家出少女と無敵少年アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 水貴透子
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/20〜06/22

●本文

『突然現れた少年は、自称・神様の息子を名乗る――ラビサだった』

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「はぁっ!?意味わかんねーし!」

神様が住む天界にて少年・ラビサは叫ぶ。

「お前は時期神様じゃ、しかし慈愛の心というものを知らん、このままじゃ神様の座を譲ることなどできんわ」

「自愛の心なら持ってるよ!」

「字が違うわ!馬鹿モン!お前は人間界にいって慈愛の心を学んで来い、それまで帰ってこなくて宜しい」

ぺい、と神様はラビサを天界から人間界へと放り出した。

※※※

「もいいわよ!帰ってこないから!」

そう言って家を出て行ったのは巴という少女だった。

素行は悪い、口も悪い、顔はそこそこ良しな少女だった。

「あ〜〜〜〜っ、マジでムカつく!クソババァめ!」

がん、と自動販売機を蹴りつけながら巴は叫ぶ。

「ん―――?何だ、あ‥‥れえええええぇっ!?」

巴は上を見上げ、自分目掛けて落ちてくる物体に驚きながら叫んだ。

そして、お約束の如くに「ちゅどーん」と人間爆弾をしながら落下してくる。

「いてて、何だ、お前は‥邪魔なところに突っ立ってんじゃねぇよ」

「な、何よ‥アンタは‥」

「俺?俺は‥神様の息子・ラビサだ!」

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●募集事項
◎映画「家出少女と無敵少年」では出演者の皆様を募集しています。
◎今回の話に必要な役は以下の通りです。
 ・ラビサ(必須/男性/一名)
 ・巴(必須/女性/一名)
※上記二名以外はどんな役を演じても構いません。
※他の出演者の皆様と一緒に役作り、話作りをしていってくださいませ。


●今回の参加者

 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5556 (21歳・♀・犬)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)

●リプレイ本文

「兄さん、大丈夫かな‥」
 下界へと落とされた兄・ラビサ(パイロ・シルヴァン(fa1772))を心配しながら呟くのは双子の弟・ラーズ(マリアーノ・ファリアス(fa2539))だった。大雑把な神様(虹(fa5556))と俺様なラビサの間で、いつもオロオロしている。
「ラーズは兄想いの良い子じゃのぅ、神様‥感激!」
 ビッと親指を立てながら茶目っ気百パーセントで話すのはラビサを下界に落とした張本人・神様だった。
「‥いつから其処にいたんですか、神様」
 突然現れた神様にラーズは内心驚きながらため息混じりに呟く。
「兄さん、大丈夫かな‥から。でーもー、心配しているだけでは役立たずネ?行動力、トテモ大事、ちょいと見に行っておいでー」
 そう呟くと神様は、ぺいっとラーズまでも下界へと落としたのだった。

※※

「神様の息子ぉ?」
 巴(姫乃 唯(fa1463))は目の前に現れた少年・ラビサを怪訝そうな目で見ながら呟く。
「‥‥ふぅ〜〜ん、アンタ何処の電波?」
 明らかに不審であるラビサに少し距離を取りつつ、巴はラビサに話しかけた。
「まぁいいや。アンタ暇?あたしと遊ばない?」
 友達は皆ダメって言ったのよね、そう言いながら少し忌々しげに携帯電話を見た。そしてラビサを見て「一寸ガキすぎるけど仕方ないか‥」と呟き、ラビサの腕を引っ張って街の方へと歩き出した。
「おお!これが『からおけぼっくす』か!」
 巴に連れられて来たのはカラオケボックスだった。ラビサは一銭もお金を持っていなかったので巴が出す事になり「何で私が‥」とぶつぶつと文句を言っている。
「‥カラオケ知らないのに、何で歌う曲は最新モノばっかりなのよ」
 意味分かんない、そういいながら巴も自分が歌う曲を探し始めた。

