ぱぴこっとSEVENアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/03〜06/05

●本文

『小さな幸福は人を安らがせ、小さな不幸は地味な嫌がらせになる―‥』

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神々が暮らす国には数多くの神や、神に仕える天使達が存在した。

その中に『ぱぴこっと』と呼ばれる下級天使が存在した。

彼ら『ぱぴこっと』は人々に幸せを与える天使達。

幸せを与える‥そう言っても『ぱぴこっと』達は大きな幸せを与えるほどの魔力は持っていない。

小さな幸せを与えることが『ぱぴこっと』の役目なのだ。


「セヴ!」

ぱぴこっとを統べる管理長・ルカの怒鳴り声が響く。

その怒鳴り声にセヴと呼ばれたぱぴこっと‥セヴンは嫌な汗を流しながら「な、何?」と恐る恐る振り返りながら答える。

「何?じゃないわ!貴方の担当している人間、どういう事なの!全然幸せそうに見えないけれど!?」

そう言ってルカはモニターを指差す。

そこに映し出されたのは一人の人間。顔色は悪く、不幸せそうなオーラを出している。

「あ、あれぇ?へ、変だなぁ‥昨日も魔法かけたんだけど‥」

「そうね、確かに記録が残っているわ、でも貴方の魔法のおかげで彼はオバちゃんのバーゲン争いに巻き込まれて、全治三日の怪我を負ったわね」

ギッ!とルカはセヴを睨みながら「このままだと貴方はあびこっとに降格よ!」と叫ぶ。

あびこっと、それはぱぴこっとと相反する低級魔であり、人を不幸にするのを生きがいとする存在だ。

「そ、そんな!」

「三日よ、三日以内に担当人間に三つの小さな幸せを与えなさい。できなければ‥分かっているわね?」

それだけ言い残し、ルカはセヴの前から姿を消した。


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●募集事項
◎映画「ぱぴこっとSEVEN」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
 ・セヴン(セヴ)/必須/性別不問/一名
 ・セヴが担当する人間/必須/性別不問/一名
 ・ルカ(必須ではありません/女性/一名
 ・その他のぱぴこっとなど
※この他にも適役がありましたら、其方を演じてくださっても構いません。

●今回の参加者

 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa4776 アルヴィン・ロクサーヌ(14歳・♂・パンダ)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)
 fa5624 加恋(18歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●一日目:幸せって何?

「はぁ‥」
 セヴ(マリアーノ・ファリアス(fa2539))はルカ(椎名 硝子(fa4563))の言葉を思い出してため息を吐いていた。
 三日以内にセヴの担当する人間・椎名(アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776))に小さな幸せを与えないと、人を不幸にする下級魔・あびこっとに降格処分されてしまう。
「でもどうやったら椎名を幸せにできるんだろ」
 うーん、と考えながらセヴが呟いていると、友人のフラウ(加恋(fa5624))が「調子はどう?」と言いながらやって来た。
「フラウ、どうしたの?」
「‥セヴがあびこっとに降格されるかもしれないって聞いたから‥心配になって」
 下を俯きながら呟くフラウに「まだ三日あるんだし、何とかなるよ」とセヴは笑って答えるが、表情を見ると焦りは隠しきれていない。
「私も魔法が得意な方じゃないけど‥手伝うから頑張ろうね」
 そう言ってセヴとフラウは人間に姿を見られないように、魔法で姿を消して椎名の所へと向かった。

 何故だろう‥と椎名は最近撮ったプリクラを見て呟く。何故一緒に撮ってもいない近所のお姉さん・聡美(緑川メグミ(fa1718))が写っているのだ。
「‥それに‥」
 椎名は携帯電話の着信を見て呟く、先日友人から電話が来た筈なのに、何故か着信履歴が全て聡美になっているのだ。
「‥俺、何か呪われるような事でもしたかな‥」
 そう呟いて椎名は遅刻しないように学校へと小走りで向かい始めた。


●二日目:それで本当に幸せなの?

