動物使い 漆アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
2.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/29〜06/01
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●本文
『全てが終わりに向かう中で、静かに龍が動き始める――‥』
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「初めまして、お父様‥と呼ぶべきでしょうか?」
イザナギは白の統括府に向かう途中で一人の少女と出会う。
その少女こそイザナギとイザナミの遺伝子を利用して創られた彼らの娘『レイ』であった。
「キミが‥翠嵐の言っていたレイ‥?」
イザナギは戸惑いを隠せないように小さく呟いた。
「今回、私が貴方の所へ赴いたのは‥龍を解放してあげたいからです」
龍、それは白の統括府の切り札として炯都から奪った少年。
「龍は色々な実験を繰り返されて幼い子供の筈が容姿は私達と変わらない年齢に急速に成長させられてしまいました」
私の場合はクローン技術を使ってこの年齢で目覚めさせられましたけど、レイは苦笑しながら呟く。
「私が逃げた事により、統括府は龍を利用しようとするでしょう、それであの子が壊れても―‥」
壊れる?とイザナギは聞き返す。
「今まであの子には幾度となく出撃命令が出されていました、ですが優しいあの子は戦う事を拒絶して自分の部屋から出ようとしなかったのです」
ですが、レイは下を俯き、表情を曇らせながら呟いた。
「私が逃げた事によって統括府は龍に精神操作の投薬をするでしょう、自我がなくても能力に関係ありませんから、あの子の場合」
「どういう意味だ?」
「龍、そして私には通常の動物使いが必要とする『絆』が不要なのです、パートナーの能力を無理矢理に引き出す‥それが私達に備わっている能力です」
だから、あの子が壊される前に助けてあげて欲しい
レイは丁寧に頭を下げながら呟いた。
「龍に関してだったら‥僕よりもダエグの連中に言った方がいいかもね‥」
しかし、そうなったら封じられている記憶を『彼女』の中から引き出すことになる。
果たして『彼』がそれを許すだろうか‥?
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●募集事項
◎映画「動物使い」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の必須配役は以下の通りです。
・白の動物使い(必須/何名でも可)
・ツカワレ(必須/何名でも可)
※白の動物使いとツカワレは必ず二人一組にしてください。
・レイ(必須/女性一名)
・龍(男性一名)
※龍は希望者がいなかった場合はNPC扱いでOKです。
●動物使いの設定など
◎白の動物使いにはパートナーとなる『ツカワレ』が存在します。
◎『ツカワレ』を演じられる方は自分の戦闘形態になる動物をお書きください。動物の種類はPCの獣人の動物以外でも構いません。
例)羊、山羊などBNOで存在しない獣人でも構いません。
◎白の動物使いとツカワレには絆が存在します。絆が深ければ深いほどツカワレの能力も上がります。
◎白の動物使いは限りなく人に近い存在ですが、人ではありません。
◎ツカワレは普段、人の姿をしていますが限りなく獣に近い存在です。
◎必ず白の動物使いとツカワレは二人一組にしてください。
◎それとツカワレは動物となってますが、別に虫だろうが魚だろうが構いません。
◎ツカワレの方はパートナーと繰り出す必殺技を考えていてください。
例)ツカワレがサンマだった場合→自身を焦がしていい匂いをさせて敵の動きを止める‥など極端な話、こういうのでも構いません。
ですが、必ず描写されるという訳ではありませんので、その辺はご了承下さい。
◎それとツカワレの戦闘時についてなんですが外見は半獣化と思ってください。
(流石に完全に動物になってしまうとお笑いになってしまいそうな気がするので)
◎動物使いとツカワレの絆が最高潮になった時に『超必殺技』が使用可能となります。
◎ツカワレには動物使いは必須ですが、動物使いにツカワレは必須ではありません。
契約を済ませていない動物使い、まだ覚醒していない動物使いなどがいますので。
◎黒の動物使いですが、魔と契約した場合、契約した魔が何らかの理由で消失しない限りは契約は続行になり、次の魔と契約できません。
※ですが、イザナギは黒の動物使いの中で一番強い能力の持ち主で、彼の場合は複数の魔を使役する事が可能です。
複数の魔を使役できる能力ゆえに、彼は黒の中で最強となっています。
※イザナミはイザナギが人工的に作り出した魔です。それ故にイザナギ以外と契約を結ぶことが出来ません。
◎動物使いにも特殊能力はあります、ですがほとんどがツカワレの戦力を上げる能力になります。
◎黒の動物使いが魔を製作する時に必要なのは、己の魔力が満タン状態なのと、魔を生み出す赤い月が出ている事の二つのみです。
※プレイングの書き方※
例)動物使い
配役:白の動物使い
役名:水貴
一人称:私
二人称:〜さん
口調:です、ます、でしょうか?
対となるツカワレ:太郎
(出来れば台詞例も書いておいてほしいです)
例)ツカワレ
配役:ツカワレ
役名:太郎
一人称:俺
二人称:お前
口調:〜だ、〜じゃねぇ?
