吸血鬼の花嫁 oasisアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
中畑みとも
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
1万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
08/16〜08/20
|
●本文
――吸血鬼。
それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。
そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。
――って感じの、深夜特撮番組の役者さんを募集してます。
いやはや、放送も好調でしてねー。皆様には感謝しております、ホント。で、今回の話の筋なんですが。
『両親がヴァンピールと花嫁。子供はセリバテールと人間の兄弟(姉妹)。そんな特殊な家族の日常とは?』
って感じで。今までは暗い感じだったので、ここらでちょっと明るい感じのもどうかと思いましてね。え? 売りのアクションとCGはどうしたって? そこら辺はほら、皆さんに考えて貰って‥‥いや、今回は閑話休題みたいなものなんで、そんな難しく考えなくていいですよ。
で、必ず決めて欲しい配役は
『父親』『母親』『兄(姉)』『弟(妹)』です。
その他、知り合いとか同業者とか友達とか、自由に配役して下さいね。
それから、設定の方を見やすくしましたので、是非読んでいって下さい。
皆さんから提供された設定で使えそうなのとかも、いろいろ取り入れてますからね。
設定
●セリバテール(略=CV)
血を一度も吸ったことがない吸血鬼。
能力:人間の数倍以上の嗅覚、視覚、運動能力。
体質:慢性的な貧血症(特殊な薬剤でのみ回復)。その他、成長速度なども人間と同じ。
弱点:人間と同じ。ニンニクの匂いが苦手な者もいるが、害はない。
補足:大抵20歳頃まではCVのまま。血を吸うのが嫌で、CVで生涯を終えた吸血鬼もいる。CV時も吸血鬼同士は感覚でわかる。
●ヴァンピール(略=VP)
花嫁の血を吸ったことがある吸血鬼。
能力:CVからの能力、動物への変身、翼(形は様々)での飛行、肉体及び血液の硬質・武器化、強力な再生治癒能力。その他、個々の特殊能力。
体質:戦闘などで失血した場合、または一ヶ月に一回の血液摂取(400CC程度)が必要。極端に遅い成長速度。平均寿命200年、最長寿350年。
弱点:激しい太陽光、銀。触れると熱傷が起き、対処をしないと骨まで溶ける。
死因:銀・太陽光で全身の50%が溶ける、頭・心臓が吹き飛ぶ、失血死、寿命。
補足:花嫁が死亡した場合、次の花嫁の発見までは薬剤で過ごす。契約した花嫁の場所を知ることができる。
●アンバサッド(略=AS)
各国で吸血鬼の統括をしている機関。
仕事内容:VPへの仕事や住居の提供、吸血鬼の生活に必要な薬や太陽光対策の商品の通信販売など。
仲介する内容:TVやSFの消去・逮捕、要人警護、スパイなど。TVの消去にあたる者を『サンクシオン』と呼ぶ。
補足:仲介なしで人間と同じ仕事をする者もいる。大抵ホストやホステスなど。
●トレートル・ヴァンピール(略=TV)
花嫁の掟を破ったり、人間社会の法律に基づいて犯罪を犯した吸血鬼。
掟破り:被害者の数に関わりなく、サンクシオンにより消去(死刑執行)。
犯罪者:逮捕後、ASで裁判(人間社会と似た感じ)を受ける。
補足:『イノヴェチ』という組織的なものも存在するという噂がある。
●ヴァンパイアハンター(略=VH)
