流し食べ物大会ですよアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
中畑みとも
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
不明
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
08/16〜08/20
|
●本文
夏。と、言えば?
「流しそうめんが食いたいな」
ずぞぞぞっと、冷えたそうめんを啜り上げているのは、夏祭りの企画部長だった。同じように企画委員のメンバーが、企画部長の奥さんが茹でてくれたそうめんを食している。
ここは、とある町の夏祭り実行委員会の会議室だ。と言っても、ビルの一室などではなく、企画部長の自宅の居間であったが。
普段は家族がご飯を食べている丸テーブルを囲んで、数人の男たちがああだこうだと話している。
「そういえば、どっかで流しそうめん大会とかやってたな」
「流しそうめん大会なぁ。いいんじゃないか?」
「でも他でもそういうのやってるんだろ? 今更うちでやってもなぁ」
「何か、ちょっと違った趣向を凝らしてみるとか」
「どんな?」
「例えば、そうめんじゃなくて、別のものを流してみるとか」
「箸で取れそうで取れないものを流して、取れたら賞金とか!」
「お、いいな、それ」
「竹なら横丁の前田さんとこにあるしな。やってみるか」
「問題は流すものだな。やっぱり食べ物の方がいいだろう」
「最初はそうめんにするとして」
「うーん‥‥」
そうして一週間後。町にチラシが配られた。
流しそうめんならぬ、流し食べ物大会!
水とともに流れてくる食べ物を箸で掴んで食べることができたら賞金ゲット!
レベルが高くなれば賞金が増えるぞ!
(参加料:500円)
レベル1:賞金なし
レベル2:賞金500円
レベル3:賞金1000円
レベル4:賞金5000円
レベル5:賞金10000円
レベル最強:賞金10万円!
そして、今回挑戦する食べ物はコレだ!
レベル1:そうめん
レベル2:メロン(2センチ四方)
レベル3:プチトマト
レベル4:ゆで卵
レベル5:玉こんにゃく
レベル最強:水餃子
さあ、賞金10万を手にする者は現れるのか!?
●ルール
流し食べ物のセットは、通常の流しそうめんで使うような、竹を半分に割って作ったもので、長さ2メートル・角度30度、直角三角形のような形になっています。
そこを水とともに流れてくる食べ物を、塗り箸で掴んで食べることができればクリア。できなければ失格になります。掴めても、食べる前に落としたりすると駄目です。
箸は刺したり、逆にして使ったりしてはいけません。もちろん、箸以外のものを使っても駄目です。
食べ物を、どのような作戦・方法で掴むかが成功の鍵となります。
クリアすると、最低でもそのレベルの賞金がもらえることが決定し、次のレベルに進みます。次のレベルに進んで失敗すると、その前のレベルの賞金がもらえます。
●リプレイ本文
●流し食べ物大会スタート
パンッ、パンッと空に煙が上がった。青空の下ではたくさんの人がざわめいている。風に『流し食べ物大会』という文字の書かれたのぼりがはためいている。
そんな中で、芸能人たちによる『流し食べ物大会』のデモンストレーションが始まった。
●小・中学生の部
「しまりす、頑張るでぃす!」
言って、塗り箸を持った手を振り上げたのは縞りす(fa0115)である。水の流れる竹を睨んで気合を入れた。特撮系の番組によく出演することもあってか、子供たちから声援がかかる。
「大豆を箸で摘んだり、豆腐を崩さないように練習した成果を見せるでぃす!」
まず流れてきたのは、キラキラと輝く素麺だった。縞りすがそれをすいっと掬い、麺つゆにつけて食べる。「次はレベル2!」という実況の声と同時に、二センチ角のメロンがポテポテと転がって来た。縞りすがそれを箸で追いかけて掴む。落とさないようにと緊張しながら、ぷるぷると震える箸を口に運んだ。口内に広がる甘さに、縞りすがほっとする。
次に流れて来たのはプチトマトだ。小さいのでコロコロ、コロコロと不規則な動きで転がって来る。縞りすの箸がそれをウロウロと追いかけるがなかなか掴めないまま、プチトマトは竹の下に置かれた桶の中へ落ちて行った。
「あーん、残念でぃすー」
「よし、次は僕ですね。頑張ります!」
そう言ってガッツポーズを取ったのは鏑木 司(fa1616)だ。塗り箸の位置をチェックしながら、竹の前にスタンバイする。素麺、メロンと危なげなくクリアし、次は縞りすがクリアできなかったプチトマトだ。頑張れー! と応援する子供たちの声を聞きながら、司が集中してプチトマトを掬う。箸から転がりかけるプチトマトを慌てて口に放り込むと、周りの子供たちから歓声が起こった。レベル4に上がり、転がってくるのはゆで卵だ。だいぶ早い横回転で転がるゆで卵を、司は箸を斜めに立てるようにしてゆで卵を止める。そしてそのまま掬い上げるようにして、ゆで卵を持った。慌てて口に運び、モグモグと食べながらピースサインをする。
