餃子大食い決定戦!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 中畑みとも
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 不明
参加人数 15人
サポート 0人
期間 09/09〜09/11

●本文

 定食屋ダテマサ。そこは何の変哲もない、どこにでもあるような定食屋である。
 値段はどちらかと言えば安く、そしてそれなりに美味い。
 そんな店だったが、最近大食いやら早食いやらの挑戦メニューをやり出してからリピーターが増え、なかなか好調な客入りに、店長もにんまり顔であった。
「先輩、今度は何考えてるんすか?」
 聞いたのは、いつも店にご飯を食べに来る、店長の後輩のお笑い芸人だった。カウンターでずるずるとラーメンを食べながら、ときどき餃子に箸を伸ばしながら、店長を見上げる。
「いや、また今度大食い大会をやろうかと思ってな」
「へぇ、今度はどんなやつです?」
「今度は、何か大量にぽんぽんと作れそうなものを用意して、それを一番多く食べたやつに賞金をやろうと思ってる」
「なるほど。それだと、賞金をやるのは1人で済むっすからね。さすが先輩。考え方がせこいっすね」
「うるせぇ。バカバカ賞金取られちまったら、こっちが困るんだよ。つーことで、そのぽんぽんと作れるものってのを考えてるんだが‥‥」
「ぽんぽんと作れるものっすか‥‥うーん‥‥」
 唸りながら、後輩がラーメンを啜り、餃子を食べる。
「お! それだ!」
「へ? 何すか?」
「餃子だ。餃子だったら最初に大量に作っておいて、出すときに焼けばいいんだからな。よし、餃子で行こう」
「餃子で大食いっすか」
「そうだ、餃子だ」



●ルール
 定食屋ダテマサで『餃子大食い決定戦』をやります。
 ルールは至って簡単。時間無制限で胃袋の限界まで餃子を食べて頂き、一番多く餃子を食べた人を優勝とします。
 参加費は1人1000円。優勝者には賞金10万円が与えられます。
 餃子は一般の定食屋で作られている餃子と同じ大きさで、1枚の皿につき、5個の餃子が乗せられます。
 挑戦者は、自分がどのくらいの数の餃子を食べれるかを予想して下さい。その予想が自らの体力に反するような数の場合は、予想数まで辿り着けない場合もありますので、突拍子もない予想を立てるのは止めた方が無難です。