人間が独自に設立した、対吸血鬼組織。軍隊のようなもの。一般の人間には伝わっていない。
活動:TVの消去。掟破り以外のTVも即消去する。
補足:組織員の多くが吸血鬼に対し憎しみを持っている。その苛烈な活動内容によりASと仲が悪く、両者の小競り合いも多い。吸血鬼と協力しようとするハンターもいるが、稀。
●サクリフィス(略=SF)
吸血鬼が持つ特殊なウィルスが感染した人間。吸血鬼の牙から感染する。
ウィルス:2時間の潜伏期間がある。感染すると自我を失い、極度の貧血症となって、それを補おうと人の血を求める。回復する見込みはない。
治療:潜伏期間中に抗生物質を投与する。抗生物質で助かった人間が花嫁になることはない。
●花嫁(ヌーヴェル・マリエ)
吸血鬼のウィルスに対する抗体を持っている人間。性別に関係なく、こう呼ばれる。突然変異ではなく遺伝的なもので、隔世遺伝もある。
判別方法:吸血鬼の嗅覚により、血の匂いや体臭(匂いは様々)でわかる。その吸血鬼にとって好きな匂いが、自らに合っている花嫁と言われる。
花嫁の儀式:吸血鬼が花嫁の同意を得て首筋から血液を摂取すると、花嫁の首筋にその吸血鬼の羽を模した痣が現われる。痣は花嫁が死亡するか、『花嫁』の義務を放棄することを吸血鬼に伝えた時点で消える。これを『花嫁の儀式』と呼ぶ。
●吸血鬼の認知度
全世界の70%の人間が『伝説上の危険な化け物』と認識、残る20%が花嫁、10%が吸血鬼・花嫁の関係者。
混血児: VPと人間の子供は50%の確立で人間か吸血鬼にわかれ、CVと人間との子供は100%人間。混血児である吸血鬼の血も通常の吸血鬼と変わらないが、偏見(混血児は弱いとか、劣っているとか)などは存在する。
●花嫁の掟の内容(吸血鬼のみに伝わっている)
ヴァンピールはヌーヴェル・マリエ(以下、花嫁)の血液のみ摂取を許され、血液を提供した花嫁に対しその身を守ることを約束し、何らかの要因により花嫁が血液の提供の義務を放棄する場合、ヴァンピールはそれに従わねばならない。
ヴァンピールは生涯において幾人かの花嫁を持つことが許されるが、同時期に1人以上の花嫁を持つことは許されない。
花嫁はヴァンピールに対し、自らの意思で血液の摂取を許可することができ、また拒否することもできる。
ヴァンピールとの儀式を交わした花嫁は、そのヴァンピールに対し定期的に血液を提供する義務を持ち、健康の保持のために1人以上のヴァンピールに血液を与えてはならない。
この掟を破りしトレートル・ヴァンピールは、サンクシオンの手によって消去する。
●リプレイ本文
●アンバサッドの一室
洸耶(役者:橘・月兎(fa0470))がパソコンで何やら作業をしている。その後ろに近づくルナ(役者:紅雪(fa0607))。
「どうやら、イノヴェルチに関係のあるトレートルが何かを探っているらしい‥‥これは、セシリアの家の近くだな。連絡を取って置いたほうがいいか」
洸耶が携帯電話を手にする。それを心配そうに見るルナ。
「ねぇ洸耶・・・・沙流ちゃんを殺した子を探したいとか・・・・思ってないよね?」
洸耶は無言で目を逸らした。
●特殊な家族
バッグを背負ったリガル(役者:月白・緋桜(fa4265))が道路を走って来る。それを小走りに追いかけるルゥル(役者:月白・蒼葵(fa4264))。二人が家に入って行く。
「たっだいまー! お腹減ったー!」
「ただいまー」
「おかえり。手を洗っておいで。夕飯ももうすぐできるから」
迎えたのは二人の父親であるリスリム(役者:エリクシール(fa4318))だった。ルゥルが居間を見回す。
「ママは?」
「まだ眠ってるよ。今日はお休みだからね」
