ElDorado/RojoCantar 4アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/19〜12/23
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●本文

 龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
 その世界には5つの国があった。
 氷雪の国、ノルド・ノルテ。
 常夏の国、ユーク・スール。
 鉱山の国、デュシス・オエステ。
 芸術の国、オスト・エステ。
 そして、その4つの国の中心に位置する、セント・セントロ。

 ある日、セント・セントロの魔法学校を一人の魔法使いが卒業した。
 胸の緋色のペンダントを揺らした魔法使いは、一つの目的を胸に旅立つ。
 自らの出生の謎を知る為に。


第4話『クロガネ ノ コエ』
 デュシス・オエステに辿り着いた主人公達。そこは既に戦場と化していた。
 魔法騎士団に協力し、モンスター討伐に向かう主人公達は、黒龍と怪我をした男性に出会う。
 その男性は何と、妹分の父親であり、主人公のペンダントについた石を採って来た人物であった。

(予定していた撮影の日程が人手不足により延期してしまった為、再度役者の募集を行います)


●必須キャスト(連続出演者を望む)
・主人公の魔法使い
・主人公の護衛
・主人公の妹分
・主人公のライバル
・ライバルの護衛

●通常キャスト
(連続出演でない為、希望者がいない場合は無理に決めなくてもいいです。複数形の場合、何人配役しても構いません)
・通常キャスト/魔法騎士団の人々/黒龍(声)/妹分の父親/
 ※黒龍の性格は、逞しく渋い老人男性といった感じです。


 詳しい設定は、第1話、第2話を参照して下さい。

●今回の参加者

 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa0595 エルティナ(16歳・♀・蝙蝠)
 fa0607 紅雪(20歳・♀・猫)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa4564 木崎 朱音(16歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「怯むな! 数は多いが力は弱い! 魔法で一掃しろ!」
 剣と斧がぶつかり合う音と、爆音が響く中、魔法騎士団の団長は部下達に指示を出していた。そこに、一人の伝令兵が団長へ近づく。
「どうした! ‥‥何? 判った。アルシェ!」
 伝令兵の言葉を聞いた団長が、一人の部下を呼ぶ。その声に現れたのは団長補佐であるアルティナス・クロスドーラ(紅雪(fa0607))だった。団長がアルティナスに何やら伝えると、アルティナスは頷き、颯爽と鉱山を下りていった。


第4話『クロガネ ノ コエ』


「貴殿らが、魔法学校の卒業生達か。私の名はアルティナス・クロスドーラ。双頭龍魔法騎士団団長補佐を勤めるものである。アルシェと呼んでくれて構わない」
 アルティナスに名乗られ、デュシス・オエステの国門へと着いたミメイア・クンメナー(富垣 美恵利(fa1338))とクロウディア・フォン・フローライト(エルティナ(fa0595))は、卒業生の証であるバッジを見せた。持ち主の魔力のみに反応するバッジが、淡い光を放つのを見て取り、アルティナスが頷く。そして、2人が自らの名前と護衛達を紹介すると、アルティナスは一瞬だけ目を見開いた。
「なるほど。名前は聞いている。魔法学校今期の卒業生のうち、首席と次席に協力頂けるとは、こちらも有難い。貴殿らには是非、別働隊として動いて欲しい」
「別働隊?」
 聞こえてくる戦いの音に眉を顰めつつ、ブリット・ベールヴァルド(ティタネス(fa3251))が首を傾げる。
「今街に侵入せんとしている魔物は、オンブルゴブリンと呼ばれるものだ。こいつらは力こそ弱いものの、奴等を排出しているマザーを倒さねば際限なく増え続けるという、厄介な魔物なのだ」
「しかし、マザーは倒しても、幾度も復活すると聞きましたが」
 クロウディアの後ろに控えたウィスタリア・ブローディア(シヅル・ナタス(fa2459))に、アルティナスが頷いた。
「だからこそ黒龍さまの力により、鉱山の地下にて封印が成されていたのだが、ここのところの採掘により地盤が緩み、封印が解けてしまったらしい。この別働隊の任務は、黒龍さまによる封印へのサポートである」
「その、黒龍さまはどこにいるの?」
「黒龍さまはマザーと同じ場所にいる。マザーの魔力は探知して把握している故、準備がよければすぐに向かうぞ」
 リーチェ・ロデム(木崎 朱音(fa4564))の言葉にアルティナスはしなやかなマントを翻した。


