ElDorado/VerdeBarco 4アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 05/05〜05/09
前回のリプレイを見る

●本文

 龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
 その世界には5つの国があった。
 氷雪の国、ノルド・ノルテ。
 常夏の国、ユーク・スール。
 鉱山の国、デュシス・オエステ。
 芸術の国、オスト・エステ。
 黄金の国、セント・セントロ。


「第34回! デュシス・オエステ仮装武闘大会! これより開催致します!」
 司会の言葉と共に観客の歓声が響いた。眼下に広がるコロシアムの舞台上では、天使の羽を付けた女魔法使いと、ピエロの格好をした戦士が戦っている。
 そんな中、熱狂に沸く会場の地下では黒いローブを着た男、ジンと、不敵な笑みを浮かべる魔術師が立っていた。地上の歓声も微かにしか届かないこの部屋には、至る所に怪しげな魔方陣が描かれている。
「この石を媒体にすれば、この魔方陣は完璧なものとなる。‥‥ようやく、我が世界一の魔術師へとなる日が来たのだ」
 緑色に輝く石を握り締め、興奮した様子の魔術師をジンは冷めた目で見ていた。そして、ふと上を見上げると、にやりと口角を上げる。
「お? 来たかな? さて、お手並み拝見と行きますか」


第4話『対決! 仮装武闘大会』
 奪われたエメロートトルーネを取り返す為、デュシス・オエステへとやってきた王子達。地下へ潜入する者と、それを助ける為に武闘大会に出場して周りの意識を反らす者と二手に分かれる事に‥‥


※諸事情により撮影日程が延期してしまった為、役者の方々を再募集させて頂いております。


●必須キャスト(連続出演可能な方を望む)
・王子(主人公)1名
・付人1名
・護衛1名
・護衛見習い1名
・王子捜索隊2名

●NPC
・ジン
 裏の世界で『何でも屋』をやっている組織の一員。戦闘技術に実力はあるのだが、仕事には何だかやる気がない。その反面、暴れる事は大好きだったりするという、気紛れな性格。どうやら魔術師の依頼で石を奪ったようだが‥‥

※その他キャストは自由に設定して頂いて構いません。
参考/魔術師、司会、大会参加者、観客 など

●設定
第1話を参照して下さい。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0595 エルティナ(16歳・♀・蝙蝠)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1715 小塚さえ(16歳・♀・小鳥)
 fa4584 ノエル・ロシナン(14歳・♂・狸)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)

●リプレイ本文

「ねえ、アンサラー‥‥本当にここなの?」
「間違いない。この下だ」
「王子が言うなら、そうなんでしょうけど‥‥」
 首を傾げて問うピアノ(美森翡翠(fa1521))に対し、自信満々に答えたアンサラー(ノエル・ロシナン(fa4584))の言葉に、アプラ・ティサージュ(氷咲 華唯(fa0142))は眼下の光景に困ったように眉尻を下げた。
「思いっきり武闘大会会場じゃない」
 ピアノの呟く通り、そこは大勢の観客に囲まれた武闘大会の会場であった。高名な貴族達も見学に来ている事もあってか、会場の至る所で強面の警備兵達が監視をしている。
「下って言うと、地下ですよね」
「だと思うけど‥‥この警備じゃあ、普通には入れないわね。入るとしたら出場しなきゃ‥‥」
 言って、ピアノはアンサラーと顔を見合わせると、アプラを振り返った。
「‥‥え?」


「次は真紅の道化師アプティVS魅惑の魔術師ミルカ!」
 観客の歓声に包まれながらステージの上に上がって来たのは、天使の羽を付けた女魔法使いと、真っ赤なピエロの格好をしたアプラであった。観客に向かって投げキッスをしているミルカを後目に、偽名を使って出場したアプラは小さく溜息を吐きながら、真っ赤に塗られた鼻を掻いた。
 ミルカが杖を掲げ、風の塊を作り出すと、それをアプラに向かって次々と放ち始める。アプラはそれをギリギリで避けつつ、ちらりと後ろを振り返った。目の前に迫る風の塊がをアプラがあと数センチの所で身体を反らして避けると、塊は勢いを失う事無く、アプラの背後にあった出場者出入り口の壁に轟音を立てながらぶつかった。警備兵が慌てて逃げ、入り口が土煙に包まれる。
 興奮したような実況の声と歓声に耳を向けながら、アプラは土煙の中の気配に集中した。げほげほと咳き込む警備兵をすり抜け、親指を立てたアンサラーとピアノが会場の中に入って行くのが見える。それを確認したアプラは、再び魔力を集中するミルカへ意識を戻した。

