Oriental Darkness 星アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
06/07〜06/10
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●本文
『今、悲しき最終決戦が始まる!』
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火の国 蒼黒主
水の国 藍刹主
風の国 邪楽
土の国 豪烈皇・摩訶
各国を支配していた魔物たちを打ち倒し、勇者達は星詠姫・妃沙羅(きさら)がいる星の国へとやってきていた。
星の国は、国と言っても他国のように街も村も、輝玉を奉る奉納殿すら存在しない。
存在するのは妃沙羅が星を詠み、ジパングの安寧を祈る中央塔という名の巨大な城のみ。
それ故に星の国は他国に比べると半分の領地もない小さな国だった。
「よくぞ、此処までやってきましたね、勇者達よ」
中央塔の最上階にて、妃沙羅は笑みを浮かべながら勇者達を出迎えた。
「各国の強大な魔物を打ち倒したこと、私にとっては予想外でした。おかげでジパングの民を贄にして国に帰るという私の目的は水泡に帰しました」
妃沙羅の言葉に「え?」と勇者達は呟く。
「私は元々は龍神界で暮らす竜神でした、しかし―‥」
妃沙羅は忌々しげに呟き、勇者達を睨みつけた。
「ジパングの安寧、それの為に私はこの中央塔に封じ込められてしまった、一万年の月日を私は此処で孤独のまま過ごしてきた」
「そんな―‥」
「魔物を呼び出したのは私だ、ジパングの民を贄として私は竜神界へと帰るはずだった!それくらい‥するべきだと思うだろう?一万年、強制とはいえ、私は貴様ら愚民共を護ってやってきたのだ!」
「そんな事の為にこんな酷い事を!?」
「そんなこと‥?貴様らに何が分かる!」
妃沙羅は己の所持する武器・龍牙刀の切っ先を勇者達に向けて叫ぶ。
「今回の魔物のせいで、危険な目にあった姫巫女様もいた、自らの命を犠牲にした姫巫女様もいた!貴方は自分の欲の為に――!」
「呪うなら自分達の祖先を呪うがいい、私が選んだ勇者―‥それは全て一万年前に私を此処へと封じた奴らの子孫だ、先祖の罪は子孫であるお前等が被るべきだ」
お前たちの命を贄にし、私は今一度竜神界へと帰る
そう言って妃沙羅は龍牙刀を手に勇者達へと襲い掛かってきた。
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●募集事項
◎映画「Orietal Darkness」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な役柄は以下の通りです。
・星詠姫 妃沙羅(必須/女性一名)
(妃沙羅の外見はOPイラストを参照下さい)
・勇者(必須/何名でも可)
(火、水、風、土で演じた勇者役でもOKです)
※この他にも適役がありましたら、其方を演じていただいて結構です。
●ジパングの設定
◎ジパングには人間の他に『妖しの者』と呼ばれる天狗や妖狐などが存在します。
星詠姫が選んだ勇者の中に『妖しの者』がいても問題はありません。
◎選ばれた勇者のうち『人間は神通力』を『妖しの者は妖術』を使う事が出来ます。
(一部を除く)
以下に種族設定を書いておきますので、ご参照下さい。
●人間‥扱える術は『神通力』
特に秀でた部分はないが、劣る部分もない種族。
●妖狐‥扱える術は『妖術』
腕力は強くないが、身軽な動きで敵を翻弄させることが出来る。
また、敵を己の虜にして操る事も出来る。
鞭や軽武器を扱うことに長けている。
●天狗‥扱える術は『妖術』
力、防御共に低いが、豊富な知識の持ち主で妖術の威力が高い。
扇子や羽団扇を扱うことに長けている。
●鬼‥扱える術はありません。
力は抜群の種族。
ずば抜けた力の代わりに妖術を使う事が出来ない。
斧などの重武器を扱うことに長けている。
●花人‥扱える術は妖術
体の中に幾つもの植物が植わっており、補助系の術を得意とする種族。
回復役に最適な種族です。
植物の蔓などで攻撃するため、武器を装備する事ができません。
(風の章から追加の種族です)
※人間だけは種族以外に職業があり、それによって能力が変わっていきます。
『神通力』『妖術』は参加者の皆様が自由に決めて下さって構いません。