 挑戦者以外でも、挑戦者の付き添いや見に来るだけでも結構です。定食屋には一般の定食屋にあるようなメニューも並んでますので、是非。

●今回の参加者

 fa0141 篠森 アスカ(19歳・♀・鴉)
 fa0280 森村・葵(17歳・♀・竜)
 fa0513 津野雪加(20歳・♀・牛)
 fa0928 舞腹 旨井蔵(33歳・♂・豚)
 fa1180 鬼頭虎次郎(54歳・♂・虎)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2174 縞榮(34歳・♂・リス)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3871 上野公八(23歳・♂・犬)
 fa4035 尚武(20歳・♂・牛)
 fa4047 ミミ・フォルネウス(10歳・♀・猫)
 fa4050 有栖川総統(25歳・♂・獅子)
 fa4079 志祭 迅(26歳・♂・鴉)
 fa4319 キバ(12歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「さー、始まりました! 餃子大食い決定戦! 実況はこの私、店長の後輩である前田がお送り致します!」
 ぎっしりと観客が詰まった店内で、マイクを持った前田が拍手を浴びている。その後ろには、バクバクと餃子を口に詰め込んでいる挑戦者たちがいた。舞腹 旨井蔵(fa0928)が声を張り上げる。
「定食屋ダテマサ! 餃子の皮と具が絶妙のバランス! 店長さんおかわり!」
「さて、レポーターも大絶賛の餃子ですが、優勝者は一体誰なのか! おっとー! スタート直後からライバルたちを引き離し始めている人物がいるぞ!」
 それは鬼頭虎次郎(fa1180)だった。険しい顔つきで、餃子を飲み込んでいる。目の前には既に5枚の皿が積み上げられている。
「餃子は大好物じゃぞい!」
「これは優勝候補の一人と見てよいでしょう! 優勝候補と言えば、激辛カレー大食い大会で優勝した方が!」
 言って、前田が示したのはティタネス(fa3251)だ。マイペースに餃子を食べている。こちらも同じく5枚の皿が空になっていた。
「美味しいけど、ずっと食べ続けてたら飽きそうだなぁ。今度はタレで」
 余裕の表情で餃子をタレにつけるティタネスの横で、これまたマイペースな無表情で餃子を口に運んでいるのは篠森 アスカ(fa0141)だ。マイ箸とマイコップを持参し、まるで普通に食事をしている感覚で、ゆっくりと咀嚼している。
「店長‥‥ご飯ちょうだい‥‥」
「大食い勝負なのにご飯食っていいのかい?」
「だって‥‥ご飯と一緒の方が美味しいし‥‥」
「何だか食事感覚の人もいるようですが‥‥お? こちらもまた白熱した勝負ですねー」
 前田が振り返ったのは、フードファイターとしての実力を発揮している津野雪加(fa0513)と、様々なタレを使って飽きないように食べているタケシ本郷(fa1790)だ。
「うむむ、やりますね」
「まだまだ現役だからな!」
 バチバチと睨み合っている2人の後ろで、だんだんと顔色が厳しくなって来ているのはキバ(fa4319)だ。カレーのときに苦しめられた胴着をリベンジも兼ねて再び着用し、鉢巻で気合を入れて望んだはいいものの、肉汁たっぷりの美味しい餃子になかなか箸が伸びない。
「美味しいんだけど‥‥ううー‥‥」
「そんなときはストレッチです!」
 言って、キバの横で立ち上がったのは上野公八(fa3871)だった。動いて腹を空かせようというのか、ラジオ体操を始めている。
「うみゅ‥‥休み休み食べるのは‥‥いいのね?」
 お腹を擦りながら、いったん箸を置いたのはミミ・フォルネウス(fa4047)だ。最年少挑戦者の苦しそうな顔に、観客から「頑張れー! でも無理すんなー!」と声がかかる。
「ええい! 俺の顔に触るでない!」
 ふさふさとした鬣に手を伸ばし、きゃーきゃーと騒ぐ観客に牙を向いたのは有栖川総統(fa4050)だった。ガツガツと餃子を食いつつ、近付いて来た前田に自らのCDを手渡している。
「俺の曲、ヘルズストマックだ! 貴様ら、買うがいい!」
「宣伝ですか! 余裕ですねー」
 そんな余裕の有栖川に負けず劣らず、楽しそうに笑いながら食べているのは草壁 蛍(fa3072)だ。
「ねぇ、ビールないの〜? ビール〜」
「ぬぬぅ、余裕の高笑いですネ? 私も頑張るですネ!」
 言って、森村・葵(fa0280)が草壁に触発されたように餃子に被りついた。タレも使わず、そのままモグモグと食べている。
「うみゅ〜‥‥もう餃子、いらない‥‥」
「ここで最初の脱落者だ!」
 箸を置いたのはミミだった。3枚目の皿をやっと食べ終え、涙目で口の中に残った餃子を飲み込もうとしている。それを横目に見ながら、志祭 迅(fa4079)が黙々と餃子を口に運び、流し込むように水を飲んでいる。そして空になった皿を無言で積み重ね、店長から渡される新しい皿も無言で受け取っている。もはや餃子しか眼中にない状態だ。
 同じように一言も発さずに無言で食べているのは縞榮(fa2174)だ。前田にマイクを向けられ、初めて気がついたようにハッとする。
「いかん、いつもの癖で‥‥いや、美味いよ、この餃子。娘にもお土産に持って帰ろうかな」
 にっこりと笑って話す縞の後ろで、尚武(fa4035)がちょっと珍しい食べ方をしていた。丼に餃子を入れ、和食用に店長が準備していたダシ汁を貰ってかけて、水遁餃子風にして流し込むように食べている。
「チャンコっす。相撲取りが鍋に具を入れて食せば、それは全てチャンコっすから」
 言って、尚武はずるずるとダシ汁を啜って餃子を流し込んだ。