「上手く行ったな」
「後は警備兵に見つからないように地下を探すだけね」
 軽く息を吐いて、肩に落ちた砂を払うアンサラーは、キョロキョロと辺りを見渡すピアノの腕を引くと、廊下の奥を見た。恐らく上の貴賓席に繋がっているのであろう階段の前に、2人の警備兵が立っている。2人はそれを確認すると、警備兵とは逆の方向に走って行った。
 魔力の元を探しながら走るアンサラーに、ピアノが必死について行く。時折、風で遠くの物を動かして音を出すなどして警備兵の気を反らしつつ、探索して行く。
 ドォンッと音がして会場が揺れる。同時に観客の歓声が耳に届き、アンサラーとピアノは上を見上げた。
「どうやら上手い具合に暴れてるみたいだな」
「うーん、ちょっと見てみたかったかも」
「別にお前は来なくても良かったんだぞ」
「駄目よ! 私がいないと無茶するでしょ、アンサラー。クラウディア様も言ってたじゃない」
 言われて、アンサラーは作戦準備中の事を思い出していた。


「クラウディア様、こっちです!」
 ピアノの言葉に駆け寄って来たのは、クロウディア・フォン・フローライト(エルティナ(fa0595))だった。ピアノに連れられ、宿屋の一室に入ると、ベッドにアンサラーが座っていた。
「暫くぶりですね、王子」
「どうだった?」
「どうやらあのジンという男は、裏で報酬さえ頂ければ何でもやる、『何でも屋』というものをやっている組織の一員のようです。規模自体は小さいようですが、能力は高いらしいですわ」
 肩を覆うマントを取りながら、クラウディアが答える。
「エメロートトルーネを奪ったのも、依頼者がいるのでしょう。捕まえるべきは、その依頼者ですわね」
「そうだな。俺の方も、エメロートトルーネが武闘大会会場の地下にある事が判った。ってことで、地下に潜入する為の作戦があるんだが」
 その報告に、ぽんっと膝を打ったアンサラーは、嫌な予感に眉を顰めるクラウディアを他所にピアノを呼んだ。はーいと答えてトタトタとやって来たピアノの手には、様々な衣装が抱えられていた。
「お前も大会に出場して来い。アプラは先に受付に行っている」
「は!? 私は王子の護衛を‥‥!」
「大人数でぞろぞろと潜入するわけにはいかんだろ。お前は出場者として会場に入り、途中で怪我でもしたふりをして中に入って来い」
 言いながら、アンサラーがピアノと共にベッドの上に広げられた衣装を選ぶ。その中からピアノが真っ赤なドレスと蝶仮面を摘んだ。
「あ、アプラ君。結局別の衣装着てったのね。折角私が選んであげたのに!」
「後で着せればいいだろう。こんなのはどうだ? クラウ」
「えー、駄目よ。クラウディア様には断然コレでしょ! もー、可愛いー!」
 唖然とするクラウディアにピアノが突きつけたのは、水着にも似た露出の高い服に小悪魔のような羽がついたものだった。ボトムには丁寧にも三角の尻尾が揺れている。
「どうして、私がこんな衣装を着なくちゃいけないんですの!?」
「しょうがないだろ? 出場者は仮装が必須なんだから」
 さらりと言うアンサラーに尚も言い募ろうとしたクラウディアを止めたのは、キラキラとした目でこちらを見ているピアノだった。クラウディアが諦めたように溜息を吐く。
「‥‥それなら、約束して頂きたい事があります」
「ん?」
「会場に潜入する際は、ピアノを連れて行って下さい」
 クラウディアの言葉に、アンサラーとピアノが目を見開く。
「戦闘になるかもしれないのに、か?」
「守るべき者が傍にいれば、無茶も出来ないでしょう?」
 無表情で見下ろすクラウディアを、アンサラーが目を細めて見る。暫しの間、2人は見詰め合うと、アンサラーが軽く肩を竦めた。


