新人強化合宿・師走アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
フリー
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
不明
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参加人数 |
15人
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サポート |
0人
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期間 |
12/16〜12/18
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●本文
「寒い中、よくぞ集まった!」
真っ白な雪がたんまり積もった雪山に、ともすれば雪崩が起きそうな程の大きな声が響き渡った。
「某が、今回貴殿らの訓練を担当する、神原彰久である! 某の事は教官と呼ぶように!」
言って、元自衛官である神原彰久は集まった訓練志願者達を見回した。
「今回の訓練は、貴殿らの反射神経と射撃の能力を上げるための訓練である! 訓練内容は‥‥これだ!」
ばっ! と、神原が傍らにあった青いシートを捲り上げる。そこにあったのは、大量に積まれたテニスボールサイズの雪玉だった。そして、神原のその腕には小型のバズーカに似た銃が抱えられている。
「この雪玉銃には、最大で10個の雪玉を装填する事ができる! この銃を使い、敵を倒しつつ、真ん中に設置されている旗を先に取った方が勝ちである! 優勝したチームにはささやかながら賞金を用意したので、是非優勝を目指して頑張って欲しい!」
かくして、壮絶な雪合戦が始まったのであった。
●コート
大きさ:長さ40メートル、幅10メートル。
シャトー:陣地のスタート位置に作られた、シェルターよりも大きい壁。雪玉はここに置かれている。
シェルター:雪のレンガで作られた、高さ1メートルの壁。陣地に数メートル置きに三つずつ配置されている。(強度は雪玉50個をぶつけると壊れる程度)
旗:コートの真ん中に一本だけ立てられている。(ビーチフラッグより少し大きめ)
(旗以外のコート設定は雪合戦国際ルールと同じです)
●ルール
試合形式:5分試合・1セットマッチ
1チーム:3名
使用雪玉数:90個
勝利方法:敵チームより先に旗を抜く。敵チーム全員に雪玉を当ててアウトにする。タイムアウト時に人数が多く残っている。
雪玉銃:時速50キロ程で雪玉が発射される。連射も可能。銃自体は軽めに作られているが、10個の雪玉を入れると多少重い。雪玉も安全を考慮して作られているが、当たれば痛い。
●試合範囲
・雪玉銃以外の道具は一切使用不可。ただし、素手(手袋可)による雪玉投球はOK。
・使用する雪玉は予めシャトーに用意されている。それ以上の雪玉の使用、作成は禁止。また、一度使用した雪玉を拾っての装填、投球は不可。(雪玉を投げ渡すのも不可)
・雪玉銃を使用できるのは1名まで。ただし、雪玉銃使用者がアウトになった場合、他の者に代わる事ができる。それ以外での変更は不可。
・シャトーからシェルターに雪玉を運ぶ為の人数は無制限。
・敵チームの雪玉が身体にヒットしたらアウト(掠っただけならセーフ)。
・獣化や特殊能力の使用は禁止。
●その他
トーナメント制であり、試合順は神原による公平なクジによって決められる。
優勝したチームにはそれぞれ賞金5万円が授与される。
尚、参加賞として試合終了後、かまくらにて鍋を囲む予定。
●リプレイ本文