次は玉こんにゃくだ。これをクリアできたらレベル最強の水餃子へと進める。司は緊張しながら箸を竹へと向けた。ゆで卵と同じように箸を立て、掬おうとする。だが水に濡れた玉こんにゃくはなかなか箸に乗せることができず、結局下に落としてしまった。
「あーあ、残念‥‥失敗してしまいました」
●大人の部
「小学生の部も盛り上がっているようですね‥‥よし、パーパも頑張るぞー」
真喜志 武緒(fa4235)は小学生の部を気にしつつ、塗り箸を手に持った。隣り合った小学生の部から見ているであろう娘に笑顔を振りまきつつ、滑り落ちてくる素麺に箸を向けた。素麺は簡単にクリアすることができ、メロン、プチトマトも何とか掴むことができた。
そして三番目に転がってきたのはゆで卵だった。真喜志が箸をゆで卵の流れてくる位置に置いて、ゆで卵を箸の上に転がそうとする。上手い具合にゆで卵を乗せた真喜志がそれを口に運ぼうとしたが、口に入る寸前で落としてしまう。慌てて手を出して捕まえるが、失敗である。
「パーパ、頑張ったんだけどなぁ・・・・」
「次はあたしだ!」
ティタネス(fa3251)が袖を捲り上げるような仕草をして、箸を持った。器用に箸を持ち、カチカチと食べ物を掴むイメージトレーニングをしている。そんなティタネスは素麺にメロン、プチトマトと、真剣な眼差しで食べ物を箸先に掴んで行く。くるくると転がりながら流れてくるゆで卵も、器用に箸の上に乗せて、ゆっくりと口の上に持って行くと、ぱくりと一口にした。
もぐもぐとゆで卵を咀嚼しながら、ティタネスが玉こんにゃくを睨む。メロンやプチトマトのときと同じように、箸を玉こんにゃくの真ん中よりやや低めを狙って差し出す。そのままぐっと摘み上げて水の中から取り出すが、あまり力を入れると玉こんにゃくが飛び出してしまいそうで、力加減に自信のないティタネスの指がぷるぷると震える。ゆで卵のときと同じように口の上に持って行こうとするが、力を込めないようにしたのが逆に災いして、玉こんにゃくがポロリと落ちてしまう。
「うあー! 落としちゃったよ!」
ティタネスの叫び声と同時に、高校生の部の方から残念そうな声が上がった。どうやら向こうに参加していた芸能人の誰かが失敗してしまったらしい。ティタネスが悔しげに唸る。
「次、美角あすか、頑張ります!」
可愛らしくガッツポーズをしたのは美角あすか(fa0155)だ。美角を知っているらしい男性から野太い応援がかかる。それに笑顔を返しながら、美角は箸を持って竹の上部分に近い場所に立った。
まず流れて来た素麺は危なげなくクリアする。次のメロンも、何とか掬うような感じで摘み、口に運ぶことに成功した。三つ目はプチトマトだ。転がって来るプチトマトの不規則な動きに、美角の箸が何度もプチトマトを掴もうとする。上から下までプチトマトを追って、やっとのことで掴むことができたのは、もう少しで桶に落ちるというところだった。
「危ない、危ない・・・・」
ふうっと汗を拭う美角だが、プチトマトでこんな調子なので、次のゆで卵ではもっと苦戦してしまう。重力にしたがってどんどんと転がる速さが増していくゆで卵に、美角は何度も掴もうと箸を差し出すのだが、そのたびに逃げられてしまう。結局ぽちゃりと音を立ててゆで卵は桶の中に落ちてしまった。
「あーん、間に合いませんでしたー」
「へぇ、なかなか難しいんだな。よし。流しそうめんなんて風流な行事は初めてだし、頑張るぞ!」
言って、麦藁帽子を被りなおしたJoker(fa3890)は、サングラス越しに真剣な目で水の流れる竹を睨みつけた。箸を持つ手にも力が込められる。
最初の素麺、メロンと余裕でクリアしたJokerは、竹の壁にぶつかりながら不規則に転がって来るプチトマトに少々苦戦を強いられるも、箸の先に全神経を集中させて上品に摘み上げる。ゆで卵も、流れてきたところを掬い上げるようにして掴んだ。玉こんにゃくではゆで卵と同じ作戦で、しかしゆで卵よりも神経を使い、慌てず慎重にゆっくりと掬い上げる。口の中に放り込まれた玉こんにゃくに、周りから歓声が上がる。
「ついに来たぞ、最後の難関! 水餃子!」
実況の声と共に、水餃子が流された。滑るように落ちてくる水餃子をJokerが箸で止める。そして慎重に掬い上げようとした。だが、箸の先は水餃子の下に潜り込むことはできず、水餃子は空いてしまった箸と竹の間をすり抜けて桶へと落ちてしまった。残念そうな声が響く。
「惜しかったなぁ・・・・」
その後、一般人の挑戦も始まり、大会は大いに盛り上がった。
●大会終了後
流し食べ物大会が終わると、小・中学生の部と高校生の部、そして大人の部と三つに分けられていた竹の高さを低く直して、皆で流し素麺を楽しんだ。縞りすが美味しそうに素麺を啜り、司が白い素麺に混じっていた赤い麺を見つけて喜ぶ。真喜志はメロンを二つもらって娘の場所へ走り、ティタネスも凄い勢いで麺を啜っている。美角が男性たちに話しかけられながら素麺を食べ、Jokerも楽しそうに笑っている。
青空の下で、竹を流れる澄んだ水がキラキラと輝いていた。