進め遺跡発掘隊!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3.9万円
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参加人数 |
15人
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サポート |
0人
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期間 |
09/02〜09/08
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●本文
冒険家ハロルド・ヒューストン。偉大なる探検家であった祖父の意思を勝手に引き継ぎ、芸能活動をしている親から援助を受けつつ、世界中を飛び回っている冒険家である。
そんな彼の手に、一冊の古びた手記があった。それは彼の祖父が世界中を探検した際に記したもので、そこには世に知らされていない遺跡のことも書かれていた。
世に知らされていない遺跡‥‥それは獣人に関係する遺跡のことである。
「‥‥と、私は思っているのだが、どうだろうか? まあ、行ってみればわかるか‥‥ということで、探検隊の隊員を募集中であーる! 隊長はもちろん、この私であーる!」
●探検隊の心得
1.ハロルドの祖父が書いた手記を元に、遺跡の場所を推理せよ。
2.遺跡をどんな手段で見つけるかを考えよ。
3.見事遺跡を発見できたらボーナスが出るので、頑張れ。
4.隊長は運と勘だけで生きている人なので、当てにしてはいけない。
5.資金は何とでもなるので気にするな。でも無駄遣いは怒られるので気をつけろ。
●祖父の手記
白く長き雲のたなびく地にて
番人の守る森へ行く
ファカイロのあるルアを進めば
半神半人の寝床がある
●リプレイ本文
「多分、白く長き雲の、たなびく地は、ニュージーランドだと、思うのです」
そう言ったのは小明(fa4210)だ。冒険家ハロルド・ヒューストンの声に募ったメンバーが、ニュージーランドのウェリントンに降り立つ。
「それでは僕と小明さんは、ハロルドさんに手配して貰った宿で暗号の解読をします」
「小明を宜しくお願いします。パーパ、頑張るからねー?」
小明の横に立つ斑鳩・透馬(fa4348)に、真喜志 武緒(fa4235)が頭を下げた。
「それじゃあ、俺たちは南島の方に向かうとするか」
「よーし、皆の衆! 張り切って行くのであーる!」
神塚獅狼(fa3765)が言うと、ハロルドが高々と手を掲げ、空を指差した。
「暗号を、そのまま読むと、ニュージーランドの、マオリ人が守る森に行き、彫刻のある洞窟、もしくは、二番目の場所を、進むと、マウイという神の、寝床がある、という事だと、思います」
「で、南島でそれらしいのが、ティアナウ洞窟なんですが」
携帯電話から聞こえる解読班の声に、津野雪加(fa0513)が首を傾げた。
「何でティアナウ洞窟なんですか?」
「太古のままだと言われている南島の原生林を番人の守る森として、フィヨルドランドのフィヨルドは自然の彫刻って言われているそうです。そこにある洞窟というと、ティアナウ洞窟なんじゃないかと」
「なるほどー」
感心したように頷いたのは理緒(fa4157)だ。後部座席に積まれた荷物が転がらないように注意しながら座っている。
神塚が運転する車でティアナウの町に行き、ボートで洞窟へ向かう。ティアナウ洞窟の前に立った横田新子(fa0402)が、先の折れ曲がった金属棒を手に気合を入れた。
「なんですか? それ」
「ダウジングですよ。これが効くんです。この前、本で読んだから確かですよ」
「それって、水脈とか探すやつじゃあ‥‥」
荷物を持った津野に問われ、横田が答えると、紗原 馨(fa3652)が呟いた。
「とりあえず、探してみよう」
そう言って、朱凰 夜魅子(fa2609)が率先して洞窟に入って行った。
「それにしても、ハロルドさんって凄いんですね」
「ハロルド、というよりは、ハロルドの両親や祖母だろうな」
洞窟の中で、紗原に朱凰が答える。
「観光時期がずれているお陰で人が少ないにしろ、これだけ有名な洞窟で人払いをして貰えるなんて、だいぶ金をかけてるぞ。遺志を引き継いだ仕事といえば聞こえはいいが、あれの場合は完全に道楽だな。親も苦労する」
「洞窟の安全点検中、っていう事でしたっけ?」
「まあ、そのお陰でこうして見つかる心配もなく半獣化できるんだが」
ダウジングで先頭を歩いている横田の後ろで、半獣化した朱凰が鋭敏視覚を駆使して辺りを見回している。
「だが、それらしいものは見当たらないな」
「ここじゃないんでしょうかねぇ」
呟く神塚に、理緒が残念そうに答える。6人は注意深く洞窟内を調べ歩いたが、結局何も見つける事が出来ず、洞窟の出口へと来てしまった。
「ティアナウ洞窟はハズレだったみたいですね。聞き込みでもハロルドさんのお祖父さんらしき人が来たという話は聞きませんでしたし、もしかしたら北島の方なのかもしれませんね」
言って、津野が北島にいる真喜志へと電話をかけた。
「ティアナウ洞窟ではなかったようですね」
「とりあえず、南島の方々には原生林の方を探して貰っています。番人が守る森はワイポウア・カウリ・フォレストが有名なので、そっちの方が当たりかもしれません」