「‥セヴ‥一生懸命している所に悪いけど‥それじゃ呪いみたいだよ‥?」
 フラウがここ最近、椎名にかけている魔法の内容を聞いてため息混じりに呟いた。
「え?でも椎名は聡美の事が好きみたいだし、こういうのって嬉しくないの?」
 そりゃあ「一緒にプリクラ撮ろう」と言われたら嬉しいかもしれないけど、頼んでも頼まれてもいないのに一緒に写っていたら不気味以外の何者でもない。
「はー‥このままじゃ本当にあびこっと決定かなぁ‥」
 段々とやる気もなくなってきた頃に「セヴ!」と友人・ラル(倉瀬 凛(fa5331))が近寄ってきた。
「ラルさん、どうしたの?」
「僕の担当する人間も近くにいるから、ついでに様子見に来てみたんだ」
 ほら、あの子‥とラルが指差したのは花の世話をしている汐(姫乃 舞(fa0634))だった。彼女は花が大好きで、毎日欠かさず世話をしている。しかし―‥一向に咲く気配のない花に汐は寂しそうに表情を崩した。
「セヴは担当する人間にとっての、本当の幸せを考えて魔法を使っている?上辺だけの幸せを与えるだけじゃ駄目なんだよ?」
 ラルの言葉に「ちゃんと考えてるよ!」とセヴは少しむっとしたように声を荒げた。
「僕は椎名が欲しがってる物を与えたりしてるのに‥」
「欲しがっている物をただ与えるだけじゃ、却って不幸にしてしまう事もあるんだ」
 ラルの言葉の意味が分からないのか、セヴは首を傾げる。
「うーん‥実際に見てもらった方が早いかな‥」
 見ててね、ラルはそう言って汐が世話していた花に魔法をかけて、花を咲かせた。
「まぁ‥昨日までは咲く気配もなかったのに‥良かった‥もう駄目かと思ってた‥お花さん、綺麗に咲いてくれて有難う」
 汐はそう言って咲いた花を愛おしそうに撫でながら呟いた。
「あの花は彼女が時間をかけて大事に育ててきた花なんだ、苦労して手に入ったモノだからこそ、幸せになれるんだよ」
 ラルの言葉を、あまり成績の良くないフラウも懸命に聞いている。
「これがもし―‥魔法だけで手に入ったモノだったら、あんなに幸せな気持ちになれないだろうし、何もしないで手に入ったのだから―‥と努力しない人間になってしまうかもしれない」
 その時、雨が降ってきて学校から帰宅する椎名の姿が見えた。
「あ、雨だけど‥大丈夫かな?」
 心配するフラウに「大丈夫だよ、魔法で折りたたみ傘を鞄に入れてあるから」とセヴは得意気に答えた。

「あれ、黒滝先輩(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))どうしたんですか」
 鞄に入っていた傘をさして帰ろうとした時に靴箱から外を見ている黒滝の姿が視界に入ってきた。
「あ、椎名君、ちょうどいい所に来たわ、途中まででいいから傘にいれてくれない?」
 黒滝は申し訳なさそうに問いかけてくるが「あ」と思い出したように「やっぱりいいわ」と眉を下げて呟いた。
「‥椎名君と私じゃ流石に背が違いすぎるものね」
 どうしよう、と止む気配の見えない雨を見ながら黒滝は呟いた。
「いいッスよ、コレ」
 はい、と傘を差し出す椎名にセヴが「ええええっ!」と驚いたように叫んだ。
「え、いいの?」
 少し悩んだ結果、黒滝は「叔母様の所に急がなきゃいけないから、悪いけど借りとくわね」と小走りで雨の中を走っていく。
「ありがとう!それじゃ、また明日ね!」
 遠くで一度立ち止まり、黒滝は手を振って椎名に礼を述べた。
「雨に濡れるのは嫌だけど、お礼を言われたら悪い気はしないな♪」
 そう呟く椎名の姿を見て「こういう幸せもあるんだ」とセヴは自分の中にあった『幸せの方程式』を改める事にした。
「頑張って、セヴ、きっと担当の人間を幸せにしたらセヴも幸せになれるよ」
 そう言って笑うフラウに「僕も?」とセヴが問いかける。
「だって、人が幸せになるのを見ると、自分も幸せな気持ちになるはずだもん」
「椎名を幸せにしたら‥僕も幸せかぁ‥」
 明日はいよいよ最終日、きっとどんな結果になっても後悔したくない。そう心の中で呟いてセヴは椎名を幸せにする方法を考え始めた。


