ElDorado/RojoCantar 2アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
11/06〜11/10
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前回のリプレイを見る
●本文
龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
その世界には5つの国があった。
氷雪の国、ノルド・ノルテ。
常夏の国、ユーク・スール。
鉱山の国、デュシス・オエステ。
芸術の国、オスト・エステ。
そして、その4つの国の中心に位置する、セント・セントロ。
ある日、セント・セントロの魔法学校を一人の魔法使いが卒業した。
胸の緋色のペンダントを揺らした魔法使いは、一つの目的を胸に旅立つ。
自らの出生の謎を知る為に。
第2話『ミズイロ ノ ハナ』
まずは主人公の出身地であるノルド・ノルテに帰って、世話になった人たちに卒業した事を報告しようとする主人公たち。その道で、ノルド・ノルテの永久凍土が溶け始めているという噂を聞く。
溶け始めた永久凍土の調査に乗り出した主人公達が見たのは永久凍土を守っていた若い白龍が熱にうなされている姿だった。
主人公達は熱を冷ます為に、ライバルの強力を得て、永久凍土の湖の奥深くに咲いている『ネーヴェ』という花を探しに向かう。
●必須キャスト(連続出演者を望む)
・主人公の魔法使い
・主人公の護衛
・主人公の妹分
・主人公のライバル
・ライバルの護衛
●通常キャスト
(連続出演でない為、希望者がいない場合は無理に決めなくてもいいです。複数形の場合、何人配役しても構いません)
・通常キャスト/白龍(声優)/宿屋の主人/施設の人々/街の人々/
※白龍の性格は、のんびりとした、少し間の抜けた性格です。
詳しい設定は、第一回を参照して下さい。
後、前回設定していなかった魔法について、追加設定を作りましたので、参考にして下さい。
●魔法
炎・水・風・土の四属性がある。光・闇の魔法は使用時に命を削られる為に禁呪とされ、限りなく不死である龍のみしか使う事ができない。尚、属性魔法の応用として他の生物へ変身する魔法を使う者もいるが、幻の発展系に過ぎず、力などに変化はない。
氷系は水魔法の、植物系は土魔法の最上級魔法となる。なお、炎の最上級魔法は光に、風の最上級魔法は闇になる為、学校では教える事はない。
呪文は学校の基礎で教えられる基本的なものの他は、自らが使いやすく、かつ相手に何の呪文なのかを悟られぬ為に、オリジナルのものを考えるのが通常である。この時、学校では基本の呪文のみを使用し、オリジナルは旅に出た後で使用するのが常識。
呪文は長ければ長いほど集中力が増し、強力になるが、使い難くなる。レベルが高いと呪文を短くする事もでき、龍や最高クラスの魔法使いになると呪文無しも可能になるという。
●基本攻撃呪文
左から初級、中級、上級、最上級(水・土のみ)魔法となる。
炎:フレイム、フレアル、フレアザード
水:アクア、アクオン、アクアリオン、グランキエース
風:ウィンド、ウィガル、ウィガリエン
土:ストーン、ストラガ、ストンリード、ウィールスクム
基本呪文では、どの属性・級でも火球・水球のように丸い形で生み出され、級が上になるにつれて球が大きくなる。この球の形を変える事がオリジナルの第一歩となる。
●基本補助呪文
炎:フォルティフィアン(魔法・物理の攻撃力を上げる)
水:エルステヒルフェ(傷を癒す ※回復力は魔法力に左右される)
風:ヴィズィオン(幻を見せる ※幻は魔法使いのイメージによって作られる)
土:クレフティヒ(魔法・物理の防御力を上げる)
基本呪文では、どれも単体のみに有効である。属性は合体させる事もでき、補助呪文では合体がオリジナルの一歩となる。
●リプレイ本文
「良かったー」
ペンダントに頬擦りをしているのは、ミメイア・クンメナー(富垣 美恵利(fa1338))だった。それをブリット・ベールヴァルド(ティタネス(fa3251))が笑顔で見て、リーチェ・ロデム(榛原絢香(fa4823))を振り返った。
「リーチェって言ったっけ? 言わなきゃいけない事、あるんじゃないの?」
