芸能人の怪談・兵アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
12人
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サポート |
0人
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期間 |
09/19〜09/21
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●本文
「今、芸能人の方々が体験した怪談を集めてるんですよ。結構ページ数あるんで、先日お話頂いた分だけじゃ、まだ足りないんです」
言ったのは怪談専門雑誌『幽闇』の編集者である。メモとレコーダーを手にウキウキと話している。
「芸能人の方々の実体験をまとめて、一冊の雑誌にしようという企画でしてね。何かいい話あったら教えて下さいよ。あ、もちろん、雑誌はお払いしてから売りますから。そこら辺は大丈夫ですよ。幽霊とか怪談系の実体験であれば、怖い話でも悲しい話でも良い話でも、面白い話でも何でも結構ですから。様々な怪談を集めたいと思ってますんでね」
怪談を話してもらう部屋は何の変哲もない編集部の一室である。だが、怪談を話す際には雰囲気作りのために灯りを数本の蝋燭のみにするらしい。
「暗いのが駄目な人がいる場合は、普通に電灯を点けても構いませんけどね。まあ、ただの雰囲気作りですから。気軽な感じで話して頂ければと思ってます」
そうして、編集者はテーブルの真ん中に置いたレコーダーのスイッチを入れた。
●ルール
怪談系の実体験を話してもらいます。本やテレビなどで聞いた話ではなく、必ずオリジナルのものをお願い致します。(創作でも結構ですが、必ずPCの実体験として話して下さい)
怖い話は、必ずしも一人一つ話さなければならないということではありません。二人同時に体験した、話す人の付き添いなどの人も参加可能です。
ただし、一人一つ以上のお話はしないようにして下さい。
●リプレイ本文
真っ暗な部屋に、蝋燭の炎が揺れている。その周りで、取材に協力してくれる芸能人たちが神妙な顔で座っていた。
「それじゃあ、宜しくお願い致します」
編集者が言って、レコーダーのスイッチを押す。それを確認し、橘・朔耶(fa0467) が口を開いた。
「昔から不思議な話が数多く残るという、とある町の傍にある霊験あらたかな山に取材に行ったんだ。そのときに町の人から聞いた話なんだけどね」
その山って、整備された道も通ってるし、自然も豊かで日中は山を散策する人もかなりいるんだよ。でも、深夜になると一気にその山に入る者がいなくなるんだ。地元の人の話じゃ、夜は山神さまが眠っているから、煩くすると怒られるんだって。
ある日、何も知らない旅行者が、山を越えて隣町の旅館まで行こうとしたんだけど、渋滞に巻き込まれて、予定より随分と遅く山に着いたらしい。町の人たちは危ないからって言って止めたんだけど、迷信だって突っ撥ねられて。結局、旅行者は深夜に山に登って行ったんだ。
翌日の朝に、町の人たちは心配になって、山に向かったんだ。そしたら、山の中腹の所に旅行者が乗っていた車が止まっていて、まるで何か大きな力に引きずり出されたかのように車の座席が落ちてたんだって。旅行者は未だ行方不明らしいよ。
「その人、食べられちゃってたりして‥‥」
「ええー? 神様ってコワーイ」
橘の話に有珠・円(fa0388)が呟くと、姫乃 唯(fa1463)も眉を顰めた。
編集者に促され、楼瀬真緒(fa4591)が話し始める。
「これは、飼っていた猫の話なんですが‥‥」
ある頃、部屋で寝ていると、誰かが私を覗き込むように見ている気配を感じる事が続いたんです。その日も気配は感じてたんですけど、何時ものように気のせいだと思って寝ていました。そしたら、夢を見たんです。
夢の中で私はバスに乗っていました。隣にいた子供が、持っていた兎を可愛いでしょ? と見せてくれた時、その兎が突然凶暴化して襲ってきたんです。必死に逃げていたら、どこからか私の飼い猫が現れて、兎をパクッと口にくわえて助けてくれたんです。
そこでハッとして目が覚めたら、その猫が私の顔を覗き込むようにして、胸の上に座っていました。
後から考えると、うなされてる私を心配してくれたんでしょうね‥‥それ以来、誰かに覗き込まれるような気配もなくなって。でも、猫はその後、まるでその気配を持って行ってくれたみたいに、急に亡くなってしまったんです‥‥。
「主人思いの猫だったんですね‥‥」