●三日目:ぱぴこっとSEVEN

「ああは言ったけれど‥セヴは本当に上手くやれるのかしら‥心配だわ」
 そう言ってぱぴこっとに見つからないように物陰からセヴを見守るのはルカだった。きつい言い方はしても、心の中ではセヴの事が心配でたまらなかったのだろう。

「‥今日は‥聡美さんの誕生日‥渡せるかな‥」
 聡美の家の近くでぶつぶつと呟くのは椎名だった。かれこれ一時間ほど同じ場所でうろうろとしており、傍から見れば不審者だ。
「あー、もう‥じれったいなぁ、早く行けってば!」
 そう言ってセヴは少し乱暴な方法だが、椎名の背中を魔法でどーんと押す。
「‥あら。修代君、おはよう今日も元気ね」
「あ、あはは‥いや、その」
 何で誰もいないのに、後ろから突き飛ばされたんだろう。
 椎名は心の中で呟くが、憧れの聡美が目の前にいる事で緊張しており、それどころではなかった。
「ところで‥何か用なの?」
 聡美の言葉に「あの!誕生日おめでとうございます!」と両手いっぱいの花束を聡美に渡した。
「へぇ‥誕生花なんて、男の子がそういう事を知っているというのは驚きね、何か変な感じ」
 クス、と聡美は笑いながら「ありがとう」と答え、花束を受け取った。
「あの!綺麗な夕焼けが見える場所があるんだけど―」
「ますます驚きね」
 茶化すように言う聡美に「ええ!」と大げさに驚く椎名。
「嘘嘘、ありがとう、喜んでお誘いを受けるわ」
 そう言って二人は夕焼けが綺麗に見える海岸沿いまで歩いていった。

「うわぁ、本当に綺麗ねぇ、普段夕焼けなんてしみじみ見る機会なんてないから新鮮だわ」
 そう言って波打ち際まで歩く聡美に「俺――」と椎名が言葉を紡ぎかけて、聡美がそれを遮った。
「少し前までは、ただの子供だったのに結構成長したわね」
 そういうところ、私好きだな‥そう呟く聡美に「え?」と椎名は言葉を返した。
「出来れば、これからもそういう所を私に見せて欲しいな」
 駄目かしら、少し不安そうに言う聡美に「いいいいえ!俺でよかったらいつでも!」と緊張気味に答えた。
「それじゃあ‥これからも宜しくね」
 そう言って聡美は椎名に優しくキスをした――。


●そして、結果発表―‥セヴの運命は!?

「セヴ、今回の事だけど――‥貴方をあびこっとにせずに済んだみたいね」
 ルカの言葉に「え、それじゃあ‥」とセヴが恐る恐る顔を上げながら呟く。
「まだ何となくかもしれないけど、本当の幸せとか何か掴めたみたいね、幸せが何か分からなければ、人間を幸せになんて出来ないもの」
 貴方にはそれを分かってほしかった、ルカは淡々とした口調で言うが、心の中では安堵のため息を吐いていた。
「これからもぱぴこっととして、人々に小さな幸せを与えていって頂戴、期待しているわよ」
 そう言ってルカはセヴの前から姿を消した。
 その夜は、セヴがぱぴこっとを続けていられることを祝して仲間内で小さなパーティーが催された。


●その後の椎名くん

「椎名君、昨日は傘をありがとうね。おかげで助かったわ」
 はい、と傘を返しながら話しかけてくるのは黒滝だった。
「―――‥物凄く顔が緩んでいるけど何かあったの?」
 近寄るのも不気味なほどに椎名の顔は緩みまくっているのだ。
「いや、何でもないッスよ。ただ‥神様はきっといるんだろうなぁって」
「はぁ?」

 貴方も『小さな幸せ』を感じた事はありませんか?
 それはきっと――貴方を守護するぱぴこっとからのささやかな贈り物‥‥。


END