 風が砂を巻き上げながら進む。クロウディアの魔法により空を飛び、魔法騎士団達が食い止めているオンブルゴブリン達の頭上を通り過ぎたミメイア達は、マザーの魔力を発見したという、街から離れた鉱山の洞窟近くにやって来た。
「あれ! 黒龍さまだ!」
 リーチェが指差す下では、黒龍が黒いブレスを吐きかけ、オンブルゴブリンたちを砂へと変えていた。黒龍の巨体に、子供サイズのオンブルゴブリン達がわらわらと纏わりついている。その前方には沼のように真っ黒な影が蠢いていた。それを見て、「あれがマザーだ」とアルティナスが告げる。
 黒龍が煩わしげに身体を揺らし、オンブルゴブリンを振り落とした。そこに、クロウディアの魔法が解かれたアルティナスが降り立つ。
「双頭龍の名の元に!」
 アルティナスが、近づいて来たオンブルゴブリンへ細い長剣を翻した。瞬間、オンブルゴブリンの身体が凍り付き、がらがらと崩れる。
「おおりゃあ!」
 ブリットが大剣を振り回し、周りにいたオンブルゴブリンを吹き飛ばす。その後ろで、ミメイアが魔力を集中していた。周りにあった岩が次々に持ち上がり、炎を纏う。
「メテオスウォーム!」
 ミメイアが杖を振り下ろすと、炎に包まれた岩がオンブルゴブリンを焼き潰した。
「ヒールウィンド」
 クロウディアが杖を掲げると、黒龍の周りに風環が現れ、巨体につけられた小さな傷が癒されていく。
「お嬢様の邪魔はさせません」
 そして、他の者へ補助魔法をかけるクロウディアに襲い掛かったオンブルゴブリンを、腰を低く構えたウィスタリアが、抜刀の勢いで両断した。
「魔物のくせに! 黒龍さまに触るな!」
 リーチェが、黒龍の身体によじ登ろうとするオンブルゴブリンを飛び上がって蹴り落とす。それを見て、アルティナスが黒龍を振り返った。
「黒龍さま! 封印を!」
 アルティナスの言葉に、黒龍は片目で頷いて、マザーに牙を向いた。地面を揺らすような低い雄叫びと共に、マザーが苦しそうに収縮していく。黒龍の身体から目に見えるほどの黒い魔力が立ち昇った時、マザーは黒い球体へと変わり、地面の中に沈んで行った。


「封印は終わった」
 威厳のある黒龍(声:マサイアス・アドゥーベ(fa3957))の声に、アルティナスが膝を着く。
「ワシも老いたな‥‥力を二分しているだけで、こうも国へ影響を及ぼしてしまうとは。今回、封印が解けてしまったのは、ワシの油断をマザーに突かれてしまったせいだ。迷惑をかけてすまなかった」
「いえ。龍を補佐するのも、我々人間の役目であります故」
「でも黒龍さまなら、あんな奴等ばーっと倒せた筈なのに」
 リーチェが少し拗ねたように言えば、黒龍は畳んでいた片翼を広げた。すると、そこには気を失っているカシュー・ロデム(橘・月兎(fa0470))が倒れていた。
「親父!?」
「封印が解けた時に近くにいたようだ。街に戻そうとしたのだが、その前にマザーに見つかってしまってな」
 リーチェが驚いたように叫んで、カシューに駆け寄る。が、ふと気付いたように立ち止まると、それを追い越すようにミメイアがカシューの怪我を見る。
「大きな怪我はないみたいだけど‥‥」
「オンブルゴブリンに吹き飛ばされた時に頭を打ったようだ。暫くすれば目を覚ますだろう」
 黒龍の言葉を聴きながら、ミメイアが回復魔法を唱えた。カシューの身体を淡い水色の光が包む。傷が癒えると、今度はブリットが剣をウィスタリアに預け、慎重にカシューを背負った。その様子を、リーチェが少し苦い顔で見守る。
「それじゃあ、あたしらはこの人を街に連れて行くよ」
「すまない。私はこれから部隊に戻り、地盤の調査に向かおう」
「途中まで送りますわ」 
 言って、クロウディアが飛行魔法を使う為に魔力を集中する。それを横目に、ミメイアは黒龍に近寄った。
「あ、あの! 黒龍さま、私、黒龍さまにお聞きしたい事が‥‥」
「石の事だろう? 娘よ」
 黒龍の言葉に、ミメイアが思わず目を見張る。そんなミメイアに、黒龍は静かに告げた。
「お主の聞きたい事は判っておる。いつか、この時が来る事は知っていたからな」
「それは、どういう‥‥」
「お主の探す答えは、そこの男が持っている。その男に聞くがいい。彼は、その石を奥深き鉱山より採って来た男だ」
 その言葉にミメイアが、そしてリーチェが、ブリットの背中に凭れるカシューを驚愕の目で見つめた。


