ぞんびぃアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
2.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/26〜05/28
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●本文
『俺が求めていたのは、こんなんじゃなかったああああっ!』
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そりゃ俺が悪いよ?
田舎が嫌だと言って家を飛び出し、都会へと上京した。
しかし、都会での暮らしは思った以上に難しく、俺は途方にくれていた。
大きな事を言って家を飛び出した以上、家にも戻れない。
俺は何処か田舎へと引っ込むことになり、辿り着いた。
―ぞんび町
自分でも何で、こんな怪しげな所に引っ越す気になったのか分からない。
怪しいのは名前だけで、実際は空気の綺麗ないいところのはず!
そう思って俺はやってきたのだが‥。
「クサッ!」
町に着いた途端に鼻を突く異臭、そして目に見えるほどに淀んだ空気―‥。
「おいでませ!ぞんび町へ!」
そう言って明るく話しかけてくれた女性は‥いや、町の住人全てが‥。
ゾンビだった――‥。
ありえねぇ、これから俺の生活どうなるわけよ!?
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●募集事項
◎映画「ぞんびぃ」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な配役は以下の通りです。
・OPの「俺」(必須/男性一名)
・ぞんび町に住む住人(必須/何名でも可)
※必須配役は上記のみです。
※他にも適役がありましたら、他の参加者様達と話し合っての設定追加はOKです。
●リプレイ本文
「ようこそ!私はドロシー(美角あすか(fa0155))よ」
街に入って戸惑う俺(ジョニー・マッスルマン(fa3014))に摘んだばかりの花を持って話しかけてきたのはドロシーと名乗った可愛い‥ゾンビだった‥。
「俺の馬鹿!ゾンビだらけの街で美少女(生身)が出てくる筈がないじゃないかぁぁっ!」
頭を抱えて叫ぶ俺に「どうしたのー?」とドロシーは首を傾げて問いかけてくる。
「い、いや‥頭はどうしたのかなー‥って」
「この頭?乙女の秘密〜」
あははと笑いながら言うドロシーにゾンビに乙女もあるものかと、俺は心の中で呟く。
「‥お祝いです‥」
「うわあっ!」
突然、背後からメロンパンを差し出すのはゆるく(湯ノ花 ゆくる(fa0640))、彼女はメロンパンが大好きで人間の町にも売りに行くほど。
「あ、ありがとう‥」
大丈夫だよな、と俺は渡されたメロンパンをジッと見る。
「大丈夫よ、メロンパンは腐ってないわ」
俺の心の声を読み取ったかのようにドロシーが笑いながら答える。
「‥ゆるくの‥メロンパン‥ゾンビ臭いのか‥皆さん‥寄ってこないです‥」
でもいつかゾンビ臭い事を忘れさせるくらいのメロンパンを作る、そう言ってはにかむ彼女はとても可愛く見えた。
「‥あ‥っ」
メロンパンが大量に入れられたリヤカーを引く際にゆるくが派手に転んでしまう。そして頭に被っていた麦わら帽子が取れて、割れた頭からメロンパンが落ちてきた。
「彼女は前に転んだ時に脳みそを落としちゃってね、それ以来メロンパンを入れてるの」
ドロシーの言葉に「所詮はゾンビか‥」と肩を落とした。
「ま・いいわ。街を案内してあげる、ゆるくは人間の街に行くんだよね」
「‥うん‥またね‥」
「じゃ、行こ」
