LoveClassic Januaryアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
不明
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参加人数 |
12人
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サポート |
2人
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期間 |
01/15〜01/18
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●本文
『LoveClassic』とは、世界各国で行われたオーケストラの演奏会を収録し、放映している番組だ。
そんな番組の中に、数名の若手演奏家が演奏するコーナーがある。毎回、オーディションを行って演奏者を決め、確かな腕を持つ者だけを出演させているコーナーだ。コーナー自体は十数分と短い時間だが、そこに出演する事は若き演奏家たちの登竜門であり、修行の場でもあった。
そしてこの日。再び番組に出演する演奏者たちを決めるべく、オーディションが開催された。耳の肥えたプロデューサーや、名立たる音楽家関係者たちの前で、若き演奏家たちはどんな音を奏でるのだろうか‥‥。
●オーディションにあたり
番組のコーナーで演奏して貰う演奏家を選ぶ為、オーディションを行います。
このオーディションに受かった者のみが、番組に出演する事が出来ます。
(出演料3万5千円は、出演者のみに支払われます)
合格者の数は限定していませんが、選定はかなりシビアで、過去には合格者ゼロでコーナーが流れてしまった事もあったそうです。ですが、不合格者の方には審査員の方々がきちんとアドバイスして下さるので、修行の場としての参加も可能です。
曲目・楽器は自由です。ご自身の好きな楽器で、好きな曲をご披露下さい。ただし、クラシック以外の曲は使用しないで下さい。合格した場合、オーディションで演奏して頂いた曲で撮影を行います。
(尚、合格者内で曲が重なってしまった場合、撮影では他の曲をお願いしたりする事があります)
※オーディションでは複数での参加も可能です。ただし、その場合はそのグループ全員での審査となり、グループの中から誰か一人のみ合格という事はありません。
曲をどのように演奏するのか、どこに気をつけるのか。しっかりと考えて演奏する事が合格への第一歩となります。
●審査員
審査員の中には著名な指揮者である、ジャン・ダイイ氏(fz1036)をお呼びしております。
●リプレイ本文
ノックして楽屋のドアを開けると、ジャン・ダイイ(fz1036)が何やら書類を読んでいるところだった。ジャンは入って来た人物を見ると、朗らかに微笑む。
「今日は宜しくお願いします。これ、宜しかったら‥‥」
「わー、可愛いぬいぐるみですネー! 有難う御座いマスー!」
挨拶をしたのはベリーハムスターを抱えたLaura(fa0964)だ。にこやかに握手を交わし、ベリーハムスターをジャンに渡す。その後ろではMIDOH(fa1126)がクッキーの箱を、ジェイムズ・クランプ(fa3960)が百合と薔薇の花束を持って立っていた。
「口に合うか判らないけど」
「ジャンさん、花は平気かい?」
「クッキーも花も大好きですヨ! あ、でもプレゼント貰ったからと言って、点数は甘くしませんヨ!」
「それは判ってますわ」
わーい、と子供のように喜ぶジャンに、3人が嬉しそうに口元を緩める。それを見て、3人と同じグループに所属している田中雪舟がジャンに握手を求めた。
「今日はメンバーがお世話になります。次回は私も参加してみたいものですが、新人じゃなくても大丈夫でしょうかね」
「オーウ、大丈夫ですヨ! 有名な方に来て頂ければ、新人さんのいい経験にもなるでしょうし」