「気をつけて。パーパ、ケガすると、悲しい、です」
携帯電話から聞こえる娘の心配そうな声に口元が緩みそうになりつつ、真喜志は手がかりを探していた。
通常のウォーキングコースである道を外れ、どんどん立ち入り禁止区域である森の中に入って行くハロルドを、氷桜(fa4254)が追って行く。
「‥‥こんな所を誰かに見られて、何してるんだって言われたらどうするんだ?」
「その時は‥‥誤魔化すしかないんじゃないですか?」
呟く氷桜に、蕪木薫(fa4040)が苦笑する。その横を歩く夏姫・シュトラウス(fa0761)が、ハロルドの背中に声をかけた。
「そういえば‥‥ハロルドさんは他にどんな所を冒険してらっしゃるんですか?」
「む? 私か? 私は主に海中に沈んだ遺跡や、海底洞窟などを探索している。だから陸地での冒険はあまりやった事がないのだ」
はっはっは、と笑うハロルドに、本格的なアウトドアの装備をしたアッシュ・グレイ(fa4486)が溜息を吐く。
「でも、ここまで道から離れれば、半獣化してもそうそう見つからないんじゃないか?」
「そうだね。鋭敏視覚を使って探せば、何か見つかるかも」
言って、半獣化する海鈴(fa3651)に、夏姫と蕪木も続いた。ともすれば一人で逸れてしまいそうなハロルドを氷桜が止めつつ、アッシュが後方や周りに人がいないかどうか注意しながら進む。
「あれ? これって道かなぁ」
森をうろついて数十分。海鈴が見つけたのは数十個の石だった。まるで誰かが置いたように短い間隔で並んでいる。海鈴が呟いた通り、道を示しているように見えなくもない。だがその先は、それまで以上に木々が鬱蒼としている。
「うむ、怪しげだな。遺跡があるかもしれん」
「待ってろ、遺跡ー♪」
大きく頷いて奥に進んでいくハロルドに、海鈴が楽しげに続く。それを氷桜が追い、真喜志が肩を竦めながら歩く。夏姫と蕪木、アッシュも続いた。そして数メートル進んだ所で、蕪木が何かに足を引っかける。
「お、わ、あいたっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
バキバキと小さな小枝を折りながら地面に倒れこんだ蕪木を、真喜志が支える。
「足に何か‥‥あれ? これって‥‥」
それは円柱形の石だった。靴先が丁度入り込んでしまいそうな窪みが出来ている。その石から足をどけた蕪木の呟きに、真喜志が石をまじまじと観察する。
「これ、だいぶ削れていますが、彫刻ですね」
「彫刻!? すげぇ、見つけたんだ!」
「幸運付与のお陰ですかね」
目を輝かせる海鈴に、蕪木が頭をかく。それに、夏姫が声を上げた。
「あの、こちらに地下に潜れそうな穴があるんですけど」
「‥‥そう言えば、ルアは洞窟や二番目の他に、穴の意味もあると小明嬢が言っていたな」
氷桜が呟き、夏姫の指差す場所へ行く。穴はまるで落とし穴のような感じで、葉の間に隠れていた。
「でも、ここだと彫刻の場所から少し離れているような気がしますね」
「もしかしたら、彫刻のある側の穴、なのかもしれませんね」
「そしたら、これのすぐ傍にも穴があるって事なのかな」
真喜志の言葉に夏姫が首を傾げ、海鈴が彫刻を見下ろす。それに、ハロルドがふむ、と頷き、彫刻の周りを探し始めた。
「ならば、ここ辺りにあるのでは‥‥ぬおおおっ!」
「ハロルドさん!」
キョロキョロとしていたハロルドの姿が突然消える。それに蕪木が驚き、氷桜が慌てて駆け寄ると、そこには葉に隠れて見えなかった穴がぽっかりと開いていた。
「穴だ!」
海鈴が言うや早く、氷桜がハロルドを追って穴に飛び込む。それに他のメンバーも続くと、地下には予想以上に大きな空洞が広がっていた。
「地下にこんな空洞があったなんて‥‥」
呟く夏姫が穴を見上げる。時折、木の根が飛び出している空洞は、明らかに人の手が加えられたものだった。その奥を目指し、一行が進む。
しかし、数メートル進んだ先で一行を待っていたのは、道を遮るように伸びた大きな木の根だった。上から伸びて来ているその根によって、先に進む事ができない。
「‥‥燃やすのは危険だな。斬る‥‥のもできそうにないな」
「斬った後でこの空洞がどうなるか、判りませんからね」
氷桜の横で夏姫が根を曲げようとするが、蕪木に止められる。根は空洞を貫通して更に下まで伸びており、ここで根をどうにかして上にある、恐らく巨木であろう木が倒れるなり、空洞が潰されるなりされると危険だ。
「これは私たちには何ともしようがないな」
「あー、残念。見つけたと思ったんだけどなー」
アッシュの言葉に海鈴が肩を落とす。同じくハロルドも溜息を吐いて、撤収を言い渡した。
「遺跡自体は見つからなかったが、恐らく遺跡に繋がっているであろう道を見つけたので、お前らには俺から小遣いを与える」
「小遣い? ボーナスじゃなくて?」
「ボーナスと言える程の金額ではないから、小遣いだ」
横田の言葉にそう答えて、ハロルドはメンバー全員に2万円の入った封筒を手渡した。
「何にせよ、手がかりが見つかったので良かったです」
「探検も楽しかったしね」
理緒に続いて紗原も笑い、宿では探検を終えたメンバーがのんびりと過ごしていた。
「それで、遺跡はどうするんだ?」
「うむ。専門家を呼び、何とか道を作れないか調べようと思う」
朱凰の言葉に、ハロルドが頷いて答える。そして、ハロルドがメンバーに労いの言葉をかけ、「残った日程は経費で旅行して良し!」と言うと、部屋中に歓声が響いた。