言いながら、リスリムは唐揚げに伸びるリガルの手を叩いた。子供たちに夕飯の準備を手伝わせ、食卓に料理を並べる。と、奥の部屋から眠そうに目を擦りながらセシリア(役者:月 美鈴(fa3366))がやって来る。
「あれ? おはよう、今日は早いね」
「家事‥・・いつも任せっきりだから・・・・たまには私も手伝いをしないとね‥‥」
「気にしなくていいのに」
リスリムがセシリアの額に軽くキスをした。それを見て子供が顔を見合わせて苦笑する。そうして家族全員での食事が始まる。
「部活はどうだい? 楽しいかい?」
「楽しいよ。まあ、まだ基礎練習だけだけど」
「ルゥは・・・・? 今日は貧血、大丈夫だった・・・・?」
「うん、大丈夫」
家族団欒の最中、電話が鳴る。セシリアが電話を取ると、急に厳しい顔になり、リスリムに振り返る。
「あなた‥‥洸耶が相談があるみたい・・・・アンバサッドに来てくれ、と」
「僕も行った方がいいかい?」
「そうね・・・・」
両親が慌しく外出の準備を始める。それを不安そうに見る子供たち。
「それじゃあ、私たちは行くけど・・・・戸締りはしっかりね。ルゥ・・・・リウのこと見ててね」
「リウちゃん、ルゥちゃんを守るんだよ」
両親の言葉に子供たちが頷く。それを見て両親は家を出て行った。
両親を見送ったリガルは玄関に鍵をかけ、窓の鍵がかかっているかどうかを確認しに行った。その間にルゥルが夕飯を片付ける。使った食器を洗い終え、居間に戻ろうとして、ルゥルがはたと気付く。
「あ、まだ薬飲んでなかったわ」
呟いて取り出したのは、セリバテールの生命線である貧血症の回復薬だった。その薬を飲もうとコップを取ろうとしたとき、家の周りに嫌な気配を感じた。
「・・・・ヴァンピール・・・・?」
かたりと、鍵をかけていたはずの窓が開いた。
●奇妙な犯罪者
「ふむ。花嫁とヴァンピールの両親に、セリバテールと人間の兄弟ですか。何とも珍しい家族ですね。まあ、薬剤の調達には丁度いい」
呟きつつ、二階の窓から侵入して来たのはレオンハルト(役者:フェイテル=ファウスト(fa0796))だった。細い針のように凝固した血液が、指先に戻って行く。
「私にかかれば窓の鍵を開けることなど、造作もありません。さて、親もいなくなったことですし、ゆっくりと薬を探しましょうか」
そうして薬を探すレオンハルトを、慎重に隠れながら見ていたのはリガルだった。すぐ後ろにルゥルを庇っている。
「何なんだ、あいつ・・・・」
「とりあえず、ママに連絡しよう」
そう言ってルゥルが携帯電話で両親に連絡を取る。と、その気配を感じたのか、レオンハルトが部屋から出て来た。ぱちりとリガルと視線が合う。
●アンバサッド
洸耶とルナの前に、セシリアとリスリムが立っていた。
「何が目的かはわからないが、犯罪組織に関わりのあるトレートル・ヴァンピールが君たちの家の近くを嗅ぎ回っているらしい。協力してもらえないだろうか」
「そういうことなら・・・・私たちも、子供たちには平和に暮らして欲しいしね・・・・」
すると、セシリアの携帯電話が鳴る。
「・・・・ルゥ? どうしたの? ・・・・泥棒? ・・・・わかったわ。すぐ行く。私たちが行くまでどこかに隠れてなさい。・・・・あなた」
セシリアの言葉に、リスリムが頷き、急いでアンバサッドを出て行く。それと入れ違いにヤム(役者:メイ・エル(fa3076))が入って来る。
「頼まれてた仕事終わらせて来たけどぉ」
「丁度いい、ヤム。緊急事態だ。セシリアの家に泥棒が入ったらしい。もしかしたらこのトレートル・ヴァンピールかもしれないから、すぐに向かって捕獲して来てくれ」
言って、洸耶が渡した書類を見たヤムがつまらなそうな顔をする。
「・・・・これってぇ、ヤムが行く必要あるのってカンジィ? まあ、楽そうな仕事でお給料がもらえるなら、いっかぁ」
