返してくる。
「豪烈皇様の敵を討つ、それだけよ」
 そう言い残して傀儡操は豪烈皇と十尾流の前から姿を消した。


「絶対厄介事になる!」
 十尾流の言葉を聞いた多々良(伝ノ助(fa0430))と渡(高柳 徹平(fa5394))は貴莉恵に進言する為に奉納殿へと向かうが、門番から門前払いされる。恐らく貴莉恵から二人が来ても中に入れるなと言い渡されているのだろう。
「‥どうするだ‥」
「姫巫女様に会えないんだったら此処にいる意味はないな‥」
 何とかして貴莉恵に目を覚ましてもらう方法を考えるが、良い案が浮かばない。
「‥そういえば‥奉納殿に十尾流さんは居ねかったみてぇだし‥なぁ、まずは十尾流さんを探さねぇか?」
 多々良の提案に「そうだな、まずは十尾流さんを探そう」と渡も賛同する。十尾流の話を聞く限り、全てを知っているような口調だった。
 つまり、十尾流を探して話を聞けば全てが解決するかも―‥と考えたのだ。
「十尾流さんは面白い事が好きだから‥」
「この国で面白い事といえば‥」
 二人は暫く考え「豪烈皇と摩訶の戦い!」と声を合わせて叫ぶ。そして豪烈皇達の戦いの場を知る為に二人は土の国を走り回る事となった。


「どうした?千恵(月見里神楽(fa2122))」
 最(豊浦 まつり(fa4123))が妹である千恵に問いかけると「‥何か、変わるの」と呟く。千恵は話下手という事もあり、話す言葉が妙な時がある。しかし長い付き合いの最は千恵の言葉が分かる稀有な人間だ。
「何か‥変って?」
 そう言いながらも最は千恵の言う「変」の事が何を指すのか分かっていた。恐らくは召喚された魔物の気配を感じ取っているのだろう。あれだけの魔物が貴莉恵の言う事を大人しく聞く筈がない。
「‥仕方ない、とりあえず奉納殿に行ってみるか‥」
 そう言って最は千恵と一緒に奉納殿を目指し始めた。


「摩訶よ!出て来い、豪烈皇を倒しに行くぞ!」
 奉納殿の中、玉座の間で貴莉恵が叫ぶ。すると声に答える様に「此処にいるぞ」と短く告げた。
「豪烈皇の居城へ向かうぞ、鳴‥お前もついて来い。いざという時に私の盾となれ」
 貴莉恵の言葉に鳴はにっこりと笑って「了解しました」と答えた。その笑みはとても優しそうに見えるが、とても冷たい笑みにも見えた。


「来ましたわよ、この感じは姫巫女達ですわね」
 十尾流が楽しげに呟く。カツン、カツン、と近づいてくる足音に豪烈皇が閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
「未だ完全ではないか―‥」
 目の前に現れた摩訶・鳴・貴莉恵の姿を見て豪烈皇は小さく呟いた。
「悪しき魔物よ、私が呼び出した魔物にて滅するがよい!」
 そう言って貴莉恵は摩訶に「殺れ」と短く告げた。
「その状態の貴様と戦っても討つ事は叶わぬ、されど!我は豪烈皇!力によって全てを決する者!」
 そう言って豪烈皇は摩訶に攻撃を仕掛ける。
「貴莉恵様!」
 慌てて城へと入ってきたのは最と千恵の二人、その二人を見て「何をしに来たのじゃ」と貴莉恵は呟く。
 その時‥背後から傀儡操が操る人間達が摩訶と豪烈皇以外に攻撃を仕掛ける。
「いらっしゃい、何も分かっていない御馬鹿様」
 傀儡操が嘲るように笑うと「私の民を‥」と唇を噛み締めながら呟く。
「生きていられると迷惑なのよ、今の内に貴方が消えなさい」
 傍から見れば、その言葉は貴莉恵に言われた言葉だと思うだろう、しかし実際は貴莉恵の後ろで穏やかな笑みを浮かべる鳴に言われた言葉だった―‥。


「見つからない‥十尾流さんは何処にいるだ〜‥」
 あれから数時間は走り回ったが、十尾流の姿も豪烈皇の居城も見つけられずにいた。
「あれ―‥」
 その時、疲れた二人に声を掛けたのは貴莉恵の弟・時人(七瀬七海(fa3599))だった。
「姉は‥豪烈皇の元へと行ってしまいました‥呼び出した魔物を連れて‥」
「豪烈皇の居城は何処にあるんだ?国中を走り回っても見つからないんだ」
 渡が問うと「豪烈皇の居城は結界が施されているから‥」と答えた。土の気を使った結界の為、土の国の勇者は結界の事すら気づかずに居城へと乗り込める、そして幻術などに詳しい勇者も結界を破る事が出来る、と時人は答えた。
「だったら其処へ俺達も連れて行ってくれ!」
 二人は時人に頼むと「姉を救ってくれるならもちろんです」と協力の意を示した。