リーチェがちらりとミメイアを上目遣いに見る。
「そりゃ、悪かったとは‥‥思うけどさ‥‥あたしだって‥‥ごめんなさい。あと、助けてくれて、有難う‥‥」
「どういたしまして」
渋々と謝罪の意を示したリーチェに、ミメイアは全く気にしていない素振りで笑う。
「それで? あんたはこれからどうすんだ?」
「どうするも何も‥‥ここにいたら残党に見つかるかもしれないし‥‥どっか別の国に行くよ」
「じゃあさ、一緒に来ない?」
ブリットの問いに答えたリーチェに、にっこりと微笑んだのはミメイアだった。その言葉に、リーチェが驚き半分、期待半分と言った表情で顔を上げる。
「いいよね? ブリット」
「あたしは、ミィがそれでいいならいいよ」
「い、いいの? ラッキー! 宜しく、姉貴!」
ブリットが心得た様子で同意を示すと、リーチェが二人の顔を交互に見た。それにミメイアが満面の笑みを返すと、リーチェは嬉しそうに目を輝かせた。
「でさぁ、姉貴達はどこ行くつもりだったの?」
「とりあえず、ノルド・ノルテに。卒業した事を故郷の人達に知らせようと思って」
石畳の道を走る馬車に揺られながら、ミメイアの言葉に首を傾げるリーチェにブリットが説明する。
「どの位で着くの?」
「うーんと、この馬車だと三日位かな」
馬車の中には沢山の荷物を背負った商人や、魔法使い等の姿もあった。リーチェが「三日かぁ」と呟き、さっきから何度もぶつけている腰を擦る。
「ねぇ、姉貴って魔法使いなんだろ? びゅーんって空飛んで行ったりとか出来ないの?」
「飛行魔法はあるにはあるけど‥‥私、風魔法、苦手でさ‥‥」
天井を指差すリーチェに、ミメイアは困ったように笑い返した。リーチェが不満そうな顔を見せる。
「魔法使いって、何でもできるわけじゃないの?」
「うん。ごめんね?」
「べ、別に姉貴が謝る事じゃ‥‥でも、魔法使いっていいよね。金も儲かるし」
「貧乏な魔法使いもいるぞ?」
「金を稼げるチャンスがあるだけ、いいよ。‥‥うちみたいに、石しか取れないような人間よりは‥‥」
ブリットにぼそりと呟いたリーチェの言葉は二人の耳には届かなかった。
「あれがノルド・ノルテだ」
極寒の地と言う話だから、人々は大量の服を着込んで家の中に閉じ篭っているとばかり考えていたリーチェは、分厚いマントを羽織りつつも忙しなく道を行き交うノルド・ノルテの人々にぱちくりと目を瞬かせた。中には袖の短い服を着て走り回っている子供もいて、リーチェは思わず震える自らの身体を抱きしめる。
「さ、寒くないの」
「まあ、慣れてるしな」
マントをきっちり着込んで白い息を吐くリーチェに、ブリットは軽装で平気な顔をしている。そんな二人を促し、ミメイアは一つの家に入って行った。
「ただいま! 母さん! 皆!」
「ミィ? ミィかい!? ああ、おかえり!」
ドアを開けたミメイアを迎えたのは、初老の女性だった。目尻に涙を溜め、ミメイアを抱きしめる。ついで、ぞろぞろと現れた子供達にブリットとリーチェが囲まれる。子供達に頭を撫でるブリットの隣で、リーチェは両手を挙げて固まっていた。
「な、何こいつら、姉貴の兄弟?」
「ああ、言ってなかったっけ。あたしたち、施設育ちなんだ。で、ここがその施設」
ブリットに説明されて、リーチェが嬉しそうに子供達を抱きしめるミメイアを見た。
「首席って、学校で一番の成績って事?」
子供達に囲まれ、ミメイアの義母である初老の女性が作った料理を食べながら卒業した事を話していたミメイアに、隣にいた子供が声を上げた。それにミメイアが頷くと、子供が「じゃあさ、ミィ姉ちゃんなら何とかできるんじゃないの?」と義母に話しかける。
「何かあったの?」
「いやね、暫く前からなんだけど。永久凍土の氷が融け始めてるんだよ」
不安そうな顔をする義母に、ミメイアとブリットが顔を見合わせる。それにリーチェが小首を傾げた。
「いいんじゃないの? ここも少しは暖かくなるんじゃない?」
「ううん。逆に永久凍土が融けてしまえば、世界全体が暑くなって、自然のバランスが崩れちゃうの。だから白龍さまが永久凍土を守ってるんだけど‥‥」
「竜洞に続く湖の氷も融け始めてるんだ」
リーチェにミメイアが少し難しい顔で説明すると、駄目押しのように告げられた義母の言葉に、ブリットの表情も厳しくなる。そんな二人の顔を、義母は微かに期待の篭った目で見た。