しんみりと話し終えた楼瀬に、伊集院・まりあ(fa2711)が呟くと、LUCIFEL(fa0475)が続いた。
「俺がまだ小学生だったときの話だ。あれは確か秋口にさしかかった頃だったかな」
その日は空が厚い雲に隠れていて、本当に真っ暗な夜だった。夕食を食べ終えて一人居間に戻り、TVを見ていたらふと、外に人の気配があるような気がしてな。
家族はまだ全員隣の部屋に居るはず‥‥気になってカーテンを開けて外を見ると、少し離れたところに人が立っていたんだ。誰だろうと思って、もっとよく見ようとした瞬間。ソイツが一瞬にして2,3mの距離まで近付いてきた。
それで姿が確認出来たんだが‥‥そいつは手に幾つもの首を持った落ち武者だった。
あっと驚いたときには、刀を振り被って向かって来たから、慌ててカーテンを閉めた。次にカーテンを開けた時は誰もいなかったよ。
暫くは震えが止まらなかったな。
「斬られなくて良かったな」
「全くだ」
橘にLUCIFELが苦笑する。それに雨堂 零慈(fa0826)が感慨深げに頷き、口を開いた。
「拙者は寺に籠った時の奇妙な話をしよう‥‥落ち武者ではなく、刀の話なのだがな」
拙者は精神修行のため、ある寺に一週間籠ったのだ‥‥滝に打たれたり座禅を組んだり色々な修行をした。その時、本堂に奉られている一振りの刀を見つけたのだ‥‥
拙者も、刀には多少腕に覚えがあるのでな‥‥住職に刀の事を聞いてみた。すると、その刀は幕末にある尊王攘夷志士が所有していた刀で、明治時代に新政府に関わる人物たちを辻斬りしていた妖刀だと教えて頂いた‥‥そして、住職の先代がようやく霊を鎮め、奉っているのだから、触るでないと止められた。
しかしある日、夜中に喉が渇いて水を飲みに本堂を通ると、その刀が傾いていたのを見つけた。落ちては危ないからと元に戻そうとして刀に触れた時、思わぬ拍子に刀が鞘から抜けてしまったのだ。
その刀身は今尚輝き、鞘からは生暖かな血が零れ出した。拙者は慌てて刀を戻し、住職に事の次第を伝えて詫びた。すると、住職は目を見開いて、あの刀は錆びていて抜けない筈だと仰った。
だとすると、拙者が抜いた刀は、一体何だったのだろうな‥‥。
「凄いなぁ。妖刀って本当にあるんだな」
雨堂の話に、通常とずれた所に感心していたのは柊アキラ(fa3956)だった。それに編集者が苦笑しつつ、DESPAIRER(fa2657)に話を促す。
「結構最近のことなんですけど‥‥」
ある晩、プロダクションで曲作りをしていると、見慣れない若い女性が入ってきました。その女性が幽霊である事には一目で気づきました。まあ、幽霊には慣れていますからね。それで、どちらさまですか? と尋ねたところ、その女性は素直に名前を教えてくれました。その名前の方は、私がデビューした直後から度々ファンレターを送ってくれたりした方で、直接お会いしたことはありませんでしたが、名前はよく知っていました。
事情を聞いたところ、近くで事故に巻き込まれて亡くなったとの事で、最後にせめて一度私に会いたいと、その一念でわざわざ来て下さったとのことでした。
そして、最後に一度握手して欲しい、そうすればもう思い残す事はない、と言うので、快くそれに応じようとしたのですが‥‥握手、できないんですよね。すり抜けてしまって。
そのせいか、女性はその後も暫くプロダクションの中にいて、他の人が帰った後に二人でいろいろ話をしたりしていたんですが、二週間ほどでいなくなってしまいました。
暫く一緒にいてあげられたことで、心残りが消えて成仏できたのならよかったのですが。
「幽霊と話ができるってのが凄いですね‥‥」
DESPAIRERに狭霧 雷(fa0510)が溜息を吐く。そして、自らの話を始める為に口を開いた。
「これは私が5歳位の時の話なんですが‥‥」
ある夏の晩、寝ていた時にふっと目を覚ますと、廊下に人の気配を感じたんです。恐る恐る見やると、そこには人影があり、ゆっくりとこちらに近寄ってきていました。
夏という事もあって障子が開けられていたんですよね。ゆっくりと現れた顔は能舞台で使われる般若そのものでした。
般若はゆっくりと私のいる部屋に足を踏み入れると、天井に溶けるようにすぅっと消えていきました。
数年後、物置と化していた奥の部屋を私の自室に使うことになったので整理をしていたんですが、一番奥の壁に荷物に隠れて、あの般若の面がかけてあったんです。
流石にその時はうろたえましたね。
「お面はどうしたんですか?」
「まだちゃんと保管してあるよ。捨てるのも怖いしね」
伊集院に狭霧が笑いかけると、柊がにこにこと話し始めた。
「小学校の頃のお話なんですが」
