吸血鬼の花嫁 ombreアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/31〜09/04
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●本文
――吸血鬼。
それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。
そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。
――って感じの、深夜特撮番組の役者さんを募集してます。
いやはや、放送も好調でしてねー。皆様には感謝しております、ホント。で、今回の話の筋なんですが。
『元々は普通のヴァンピールだった主人公が、掟破りのトレートル・ヴァンピールになってしまった理由』
って感じで。再び暗ーい感じです、はい。で、必ず決めて欲しい配役は『主人公』だけなんで、今回はその他の花嫁とか、敵とか、考えたストーリーに合わせて色々と自由に配役して下さって結構ですんで。
それから設定も置いておきますんで、読んで下さると嬉しいです。
設定
●セリバテール(略=CV)
血を一度も吸ったことがない吸血鬼。
能力:人間の数倍以上の嗅覚、視覚、運動能力。
体質:慢性的な貧血症(特殊な薬剤でのみ回復)。その他、成長速度なども人間と同じ。
弱点:人間と同じ。ニンニクの匂いが苦手な者もいるが、害はない。
補足:大抵20歳頃まではCVのまま。血を吸うのが嫌で、CVで生涯を終えた吸血鬼もいる。CV時も吸血鬼同士は感覚でわかる。
●ヴァンピール(略=VP)
花嫁の血を吸ったことがある吸血鬼。
能力:CVからの能力、動物への変身、翼(形は様々)での飛行、肉体及び血液の硬質・武器化、強力な再生治癒能力。その他、個々の特殊能力。
体質:戦闘などで失血した場合、または一ヶ月に一回の血液摂取(400CC程度)が必要。極端に遅い成長速度。平均寿命200年、最長寿350年。
弱点:激しい太陽光、銀。触れると熱傷が起き、対処をしないと骨まで溶ける。
死因:銀・太陽光で全身の50%が溶ける、頭・心臓が吹き飛ぶ、失血死、寿命。
補足:花嫁が死亡した場合、次の花嫁の発見までは薬剤で過ごす。その間、能力は変わらないが貧血に悩まされる。契約した花嫁の場所を知ることができる。
●アンバサッド(略=AS)
各国で吸血鬼の統括をしている機関。
仕事内容:VPへの仕事や住居の提供、吸血鬼の生活に必要な薬や太陽光対策の商品の通信販売など。
仲介する内容:TVやSFの消去・逮捕、要人警護、スパイなど。TVの消去にあたる者を『サンクシオン』と呼ぶ。
補足:仲介なしで人間と同じ仕事をする者もいる。大抵ホストやホステス、深夜や室内での仕事など。
●トレートル・ヴァンピール(略=TV)
花嫁の掟を破ったり、人間社会の法律に基づいて犯罪を犯した吸血鬼。
掟破り:被害者の数に関わりなく、サンクシオンにより消去(死刑執行)。
犯罪者:逮捕後、ASで裁判(人間社会と似た感じ)を受ける。
補足:『イノヴェルチ』という組織的なものも存在するという噂がある。
●ヴァンパイアハンター(略=VH)
人間が独自に設立した、対吸血鬼組織。軍隊のようなもの。一般の人間には伝わっていない。
活動:TVの消去。掟破り以外のTVも即消去する。
補足:組織員の多くが吸血鬼に対し憎しみを持っている。その苛烈な活動内容によりASと仲が悪く、両者の小競り合いも多い。吸血鬼と協力しようとするハンターもいるが、稀。
●サクリフィス(略=SF)
吸血鬼が持つ特殊なウィルスが感染した人間。吸血鬼の牙から感染する。
ウィルス:2時間の潜伏期間がある。感染すると自我を失い、極度の貧血症となって、それを補おうと人の血を求める。回復する見込みはない。
治療:潜伏期間中に抗生物質を投与する。抗生物質で助かった人間が花嫁になることはない。
●花嫁(ヌーヴェル・マリエ)
吸血鬼のウィルスに対する抗体を持っている人間。性別に関係なく、こう呼ばれる。突然変異ではなく遺伝的なもので、隔世遺伝もある。
判別方法:吸血鬼の嗅覚により、血の匂いや体臭(匂いは様々)でわかる。その吸血鬼にとって好きな匂いが、自らに合っている花嫁と言われる。
花嫁の儀式:吸血鬼が花嫁の同意を得て首筋から血液を摂取すると、花嫁の首筋にその吸血鬼の羽を模した痣が現われ、これを『花嫁の儀式』と呼ぶ。痣は花嫁が死亡するか、『花嫁』の義務を放棄することを吸血鬼に伝えた時点で消える。
●吸血鬼の認知度