「何とかならないかね、ミィ」
「‥‥と、言われてもね‥‥」
呟いたミメイアの目の前には、広大な湖が広がっていた。朝の日差しを浴びて、氷の塊が浮かぶ水面がキラキラと輝いている。それは、半永久的に融けないと言われていた氷の湖にあるまじき姿だった。
「泳いで行ったら確実に死ぬし‥‥」
「船とかないの?」
「いつもならここは分厚い氷が張ってて、普通に歩いて進めたから、船とかは置いてないんだ」
「氷も浮かんでるし、船もちょっと危険だろうな」
腕を組んでうーんと唸る二人の横で、リーチェが足の先で近くに浮かんでいた氷を押す。かなり大きいが、人一人を長く支えられる程の浮力はなさそうだった。
「これは‥‥空を飛んで行くしかないな‥‥」
「私は無理だなぁ‥‥」
「姉貴、そんなに風魔法が苦手なの?」
「苦手って言うか‥‥そもそも、飛行魔法自体が風魔法の最上級魔法に匹敵するレベルのものだし、よほど風に祝福されている人じゃないとコントロール出来ないのよ」
「他の魔法使いは? 街にも魔法使いはいるだろ?」
「いたとしても、風魔法は無理だろうな。ここでの魔法は炎と土が歓迎されるから、それが得意な魔法使いが集まるんだ。風が得意なのはまずいないだろうな‥‥」
「学校に連絡をした方が‥‥」
言って、ミメイアがブリットを振り返った時、聞き慣れた声が耳に届いた。
「全く! 何ですの、ここは! 寒過ぎじゃありません事!?」
「お嬢様。ここが寒いのは当たり前で御座います」
「判ってますわ、そんな事! でも私は寒いのは苦手なのよ!」
文句を言いつつ、ウィスタリア・ブローディア(シヅル・ナタス(fa2459))が差し出したマントを着込んだのはクロウディア・フォン・フローライト(エルティナ(fa0595))だった。ガタガタと震えながら肩を擦るクロウディアに、ミメイアが駆け寄る。
「クラウちゃん!?」
「あら、ミメイア・クンメナー。そういえば、ここはあなたの故郷でしたわね」
「何でここにいるの?」
氷の湖が一番綺麗に見える宿屋と銘打って、貴族達に人気の宿屋から現れたクロウディアは、ミメイアの問いにふんっと鼻を鳴らした。
「愚問ですわね。私は修行の為、世界を巡る身。ここにいても、何の問題もないと思わなくて?」
答えた直後、クロウディアの両手ががっしりとミメイアに握られる。突然の行動に驚くクロウディアに、ミメイアがずずいっと詰め寄った。
「クラウちゃん! 協力して!」
ぶわっと五人の足元に風が巻き起こり、地面から足が離れた。弧を描くように湖を飛び越えた五人が竜洞の入り口に着くと、五人の身体を纏っていた風が音もなく霧散した。
「やっぱりクラウちゃんは凄いなぁ。もう飛行魔法を覚えてるなんて」
「ほほほ、当たり前ですわ」
「お嬢様は歩くのがお嫌だと申されまして、一番最初に研究したのが飛行魔法で御座いました」
「ウィス! 余計なことは言わないの!」
ミメイアが感心する横で、恭しく頭を下げるウィスタリアにクロウディアが怒鳴る。それにブリットが肩を竦め、リーチェがいけ好かなそうな顔をしたが、ミメイアは全く気にせずに一目散に竜洞の中に入って行った。それほど大きくない竜洞の中には、一匹の白龍(声:木崎 朱音(fa4564))が蹲っている。
「白龍さま! 大丈夫ですか?」
「あうう〜‥‥? どなたですのぉ〜‥‥?」
「永久凍土が溶け始めていたので、御身を心配して参った者ですわ」
「あらぁ〜、それはごめんなさいねぇ〜‥‥? ちょっと風邪をひいてしまったものでぇ〜‥‥」
「龍も風邪なんかひくんだ‥‥」
ミメイアとクロウディアの言葉にのんびりとした口調で答えた白龍に、リーチェが呆れたように呟く。それにブリットが困ったように話しかけた。
「風邪かぁ。龍に効く薬なんてあるのか?」
「薬はぁ‥‥薬草があるんですけどぉ〜‥‥湖の底に生えてるんですの〜」
「湖の底!?」
「判りました。私達が取って来ますから、白龍さまは休んでらして」
薬草がある場所に驚いて身を引くブリットとリーチェに構わず、ミメイアがさっさと約束を交わしてしまう。それに慌てたリーチェの声が大きくなるのも無理はない。
「ちょ、湖の底なんて、どうやって取りに行くのさ!」
「湖はとんでもなく冷たいんだぞ。死んじゃうって」