※今回参加したからと言って次回も必ず参加しなければならないという事はありませんので、気軽にご参加下さい。
●リプレイ本文
「遂にここまで来ただか‥」
感慨深げに中央塔を見上げるのは多々良(伝ノ助(fa0430))だった。
「あれ、あの二人って‥」
渡(高柳 徹平(fa5394))が中央塔の前に立つ二人を指差して呟く。
「然さん(ティタネス(fa3251))と庚牙さん(中善寺 浄太郎(fa5176))じゃねぇか!」
多々良、渡、十尾流(トール・エル(fa0406))の三人は見知った顔に近づいて再会を祝う。
「‥気になってみたから、来てみたのだが‥どうやら‥アンタもそのようだな‥」
庚牙は然に視線を向けて問いかける。
「あぁ、何か勇者の証に呼ばれてるような気がしてね」
そう言って然は勇者の証を見せながら呟いた。
「どうやら他にもいるみたいですわね」
そう言って十尾流が視線を向けた先には皐月(姫乃 舞(fa0634))と菖蒲(椎名 硝子(fa4563))、そして雷丸(帯刀橘(fa4287))が立っていた。
「こうして立っていても何も始まりませんし、星詠姫に会いに行きましょうか」
知らぬが仏、きっとこの言葉はこの時の為にあったのだろうと思う。知らなければ良かった、勇者なんて選ばれなければ知らずにすんだ事―――。
「なんだって‥?」
その言葉は誰が言ったのだろう?それすらも把握出来ぬ程に星詠姫・妃沙羅(冬織(fa2993))の言葉は衝撃的だった。
「言葉も理解出来ぬほど、お前達の頭は退化しているのか?もう一度だけ言おう、私をこの忌々しい中央塔へと封じ込めたのは―‥お前達の先祖だ」
つー、と嫌な汗が多々良の頬を伝う。彼は自分の一族は普通の鍛冶一族だと思っていた、しかし――‥。
「私達のご先祖様が、自分達の安寧の為に‥竜神様を封じていたなんて‥」
皐月が震える声で呟く、彼女は妃沙羅が魔物を呼び出していた事よりも自分達の先祖の罪に驚いているようだった。
「さぁ‥一万年の悲願‥叶える為にその命を私に差し出すがいい!」
妃沙羅は叫ぶと、龍牙刀を手に持ち、勇者達目掛けて走り出してきた。しかし十尾流が放った簪で妃沙羅は足を止めた。
「‥お前は――‥」
「全くわたくしまで勇者にするなんて余裕の表れかしら?確かに貴方を封印した者の祖先ではないから安全なのでしょうけれど」
くすくすと笑う十尾流に多々良が「十尾流さん?」と疑問を交えた表情で問いかけた。
「最も咎人臭い子狐よ、消えよ!」
そう言って妃沙羅は龍牙刀で衝撃破を起こし、十尾流に向けて放った
「妃沙羅様!」
叫んで妃沙羅と十尾流の間に割って入った人物がいた。
「‥‥凰花(都路帆乃香(fa1013))」
妃沙羅は呟き、龍牙刀を下ろす。
「お前も私を咎めるのか、私を愚かだと笑うのか?」
自嘲気味に笑う妃沙羅に「いいえ」と凰花は短く答えた。
「貴方に勇者と選ばれた時点からこれからの行動を決めかねていました、でも心がようやく決まりました――私は貴方に最後まで仕えます」
そう言って凰花はナイフを取り出し、勇者達に向き直る。
「さて、皆さん?何を呆けていらっしゃいますの?戦わなければ――死んでしまうだけですわよ」
わたくしも少しは運動しましょうか、そう呟いて十尾流は己の武器である簪を手に取った。
「確かに‥妃沙羅さんには同情の余地はある―‥けれど、全てを許すには血が流れすぎたんだ――十尾流さんの言う通り、やらなければ殺られるんだ」
然も戦う決意をしたのか、大金槌を振り被る。
「確かに閉じ込めたのが悪いが――然と同意見だ」
庚牙も大斧を振りかざし、妃沙羅を強く睨む。
戦う事を決意した勇者達を見て、妃沙羅は大きな声で笑い始めた。
「私を倒していいのか?私が消えればジパングの風は荒れ、実りは失せ、民は先が見えずに彷徨うぞ」
妃沙羅の言葉に「なっ‥」と勇者達は言葉を失う。
「本来ならばジパングは一万年前に滅んでいた、それを護る――其れが永きに渡り私に架された祈り――貴様らはそのぬるま湯の中で生きてきたに過ぎん」
妃沙羅は龍牙刀を振り被り、皐月に攻撃を仕掛ける。
「きゃあっ!」
皐月は声をあげながらも、やられまいと応戦するが相手が星詠姫という事もあり切っ先は鈍ってしまう。
「駄目です‥‥一万年もの永い間、たった一人でこの地を護ってくださっていた妃沙羅様を攻撃するなど‥‥私には出来ません‥」
「ならばその命をさっさと私に差し出せ!」
ガツン、と鍔の部分で皐月は殴られ、壁に激突してしまう。
「皐月さん!」