「よーし、ルールは判ったな? それじゃあ、トーナメント表を発表する!」
神原彰久はそう言って、後ろに転がしてきたホワイトボードに、トーナメント表の書かれた模造紙を貼り付けた。
「シードが一つあるが、これは神聖なるアミダクジによって決定されたものである! それと、1回戦目で負けたとしても、必ず敗者同士でまた戦って貰う為、最低でも2戦はする事になる! 最後に、試合は1戦毎に整地の為、10分の時間を置くから、その間に休憩なり何なりする事! 判ったな? よし、それでは始めるぞ!」
かくして、下記のチームによる雪合戦が開催された。
Aチーム:MAKOTO(fa0295)、新堂 将貴(fa0536)、マリアーノ・ファリアス(fa2539)
Bチーム:ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)、常盤 躑躅(fa2529)、鶸・檜皮(fa2614)
Cチーム:モヒカン(fa2944)、佐渡川ススム(fa3134)、宝野鈴生(fa3579)
Dチーム:琥竜(fa2850)、紅露(fa5002)、ロッソ(fa5199)
Eチーム:花田 有紗(fa3584)、ガルフォード・ハワード(fa3963)、ランディ・ランドルフ(fa4558)
●1回戦目 C対D
「先手必勝ぉ!」
言って、飛び出してきたのは佐渡川だ。その後方から宝野がシェルターに砲台のように銃を乗せ、自身は隠れつつ援護をし、モヒカンはシャトーに近い2つのシェルターへと雪を運ぶ。
「こっちも行くぞ! 作戦3だ!」
バタバタと走ってくる佐渡川に、紅露がメンバーに声をかけると、銃を盾にしつつ飛び出した。その後ろから琥竜とロッソが続く。
「来たな! 食らえ、俺必殺の下ネタメドレー!」
突撃してくるDチームに、ネタを披露しようとした佐渡川が仁王立ちになる。と、その顔面に紅露の撃った弾がぶち当たり、佐渡川はネタを紡ごうとした口のまま仰向けに倒れる。
「うおっ! 佐渡川殿が!」
「佐渡川さーん! 何してんですかー‥‥」
モヒカンが佐渡川の仇を取ろうと、雪玉を両手に持ち、飛び出す。宝野もシェルターから紅露を狙った。何個かの雪玉は銃でガードしたものの、紅露の肩にモヒカンの投げた雪玉が当たる。
紅露がアウトになった瞬間、銃は後ろにいたロッソへと投げ渡される。ロッソがそれを使い、モヒカンと宝野の雪玉を避けつつ旗に近づくと、モヒカンがロッソへ渾身の一撃を放った。ロッソの腹に雪玉がぶつかる。
雪玉を投げ終えてしまったモヒカンと、旗に手を伸ばす琥竜の目が交差した。宝野が慌てて琥竜に向けて銃を構えるが、一歩遅い。
「Dチームの勝利! 2回戦進出!」
●1回戦目 B対E
白と薄いグレーの迷彩ウェアでチームの服装を統一したランディが、真ん中のシェルターで銃を撃っている。そこに腕いっぱいに雪玉を抱えたガルフォードがやって来て、ランディの足元に雪玉を補充した。ほいほいと空になった銃に雪玉を装填するのを手伝う。
「わわっ、うひゃ、うきゃっ!」
そんな二人を背に、花田はウネウネと身体を動かしながら必死で雪玉を避けていた。ヘヴィの撃つ銃と、雪玉を運びながら引っ切り無しに投げつけて来る常盤に、なかなか花田の足が進まない。そのうち、雪玉を旗に一番近いシェルターまで運び終えた鶸も花田に向かって雪玉を投げ始め、花田は慌ててシェルターへ避難する。
「うわぁん、近づけないよぉ〜!」
「諦めちゃ駄目だZe〜!」
ガルフォードが花田を応援する横で、ランディが真剣な顔で銃でBチームの一番旗に近いシェルターへ雪玉を撃ち始めた。削られていくシェルターに、ヘヴィが「げっ」と声を上げる。
「やべぇ、旗取れ、旗!」