夏の学年行事で学校でキャンプっていうのがあって、夜のお泊りは体育館だったんです。体育館の固い床に生徒がわらわら寝るから熱かったですね。
僕は目がさえてすぐには寝れなかったんです。でもいつのまにかやっぱり寝てたらしくて、夜中にふっと目が覚めたんです。
そしたら体が動かなくて。金縛りでしょうね。なっちゃったものは仕方ないし、いつ解けるかなーって思って天井見てたら、天井がどんどん下がってくるようで。
吃驚はしたんですけど、その後の記憶がないんで、きっと寝ちゃったんでしょうね。 後でこの話を家族にしたら、兄貴も同じ体験をしてたみたいです。双子もある意味恐ろしいなって話。
「何か、飄々としてるなぁ」
「貴殿は心の強い男だな」
苦笑する有珠と感心する雨堂に、柊が微笑む。それに少し緊張が解けたのか、伊集院がゆっくりと話し始めた。
「学校で、こっくりさんがはやってた時期があって、みんな放課後にこっそりやっていたんです」
うちのクラスでやるといつも同じこっくりさんが降りてきていて、なんだか私がすごく気に入られていたみたいで、質問もしていないのに色々教えてくれたりして。ちょっと怖かったんですけど、私がいない時はきちんと答えてくれない、とかで、いつもメンバーに入れられていたんです。
ある日、下校時間が来てしまったんでこっくりさんに帰って貰おうとしたら帰ってくれなくって、みんなで必死に帰って下さいってお願いしたら、私を連れて帰っていいならって言い出して‥‥それに、一緒に帰ろうとこっくりさんに参加せずに待っていてくれた友達が、いい加減にしろ、とっとと帰れ! と怒ったんです。
そうしたらこっくりさんが、邪魔するなら殺すぞって動いたんですけど、間髪いれずその友達が、殺せるもんなら殺してみろ! と凄い大きい声で怒鳴ったんです。
暫くして、怖い帰るって動いて、こっくりさんは帰ってくれました。
その後ですか?
こっくりさんは二度とやらなくなったし、友達も私もすごく元気ですよ。
「元気なら良かった」
伊集院に姫乃がにこりと笑い、話し始める。
「あたしのおかーさん、あたしがちっちゃい頃に亡くなってるんだけど。そのおかーさんが育てていた薔薇が庭にあるのね」
おかーさんが亡くなった後、春も秋も花が咲かなくて、枯れちゃったのかなぁって思ってたんだけど。何年か経ったある年のおかーさんの誕生日、おかーさんが使っていたピアノが、誰も触っていないのに勝手に演奏を始めて。
庭からも甘い香りがして来て行ってみたら、薔薇の花が満開だったの! まだ2月だったのに。
花は1日しか持たなかったんだけど、綺麗なピアノの曲と相まって幻想的な風景だったよ。で、その年から薔薇はまた春と秋に普通に咲くようになって。
あれ以来ピアノの方は勝手に鳴る事はないけれど、毎年2月のおかーさんの誕生日にも、1日だけ薔薇の花が咲くんだよ。
その日はおかーさんの霊が降りて来ていて、薔薇もそれを喜んで花を咲かせてるんだって思ってるの。
姫乃の可愛らしい話に、和やかな空気が漂う。その中で、有珠が封筒から何枚かの写真を取り出した。
「ほい、これ見てもらえるかな? よく見て。何か、気づかない? ‥‥そう、心霊写真。あ、そんな怖がらないで。実はこれ全部、俺の古い友人が作ったものだから。そう、偽物。良くできてるでしょ。自作の心霊写真を雑誌に投稿してはコメントを楽しみにしてるっていう、まぁ変な奴だったよ」
さて。そいつがいつものように投稿した雑誌を持ってきたのさ。
同じ名前じゃまずいって、毎回毎回誰か友達の名前を借りては応募してる奴だったんだけど、その時は俺の名前だった。俺が撮った写真を勝手にベースに使ってさ。
写真は夏の海。被写体はそいつ。そいつは自分に寄り添うように、半透明の女を合成したんだと。雑誌では正真正銘の心霊写真です! なんて大々的に取り上げられてて。
ページを開いた瞬間、あいつの顔色が変わったんだ。ページにはこう書かれてた。右の女は合成。だがしかし被写体の左の顔は‥‥ってね。
普通なら、合成前には気がつくよね。写真の半分を占める恨めしそうな女の顔、なんて。‥‥そう、加工した後に浮かび上がって来たらしいんだ。
で、これがその元になった写真のネガ。俺はその事件以降、今まで封印してたんだけど。‥‥見てみる?
「おお、いいですねー、そういう写真。袋綴じとかで使えそうな‥‥」
有珠に言われて、編集者が嬉々として封筒を受け取り、中のネガを取り出そうとした時、窓も開けていない部屋の中に急に風が吹きぬけ、蝋燭の炎が消えた。
慌てて編集者が部屋の電気をつけるが、特に変わった様子もなく。
結局、袋綴じを作ったかどうかは、雑誌を購入してのお楽しみ‥‥。