多々良が槍で凰花の攻撃を受けながら叫ぶ。
「私は‥大丈夫です‥ですが、あの方に武器を向けるなど――出来そうもありません‥」
恐らくほとんどの勇者達が戦意を喪失しかけている事だろう。
「私は‥妃沙羅様が攻撃を止めないなら、応戦するだけよ。倒した後に国が荒れる?そうなったらその時に改めて良い方法を考えるまでの事!」
そう言って鉄扇を操る菖蒲に「愚かで誰かに縋るしか出来ぬ人間に道を開く事など出来ぬ」と菖蒲が放った風を相殺しながら呟く。
「星詠姫様がお国に帰るには、本当に俺達やジパングの皆を生贄にするしか方法はないだか!?」
多々良が今にも泣きそうな表情で叫ぶ。その言葉に「人間に非があるから‥‥」と呟いたのは雷丸だった。
「‥確かに妃沙羅様の言葉は正しいけど――‥死んであげる訳にはいかないよ」
そう言って雷丸は掌に雷の球を作り出し、妃沙羅に拳を振るった。
「くくく‥死んであげるワケには行かない?片腹痛いわ!私をこの地へ封じねば起こらなかった事――罪の始まりは何れだ?」
勇者達を『敵』としか見ない妃沙羅に言葉は届かない。
「一旦、撤退した方がいい――‥このままじゃ皆‥妃沙羅様に殺される‥」
渡が呟き、他の勇者達も賛同したように首を縦に振る。
「逃げるか‥まぁ良い‥私を止めるなら再びまみえるしかないからな‥」
妃沙羅は龍牙刀を降ろし、勇者達が中央塔から逃げていく様を見ながらふっと寂しそうに笑った。
「十尾流さん、何か知っているんじゃねぇだか?」
中央塔から離れ、森の中で体を休めている時に多々良が問いかける。
「彼女の意図も分かりましたし、そろそろ潮時かもしれませんわね」
そう言って十尾流は、一万年前に妃沙羅を封じた者の娘であり、この時の為にコールドスリープさせられたいたのだと告白した。
「わたくしは一万年前の封印術を施す事ができますわ、まぁ‥封印を施すには妃沙羅を弱らせないといけないのですけれど」
十尾流はため息混じりに呟く。
「星詠姫様の辛さ、俺には想像するしかねぇだ‥だどもジパングの皆を犠牲になんてさせられない‥この力で誰かを護りたくて此処までやってきただ‥それだけは絶対に変えられない」
「その意見には賛同だ、過去の過ちは償わなければならないかもしれない‥それでも俺には護りたい人がいるんだ‥」
でも、と言葉を紡いだのは皐月だった。
「真相を知ってしまった以上、誰かを無理矢理犠牲にしながら‥安穏と暮らす事はできません‥その結果、ジパングが荒れ果ててしまうとしても――‥」
皐月は迷いは消えないが、もう一度妃沙羅と話をしたいという思いから、再び中央塔へ向かう事を決意する。
「私も行くよ、迷いがない訳じゃない、許してくれともいえない、だけど――護りたい人がいるから、それを傷つけるなら全力で砕くのみ――‥」
然も拳を強く握り締めながら呟いた。
「皆、何かを犠牲にしなきゃ生きていけないものだわ、たとえ――それが彼女の自由を封じる事になっても――‥」
菖蒲は何処か達観しているような、哀れんでいるような表情で呟く。
「恐らく‥次は全力で戦いに来るでしょうね‥」
「さっきのは‥全力じゃなかったと‥?」
雷丸が問いかけると「彼女が竜神だという事をお忘れですの?」と十尾流は笑みながら答えた。
「竜神の本来の姿は龍、彼女が人間の姿で戦っていたという事は、手を抜いていたと考えるのが妥当でしょう」
さぁ、これからが本番ですわよ!十尾流はそう言って中央塔を見上げた。
「逃がしてしまってよかったのですか?何なら私が――」
凰花が妃沙羅に問いかけると「どうせ此処に来るしか出来ぬ」と空を見上げながら妃沙羅は答えた。
「自分の国に帰りたい―‥唯一つの望みさえも叶わぬのか‥私は‥」
「妃沙羅様――‥勇者達は何の為に戦うのでしょう、妃沙羅様をお国に帰す事だけが唯一の償い方であるというのに‥」
寂しそうに呟く妃沙羅に凰花は問いかける。
「さてな、もうじきこの苦しい日々が終わるかと思うと‥心が高揚するのが分かるわ‥」
そう呟く妃沙羅の姿がとても儚げで「‥妃沙羅様?」と凰花が問いかける。
「‥何だ?」
「いえ――‥一つだけお聞かせ下さい、貴方の望みは本当に国へ帰る事なのですか?」
突然の質問に妃沙羅は笑みを浮かべ「どうだろうな」と短い言葉を返した。
すべてが終わる瞬間はすぐ目の前――。
望んだ未来を手に入れるのは『妃沙羅』なのか『勇者達』なのか――‥。
どちらにしても、誰かが泣かねばならない状況になるのだろう‥。
END