田中の言葉にジャンが歓迎すると、ジェイムズが時計を見て「そろそろやな」と呟いた。
「それでは失礼致します」
「いい演奏を期待していますヨ」
4人が頭を下げ、オーディション会場へと向かう。それを見送り、ジャンはベリーハムスターを愛しそうに抱きしめた。
●1組目
「えー、名前はクク・ルドゥ(fa0259)さん。曲目はカッチーニの『アヴェ・マリア』ですね。それでは宜しくお願いします」
ジャンやプロデューサー達、数人が横一列に並ぶ前で、ククは少し緊張したように頭を下げた。ゆっくりと目を閉じ、胸の前で両手を組むと、静かに、そして大きく息を吸う。
ククの綺麗なソプラノが広がる。祈るように心を込めて歌うククに、ジャンは気持ちよさそうに目を閉じた。
歌声は佳境に近づくにつれて次第に強くなっていく。ククは一番の盛り上がりの部分で大きく息を吸うと、一際大きな声を上げた。そしてだんだんと声を落ち着かせながら、最後は余韻たっぷりに静かに終わらせる。
「うん、いいんじゃないデスカ?」
「無伴奏で独唱はちょっと寂しい気もするけど、まあアヴェ・マリアならアリでしょう」
促されてステージを下りるククの後ろで、ジャンとプロデューサーたちが審査をしている。その様子をちらちらと見て、ククはスタッフに声をかけた。
「私、ここで他の人の曲を聞いててもいいでしょうか?」
「ああ、いいですよー」
スタッフの答えにククは嬉しそうに笑うと、いそいそとスタジオの隅へ向かって行った。
●2組目
「次は陸 和磨(fa0453)くん。曲目はオルケストラ・ド・コントラバスの『BASS,BASS,BASS,BASS,BASS&BASS!』です」
プロデューサーの紹介に、ジャンは興味深そうにステージ上の陸を見上げる。その視線を受け止めながら、陸は深く頭を下げると、スタッフに用意してもらったウッドベースを弾き始める。
元々はコントラバス6人組みの曲で、しかもクラシックというよりはジャズの部類に入る為に、陸はソロ用に、かつクラシック風にアレンジをしていた。どこかワクワクと身体が弾むような原曲とは違い、落ち着いた低音を強調している。
「この子、普段はベースですね。クラシックっぽくって事でウッドベースにしたらしいんですけど」
「私としては、ベースでも良かったかナァ」
和やかに終わった曲に、ジャンとプロデューサー達が審査を始めた。それを横目に見ながら、陸がステージを下りる。
「あと、アレンジがちょっと甘い気もしますネ」
「演奏の技術は悪くないが、もう少しって感じだねぇ」
「発展途上、というところデスカ」
顔を近づけあって話しているジャン達の会話は、少しくぐもっていてよく聞こえない。陸はその内容を気にしながら、スタジオの隅へ移動した。
●3組目
「仁和 環(fa0597)さん。曲目はシューマンの『流浪の民』ですね」
「お、三味線ですか。いいですネー、和ですネー」
ステージに上がった仁和の手にある三味線に、ジャンが目を輝かせる。仁和は深く頭を下げ、三味線を構えると、一つ息を吸って弦を弾いた。
二拍目にアクセントを置いた力強い始まりに、三味線の音が伸びないという弱点を上手く使って、歯切れの良い音で進める。そして一際強い音を出した後、複数の異なる動きの声部が協和し合って進行するポリフォニーの部分を、主と伴奏を複合させて補うなど、細やかな演奏を見せた。
「三味線でこれをどう弾くのか心配でしたが、なかなかですね」
仁和の演奏を聴きながら、プロデューサーが感心したように頷いて顎を撫でる。
テンポスローで豊かな掛け合いの旋律を見せた中間部を過ぎると、最後は大きく音を響かせ、スローダウンしながら静かに終了する。
「結構、新しい感じでいいかと思いますヨ。技術的にも充分ですシ」
「そうですね。一度試してみましょうか」
満足そうにステージを下りる仁和に、ジャンとプロデューサーが面白そうに頷いた。
●4組目