対となる動物つかい:水貴
(出来れば台詞例も書いておいて欲しいです)
‥‥と上記のようになりますが、あくまで例ですので皆様の書きやすい書き方でOKです。
対となる動物使い&ツカワレが決まった時点でもいいので、仮プレを提出していてほしいです。
白紙となった場合は相方との連携が出来なくなりますので、ご協力お願いします。
●リプレイ本文
「‥まぁ、とりあえず宜しくな?」
翠嵐(レイス・アゲート(fa4728))がレイ(ユフィア・ドール(fa4031))に話しかけると「此方こそ宜しくお願いします」と丁寧な言葉が返ってきた。
「やっぱり似てるな」
翠嵐の言葉に「?」とレイは首を傾げる。
「気がイザナギとよく似てる、流石は『娘』だな」
娘、その言葉にレイは少し困ったように眉を下げ「‥望まれてもいない娘ですけどね」と寂しく笑って答えた。その寂しそうな笑顔に翠嵐は返す言葉が見つからずに「‥龍(ベイル・アスト(fa5757))の事だが‥」とさり気無く話を逸らした。
「龍の事はダエグにいる二人が詳しいだろう、一人は―‥母親だからな」
そう言って翠嵐はレイを連れてダエグへと向かった。
「何でお前が此処に‥?」
統括府での一件を終えて、ダエグに帰還すると店の前で翠嵐とレイが立っていた。
「邪魔するぜ?コイツがお前等に伝えたい事があるんだとよ。全く‥白側の揉め事に俺達、黒を巻き込むなよ」
自分達で片付けろよな、翠嵐がぼやく。レイはその隣で苦笑しながら炯都達を見ている。
「とりあえず‥中に入れば?外で喋るんも何やしな」
そう言って炯都(橘・朔耶(fa0467))は店の鍵を開けて、中に入るように促した。
「‥どうぞ」
翡焔(ヴォルフェ(fa0612))は二人に珈琲を差し出し、炯都の隣に座った。
「単刀直入に申し上げます、龍を統括府から解放して欲しいのです」
龍、その言葉に翡焔がピクリと反応した。
「解放って‥」
翡焔が問いかけると「あの子はもうじき壊されます、統括府の連中に」とレイが震える声で答えた。
「ですから龍の母‥」
「炯都、悪いけど鍋の火を見ていてくれないか?」
翡焔がレイの言葉を遮り話を聞かせないようにと呟いた。
「いきなり何やの‥?まぁええけど‥」
少し不満そうに炯都は言われた通りに調理場へと向かった。
「龍の解放、その為に炯都は記憶を取り戻さないといけない‥俺はアイツの苦しむ顔を見たくない‥」
翡焔の言葉にレイは「‥記憶がなかったのでしたね‥」と寂しそうに呟いた。
「本当に統括府は‥人体実験なんてしているの‥?」
先日の事件で黒へと堕ちた仲間の事を思いながら沙貴(ベス(fa0877))が小さく呟く。
「その言葉、反逆と見なされかねませんよ」
沙貴の言葉を聞いて答えたのは白坏(藤拓人(fa3354))だった。彼はまだツカワレと契約していない動物使いであり、先日の事件で両親を亡くしていた。
「黒も白に背いた者も等しく滅んでしまえばいい」
白坏が忌々しげに呟く姿を沙貴は複雑そうな表情で見ていた。
「沙貴」
遠くから沙貴のツカワレ・双牙(ガン=ブラッド(fa5756))が呼ぶ。
「それじゃ‥行くね」
そう言って沙貴は双牙の所へと走っていった。
「何を話していたんだ?」
「ん‥えっと――‥」
沙貴が話そうとした瞬間に統括府全域に警報が響き渡った。
「な・何?!」
―統括府に所属する動物使い及びツカワレに申し上げます、統括府に侵入者です、目的は龍だと思われますので侵入者の抹殺に当たってください、繰り返します―
「侵入者‥か、気は進まないが行くか‥沙貴?」
動こうとしない沙貴に双牙が眉を顰めて問いかける。
「‥双牙さん、あたしは統括府が信用できなくなってる‥こんな気持ちのまま統括府に従う事なんて‥できないよ」
沙貴が拳を握り締めた時、侵入者である炯都・翡焔・翠嵐・レイの四人と鉢合わせる。
「お前達が‥侵入者か?」
沙貴を護るように後ろに下がらせ、少し威嚇するように双牙が低い声で呟く。
「出来れば素直に其処を通して欲しいと思うんだが‥無駄な戦いはしたくない」
翡焔が構えながら呟くと「待ってください‥」と沙貴が小さな声で話し始めた。
「双牙さん、私は統括府が何を行おうとしているのか‥それを調べる為に彼らと一緒に行きたいと思うの‥‥一緒に来てもらえませんか?」
彼を巻き込みたくない、そう思う気持ちはある、だけど‥一緒に来てもらいたいという気持ちも紛れもなく本当なのだ。