●家での闘い
「ヤバイ! ルゥ、逃げるぞ!」
迫ってくるレオンハルトに、リガルがルゥルの手を引き、慌てて逃げ出す。リガルが階段を下り、その横に隠れた。レオンハルトが下りてくるのを見計らい、廊下で充電中だった掃除機のコードを引っ張る。足がコードに引っかかり、レオンハルトが顔面から廊下に倒れた。
「ぎゃっ! な、何が・・・・うお! こ、この私が、鼻血!? ・・・・貴様ー!」
鼻を強かに打って鼻血を出したレオンハルトが、ギッとリガルを睨む。そしてそのまま襲いかかろうとしたレオンハルトに、ルゥルが叫んだ。
「リウ! 逃げて!」
ルゥルが持って来た油を廊下にぶちまける。それを踏んだレオンハルトの革靴が、思いっきり滑る。くるんっと宙で半回転したレオンハルトが、後頭部から廊下に落ちた。頭を抱えて悶え苦しんでいるレオンハルトを後目に、リガルとルゥルが玄関に向かって逃げていく。途中で居間を繋ぐドアを半開きにし、その上にまだ熱いスープの入った鍋を置いた。ようやく頭の痛みが和らいだレオンハルトがそのドアを開けると、スープを頭から被ってしまう。
「うあちちち! な、なぜこの私が、こんな目に!」
慌てて服を払うレオンハルトに、子供たちが玄関へと走る。しかし、必死に立ち直ったレオンハルトが、リガルの腕を捕らえる。
「ふふふ・・・・捕らえたぞ!」
「・・・・その手、離してもらえないかしら・・・・? 私達の子供に手を出すのは許さないわ」
得意げに笑ったレオンハルトが、次の瞬間に廊下の奥まで吹っ飛んだ。玄関にセシリアが立っていた。子供たちが嬉しそうに駆け寄る。
「ママ!」
「お袋!」
「大丈夫? 二人とも・・・・」
セシリアが子供たちを抱き締める。それを身ながら、リスリムがロープを持って来て気絶しているレオンハルトをぐるぐると縛った。そして玄関先まで引き摺って行く。そこに遅れてヤムがやって来た。
「アンバサットだよぉん。大人しく捕まってくれればぁ、この可愛いヤムが褒めてあげるってカンジィ・・・・って、縛られてるじゃん。なぁんだ、ヤム、やっぱりいらないじゃあん。無駄骨ってカンジィ」
つまらなそうにくるくると拳銃を回し、ヤムが溜息を吐く。それにリスリムが苦笑すると、ヤムはアンバサッドへ連絡を入れた。
「それじゃ、そいつ持ってくねぇ。あ、あとセシリアも、同行お願いってカンジィ」
「わかったわ・・・・あなた、子供たちをお願いね・・・・」
セシリアとヤムがアンバサッドへ向かって行く。
●犯罪者の罪状
アンバサッドで、洸耶が縛られたままのレオンハルトを見下ろしていた。
「なんかぁ、気抜けしちゃったんでぇ、後、宜しくねぇん」
言って、ヤムが部屋を出て行く。ルナがセシリアとレオンハルトに向かって書類を読んだ。
「このトレートル・ヴァンピールの罪状は、貧血回復薬を狙った空巣が五件と、器物損壊が二点」
「器物損壊などではない。芸術だ」
「・・・・イノヴェルチの中でも下っ端ね」
きっぱりと言うレオンハルトに、洸耶とセシリアが溜息を吐く。そんな洸耶に、ルナは苦笑して呟いた。
「これじゃあ、いい情報は期待できないわね」
●帰宅
セシリアが帰宅すると、リスリムが待っていた。今まで家の掃除をしていたらしく、ズボンの裾を捲り上げ、手に雑巾を持っている。子供たちは疲れたのか自室のベッドでぐっすりと眠っていた。
「ちょっと前まで一緒に掃除をしていたんだけどね」
「ふふ・・・・まるで天使の寝顔ね・・・・私達の大事な子・・・・」
リスリムの言葉を聞きながら、セシリアが子供たちの額にキスをする。
「疲れただろう? セシリア・・・・」
「あなた・・・・」
リスリムがセシリアの頭を優しく撫でる。そしてセシリアはリスリムの首筋に唇を近づけた。