「次はLauraさんとMIDOHさん、それからジェイムズ・クランプさんですね。曲目はエルガーの『愛の挨拶』」
ステージに上がって来た3人は、ジャンを見るとぺこりと頭を下げた。ジャンが微笑み返すと、MIDOHがピアノの前に座り、ジェイムズがヴァイオリンを構える。中心にLauraが進み出てMIDOHに合図を送った。
始めに、ピアノがリズムを取り、続くようにジェイムズのヴァイオリンと、Lauraのハミングが入った。フルートのような澄んだラ音がスタジオに響き渡る。
優しく包み込むような愛しさの込められた曲に、プロデューサーが目を閉じて小さく頷く。
「彼女はレッジェーロが得意と聞きましたが、これはいいですね」
「惜しむらくは伴奏デスネ。彼女と比べると、まだ技術が低いようデス。もう少し追いついて欲しいデスネ」
言って、ジャンが眉尻を下げる。情熱的に盛り上がり、ピアノとヴァイオリンのメロディで余韻を残すように曲がラストを迎えると、三人は揃って頭を下げ、ステージを下りた。
●5組目
「名前は椎葉・千万里(fa1465)さん。曲目は東ヨーロッパの民族音楽から、メンデルスゾーンの『ヴァイオリン協奏曲ホ短調』へ、メドレーで弾くそうです」
プロデューサーが紹介しているのを聞きながら、椎葉は緊張した面持ちでヴァイオリンを握り締めた。それに由里・東吾が軽く溜息を吐く。
「ほら、肩の力抜けって。そんなぎっちり唇噛み締めてたら、折角メイクしてやったのに崩れるだろうが。練習したんだろう? だったらやるだけやって来いよ」
そう言って肩を叩く由里に、椎葉はちょっと笑って頷いた。
ステージに上がり、頭を下げた椎葉はヴァイオリンを構えると、荒々しく弓を弾き始める。陽気に踊るかのように弾む音の中に、物悲しげな雰囲気が混じる。ギザギザと引っ掻くように低い音を出す椎葉に、ジャンが「フィドルですカ」と面白そうに笑った。
民族音楽を弾き終えた椎葉は、出来るだけ自然な流れで『ヴァイオリン協奏曲』に移る。先程とは打って変わって、滑らかに弾き始めた。泣くような高音を奏で上げると、後半はまたフィドル調にアレンジを加え、終わる。
「なかなか面白い演奏でしたが‥‥」
「技術が伴ってませんネェ。民族音楽の方はまだ良かったんですケド、メドレーはちょっと難しかったデスネ」
ジャン達が審査するのを横目に見ながら椎葉がステージを下りるのを、由里が微笑みながら迎えた。
●6組目
「紗綾(fa1851)さんとマリーカ・フォルケン(fa2457)さんの2人組みですね。曲はサン・サーンスの『動物の謝肉祭』から『白鳥』です」
ステージに上がった紗綾とマリーカが頭を下げる。そして紗綾がヴァイオリンを、マリーカがチェロを構え、弓を弾き始めた。
チェロの深みのある音色を、ヴァイオリンの柔らかな音が惹き立てる。気品を感じさせる静かで優雅な出だしから、後半に向かうにつれてだんだんと情熱的に盛り上がっていく。その音色は、月明かりに照らされた湖の上を、白鳥がゆったりと滑っていく様子を思い起こさせた。
「うん、気持ちが入ってて良いですネェ」
ジャンがにこにこと笑いながら呟く。お互いに溶け合うような音色を奏でる2人に、プロデューサーも頷いた。
「一応候補に入れておきましょうか。技術が少し甘いので、以後の演奏者のレベルによっては伴わなくなるかもしれませんが」
言って、プロデューサーが書類にチェックをつける。終わりに近づいた曲は、始めと同じように静かに落ち着き、余韻を残すようにフィニッシュを迎えた。紗綾とマリーカはお互いに満足げな笑みを見合わせると、ステージを下りていった。
●7組目
「次は椿(fa2495)さんです。曲目はヴェルディの『椿姫』から『乾杯の歌』ですね。それではどうぞ」
深々と頭を下げ、椿がヴァイオリンを構えた。本来なら指先で軽く摘むようにして持つ弓を、手のひらの奥に入れ、指先を直接弦に触れる。そして、出だしのワルツのリズムを、指で弦を弾いて音を出すピチカートで弾き始めた。ジャンが目を丸くするのをチラリと見て、椿が口元に笑みを浮かべる。