 それから数時間が経過した頃、ラビサが「飽きた」と告げてきて別な場所に移動する事になった。ちなみに三時間カラオケで過ごして、巴が歌ったのは僅か二曲だったとか‥。
「さ、次は何処に行くんだ?」
「確か今日はケーキバイキングが安かった――――」
 筈、と続く筈の言葉は人間爆弾と化して落ちてきたラーズによって遮られる。
「ラーズ!」
「あ、兄さん!」
「え、兄弟?」
 それぞれが自分の思った事を口にし、驚く。
「お前も何か悪さしたんだろ?」
「違うよ、僕は兄さんが心配で‥」
「ちょうどいいや、お前も遊んでいけ。これから『けーきばいきんぐ』に行くらしいぞ」
 え、ちょっと待って‥巴はそう言いたかった。何故ならお金を持っていない奴が一人増えた=自分の出費がかさむという答えに行き着いたから。
「けーきばいきんぐ?僕も興味あります、一緒に行っていいですか?」
 きらきらと爽やかに話しかけてくるラーズに巴は「ダメです」とは言えなかった。
「ねぇねぇ、そういえば神様って優しい?ウチの親なんてウザいんだよね〜‥やろうとしているのに先にやれって言われたらやる気なくすし」
 はーとため息をつき、巴は言葉を続ける。
「アレもダメ、コレもダメ、何ならいいんだっつーの!」
「それは分かる!」
 何故か親(神様)の悪口で巴とラビサは意気投合して話し始める、よほど鬱憤が堪っていたのだろう。
「でも、兄さんの場合は悪い事ばかりしているから神様も‥」
「煩い、ラーズ」
 ラーズの言葉も全く聞く耳持たずで三人はケーキバイキングに行く事になった。
「あれ、巴じゃん」
 そう言って巴を呼び止めたのは友人・翔(メル(fa5775))だった。
「ガキなんか連れて何してるんだ?子守か?」
 ラビサとラーズを交互に見比べて翔が少し含み笑いをして呟く。
「あ、そういえばお前の家族が探してたぞ、クラス全員に電話来たみたいだし、ちなみに俺にも来た」
 どーせ親と喧嘩して家出したんだろ、的を射てる翔の言葉に「煩いなぁ!」と巴は叫ぶ。
「色々面倒だし、警察に連絡される前に帰った方がいいんじゃねーの?」
「あたしは帰らない!行こう」
 巴は「ふん」と言ってラビサとラーズの腕を引っ張り、ケーキバイキングへと向かっていった。

「何が心配よ、こんな時ばっかり‥」
 モンブランに噛り付きながら巴が呟く。その様はまるで肉を食らう獣のようにも感じられた。
「お、美味い。ラーズのは?」
「あぁ!兄さん‥僕のを食べないで自分で持ってくればいいでしょ?」
「お前が取りに行けばすむじゃん?」
「ちょっと!食べてばっかりいないで私の話も聞きなさいよ!」
「あ‥聞いてまふ!」
 ラーズがチーズケーキを食べながら手を挙げて答える。おかげで「ます」が「まふ」になっている。
「そりゃ‥私が病気になった時とかはずっと看病してくれていた事もあったけどね‥」
 カタンとフォークを置いて巴は小さく呟く。
「巴さん‥もう時間も遅いし帰った方がいいんじゃないですか?」
 ラーズが呟き、時計を見ると時間は午後九時半を指していた。
「別にいいの!ほら、別の所にいって遊ぼう!」