ドロシーが俺の腕を組み、街へと行こうとした時に「妹をかどわかしやがってええ!」と大声で叫ぶ男・クサ夫(ガン=ブラッド(fa5756))が走り寄ってくる。
「うおっ‥」
しかし俺の所に来るまでに転び、頭がぽーんと飛んでいってしまう。
「うわわ、俺の頭は何処だーーっ!」
頭をなくしたクサ夫は首から下だけでオロオロとしている。
「何やってんのよ!全く‥」
クサ夫の頭を持ちながらドロシーが呆れていると「しかしドロ子‥」とクサ夫が言い頭をべしゃりと落とされる。
「私はド・ロ・シ・イ!」
本名で呼ぶなと目で脅す、あまりの迫力に「わ・わかった」と言って頭を装着する。
「で、用は何?」
「お前の友達が探してたぞ」
「え?今から案内をする筈だったのに‥後で案内するね、崖は危ないから近づかない方がいいわよ、お兄ちゃんはさっきみたいな事をしないでよね!」
じゃ、と言い残してドロシーは走って何処かへと行ってしまう。
「‥‥‥で、物凄く視線を感じるんだけどアレは誰ですかね」
遠くにある木の影から此方をジっと見るヨウ(タブラ・ラサ(fa3802))を俺は指差しながら問いかける。
「あれはヨウだな、それで隣にいるのがヨウの父親・ハル(真喜志 武緒(fa4235))だ」
クサ夫の紹介に「隣?」とヨウの隣を見る、しかし木の影に隠れているのはヨウのみで隣には誰もいない。
「‥お前の隣だ」
「あはは、どうも〜‥」
「うわああっ!」
そう、クサ夫の言う隣とはヨウの隣ではなく、俺の隣の事だったのだ。一体いつからいたんだろうと疑問に思いながら「よ、宜しく」と握手を求めるように手を差し出した。
「息子ともども宜しくお願いしますね」
そう言って和やかに握手をしたのだが――ここで終わりではなかった。
「あれ、腕がもげちゃいましたねぇ、あははは」
陽気に笑うハルとは真逆に俺は真っ青な顔で自分の右手にぶら下がる腕を見る。
「直しますから」
返してくださいね〜と言いながらハルは腕を装着。父親が笑って話しているせいかヨウも少しずつ此方へとやってくる。
「ほら、ヨウ‥このお兄さんは怖くないから、勇気を出して」
人見知りするヨウの背中押しをしながらハルは呟く。それを聞いて『むしろアンタらの方が怖いよ』と心の中で呟く。
「‥あ!ヨウ!」
やはり怖いのか、ヨウは俺と会話する事なく何処かへと行ってしまった。
「とりあえず今日はゆっくりとした方がいいよ、疲れたでしょう」
えぇ、とても‥と言いたかったが「いや‥まぁ?」と曖昧に言葉を濁すのみで終わる。
「貴方の家は奥のゾンビ色の家ですよ」
ゾンビ色!?と俺は自宅になるであろう家を見たが、確かにゾンビ色だ、ゾンビ色以外に例えられない奇妙な色だった。
「じゃ、明日は皆で盛大に引っ越し祝いをしましょうね、それでは」
ハルはにっこりと笑いながら俺の前から姿を消していく。
「ドロ‥シーとの交際は認めん!」
クサ夫もそう言って明後日の方向へと走って帰っていった。
「悪い人?達じゃない、ただゾンビなだけ、ゾンビなだけの普通の人間もといゾンビなんだ」
俺は自分に言い聞かせるように呟きながらゾンビ色の自宅へと帰った。
「ウェルカーーム!」
ドアを開けると同時にパーンとクラッカーを鳴らされる、ちなみに思いっきり至近距離で。クラッカーを発砲したのはトワ(希蝶(fa5316))、何故か素敵なふりふりエプロン姿。
「‥‥どちら様でしょうか?」
「俺はトワ!隣の家のゾンビだよ!これ、引っ越し祝いにおすそ分けー!」
そう言ってトワは俺に押し付けるように料理の入った重箱を渡してくる。
「それと洗濯もしておいたから!」
「‥俺、着替えとかまだ運んでないんだけど‥」
トワは洗濯をしたと言うが、俺の荷物は左手に持たれているボストンバッグのみ。当然洗濯をする服などが家にあるはずもない。