「貴方は戦わなくていいんですの?」
 十尾流が鳴に問いかけると「鳴は私の盾じゃ」と貴莉恵が答えた。
「ふふふ‥わたくしの目は騙されませんわよ。でも‥楽しそうですので暫くは観戦させていただきますわ」
 十尾流の言葉の意味が分からなかったのか貴莉恵は不思議そうな顔で十尾流を見た。
「余所見をしている暇があるのかしら!」
 そう言って傀儡操は街の人間を戦わせるが、急にばたばたと倒れていく。
「な――‥」
 人間達を滅しているのは豪烈皇と戦っている摩訶だった。
「何をしている!私はそのような命令はしておらぬのじゃぞ!」
 貴莉恵が叫ぶと「ククク‥アハハハハハッ!」とけたたましく笑い出した。
「茶番は此処までだ、お前も―‥力在る者に殺られる、本望だろう?」
 摩訶は掌に火玉を出し、豪烈皇に放つ。
「く――っ‥我は満足だ、力在る者が栄える‥‥それでいい!」
 そう呟くと同時に豪烈皇は燃え盛る火炎によって焼かれ、灰となった。
「貴莉恵様のおかげで、私は力を取り戻す事が出来ました」
 にこりと笑って鳴が呟く。目の前の現状に混乱気味の貴莉恵は「何を言っているのじゃ」と小さな声で呟く。
「お力を貸して頂いた事、感謝します‥‥馬鹿な姫巫女様」
 呟くと同時に鳴と摩訶の体が融合し、一人の魔物となった。そして奥で震える傀儡操に視線を向ける。
「ひっ‥嫌‥」
「お前はこの私を攻撃しようとした、その罪の重さを知れ」
「嫌ぁ!消えたくない消えたくない!消えるのは嫌ァァッ!」
 断末魔のような叫び声と共に傀儡操は摩訶によって瞬時に消滅させられてしまう。そして、さて‥と呟き視線を最・千恵・貴莉恵に向ける。
「従わなければ叩き返すと申したであろう!私を侮るなよ!雑魚が!」
 そう叫んで貴莉恵は能力で摩訶を攻撃するが、簡単にいなされてしまう。
「危ない!」
 そして摩訶が攻撃を仕掛けてきて、貴莉恵は足がすくみ、動けなかった。攻撃が直撃する直前で最が貴莉恵の前に立ちはだかり、代わりに攻撃を受けてしまう。
「‥たた、しかし流石は千恵の神通力だね」
 攻撃が直撃した割にダメージが少ないのは、城に入ってくる前に千恵が施した『護法陣』のおかげだった。
「えーと‥えーと‥危ない?から姫巫女様は其処で待つよ」
「何を申したいのじゃ!貴様は!」
「危ないから、其処から動くなって言ってるの。分かったでしょう、勇者が必要だと言う事に」
 最の言葉に貴莉恵は下を俯きながら黙っていた。
「しかし―‥キツいな‥」
 自分だけじゃ対処できない状況に最が冷や汗を流す、其処へ多々良と渡が到着した。
「十尾流さん!何をしているだか!」
 多々良が叫ぶと「貴方達の出番ですわよ、さっさとやっつけてしまってくださいな」とけろりと答えた。
「どうやら十尾流さんは、この時の為に豪烈皇の所に行っていたんだな‥」
 渡が呟くと「俺達も助太刀するだ!」と多々良が叫び、摩訶へと向かって槍攻撃をする。その時に勇者達が対等に戦えるように重力操作で摩訶の動きを遅くしている。
「さっさと元いた場所に帰るだ!」
 そう言って多々良が攻撃を仕掛けた途端、槍がパキンと鈍い音をたてて折れてしまう。
「な――っ」
 武器を失った多々良は戸惑いながらも拳に神通力をかけて攻撃を始める。
「多々良!下がれ!」
 そう言って渡が剣を振り被って摩訶に攻撃を仕掛ける、摩訶は「その程度の攻撃など」と呟いて避けようとした時に足場が崩れ、バランスを崩してしまう。
「破壊はアンタだけの専売特許じゃないってね」
「今だ!」
 渡の剣が摩訶の体を貫き「馬鹿な、この私が――‥!」と叫びながら塵となって消えていった。


「姫巫女様、この国が愛してる、盾になるの」
「‥お主とは話にならん‥」
「この国が好きだから護りたいって。今回の事で勇者も必要と分かったろう」
 最が言うと「この国を護る為と言うならば、私個人の感情など意味を持たぬ」と言って時人の所まで歩いていく。
「私はこの通り未熟だった、時人よ、お主の力も国を護る為に貸せ」
「もちろんです」
 二人の会話を聞いて「お姉ちゃん」と問いかける。
「菖蒲の花言葉‥信じる者の幸福‥これから土の国は天晴な国になるの!」
「‥それ言うなら平和な国ね」
 最が訂正すると、その場にいた全員が笑い出す。


「そういえば槍が折れていたな」
 そう言って貴莉恵は奥から槍を持って多々良に渡した。
「先々代が使っていた槍だ、持って行け‥‥私からの礼じゃ」
 多々良は躊躇ったが「貰えばいいんですわ」と言う十尾流の言葉に有難く貰う事にした。


 残るは星の国のみ――しかし星の国には支配する魔物は存在しない。



END