この中でも一番体力のありそうなブリットですら「無理無理」と手を振るのに、ミメイアがクロウディアを振り返った。
「クラウちゃん‥‥」
「何ですの、その期待する目は。ここまで飛ばせて差し上げただけでも充分でしょう?」
ミメイアから目を逸らすクロウディアに、すっとウィスタリアが近づいて囁く。
「お嬢様。民の生活を守るのも貴族の重要なお役目の一つと思われますが」
「‥‥ああ、もう! 判りましたわ! 協力して差し上げてよ!」
頬を赤く染めて、「これは貸しですわよ!」と叫ぶクロウディアに、ミメイアが嬉しそうに抱きついた。
クロウディアが杖を翳し、何やら呟く。すると、ミメイアとブリット、リーチェの身体が淡い緑の光に包まれる。
「あなた方の身体の周りに風のバリアを貼りましたわ。これで水中でも暫くは呼吸が出来るでしょうし、冷たさも感じませんわ」
「有難う! クラウちゃん!」
「全く、何で私がこんな事‥‥」
ぶつぶつと文句を言うクロウディアを後目に、ミメイアが氷の浮かぶ湖へと飛び込んだ。続いてブリットも後を追い、少し逡巡した後でリーチェも飛び込む。
湖の中は日差しが差し込み、とても明るかった。更に岩や草なども全くない為、視界は良好だ。程なくして、底に一輪の花が咲いているのが見える。薄く白い氷のようなその花の他には薬草のような物は見当たらず、ミメイアにはそれが白龍の欲している物である事がすぐに判った。
真っ白な茎に手が触れる。瞬間、パチンッと電気が走ったような衝撃と共に、ミメイアの身体を包んでいたバリアが弾け飛んだ。冷たい水に、刺すような痛みが全身を襲う。大量の息を吐き出しながら、ミメイアは花とクロウディアの魔力がぶつかり合ってしまったという事を冷静に考えていた。ブリットとリーチェが慌てて手を伸ばすの目の端に捉えながら、ミメイアの意識が遠くなる。
ふわりと、ミメイアの胸元にあったペンダントが浮き上がり、赤い光を放った。光がミメイアの身体を包むと、ブリットがミメイアを抱き抱えて水面へと浮上する。
「ミメイア! 大丈夫か!」
「姉貴!」
竜洞の入り口に戻り、ブリットが目を閉じたままのミメイアの頬を叩いた。顔が顰められ、ミメイアが目を開ける。ぱちぱちと瞬きをし、平気そうな顔をするミメイアに、ブリットとリーチェ、そしてクロウディアがほっと息を吐いた。
「私‥‥」
ミメイアが呟き、自分の身体が赤い光に守られているのに気付いた。身体は少しも濡れていない。そして、ペンダントが赤い光を点滅させると、湖の中から白い花が赤い光に包まれながら浮かび上がって来た。花がミメイアの手の中に納まると、赤い光が消え、ペンダントも沈黙した。
ミメイアの渡した白い花を白龍がぱくりと飲み込むと、白龍は気だるげだった身体を元気に起こした。
「有難うぉ〜。すっかり良くなりましたわ〜」
「‥‥この口調、素だったんだ‥‥」
のんびりと礼を言う白龍に、思わずリーチェが呟く。それに気付いた様子もなく、白龍は五人を見渡した。
「双頭龍の国の方も、黒龍の国の方も、助かりましたわ〜」
「双頭龍の国はクラウちゃん達だから、黒龍の国は‥‥リーチェ、あなたデュシス・オエステの生まれだったの?」
「まぁ‥‥ね」
ふんふんと鼻を鳴らしながら話す白龍に、ミメイアがリーチェを振り返る。それにリーチェが少し嫌そうに答えた。
「あなたは我が国の子ねぇ〜?」
「へぇー、凄いな。龍ってそんな事も判るんだね」
「あなたはぁ〜‥‥あらぁ? おかしいわねぇ〜‥‥」
鼻をブリットに近づける白龍にブリットが笑うと、白龍はミメイアを見て首を傾げた。そしてミメイアのペンダントを見つけると、得心したように頷く。
「ああ、そう〜。成る程ですわぁ〜」
「白龍さま! 私の出身国が判るのですか? 宜しければお教え願えないでしょうか! 私は、自分の生まれ故郷を探しているのです!」
何か知っている様子の白龍に、ミメイアが叫ぶ。
「それは自らの力で探さなければならない事‥‥私からは教えられませんのぉ〜。ごめんなさいねぇ〜」
必死な表情のミメイアに、白龍は穏やかな声で答えた。ミメイアが肩を落とすと、白龍はにこりと笑って話した。
「そのペンダントの作られた地へ行ってみたら如何〜? きっと風が味方をしてくれますわ〜」
「ペンダントが、作られた場所‥‥」
白龍の言葉に、ミメイアがペンダントを見下ろした。