「クラウディア様も心配してるのよ。今日のアンサラー、何やらかすか判らないもの」
 ピアノの言葉に片眉を上げたアンサラーは、にやりと笑い返して一つのドアを開ける。そこは、薄暗い倉庫だったが、隅の一角から緑色の魔力が漏れ出しているのが見えた。

「‥‥行ったみたいですね」
 倉庫に置いてあった樽の中からひょっこりと顔を出したのは、ラウラ・キアーラ(小塚さえ(fa1715))だった。軽やかに樽を飛び出し、音も無く降り立ったラウラは、蓋の開いた隠し階段を見下ろす。
「さて、今回はちょっと大変そうですね。‥‥最悪、王子達に監視がバレてもしょうがありませんか‥‥」
 ふうっと溜息を吐くと、ドンドンッ! と音が響いて、倉庫の屋根からパラパラと塵が落ちて来た。ラウラはそれを見上げ、眉尻を下げる。
「アリア‥‥あまり羽目を外さないで下さいよ‥‥」
 呟いて、ラウラは隠し階段を下りて行った。


 観客の歓声と、実況の興奮したような声が会場に響く中、クラウディアは次々に繰り出される氷の矢を細身の剣で砕きながら、駆けていた。向かう相手は、シスター服に真っ黒なサングラスをかけた女魔法使いである。
「やりますね‥‥ですが、私は負けられないんです! 愛しのアルヴィレオ様へ賞金をお渡しする為に!」
 呟いた女魔法使い、アリア(葉月 珪(fa4909))が、持っていた杖で自分の周りに円を描くと、それに沿うように氷の柱が飛び出した。氷の柱は飛び込んで来たクラウディアを巻き込み、その身体を弾く。宙で一回転したクラウディアは、体勢を整えつつ降り立つ。
「‥‥何だか覚えのある魔力ですわね‥‥まあいいでしょう。利用させて頂きますわ」
 クラウディアが剣を構え、再びアリアへと向かう。それにアリアが氷の刃を繰り出すと、クラウディアは殆どを避けたが、最後の一撃をあえて受け、吹っ飛んだ。クラウディアの体が舞台に転がる。
「これは決まったー! 愛の戦士ラブ・アルヴィの勝利!」
 実況の声が轟き、歓声が沸く。そんな中、救護兵がクラウディアの身体を抱え、出入り口を出て行く。それを見送りながら、アリアは杖で顎を叩いた。
「‥‥えーっと、半分忘れかけてましたけど、これで一応お仕事した事になりますわよね? ‥‥よしっ! それじゃあここからは本気で勝ちに行きますわよー! 待ってて下さいね、アルヴィレオ様‥‥最後に愛は必ず勝つ! 邪魔する方は氷漬けにさせて頂きますわ!」

 一方で、救護兵に抱えられたクラウディアは、会場の内部に入り、人気のないのを確認すると、救護兵に魔法をかけて眠らせた。そして、救護兵の着ている服を剥ぎ取ると、小悪魔の羽と尻尾を剣で切り落とし、救護兵の服に着替える。
「申し訳ありませんが、暫く借りますわ。‥‥さて、王子は地下を見つけたようですわね。私も参りましょうか」
 言って、クラウディアはアンサラーの魔力を辿るように駆けて行った。