 始まってから数十分経つと、挑戦者たちの箸のスピードにも差が出始め、その積み重なる皿にも段差が現れる。
 6枚目の皿に乗っていた餃子を食べ、茶碗のご飯を食べ終えると、篠森は丁寧に箸を置き、両手を合わせた。
「‥‥ごちそうさまでした‥‥店長、ぐっじょぶ‥‥」
 店長に向かって、ぐっと親指を立てる篠森は満足気に頷く。
 次に箸を置いたのはキバだった。篠森より1枚多く皿を積み重ね、きつくなった帯に苦しめられる。
「もう駄目です‥‥うー、苦しい」
 言いながら、キバが帯を緩めた。
「ボーダーラインを突破しないと‥‥うっぷ」
 既に限界が来ている森村は、何やら呟きつつ餃子を口に入れるが、なかなか飲み込む事ができずに箸を置いた。口を両手で押さえ、アイドルの意地として吐く事は絶対にしてはならないと必死の形相である。
 その横で、ほろ酔いで既に食事を終えた感じになっているのは草壁だ。というか、8枚が積まれた餃子の皿よりも、空になったビール瓶の数の方が確実に多いのは気のせいか。
「店長ー! ビールもう一本ー!」
 流石ムチャプリンセス。飲みっぷりが既に人として無茶な域である。
「よぉし、45個の餃子を完食! 今日はここら辺で許してやろう!」
 言いながら、食事に満足した有栖川がCDを宣伝を始める。それに女子高生の客がきゃーきゃーと有栖川の鬣に手を伸ばした。いちいち叫んで手を跳ね除ける有栖川の態度が面白いらしい。
 ストレッチなどで空腹を誘おうとしていた上野も、流石にもう限界のようだった。それでもどこか満足気な顔で箸を置く。
「凄いお腹苦しいけど、美味しかったー。ダテマサばんざーい!」
 言って、上野はばたりと後ろに倒れると、ぽっこりとしたお腹をぽんぽんと叩いた。
「流石はダテマサ! 美味かった! ごちそうさま!」
 ぱんっと両手を合わせ、勢いよく頭を下げたのは舞腹だった。グルメレポーターらしく、自らが笑顔のまま食べられる範囲というものを知っているらしい。食べ終えた舞腹はすっくと席を立つと、実況をしていた前田の元に近寄る。
「さあ! 次々と脱落者が現れる中、生き残るのは誰なんでしょうか!」
「ティタネスさんはいいとこいくんじゃないかと思いますねー」
「なるほど! お! ここでまた一人厳しい表情の方が‥‥」
 前田の隣で舞腹が解説を始めると、志祭が箸を取り落とした。何とか餃子を飲み込んだはいいものの、ふらりと身体が傾ぎ、椅子ごとバターンッと倒れてしまった。客たちが慌てて避け、前田が志祭を店の奥へと運んでいく。そしてそそくさと戻ってくると、前田が再びマイクを持ち直した。
「どうやら限界が来てしまったようですねー」
「あれは危なかったねー。大丈夫かなー」
 舞腹が心配そうに奥を見やる横で、縞は店長に餃子の作り方を教わっていた。
「この餃子、美味しいね。隠し味とかあるの?」
「隠し味は教えられねぇが、ポイントは皮だな」
「へぇー、皮かぁ。確かに、モチモチしてていいね」
「‥‥えー、こちらは既に食事を終えているようですねぇ」
 のんびりと料理トークをしている縞に苦笑しつつ、前田は次の脱落者を探す。
 そんな中で、接戦の勝負をしているのは尚武と津野だ。片方が食べれば、片方が1個多く食べる、シーソーゲームのような状態になっている。
「も、もう駄目じゃ‥‥」
「うぅ、わ、私も‥‥」
「二人同時に脱落! 枚数は‥‥」
 言って、前田が数えると、二人とも同じ皿の枚数ではあったが、津野の方が餃子1個分多く食べていた。それに津野が誇らしげな笑みを浮かべる。
「さー! 戦いも終盤に差し掛り、現在残っているのは三人!」
 前田の言葉に、観客の目が未だ食べ続けている三人に注目する。その中で、一番最初に箸を置いたのは鬼頭だった。
「もう無理じゃい!」
「ここで一人が箸を置いた! 枚数は‥‥40皿! 餃子200個です!」
 鬼頭が満足気に前田の数えた枚数を聞いていると、今度は本郷がテーブルに倒れこむように箸を置いた。続いてティタネスもきちんと箸を置き、両手を合わせる。それに、前田が慌てて枚数を数えに行った。
「本郷さん、22皿です! 鬼頭さんには及ばない! ティタネスさんは!?」
 言って、前田が振り返ると、ティタネスが舞腹と共に皿の枚数を数える。
「あー、駄目だったか。30皿だ」
「ティタネスさん、30皿! ということは‥‥鬼頭さんが優勝だー!」
「お? あっしが優勝かい!」
 嬉しそうに目を見開く鬼頭に店長から賞金10万円が渡されると、観客からの拍手が降り注いだ。それに店長も満足気な顔で頷く。
「お前ら、よくぞここまで食いやがったなぁ。よしっ! 面白かったし、今回の参加費はタダにしといてやる! そんかわし、てめえら後でうちに飯食いに来いよ!」
 店長の太っ腹な言葉に、観客からも、挑戦者たちからも歓声が上がった。