「‥‥俺はお前のツカワレだ、マスターの行く所に行く、それがどんな道であってもな」
「ありがとう」
沙貴は呟くと「一緒に連れて行ってください!」と四人に頭を下げる。
「‥構わないんじゃないのか?これから先、仲間は一人でも多いほうがいいだろ」
敵は多いんだしよ、翠嵐がクッと笑いながら言う。
「そうですね。警報を聞きつけた動物使い達がやってくるでしょう、急いで龍を‥」
そう呟いた時、レイの言葉が止まる。何事かとレイの視線の方を見ると一人の少年が立っていた。
「‥龍」
その少年こそ救出にやってきた龍である、しかし様子がおかしい。
「‥侵入者‥滅する‥敵‥いや、敵じゃない‥」
ぶつぶつと呟きながら、背後から現れたツカワレの能力値を最大限まで引き出す。
「‥もっと、力を‥引き出しなさい‥」
龍が呟くとツカワレが襲い掛かってくる。
「下がってろ、沙貴!」
ツカワレである双牙と翡焔が動物使いを護る為に、龍が操るツカワレと戦う。
「‥龍‥いえ‥煌夜!これが貴方の望んでいた事なの!?」
レイが龍の本名を呼び、説得するように叫ぶ。
「煌夜‥‥?」
その名前に反応したのは炯都だった。
―煌く夜に生まれたから、この子の名前は煌夜や
「‥何や‥?コレは‥」
忘れた記憶が炯都を襲い、ずきずきと痛む頭を抑える。
「‥煌夜‥僕は‥こんな事をしたい訳じゃ‥」
うわあああっと叫び、龍はその場に倒れてしまう。龍が意識を失うと無理矢理能力を引き出されていたツカワレもその場に倒れる。
「意識を失っていたほうが連れ出しやすいな」
翠嵐がため息混じりに呟き、意識のない龍を抱えて「さっさと脱出するぞ」と言って来た道を戻る―――が‥。
「きゃああっ!」
逃げる途中でレイと炯都が追っ手に捕まり人質にされてしまう。
「炯都!」
普段の彼女なら簡単に捕まる事もないのだろうが、記憶が戻りかけているせいで捕まってしまったのだろう。
「この二人を返して欲しいなら龍と交換だ、それを渡せ」
龍を物扱いしながら追っ手の一人が言う。
「嫌だ‥お願い‥奪わないで‥私の大事な‥‥―――」
それだけ言うと炯都は意識を失い、その場に倒れる。
「炯都!」
ぐ、と拳を握り締めて翡焔は「炯都を放せ!」と鋭い爪で追っ手の腕を切り裂く。
「うわああっ!」
「ち、さっさとずらかろうぜ」
その後、人質を取り返して統括府から脱出する。
「今は‥お休み‥俺はいつまでも此処にいるから――‥」
眠り続ける炯都を抱きしめ「行くあてがないならダエグに来るといい」と沙貴と双牙に声を掛けた。
「そうだな‥沙貴はどうする?」
「行くあてもないし‥翡焔さんの言葉に甘えようか」
「‥私達はイザナギ‥さんのところに帰ります。龍も一緒に‥」
「‥次は敵同士だろうな、元々、黒と白が相容れるワケねぇもんな」
そう言ってレイと翠嵐は気絶している龍と共に黒の本部へと帰っていった。
それを見送りながら「俺達も帰ろう」と統括府に背を向けた時――。
「待ってください!」
少年が四人を引きとめ、慌てたように此方へとやってくる。
「白坏さん‥?」
「僕も一緒に連れて行ってもらえないかな‥僕もこんな統括府ではやってられない‥」
お願いだから、と必死に言う姿に「‥俺は構わないが」と翡焔が呟く。
(「‥白坏さんは‥確か統括府に敵対する人を嫌っていたんじゃ‥」)
自分と会話していたとき、そんな印象を持ったが勘違いだったのか?と思い、共にダエグに行く事になった。
「‥何て醜悪なんだろう――これが統括府の目指した『オール・イン・ワン』?」
統括府こそが全てなのに、そう呟く白坏の言葉は聞き取れないほどに小さいもので、誰の耳にも止まることはなかった。
「‥お疲れ‥ってまた人が増えてるみたいだけど?」
龍を連れ帰った後にイザナギが苦笑しながら翠嵐に問いかけてきた。
「俺が増やしたワケじゃねぇし‥」
未だ眠り続ける龍をベッドに横たわらせ、レイが決心したように呟く。
「私は龍と契約を結びます、白の統括府を立て直す為に―‥もう二度と私達のような子が現れないように‥」
レイの言葉に「‥好きにするといいよ」とだけ言い残してイザナギはレイの前から姿を消した。
「私達は‥ただ一人の為にありたい、ただ一人の為に生きていきたい‥と願う事すら積みだったのでしょうか‥‥」
すべては動き出す、その先にあるのは――破滅なのか、再生への道なのか――。
END