 階段を下りたアンサラーとピアノは、真っ暗な通路を魔法で生み出した光を頼りに進んでいた。と、急に視界が開け、数個のランプの灯りに照らされた部屋に辿り着いた。
「お、来たな。王子様」
 そこにいたのはジンだった。楽しそうな笑顔のジンに、アンサラーが苛ついたように睨み付ける。
「エメロートトルーネを返せ。そしたらタコ殴りする位で許してやる」
「石ならもうないよ。今頃、魔法陣に使われてんじゃねーの?」
 言われた言葉にアンサラーが眉を顰めると、ジンの背後にある通路の奥から、強大な魔力が噴出して来た。それは強い風となり、飛ばされそうになるピアノをアンサラーが庇う。
「‥‥そろそろかな?」
「お前ら‥‥何しようとしてる?」
「さあ。俺も知らない」
 手を広げて肩を竦めるジンに、アンサラーが飛び込む。体術を繰り出すが、ジンにひらりと避けられ、アンサラーが舌打ちをして魔力を込めた。氷の槍を作り出し、ジンに向かって突き出す。ジンはそれをギリギリで避け、アンサラーから距離を取った。
「いいの? 俺と遊んでたら、魔法陣完成しちゃうぜ?」
 言われて、アンサラーがギリギリとジンを睨み付ける。その様子をピアノがハラハラと見ていると、後ろから肩を叩かれた。
「ピアノ様。ここは私に任せて王子と奥へ」
「え? あ、貴女は‥‥」
 現れたのはラウラだった。ひゅっと腕を掲げると、ジンの身体を竜巻が襲う。その隙に、ピアノはアンサラーに近づき、ラウラの意図を告げる。
「‥‥何でここにいるか想像はつくが‥‥後で話し聞かせて貰うぞ」
 ラウラにそう言って、アンサラーとピアノが奥へ走って行く。それを見送り、ラウラは次第に弱くなって行く竜巻に向かった。
「それじゃあ、さっさと片付けて、王子に捕まる前に消えないといけませんね。‥‥どうやら、風が効かないというのは本当のようですし」
 ジンが腕を一振りしただけで竜巻が消える。その身体には傷一つついていない。
「持っている魔法の属性が風か土に特化しているという事でしょうか? その能力、確かめてみたいものですわね。‥‥ふふ、諜報部員にあるまじき願望ですね‥‥」
 呟いて、ラウラは二体のゴーレムを生み出すと、ジンに向かわせた。大きな拳を振り下ろすゴーレムを避けつつ、ジンはラウラに向かう。小型のナイフを翻すジンに、ラウラが土の柱を生み出して防御する。その柱を、ジンは凝縮した風の塊で壊す。
 と、その直後。アンサラー達が向かった通路から強大な魔力が噴出した。それはまるで龍の首のように形を作り、対峙する2人に襲い掛かる。
「何ですの、この魔力は! ‥‥王子っ!」
「こーりゃ、ちょっとやべえかも?」


 通路の奥に向かったアンサラーとピアノは、魔法陣に囲まれた部屋に辿り着いた。部屋の中心では一際大きい魔法陣が緑色に輝き、その中に魔術師が立っている。
「貴様、何をするつもりだ!」
「オスト・エステの王子か‥‥龍の石を取り返しに来たのだな。ふふ、だがもう遅い。魔法陣は完成した」
 アンサラーが止めようと駆け出すが遅く、魔術師がエメロートトルーネを高く掲げた。瞬間、人間の物とは思えない程の魔力が渦巻き、巨大な竜巻が発生する。それは部屋の天井を突き破り、地上の舞台まで巻き上がった。
「な、何だ!?」
「あれは‥‥!」
 舞台で対峙していたアプラとアリアは、地下から吹き上がった魔力の竜巻を見上げ、愕然とした。
 霧散する竜巻の中から現れたのは、どす黒い緑色をした、龍だった。
「ふ、ふははは! ついに、ついにやったぞ! 強大な魔力を持ち、永遠の命を持つ最強の魔術師‥‥私は龍になったのだ!」
 龍と化した魔術師が雄たけびを上げると、会場に無数の巨大な風の刃が現れ、悲鳴を上げる観客を襲い始めた。と、竜巻が昇って穴の開いた地下からアンサラーが飛び出し、同じように風の刃を繰り出して相殺させた。その下から、アンサラーを風で飛ばしたらしいクラウディアがピアノを抱えて飛び上がって来ると、アプラも駆け寄って来る。龍がそれを見下ろし、鼻で笑った。
「くく、無駄だ。最強の魔術師となった私に勝てるわけがない」
「最強の魔術師? 力が最強だとでも思っているのか? 最後に物を言うのは‥‥知恵と勇気だ!」
 アンサラーが叫び、腕を掲げる。
「行くぞ!」
 その言葉に、アプラとクロウディアがアンサラーを守るように並び、剣を構えた。