The訓練・滑舌編アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 中畑みとも
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 なし
参加人数 12人
サポート 0人
期間 09/12〜09/14

●本文

 とある郊外にある訓練所。それは特定の生徒を持たず、訓練や講義などを定期的に行う度に、一般人から既に活躍している芸能人まで幅を決めずに生徒を募集している、特殊な訓練所である。
 その訓練内容もまた幅広く、さまざまな講師を呼んでさまざまな訓練をしている。それは総じて役者にとって必要な訓練であり、役者や、役者を目指す者にとって知る者は知る訓練所なのであった。
 そんな訓練所が、また参加者を募集しているという。その訓練所のドアには、こんなチラシが貼られていた。


 今回の訓練は『滑舌』。
 はっきりと声を出すための発声練習と共に、早口言葉などで滑舌の訓練をします。
 まず最初にテストをして、その結果によって難易度を決定致します。
 難易度はA、B、Cの3つに分かれます。Aが一番難しいレベルです。
 テストは下記の早口言葉を話して貰い、その滑舌を判断します。

『歌うたいが歌うたえと言うが
 歌うたいのように歌うたわれたら
 歌うたいのように歌うたうけれども
 歌うたいのように歌うたわれないから
 歌うたいのように歌うたわぬ』 

 なお、定員がありますので、参加希望の方はお早めにご連絡下さい。

●今回の参加者

 fa0213 一角 砂凪(17歳・♀・一角獣)
 fa0472 クッキー(8歳・♂・猫)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa3822 小峯吉淑(18歳・♂・豚)
 fa3861 蓮 圭都(22歳・♀・猫)
 fa3890 joker(30歳・♂・蝙蝠)
 fa3956 柊アキラ(25歳・♂・鴉)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4406 珂鴇大河(25歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●テスト
 訓練の始まりはテストからだった。
「歌うたいが歌うたえと言うが‥‥」
 一角 砂凪(fa0213)が何度か舌をもつれさせながら話し、クッキー(fa0472) は言いなれたようにハキハキと言葉を終える。
 河田 柾也(fa2340)が躓きつつも何とかテストを終え、桐尾 人志(fa2341)が口を大きく開けながら話すが、あまりハッキリとは聞き取れない。
 一番早くすらすらと話し、講師陣を頷かせたのは椿(fa2495)だった。ラリー・タウンゼント(fa3487)も良い調子でテストを終えるが、小峯吉淑(fa3822)は途中で言葉を噛んでしまった。
 揃って参加していた朧月読のメンバーたちは、蓮 圭都(fa3861)は難なくクリア、柊アキラ(fa3956)もそれなりに聞こえる声で終えるが、珂鴇大河(fa4406)は思いっきり舌を噛んでしまう。
 雅楽川 陽向(fa4371)が関西弁のイントネーションを何とか抑えつつ終え、joker(fa3890)も少々怪しいながら最後まで言い切った。
 全員のテストと、講師陣の相談が終わると、それぞれのクラスが言い渡された。


●Cクラス
「まずは、訓練に入る前に軽く準備運動をしましょう。口を閉じて、んーという声を出します。最初は小さく柔らかく、段々大きくして。それから、あーに変化させます」
 講師が言って、ハミングの練習を促した。それぞれのハミングが教室に広がる。
「んー、んんっ。先生、ちょっとここ暑いんやないですか?」
「湿気のせいでしょうね。発声練習をする際は乾燥は大敵ですから、教室の湿気を少し高めに設定してあります。それに暖かい方が発声はしやすいんですよ。喉が渇いたら遠慮なく飲み物を飲んで頂いて構いませんからね。第一に喉を気遣うこと。これが大切です」
「なるほどなぁ。流石先生や。よう考えてはるわ」
 河田の問いに答えた講師の言葉に、桐尾がうんうんと納得したように頷いた。
「くぅもちゃんと飲み物持って来たのね! ママが持って行きなさいってくれたのね! 暖かいお茶なのね! 喉に優しいのね!」
 クッキーがそう言ってウサギの形をした水筒を誇らしげに掲げる。その横で、一角が喉の状態を見ている。
「んー、あー、うん。喉の調子はいいみたい」
「それでは滑舌の訓練に入りましょう」
 講師が口を大きく開けて、あいうえおいうえおあ‥‥と、早口ですらすらと話す。
「これを三回ほど繰り返し、50音全てをやってみましょう。まずはゆっくり、思いっきり大きく口を開けて、ハッキリと声を出しましょう」
 言われて、ゆっくりとあ行の言葉が部屋に響く。普段そんなに大きな口で話さないため、口の端の筋肉が疲れて来る。
「おお、これはちょっとキツイですね」
「顔の筋肉が柔らかくないと、口も上手く回りませんからね」
「そうか。よし、講師! ビシバシ鍛えて俺を一人前の早口言葉師にしてくれ! そして今日の最後に早口言葉で、圭に結婚の再申し込みをするんだ!」
 小峯と講師が話している所に、珂鴇がめらめらと気合を燃え上がらせ、拳を握った。
「それでは、これを段々早くしていきましょう。はい、ご一緒に。あいうえおいうえおあ‥‥」


