眼鏡CMグラスィーズ!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 2万円
参加人数 15人
サポート 0人
期間 11/20〜11/22

●本文

『眼鏡戦隊グラスィーズ! それは、人々の視力を奪わんとする怪物たちから、世界を守るために立ち上がったヒーローたちである! ヒーローたちは”ウィトゥルム・オプティクム”と呼ばれるオーパーツから作られた変身アイテムにより、超人的な力を身につけて怪物と戦うのである!』


「‥‥なんだ、これは」
「だから、我が社を大々的に宣伝するためのCM案です」
 きっぱりと言い切った部下に、上司は頭を抱えた。目の前に置かれた企画書には、派手な色合いで、子供が好きそうな戦隊物のイラストが書かれている。
「何故、眼鏡店で特撮のCMをやらねばならん!」
「お言葉ですが。我が社は眼鏡業界に足を踏み入れたばかりの新参者です。そんな新参者は、まず世間に名前を覚えて貰うことが必要不可欠ではないかと。その為には、インパクトのあるCMを作る事が重要なのです!」
「その理屈は判るが、何故特撮なんだ」
「現在の特撮は子供ばかりでなく、大人も楽しんで見る人が多いそうです。加えて、昨今の特撮はイケメンを導入し、奥様方の心もがっちり掴んでいます。ここで、我が社もイケメンを導入した特撮のCMを作り、子供にも大人にも奥様にも名前を覚えて頂こうと」
「しかしだな。怪物とか金がかかるだろうし、特撮やるとなればそれを受けてくれる監督も探さなければならんし」
「大丈夫です。監督の方は見つかってます。現役の特撮ドラマ監督さんです。役者さんを探すのも監督が協力してくれますし、怪物のメイクも格安で出来るそうです」
「でもなぁ‥‥眼鏡のCMで特撮っていうのは‥‥」
「絶対成功させますから! お願いします! 自分の企画で特撮を作るのが夢だったんです!」
「って、お前の趣味じゃねぇか!」



「で、受けたんですか?」
「受けた。面白そうじゃない。眼鏡で特撮」
 助監督の少し呆れたような言葉に、楽しそうに返したのは落 霞紅だ。派手なイラストの描かれた企画書を読んでいる。
「でもまあ、まだ企画の段階だから。これからもうちょっと煮詰めてこうと思って。役者の意見も聞きたいし」
「はぁ、そうですか‥‥判りましたよ。僕は何も言いませんよ、もう‥‥CMなんて作った事ないくせに‥‥」
 助監督が諦めたように溜息を吐く中、眼鏡で特撮なCMの企画がスタートした。




●企画
 今現在の決定事項は以下の通りです。
・戦隊の名前は『眼鏡戦隊グラスィーズ』
・怪物は人々から視力を奪って、世界を闇に閉ざそうとしている。
・ヒーローたちは『ウィトゥルム・オプティクム』というオーパーツから作られた、眼鏡型の変身アイテムを装着し、グラスィーズへと変身する。

 この他の、変身アイテムの形や、怪物の様相、戦隊の人数、必殺技など、役者や裏方の方々に色々意見を言って頂きながら、撮影をして行きたいと思います。
※必殺技は出来れば眼鏡を使ったものがベストです。例:眼鏡ビーム

 
●撮影
 現在決定している撮影シーンは以下の通りです。
1.敵の登場
2.ヒーローの登場・変身
3.敵とヒーローの戦闘
4.敵の撃退・ヒーロー揃ってポーズ(ここで店名紹介予定)


●募集
 役者(ヒーローの他、サポート的な役もOKです)
 スーツアクター(役者・怪物役と兼用可能)
 怪物役(予算削減の為、獣化状態にメイクをプラスしていく事になります)
 裏方(監督・助監督以外。役者・スーツアクター・怪物役と兼用可能)
※あくまでも眼鏡のCMの為、ヒーロー側の役者の方々には全員眼鏡(視力の良い方は伊達眼鏡)を着用して頂きます。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0443 鳥羽京一郎(27歳・♂・狼)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa2680 月居ヤエル(17歳・♀・兎)
 fa3158 鶴舞千早(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa3736 深森風音(22歳・♀・一角獣)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)
 fa4559 (24歳・♂・豹)
 fa4892 アンリ・ユヴァ(13歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