全世界の70%の人間が『伝説上の危険な化け物』と認識、20%が花嫁、10%が吸血鬼・花嫁の関係者。
混血児: VPと人間の子供は50%の確立で人間か吸血鬼にわかれ、CVと人間との子供は100%人間。混血児である吸血鬼の血も通常の吸血鬼と変わらないが、偏見(混血児は弱い、劣っているなど)は存在する。
●花嫁の掟の内容(吸血鬼のみに伝わっている)
ヴァンピールはヌーヴェル・マリエ(以下、花嫁)の血液のみ摂取を許され、血液を提供した花嫁に対しその身を守ることを約束し、何らかの要因により花嫁が血液の提供の義務を放棄する場合、ヴァンピールはそれに従わねばならない。
ヴァンピールは生涯において幾人かの花嫁を持つことが許されるが、同時期に1人以上の花嫁を持つことは許されない。
花嫁はヴァンピールに対し、自らの意思で血液の摂取を許可することができ、また拒否することもできる。
ヴァンピールとの儀式を交わした花嫁は、そのヴァンピールに対し定期的に血液を提供する義務を持ち、健康の保持のために1人以上のヴァンピールに血液を与えてはならない。
この掟を破りしトレートル・ヴァンピールは、サンクシオンの手によって消去する。
●リプレイ本文
●イノヴェルチ暗室
ロスト(役者:ヴォルフェ(fa0612))が司(役者:リュシアン・シュラール(fa3109))に命令を出している。
「即戦力になるヴァンピールを探し出して連れて来い。そうだな‥‥アンバサッドに対して反抗的なヴァンピールの方が望ましいな」
頭を下げて司が部屋を出て行く。と、携帯電話が鳴り、司が電話に出る。
「‥‥そう‥‥美琴ちゃん、ヴァンピールになったんだ‥‥私より早いね‥‥迎えに、行こうか?」
●主人公自宅近辺
「美琴ちゃん!」
道を歩いている美琴(美森翡翠(fa1521))に莉音(姫月・リオン(fa1200))が駆け寄ってくる。美琴の頭の上で、大きな白いリボンが揺れる。
「莉音ちゃん‥‥」
「どうしてもアンバサッドには入らない? ルナさんって人にね、美琴ちゃんの事を話したの。そしたら、美琴ちゃんに会いたいって。とっても優しい人なんだよ? ね、一緒に行かない?」
「止めて! アンバサッドなんかには絶対入らない!」
叫んで、美琴は走り去って行く。莉音はそれを見送るしかなかった。
●主人公自宅
「莉音ちゃんとは一緒にいたいけど‥‥父さんと母さんを殺したアンバサッドなんて‥‥」
呟きながら、美琴が家に入る。それを迎えたのは流子(キャンベル・公星(fa0914))だった。
「おかえり、美琴。‥‥あら? 少し顔色が悪いわね。大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ、母様」
「そろそろ貧血が始まってしまうかしら。血をあげなきゃね‥‥でもその前に」
流子が美琴に近づく。美琴は流子を心配そうに見上げる。
「また何かすればいいの? マッサージ? うるさかった隣の猫はもう捨てて来ちゃったから、大丈夫でしょ?」
「そうね‥‥そうだ、美琴。アンバサッド、壊しちゃいましょうか?」
「‥‥うん! 母様もアンバサッド、嫌いだもんね!」
まるで悪戯を思いついたかのような流子に、美琴が笑う。
●アンバサッド新人講習
ヴァンピールになって間もない吸血鬼たちが、これからの生活についての講習を受けている。莉音もそれに参加しており、教壇に立っているのはルナ(紅雪(fa0607))だ。
そのとき、ドォンッという大きな音がし、直後に警報が鳴り響く。ルナが新人たちに「ここにいるように!」と言い付けて、教室を出て行く。それを不安そうに見送る莉音だが、嫌な予感がして教室を出て行く。
●壊された外壁
崩れた外壁の前に立っているセフィリス(月 美鈴(fa3366))と洸耶(橘・月兎(fa0470))に、ルナが駆け寄る。
「何があったの?」
「何者かが、外壁に攻撃を与えたらしいわ‥‥全く、見事に壊してくれたわね‥‥」
ルナの言葉に、セフィリスがイライラと溜息を吐く。
「この忙しい時に‥‥どこの誰だか判らないけど、やってくれるわ‥‥セキュリティを強化しないと‥‥」
眉間に皺を寄せたまま、セフィリスが防犯カメラの確認と後始末の手配を部下に命じて去って行く。ルナは外壁を調べている洸耶に近づく。
「イノヴェルチ‥‥にしては、荒っぽくてお粗末な行動ね?」
「確かに‥‥ん? これは‥‥」
呟いて、洸耶が外壁の欠片の下敷になっていた白いリボンの切れ端を見つけ、手に取る。それを、こっそりと様子を伺っていた莉音が見ていた。
「あれはまさか‥‥美琴ちゃん‥‥?」
気づいた莉音が顔を青褪めさせ、ルナたちの目を盗んでアンバサッドを飛び出した。