●Bクラス
 こちらの教室では、それぞれが自らの腹部に手を当てて立っていた。
「歌の場合もそうですが、演劇などで発声をする場合、基本の呼吸は腹式呼吸になります。まずは腹式呼吸を確かめて見ましょう」
 言って、講師が足をハの字にし、肩幅に開く。姿勢は垂直に、胸を張らず、骨盤をやや前に出した。
「大きく息を吸って、背筋を伸ばしながら、ゆーっくり息を吐きます。この時、膝の裏側を伸ばす事。下腹を段々と凹ませて‥‥それから肛門をじんわりと閉めるようにします。猫背にならないように注意して下さいね。息を吐ききったと思ったら、下半身をぎゅっと締めてから、一瞬で緊張を解いて息を吸って下さい」
「‥‥はー‥‥すぅっ。普段意識してないから、結構難しいな。でも、何だかすっきりしてくる。ちゃんと深呼吸してるって気分だ」
「吐いた後、吐いた分だけの息が肺に戻って来たら成功です。正しく吐き切る事が出来れば、自然に息は戻って来ます」
 jokerの言葉に講師がアドバイスをし、皆がそれに従う。
「それでは、早口言葉に入りましょうか。皆さんには軽めの早口言葉に挑戦して貰います」
 言って、講師が配ったプリントには『東京特許許可局許可局長、今日急遽許可却下』と書かれていた。それを見た柊の眉尻が下がる。
「うわ。これ、僕言えるかな‥‥東京特許キョキュ、駄目だ。東京キョキャ‥‥」
「最初から言えなくても構いません。まずは大きな声で、ハッキリと発音できるようにしましょう」
「良かった。最初から早口でって言われたら私、絶対喋れませんでした」
 講師の言葉に、雅楽川がほっと息を吐いた。それに笑って、講師が大きな声を上げる。
「腹式呼吸を意識してやってみましょうー! 部屋全体に響くようにー! 東京特許許可局許可局長ー!」


●Aクラス
 一方、こちらの教室では生徒全員が大きく口を開けて、顔の運動をしていた。
「発音をはっきりさせる為には、口と舌と喉の筋肉を鍛えないといけません。まずは、とにかく大きく口を開けて、舌根を限界まで下げて下さい。大きな欠伸をする感じで。その状態で、ア行とマ行の発声練習をします。マ行の時は唇を四角にする感じで、歯を閉じましょう」
「‥‥これ、ちょっと恥ずかしいかも‥‥」
 講師の言葉に恥じらいを見せたのは蓮だった。口を開けるまでならいいが、唇を四角にした講師の形相にちょっと目を背ける。同じく、椿とラリーも少し引き気味だ。
「でも、確かに筋肉が鍛えられてるって気がするね‥‥」
「お互いの顔を見ないようにすればいいんじゃないか?」
 訓練の為と自分に言い聞かせる椿に、ラリーが提案する。それに蓮も乗り、お互いの顔が見えないように位置を変えて、訓練を始めた。数十分ほど続けると、講師がぱんぱんと手を叩く。
「だいぶ良くなったので、次は早口言葉をやりましょう。皆さんには、ちょっと難しいのをやってもらいましょうか」
 そう言って配られたプリントには、『ラダレデロド、ダラデレドロ、ダゾデザドゼ、ゼドザデゾダ』という一文が書かれていた。それに三人が固まる。
「これをハッキリと、かつなるべく早く話して貰います」
「え、ちょっと待って‥‥らだれでどろ、じゃなかった。らだでれ、え?」
「これは‥‥難関だな‥‥」
 プリントを見ながら呟く蓮に、ラリーも困ったように眉を寄せた。椿もプリントを見下ろしてぱちくりと目を瞬かせ、にこにこと笑っている講師を見た。
「先生は言えるんですか?」
「言えますよ」
 椿の問いに、あっけらかんと答えて、プリントの文をすらすらと暗誦した講師に、三人は尊敬の拍手を送った。


●最後に
「それでは最後に、皆さんで一緒に外郎売りを印刷したプリントを差し上げましょう」
 三つのクラスで一通りの訓練をした後。また最初のテストをした部屋に戻った参加者たちは、講師から配られたプリントを見下ろしていた。
「これは有名やね。僕も知っとるわ」
「うっわー、長いんやなぁ」
 桐尾が頷き、河田がその長さに感心すると、クッキーがぴょんぴょんと跳ねながら言う。
「これ知ってるのね! くぅのパパとママが、どんな台詞も滑舌が大切だからって教えてくれたのね! やっぱり、くぅのママはくぅの事を1番に思っていてくれているのね♪」
「これは訓練のし甲斐がありそうですね」
 小峯の言葉に、講師が頷く。
「これにはあらゆる滑舌が入っていて、台詞でもあるため、演技と滑舌が同時に鍛える事ができます」
「長いから、集中力も必要だな」
「演技も考えれば、表現力も鍛えられるね」
「確かに。これだけの長さに動きもつけてやれば、体力もつくな」
 呟いたjokerに、一角が話せば、ラリーも頷く。
「加えて言えば、早く話す事ができる様になれば、リズム感も養えるよね」
「はぁー。これひとつでたくさんの訓練ができるんですね」
「1日1回でもいいので、これをやる事をお勧めします。上手い人なら、9回くらいの息継ぎで話し終える事ができますよ」
 椿の言葉に、雅楽川が感心すると、講師がにこやかに告げて、今回の訓練が終了した。
 参加者たちがぞろぞろと部屋を出て行く中、珂鴇が蓮を呼び止める。今日の目標である、早口言葉でプロポーズをする為に。
「よし、言うぞ‥‥け、圭! 俺、会ったときからすんげぇ圭のこっ‥‥でぇ!」
「え!? 何? 何なの?」
「まだまだだねぇ、大河君‥‥」
 しかし、訓練も空しく、肝心な所で舌を噛んでしまった珂鴇に、蓮が驚いて身を引く。そして、それを見ていた柊が生温い笑みを浮かべていた。