ヘヴィの指示で、鶸が素早い動きで旗に近づく。それを阻止せんとランディとガルフォードが雪玉を投げ、花田が慌ててシェルターを飛び出す。頭上でお互いの雪玉が相殺されていく中、鶸と花田の手が旗へと伸び、一瞬先に旗へ手をかけたのは鶸だった。誇らしげに旗を掲げる鶸に、顔を雪まみれにした花田が悔しそうな表情を見せる。
「Bチームの勝利! 決勝戦進出!」
●2回戦目 A対D
初めに動いたのはAチームだった。新堂とマリアーノが腰を屈めながら、素早く前のシェルターへと移動する。そんな2人に雪玉を投げようとするDチームを、銃を持ってシャトーから援護しているのはMAKOTOだ。
それに、銃を構えた紅露がメンバーに目配せをし、呟いた。
「よし。作戦1で行こう」
その言葉に頷き、2人が腕いっぱいに雪玉を持つと、琥竜はこそこそと、ロッソは新堂とマリアーノが隠れているシェルターに向かって雪玉を投げながら、紅露は最大まで詰めた銃を撃ちながら、シェルターまで移動する。向かってくる雪玉に出るタイミングを計る新堂とマリアーノを援護するべく、MAKOTOが銃を構えるも、MAKOTOよりも多少射撃の腕が勝っているらしい紅露により、邪魔をされてしまう。
センターに近いシェルターへと辿り着いた琥竜は、雪玉をAチームのシェルターへ次々と投げ始めた。その足元にロッソが残った雪玉を置くと、またシャトーへと雪玉を取りに戻る。紅露も真ん中のシェルターに辿り着くと、顔を出そうとするMAKOTOへ牽制した。
引っ切り無しに投げられる為にシェルターを出るタイミングが掴めない。それでも意を決した新堂が、マリアーノを背に庇いつつ、シェルターを飛び出した。同時に、琥竜が新堂に向かって雪玉を投げつける。
新堂の顔に、ばしっと3つの雪玉がぶつかった。神原の「新堂、アウト!」という言葉が響く前に、顔を雪塗れにして仁王立ちした新堂の股の間からマリアーノがスライディングする。そしてそのまま旗を取ろうと手を伸ばすが。
「惜しかったな」
べしゃっという音と共に、マリアーノの背中に雪玉が叩きつけられる。雪玉を運ぶ途中だったロッソがそれを投げた状態でマリアーノを見下ろしており、その頭にMAKOTOが撃った雪玉がぶつかるのと、隙をついた琥竜が荒い息を立てながら旗を取るのは同時だった。
「Dチームの勝利! 決勝戦進出!」
●休憩中
「うおりゃああ!」
ネタが中途半端に終わって悔しいのか、ぶんぶんと雪玉を投げているのは佐渡川だった。その雪の雨の下、花田とマリアーノがきゃいきゃいと笑いながら避けている。
「若者は逞しいのぉ」
言いつつ、モヒカンが佐渡川へ渡す為の雪玉を作るため、雪玉製造機へ雪を詰め込んでいる。その様子を宝野が苦笑しながら見ていた。と、作ったばかりの雪玉を常盤がごっそりと腕に抱え、佐渡川へ向かって投げつける。それに便乗して、花田とマリアーノも雪玉を持ち始めると、試合とは全く関係なしの雪合戦が始まった。
まるで子供のように遊ぶ常盤たちに、新堂が肩を竦めると、いつの間にかその後ろに回っていたMAKOTOが、掬った雪を新堂の背中に滑り込ませた。驚いて悲鳴を上げる新堂に、MAKOTOはガルフォードと一緒に爆笑する。
「若者は面白いのぉ」
のんびりとそんな事を呟きながら、せっせと雪玉を製造するモヒカンの横では、ランディが宝野の淹れてきたお茶をのみつつ、和んでいた。
「‥‥これから決勝戦やるんだが」
呆れたように呟いた神原は、気を取り直してすぅーっと大きく息を吸うと、最大音量で試合の開始を告げた。
●優勝決定戦 B対D
「よっし! 優勝頂くぞ!」
「それはこっちの台詞だ!」
ロッソが気合を入れると、常盤も言い返した。それに鶸も静かな闘志を燃やしつつ、ヘヴィを振り返る。
「確実な路線で行くか。敵全員狙撃するぞ」