●墓地
千切れてしまった部分を隠すように、流子が美琴のリボンを直している。「これでよし」と微笑む流子に、美琴も笑みを返す。
「母様。父さんと母さんに会って行こうよ」
「そうね‥‥この近くだったわね」
二人が墓地へと入っていく。目的の墓に近づくと、そこに司が立っていた。黒髪黒眼で、真っ黒のコートを来た司に、美琴の足が止まる。
「こんにちわ、美琴ちゃん」
「‥‥どうして私の名前を‥‥?」
「美琴ちゃんのお父さんから聞いてるから」
言われて、美琴が微笑む流子を見上げる。司が美琴に近づく。
「俺はね、美琴ちゃんのお父さんの弟なんだよ」
「じゃあ、私の叔父様なの?」
にこやかに司が頷いて美琴の頭を撫でると、美琴が嬉しそうに笑った。
「今日はね、君を迎えに来たんだ」
話しながら、墓地を出る三人。それを、美琴を探して走って来た莉音が見つける。
「美琴ちゃん!」
「‥‥また、あなたなの‥‥」
睨んで来る流子を無視して、莉音が美琴に駆け寄る。
「アンバサッドの外壁を壊したの、美琴ちゃんでしょ!? どうしてそんな事するの!?」
「アンバサッドがこの子の両親を殺したからよ」
流子の言葉に、莉音が愕然とする。それに美琴が続ける。
「父さんは病気になった母さんから血を貰えなくて‥‥だから仕方なく人間から血を貰っただけだったのに‥‥」
「だって、それは掟だもの! 掟に背く前に、アンバサッドに相談していれば‥‥」
「君たちはいつもそうだ‥‥自分達の理屈を当然のように押し付ける」
近づいて来る莉音から、美琴を庇う様に司が前に出る。それに、莉音が応戦体勢を取る。
「姪を守るのは私の役目だ」
立ちはだかる司に、莉音が飛び掛る。蝙蝠の羽を出し、硬質化させた爪を振り翳した。司が、それを銀のナイフで退ける。銀に切り付けられ、煙の上がる指を庇い、莉音が下がる。
「さあ、美琴。行きましょう‥‥」
「っ! 行かせない!」
美琴を連れて行こうとする流子に莉音が走るが、司のナイフで胸を斬りつけられる。
「止めなさい!」
叫んで倒れる莉音に、ルナが駆け寄って来る。その後ろから洸耶とセフィリスもやって来る。それに美琴が掌に集中させた光を弾のように飛ばす。ルナが莉音を抱えて光弾を避けた隙に、司が流子と美琴を引き寄せる。
「それ以上、騙されちゃ駄目よ! 貴方はその人達に騙されているの! 気付いて!」
「美琴ちゃん! 行っちゃ駄目!」
「あたし、母様と叔父様と一緒に行く。父さんと母さんを殺した掟を壊すの。今まで有難う。‥‥そしてサヨナラ」
ルナと莉音が必死に叫ぶが、美琴が言い終わると同時に司のコートが翻る。次の瞬間、三人の姿は消えていた。
●アンバサッド
「莉音の傷は‥‥?」
「熱傷の侵食は止まったよ。後は安静にして、傷が塞がるのを待つだけだな」
ルナの問いに、洸耶がドアを閉めながら答える。ルナの隣ではセフィリスが真剣な顔で書類を読んでいた。
「‥‥契約後、花嫁が病気を発症‥‥ヴァンピールは花嫁から血液の提供をして貰う事が出来ず、花嫁以外の人間に吸血行為を行う‥‥掟を破った事により、数人の人間をサクリフィスにしてしまった為、消去‥‥後、花嫁はヴァンピールが消去された事を知り、精神疲労により病気が悪化、死亡‥‥」
「アンバサッドが二人を殺したと言われても、しょうがない状況だな‥‥」
セフィリスが読み上げた内容に洸耶が呟くと、ルナが眉を顰める。
「もっと早く調べていれば‥‥あの子をトレートル・ヴァンピールにはさせなかったのに‥‥」
「それでも、あの子が掟破りの子である事には変わらなかったわ‥‥それにしても、このところトレートル・ヴァンピールの出現率が高過ぎる‥‥まるで、何かが裏で動いているみたいに‥‥」
セフィリスの呟きに、ルナと洸耶が顔を見合わせ、表情を暗くした。
●イノヴェルチ
真っ暗な部屋の中にロストが立っている。美琴と司が部屋に入って来る。美琴がロストに近づき、見上げる。
「あたしを鍛えて下さい! 家族を守れるように」
そう言って頭を下げる美琴に、ロストが微笑んだ。美琴の頭を撫でながら、ロストは司に冷たい視線を向ける。
「即戦力になる者を‥‥と言った筈だが?」
その言葉に、司が目を逸らす。それにロストは溜息を吐き、二人に部屋から去るように命令する。二人が出て行ったのを確認し、ロストは後ろを振り向いた。
「さて、どうします? 予想以上に人材の集まりは悪いようですが」
闇の中に誰かがいる気配がするが、姿は見えない。暫くの沈黙の後、ロストはその気配に向かって深々と頭を下げた。
「それでは、このままアンバサッドには踊り続けて頂きましょうか」
言って、ロストがにやりと笑った。