リズム部分が終わると、するりと弓を落として本来の持ち方に変え、何事もなかったかのように弓を弾き始めた。華やかで軽やかな曲を、椿は鼻歌でも歌いだしそうなリラックスした表情で奏でる。流れるように弓を滑らせたかと思うと、今度は弾ませたり、力強い部分もあれば柔らかな部分もあり、豊かな表現力を見せた。
最後は歌い上げるように力強く、歯切れ良いフィニッシュを迎える。
「いいですネー、面白かったデスヨー」
「特に最初がいいですね。彼はいい、うん」
にこにこと笑いながら話すジャンとプロデューサーに、椿は初めと同じように深く頭を下げると、ステージを下りて行った。
●8組目
「えー、EUREKA(fa3661)さん。曲はヨハン・シュトラウスII世の『ジプシー男爵』より、『宝石のワルツOp.418』だそうです」
プロデューサーの声に、EUREKAが優雅に頭を下げる。そしてアルトサックスを構えると、目を閉じて息を吸った。
いかにもワルツと言った典型的なリズムが始まる。滑らかなメロディーに時折入るアクセントが、曲のテーマともなっているジプシーの娘の少女らしさを感じさせた。
曲が落ち着くと、今度はテンポが変わり、スタッカート気味の旋律となる。かと思えば急に滑らかなレガートになったりと、メロディーの表情が変化する。そんな曲を、EUREKAは自らのリズムを狂わせる事もなく、楽しそうに弾いていた。
終盤に近づくと、曲は初めと同じ旋律へと戻る。そして最後の見せ場とも言えるだろう、音符が素早く上下するパッセージ部分で、EUREKAは見事な指の動きを見せた。ジャンがそのEUREKAの表情に、小さく笑う。
「実に楽しそうですネェ。技術も充分だし、彼女はOKなんじゃないでしょうカ?」
「充分過ぎな気もしますが」
少し苦笑いをするプロデューサーの前で、EUREKAは高らかに音を出し、フィニッシュを迎えた。
●9組目
「最後はナバル(fa4333)さんですね。曲目は『カヴァティーナ』‥‥マイヤーズ作曲ですね」
クラシックギターを持ったナバルがステージに上がり、頭を下げる。そしてゆっくりと弦に指を添わせると、静かに弾き始めた。
「うーん、技術的にはなかなかなんですが‥‥」
物悲しくも優しげな曲を情感豊かに弾くナバルに、プロデューサーが渋い顔をする。
「もう少しテーマ性を持って演奏して欲しかったデスネ」
「リラックスして弾いてるのはいいんですが、プロとしては物足りなく思いますね」
「難しい曲なのは判りますが、定番と言えば定番の有名な曲なので、聞く方もシビアになるでしょうカラ‥‥」
残念そうに呟くジャンに、プロデューサーも同じように頷いた。そんな彼らの前で、ナバルはリラックスした表情のまま、ゆったりと曲を弾き終えた。
●審査中
「とりあえず4人は確定でしょう」
「紗綾さんとマリーカさんはどうでしょうか」
「入れたい気持ちはありますが、この4人の中に入っちゃうと、ちょっと見劣りする気がしますネ」
「バランス的にはEUREKAさんも突出し過ぎてる感じもしますが、まあ彼女は大丈夫でしょう」
「それじゃ、今回はこの4人で」
『LoveClassic』のメインであるオーケストラの演奏が終わり、若手演奏家たちのコーナーへと変わった。初めにステージに現れたのは椿だ。オーディションの時と同じように、『乾杯の歌』を見事に弾く。
次に出て来たのはククだった。マイクがなくとも充分に響く声で、高らかに『アヴェ・マリア』を熱唱した。
3番目は仁和の『流浪の民』だ。オーディションのときとは違い、マイクを使用していたが、それでも美しい三味線の音を披露する。
最後はEUREKAだった。いかにも楽しそうな表情で『宝石のワルツ』を弾く彼女に、周りのスタッフも身体を弾ませた。
こうして1コーナーが終わると、再びオーケストラの演奏へと戻っていく。たった十数分のコーナーだったが、それでもプロデューサーとジャンは満足げな表情で頷いた。