「それじゃあー始めるぞー。‥‥あれ? 私、台本どこ置いた?」
「‥‥ここです。車の中に置きっ放しでしたよ」
「あれ、そうだっけ? 謝謝」
 煙草を吸いながらやって来た落 霞紅(fz1032)は、後ろにいたADのアンリ・ユヴァ(fa4892)から台本を受け取り、メガホンを手に取った。
「敵登場シーン行くぞー。カメラオッケー?」
「オッケーです」
 霞紅の言葉にカメラを構えた高遠・聖(fa4135)がオッケーサインを出す。眼鏡店のCM、『眼鏡戦隊グラスィーズ』のクランクインである。


「ガァァ! お前らの視力を奪ってやるー!」
「助けてぇー!!」
 ロケ地である広場で、子供役のヨシュア・ルーン(fa3577)とパトリシア(fa3800)の目を布で目隠しをして捕まえているのは、完全獣化した九条・運(fa0378)と笙(fa4559)だった。全身金色の九条は、腰に黒色のスケールアーマー風な鎧をつけ、笙は黒の七部袖ライダースーツを着込んでいる。
「すげー、マジ本物みたいじゃね?」
「最新の特殊メイクなんですよー」
 ちらちらと覗いて来るギャラリー達に笑って話しているのは、宣伝用にと作られた眼鏡店の店名入り『眼鏡戦隊グラスィーズ』スタッフジャンパーを着た雨宮慶(fa3658)だった。特殊メイクってスゲーなー、と話しているギャラリー達に心の中でこっそり苦笑する。
「はい、オッケー! 次、ヒーローの登場シーンな」
 霞紅の声に、5人の役者達が現れた。怪物から離れた場所に横一列に並ぶ。
「な、何か、緊張するー‥‥」
「大丈夫、大丈夫。リラックスして」
 黄色のアンサンブルニットを着た月居ヤエル(fa2680)は、不安そうに辺りを見回した。その背中を、赤いジャンパーを羽織った椿(fa2495)が優しく叩く。
「さ、頑張ろっか!」
「まずは走って登場、か」
「転ばないようにしないと!」
 青いシャツを着たラリー・タウンゼント(fa3487)が気合を入れると、黒のジャケットを羽織った鳥羽京一郎(fa0443)が道路を見る。それに、ピンク色のフリルブラウスを着た鶴舞千早(fa3158)が軽く準備運動を始めた。並ぶ5人はそれぞれ眼鏡をかけている。
「位置についたかー? 行くぞー。はい、3、2‥‥」
 キューが出され、役者達がカメラに向かって走って来る。そして、一定の位置で止まると、カメラが横に回り、椿が一歩前に出る。
「ダークブラック一族め! 子供達を放せ!」
「‥‥カット! よし、そのまま逃げる敵を追いかける!」
 霞紅の声に、道の真ん中にカメラが設置される。キューと共に役者達が走り出し、カメラを飛び越えた。
「はい、オッケー! ‥‥後はスーツ着ての戦闘だな。それは別の場所でロケするから」
「‥‥それでは、撤収します」
「お疲れさまでーす!」
 雨宮がタオルを持って役者達の元へ走って行く。その後ろでは、アンリが高遠達の撤収を手伝っていた。


「お早う御座いますー」
「宜しくお願いします」
 そう言ってスタジオに入って来たのは白衣姿の美森翡翠(fa1521)と、スーツ姿の深森風音(fa3736)だった。続いて白のショートジャケットを着た姫乃 唯(fa1463)が走って来る。勿論、三人とも眼鏡は着用済みだ。
「宜しくお願いしますっ!」
「はい、宜しくー。それじゃあ始めるか」
 霞紅がメガホンを構えると、何やら機材が沢山詰め込まれているセットに美森と深森が入って行く。キューが出されると、姫乃が慌てたようにセットに入って来る。
「長官! 子供が怪物に襲われています!」
「何ですって!?」
「長官‥‥」
「うん!」
 深森の言葉に、美森が頷いて携帯電話を取り出した。
「グラスィーズ、出動!」
「‥‥よし、カット! あとは3人とも次のロケに合流して貰うから」
「わぁ! 楽しみですのぉ♪」
「‥‥眼鏡のおにーさん達が見れるのかぁ‥‥えへへ、私も楽しみ!」
 きゃいきゃいとはしゃぐ美森と姫乃の横で、何だか完全に秘書になり切っている感じの深森が霞紅に近づく。
「あまり予算はかけられないと聞いたんですが、ロケはどこに決まったんですか?」
「登場シーンは高遠が見つけて来た広場で充分だったけど、戦闘シーンはやっぱドカーンと爆発させたいしさ。特撮でお馴染みの岩場になったよ。派手にやるから、楽しみにしときな」
 そう言って霞紅はにやりと笑った。