「あ、気がつきました?」
 カシューが目を開けたのは1時間程した後だった。ひょいっと顔を覗き込んで来たミメイアに、カシューが怪訝な顔を向ける。
「黒龍さまに頼まれて‥‥ここは宿屋です。本当はお家に連れて行った方がいいかとも思ったんですけど」
「君は‥‥それに、あの魔物達は」
 起き上がるカシューに、ミメイアが事の経緯を話し始める。その時、部屋の外ではリーチェが浮かない顔でドアに凭れ掛かっていた。そこに、飲み物を運んで来たブリットが現れる。
「入らないの? 気になってるんだろ?」
 言われても、リーチェは答えない。その様子にブリットが肩を竦めた。
「‥‥そうか‥‥魔物は封印されたのか‥‥」
「あの、それで、私、貴方に聞きたい事があって」
 ミメイアはそう言って、胸元に揺れるペンダントを外すと、カシューに見せた。カシューがその石を見下ろし、目を見開く。カシューに、ミメイアが自らの出生の真実を探している事と、このペンダントがその鍵である事を伝えた。
「この石は“赤き涙”と呼ばれる、数千年もの時間をかけて、炎の魔力が凝固した石だ。この国でも、鉱山の深部でしか採れない貴重なもので、採掘するだけでも時間とお金がかかるせいで、国の者でも採りに行こうとする者は滅多にいない」
 言って、ペンダントをミメイアに返したカシューは、その石は若い時にある夫婦に頼まれて採りに行ったものだと話し始めた。
「その夫婦は、その石でなければならないのだと、お金は幾らかけてもいいと言った。とんだ金持ちだと思ったな。貴族ですら躊躇う程の金額だったから」
「その夫婦は、どこから来たとかは話してませんでしたか?」
「確か‥‥ユーク・スールから来たと言っていたな。この国もそんなに涼しい方ではないが、ユーク・スールと比べれば過ごし易いとかいう話をした覚えがある」
「ユーク・スール‥‥」
「次の目的地は決まったか?」
 カシューの話に、ミメイアが呟いた時、飲み物を持ってきたブリットが部屋の中に入って来た。ブリットにミメイアが頷けば、ブリットの後ろからそろりと首を出したリーチェが見えた。
「‥‥リーチェか?」
 カシューに声をかけられ、ぱっと去ろうとしたリーチェの腕を、ブリットが掴んで無理矢理部屋に引き入れた。気まずそうな表情のリーチェに、ミメイアがくすりと笑って、飲み物をカシューが座るベッドのサイドテーブルに置いたブリットと一緒に部屋を出て行く。後には沈黙する2人だけが残った。
「お前、今何をしているんだ?」
「‥‥姉貴の、魔法使いの護衛」
 先に話しかけたのはカシューだった。それにリーチェがむすっとしたまま答えると、カシューは無表情で「そうか‥‥」と呟いた。


「それじゃあ、お大事に」
「君達も気をつけて」
「早く参りますわよ。全く‥‥この私が付き合って差し上げるのですから、感謝しなさい」
 馬車の前で憎まれ口を叩くクロウディアに苦笑しつつ、ミメイアとブリットが見送りに来たカシューに頭を下げる。と、カシューの目が俯くリーチェに向けられた。カシューが名前を呼べば、リーチェの肩がピクリと震える。
「仕事ばかりでお前達を見てやれなかった事を、今更謝るつもりはない。謝っても仕方がない事だからな」
 言えば、リーチェがぎゅっと拳を握り締めるのが判った。カシューが小さく溜息を吐く。
「あいつがお前を連れて、セント・セントロに帰った時も、仕方がないと思った。だが、あいつが病で死んだと聞いた時、初めて後悔をした。そして、お前を連れ戻そうともしたが、例え連れ戻してもその時の俺では離婚した時の二の舞になるだけだと思った。‥‥それからお前が音信不通になって、2度目の後悔をした‥‥俺は後悔しっ放しだな‥‥」
 苦笑するカシューに、リーチェは俯いたまま動かない。
「だが、お前は生きていてくれた。俺は‥‥それだけでいい。これからも‥‥生きて帰って来てくれ」
「‥‥誰が帰って来るものか‥‥ちょっと寄るくらいはしてやってもいいけど‥‥」
 ぼそりと言ったリーチェの言葉に、カシューが微笑む。その様子に、ミメイアとブリットが顔を見合わせ、笑った。
「親、か‥‥」
 ミメイアが空を見上げて呟く。その脳裏に、いつの事だか判らない記憶がフラッシュバックする。白い光の中、銀の髪が美しい女性が、こちらに向かって手を差し伸べている。
『強く生きて‥‥生きて帰って来て‥‥』
「ミィ? 行くよ?」
 記憶の中に入っていたミメイアが、ブリットの声に慌てて馬車へ走って行く。その様子を、遠くから見ている男がいた。その男は、建物の影に隠れるようにして、ミメイアを見ている。
「見つけたぞ‥‥“赤き涙の巫女”よ‥‥」
 呟いて、男は影の中に去って行った。