ヘヴィの作戦に、常盤と鶸が了解して、それぞれ雪玉を持つ。一方、紅露は銃を構えるヘヴィを見つつ、「作戦2で行こう」と呟いた。シェルターで構えた紅露の銃がヘヴィを狙う。
銃同士が撃ち合っている間、琥竜が雪玉を紅露へ雪玉を運ぶ。ロッソも持てるだけの雪玉を持つと、Bチームへと投げ始めた。お互いが雪玉を投げ合うが、なかなか当てる事も、ましてや旗を取りに行く事もできず、平行線のまま時間だけが過ぎていく。
そんな中、動き出したのはヘヴィだった。雪玉を当てられるのを覚悟で前に飛び出すと、一番旗の近くにいたロッソへ銃を構えた。ロッソが慌てて隠れようとするが遅く、ヘヴィが紅露の狙撃にてアウトになると同時にロッソもアウトになる。
「ロッソ、ヘヴィ、アウト!」
神原の声が響く中、ヘヴィが常盤に向かって銃を投げ渡す。それを受け取る常盤にDチームから集中攻撃され、常盤はそれを何とか避けながら、銃を鶸へと渡した。銃を受け取った鶸が、今まさに常葉に向かって雪玉を投げたばかりの琥竜へ銃口を構える。
「しまった!」
体勢の悪い琥竜をカバーする為、紅露が銃を構えて飛び出す。と、それを待っていたかのように銃口を紅露へと変更した鶸がにやりと笑った。鶸の撃った雪玉は、過たず紅露の肩へとぶつかる。
「タイムオーバー! 残り人数、Bチーム2人、Dチーム1人。よって、Bチーム優勝!」
神原の声と共に、Bチームの雄叫びが上がった。
●かまくらin鍋
「Bチームの優勝と、成長したお前らに向かって、かんぱーい!」
三つの大きなかまくらが繋がった中に、コタツが三つ並んでいる。それに足を暖めながら、参加者と神原は飲み物の入ったコップを掲げた。目の前には美味しそうな湯気を立てる鍋がある。
「美味しぃー!」
マリアーノが皿いっぱいに盛った肉をバクバクと食べている。その横で、ランディもいそいそと鍋から食べたいものを皿に移し、熱を冷ましていた。
「それは俺の肉だ!」
「早い者勝ちだ!」
別の席ではロッソと琥竜が一つの肉を争っている。それを横から佐渡川がひょいっと取り上げ、口に放り込んだ。途端、2人が悲鳴を上げる。
「おかわりしても良い?」
「僕もおかわりしようっと」
にやりと笑う佐渡川の前では、花田と宝野がにこにこと鍋をよそっていた。そこに、常盤の手作りらしい、特製巨大ソーセージを鍋に入れ始める。
「野郎どもは食うんじゃねぇぞ! 女子の為に作ったんだからな! ちゃんと口いっぱいに頬張るんだぞ!」
「そんなことより、野菜も食え‥‥」
ソーセージに手を伸ばそうとする男たちを牽制する常盤の皿に、鶸が勝手に大量の野菜をよそう。それを気を取られたとき、ソーセージを取り上げたのはMAKOTOだった。常盤と目が合い、にこりと笑うと。
「えいやっ!」
MAKOTOが箸をぐっさりとソーセージに刺し、がりがりと男らしく噛み砕いていくのに、常盤が思わず悲鳴を上げて股間を抑える。それを新堂が哀れそうな目で見て、常盤の肩を叩いた。
「いやあ、かまくらでコタツってのはいいものだなぁ‥‥って、おやおや」
「寝ちゃってるNe〜」
そんな騒がしい若者たちを見て和んでいるのはモヒカンだった。ほんわかと笑って隣にいるヘヴィに同意を求めると、ヘヴィはコップを片手に既に寝入っていた。それにガルフォードがけらけらと笑う。
「起こした方がいいんじゃ‥‥」
「ほっとけ、ほっとけ。そんくらいで風邪引くほどヤワな奴じゃないだろ」
風邪をひいては大変だと、紅露がヘヴィを起こそうとするのに、アルコールが入って陽気になっている神原が声をかける。と、その気配に気付いたのか、ヘヴィがふっと目を開け、何事もなかったかのようにコップを口に運んだ。
「おらー! 今日は無礼講じゃー!」
神原の言葉に参加者たちが楽しげな声をあげる。その後、かまくらの中は深夜まで騒がしさを消さなかった。