「うおー! 何か見たことあるぞ、ここ!」
「有名なロケ地だそうだからな」
 ロケバスを降りた瞬間、そう叫んだのは私服姿の九条だった。続いて笙が降りて来る。
「‥‥セッティングをしている間に怪物役のお二人は獣化を。ヒーロー役の方々はスーツの方に着替えをお願いします」
「ではまず、男性の方から先にお願いしまーす。‥‥九条さんはすみませんけど、外で‥‥」
「メイク車じゃ、翼が邪魔だもんなぁ」
 爆薬の設置を指示している霞紅の代わりにアンリが役者達に声をかけると、雨宮がメイク車の扉を開けた。男性の役者がぞろぞろと入って行き、九条は笑いながらその後ろへと回る。
「うわぁ、ドキドキする! アクションなんてできるかなぁ、私」
「大丈夫! あたいも殆ど初心者だから!」
 心臓を抑える月居の両手を、鶴舞ががっしりと握った。そこに、指示を終えたらしい霞紅が歩いて来る。
「そんな緊張しなくていいよ。アクションは演出次第でそれなりに見せるから」
 言われて、月居と鶴舞が素直に頷くと、メイク車から赤いヒーロースーツを着た椿が降りて来た。
「どうかな?」
「うわぁ! グラスィーズだぁ!」
「すごーい!」
 美森と姫乃に拍手をされて満更でもない様子の椿が着ているスーツは、左胸を中心に銀白の幅広ラインがクロスしていて、その上に眼鏡を表現しているのか『∞』のマークが描かれている。マスクの目の部分は役によって多少形が違うものの、どれもスポーツサングラスのような形をしており、横を見ればきちんと縁をイメージしているのか、耳の辺りまで黒い線が伸びていた。
 男性の役者と入れ替わりに女性達がメイク車に入って行くと、まだマスクを被らぬままの鳥羽が顔の近くでパタパタと手を仰ぐ。
「しかし、スーツアクターというのは大変なのだな‥‥通気性が悪くて暑い」
「確かに。マスク被っちゃったら、凄い視界悪いし。慣れとかないと」
 言って、マスクを被ったラリーはウロウロと歩き回る。椿が「とぉ!」という掛け声と共にパンチを突き出すと、そこに完全獣化を終えた九条が現れた。
「へぇー! 結構ヒーローっぽいじゃん!」
「確かに。低予算の割には中々できてるよな」
「理所当然。怪物に本物の獣人を使うんだから、それに負けないようなものを使わないとな」
 九条と笙の感想に霞紅が満足そうに笑って、スーツ姿の3人を見る。女性の着替えも終わり、爆薬のセッティングも終了すると、撮影が始まった。


「まずはブルー! 右肩、左肩、最後に下から斬り上げる。で、笙は後ろに吹っ飛ぶ! 直接当てないように」
 ソードで霞紅が笙を相手に殺陣を行っている。それを見てラリーが同じようにソードを振り上げた。
「次はブラックな。あんたは結構できるみたいだから、ソードを2本使って少し難しいのやってみようか。右肩、くるっと回って左で横薙ぎ、右肩、左と右で斬り上げる!」
 霞紅の指示通り、鳥羽が笙に斬りかかる。それを受けて、笙はラリーのときと同じように後ろに飛んだ。
「今度はイエローとピンクの2人で九条に攻撃だな。大丈夫、アクションっていう程のアクションじゃないから。ただ、銃を九条に向けてポーズするだけ。大変なのは九条だ。爆発に合わせて動くの、できるか?」
 言われて、九条がぐっと親指を出す。鶴舞と月居が顔を見合わせて頷き、両手で持った銃を九条に向ける。九条の周りに設置された火薬が爆発し、それに合わせて九条がもがく演技をした。
「で、レッドな。レッドはやっぱ派手に行かなきゃ。トランポリン、やったときある?」
「‥‥トランポリン、ですか?」
 椿の目の前にあるのは大きなトランポリンだった。霞紅に連れられて不安定な中心に立たされる。
「トランポリンの下にマットが敷いてあるだろ? あそこに向かってジャンプしながら、ブーメランを投げるんだ」
「が、頑張ります」
 言って、椿は何度かジャンプをするとマットに向かって飛び込んだ。始めはタイミングよくブーメランを投げれず霞紅にNGを出されていたが、数度目で何とかOKを貰う。
「それじゃあ、最後は皆で必殺技だな。これを皆で持って、笙と九条に向かって構えるんだ」
 5人が霞紅に渡されたのは、大きな眼鏡だった。その縁を4人が持ち、椿がブリッジの部分を持つ。
「グラスィー・プリズムハレーション!」
 5人がそう叫ぶと、笙と九条の周りで爆発が怒った。