「そうそう、洗濯するモノがなかったから俺の洗濯物を洗濯したんだ」
果たしてその行動に意味があるのかは深く追求しないでおこう。
「そうだ!街を案内してあげるよ、一緒に出かけよう!」
「いや‥今日は‥」
俺が遠まわしに断ると「そう?残念だなー‥じゃ明日ね!」と言って玄関から出て行った。
「嵐のような人‥ゾンビだな‥」
はぁ、とため息をついた瞬間「忘れ物した」と言って再び家に入ってきた。
「あった。指」
ひょいと持ち上げて「時々取れちゃってさー」と笑いながら装着。
「どんまい!」
いや、それは貴方ですよ、と俺は煌く笑顔で言うトワに心の中で言いながら出て行くトワを見送った。
「よし、出て行こう!今すぐに!」
解き始めた荷物を再びまとめ、俺はこっそりと街を出て行く事を決意した。
しかし、街の入り口にはドロシーとその友人らしきゾンビが陣取っており、とても出て行ける雰囲気ではない。
「自己暗示をかけて頑張ろうと思ったけど無理だYO!クリスチャンのミーはヴードゥーに興味ナッシングYO!」
今日一日見せ付けられた人外の生物のせいで俺はコンプレックスにしていたアメリカ人(ぽい)所がばばーんと出てしまう。
「HAHAHA!こんな街おさらばYO〜!」
そう叫びながら俺は危ないと言われていた崖の方から街脱出を試みた。
しかし‥。
「あ!」
俺を見かけたドロシーが「危ないよ」と言いながら追いかけてくる。
「さては逃がさないつもりNE!」
既に俺の頭の中はパニック状態、心配して追いかけてくるドロシーを『逃がさないつもりだ』と勘違いして速度をあげる。ドロシーの大きな声によって他のゾンビ達も気づき、後ろを見れば大勢のゾンビが追いかけてくる姿が視界に入ってくる。
「ちょ!そこ危ない!」
トワが足を滑らせて落ちかけた俺をドーンと突き飛ばし、代わりに落ちていってしまった。そしてトワを助けようとしたクサ夫・ヨウも一緒に落ちてしまう。
落ちていった三人を崖の上から見るが、夜という事もあり下は真っ暗で何も見えなかった。すると其処へハルが走ってやってくる。
「どうしたんですか?」
「お兄ちゃんとトワ、それにヨウが下に落ちちゃって‥」
それを聞いたハルは「そのうちあがってくるよ」と至って冷静だ。
「し、心配じゃないのかYO」
「だって‥ゾンビだから燃えない限りは大丈夫」
さらりと答えるハルに、俺は返す言葉も見つからない――‥とその時‥足首をガシッと掴まれた感触に視線を下にやると‥。片足を脇に抱えたトワの姿があった。
「うおあああっ!」
「やー、片足もげちゃって、どんまい!」
先程と変わらぬ煌きスマイルを見せて笑うが、どんまいはユーだYOと言いたい俺である。
「お兄ちゃん!それにヨウ君も」
トワに続いて這い上がってきたのはクサ夫、背中にはヨウがしがみ付いていた。俺は皆が無事だと分かると「よかったYO」とその場に座り込んでしまう。
「どうしても‥出て行きたいなら止めないよ‥此処が普通の街じゃないって分かってるから‥」
ドロシーが寂しそうに言い「ミーは‥」と言葉を続けようとするが「良かった!何処もなくしてないんだね」とハルの声が聞こえてくる。
「腕が取れて探すのに時間かかっちゃった」
感激だ、とハルは叫んで俺に抱きついてくる。
「く・くさ‥」
流石に至近距離では耐えられずに俺は気絶してしまう。
「‥これで連れ戻し大成功?」
トワがにやりとしながら呟き、ゾンビ街の夜は明けていった。
END
「希蝶さん、これをあげるね〜」
監督がそう言って渡したのはプロダクション『PILOT』の案内書。
「申請書もついてるけど強制じゃないから安心して!」
お疲れ様、そう言って監督は撮影所を後にした。