「うーん、イマイチ遊べるところがないねぇ」
 巴がため息混じりに呟く。ゲーセンに行こうとしたらラーズとラビサの姿を見て「親と一緒にいらっしゃい」と店員からつまみ出されてしまったのだ。
「もう!何処かないのかな!」
 バッグを振り上げて巴が叫ぶ。しかし悲劇は此処で起こった。巴が振り回したバッグが不良・お春(春雨サラダ(fa3516))と友治(百鬼 レイ(fa4361))に当たってしまったのだ。友治は巴たちを見て弱者センサーが反応したのか「いってぇな」と低い声で呟き、その姿はとても強気だ。
「アネゴ!大丈夫ですか!」
「あーぁ、痛いってモンじゃないね。なぁにデカイ顔で歩いてんだ?あ?」
 二人の姿は‥いまどき何処で見つけてきたんだろうと哀れみを感じるほどの不良ルック、友治のほうは長いリーゼントで前が見難そうだ。
「ちょっと!二人とも!男なんだから何とかしてよ!男は女を守るモンでしょ!」
 原因を作ったにも関わらず巴は不良を神様ブラザーズに押し付けようとしている。
「え!お前が原因作ったんだろ!」
「‥はぁ、言わない事じゃない‥」
 どうするの?とラーズがげんなりした様子で呟いた。
「何こそこそと喋ってんだ?覚悟は出来ているんだろうね」
「アネゴォォォォ!最高にカッコイイっす!」
「ふっ、あたいがカッコイイのは当たり前だろ?」
 自分に浸っている間に三人が逃げ出そうとすると「アネゴォォォっ!」と友治がリーゼントを揺らしながら追いかけてくる。
「いや!いや!何かアレに捕まるのは嫌ぁぁあぁっ!」
「あー!もうウザイな!吹き飛べ!」
 どかーん、とラビサが能力を使い、不良たちを撃退する――が!不良たちの力は半端なかった!
「あ、あたいはこの程度じゃ倒れないよ!」
「アネゴォォォォっ!」
 もうだめだ、と巴が覚悟を決めて目を閉じた瞬間、聞きなれたバイク音が聞こえてきた。
「巴!」
 バイクをキキィッと止め、降りてきたのは姉・薫(槇島色(fa0868))だった。
「お姉ちゃん!」
「巴‥なんだい!アンタ達は!巴から離れなさい!」
 薫が叫ぶと不良たちは「はっ」と鼻で笑いながら話し始めた。
「何だい!アンタは!」
「関係ない奴がアネゴに逆らうんじゃねぇぜ!引っ込んでな!」
 引っ込め、その言葉は薫を怒らせるには十分な言葉だった。
「巴を危ない目にあわせているだけじゃなく、私に向かって‥引っ込め!?」
 薫は激昂して壁を殴りつける、すると壁にはヒビが入っていた。
「チーム『薔薇十字』元リーダーの私の妹に因縁をつけるなんて‥覚悟は出来ているんだろうねぇ!」
 薫がぎろりと睨むと「ごめんなさいーーっ!」と不良たちは逃げていった。
「今まで何処に行ってたの!皆心配してるのよ!友達も母さんや父さん、私だって‥」
 その姿を見て『慈愛』を少し学んだラビサは「慈愛ってこういう事なんだ‥」と小さく呟いた。
「分かったわよ!帰ればいいんでしょ!」
 素っ気無く答える巴だったが、それは照れ隠しなのか心なしか顔が赤い。
「あ‥」
 巴が呟き、ラビサとラーズを見ると、其処には誰もいなかった。まるで最初からいなかったかのように‥。
「ラビサ、ラーズ‥付き合ってくれてありがとね」
 巴は感謝の意を込めて小さな声で二人にお礼を言った。

※※

「うむ!どうやらすこぅーーしは『慈愛の心』が分かったようじゃの!」
 神様は満足気に二人を出迎えた。
「頑張ったご褒美に、神様の大事なバケツプリン!一口ずつ召し上がれ」
 どーんと大きなバケツが取り出されるが、その中身は――――何もない。
「あれ、ナイヨ?神様の大事な大事なバケツプリンがナイヨ?」
「あ、俺が食った」
 けろりと答えるラビサに神様の怒りボルテージが上がっていく。
「‥食べた、じゃと?毎日お仕事頑張る神様の、すいーーとなお楽しみを‥食 べ ち ゃっ た ?」
 馬鹿モン!と雷が落ちて神様は叫ぶ。普通、仏の顔も三度までなのだが、神様の場合は仏の顔は一回もなし!
「そんな事する悪い子は下界でプリンの何たるかを学んでラッシャイ!それまで帰ってこなくて‥宜しい!」
 ついでにラーズまでぺいっと放り出されてしまう。


 天界に穏やかな日々が訪れるのはまだまだ先の話のようです‥。



END