「CMができあがりました!」
「そうか! 見せてみろ!」
 上司にそう言って、部下がウキウキとテープをビデオに差し込む。
『眼鏡戦隊グラスィーズ』という派手な色合いのタイトルが画面に表示された。


「ガァァ! お前らの視力を奪ってやるー!」
「助けてぇー!!」
 金色のドラゴンと豹の怪物が、2人の子供に無理矢理目隠しをして連れ去ろうとしている。
「長官! 子供が怪物に襲われています!」
「何ですって!?」
「長官‥‥」
「うん!」
 慌てた様子の少女の言葉に、秘書が頷き、子供長官が携帯電話を取り出した。
「グラスィーズ、出動!」
 その声に気付いたように、カレー屋で働いていたイエローが、新体操の練習をしていたピンクが、パソコンを弄っていたブルーが、眼鏡屋で店内の掃除をしていたブラックが、そして眼鏡を片手に客に売り込みをしていたレッドが振り返る。
 広場では怪物達が子供を連れ去ろうとしていた。そこに「待て!」と制止する声がかかる。
「お前達は‥‥グラスィーズ!」
「ダークブラック一族め! 子供達を放せ!」
 レッドの言葉に、怪物達が逃げていく。それを追いかけるグラスィーズ達。場面が岩場へと代わる。
「逃がすか! ウィトゥルム・オプティクムよ、我に力を!」
 5人が並んで眼鏡型の変身アイテムを装着する。それぞれの色の縁をした眼鏡をかけた5人の身体が光り、グラスィーズへと変わる。
「眼鏡戦隊、グラスィーズ!!」
 名乗りと共に、バックにそれぞれの色の爆煙が上がった。イエローとピンクが一歩前に出て、怪物達にソードを向ける。
「子供達を放しなさい! グラスィーダズルアイ!」
「ぐわぁぁ、な、なんだこりゃぁ!」
 怪物達の周りに靄がかかり、その隙にレッドが子供達を救出した。悔しがる怪物達に、「行くぞ!」と武器を構えるグラスィーズ。
「グラスィーソード!」
 ブルーとブラックが豹に斬りかかる。豹が火花を散らしながら倒れる。
「グラスィーガン!」
 イエローとピンクがドラゴンに銃を構えた。銃から黄色と桃色の光線が走り、爆発と共にドラゴンが悶え苦しむ。
「グラスィーブーメラン!」
 高く飛び上がったレッドが眼鏡型のブーメランを投げつける。ブーメランが縦横無尽に飛び回り、ドラゴンと豹が火花を散らして苦しんだ。
「トドメだ! グラスィー・プリズムハレーション!」
 巨大な眼鏡を構えた5人が叫ぶと、眼鏡のレンズから虹色の光線が現れ、光線は捩れながら怪物達に走る。
「ぐわぁぁぁ!」
 怪物達が悲鳴を上げる。カメラが引き、5人が揃って怪物達に背を向けると、大きな爆発が起こった。
「有難う、グラスィーズ!」
「僕もグラスィーズみたいに強くなりたい!」
 助かった子供達が変身を解いたグラスィーズ達に駆け寄る。
「これをかければ、君も強くなれる!」
 子供達に、椿が持っていた眼鏡をかけてあげた。その様子を見て、子供長官達が微笑ましそうな笑みを浮かべる。そうして空を見上げるグラスィーズ達にタイトルが被さり、提供している眼鏡店の店名が表示された。


「‥‥これはCMなのか?」
「何言ってるんですかー! 立派なCMですよー!」
 苦笑いの上司とは正反対に、感極まった様子の部下。その後、危うく却下されそうになったところを、部下のしつこい‥‥もとい、真剣なアピールにより、このCMは無事に放送されたという。