LoveClassic Februaryアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 中畑みとも
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/19〜02/21

●本文

『LoveClassic』とは、世界各国で行われたオーケストラの演奏会を収録し、放映している番組だ。
 そんな番組の中に、数名の若手演奏家が演奏するコーナーがある。毎回、オーディションを行って演奏者を決め、確かな腕を持つ者だけを出演させているコーナーだ。コーナー自体は十数分と短い時間だが、そこに出演する事は若き演奏家たちの登竜門であり、修行の場でもあった。


 そしてこの日。再び番組に出演する演奏者たちを決めるべく、オーディションが開催された。耳の肥えたプロデューサーや、名立たる音楽家関係者たちの前で、若き演奏家たちはどんな音を奏でるのだろうか‥‥。


●オーディションにあたり
 番組のコーナーで演奏して貰う演奏家を選ぶ為、オーディションを行います。
 このオーディションに受かった者のみが、番組に出演する事が出来ます。
(出演料3万5千円は、出演者のみに支払われます)
 合格者の数は限定していませんが、選定はかなりシビアで、過去には合格者ゼロでコーナーが流れてしまった事もあったそうです。ですが、不合格者の方には審査員の方々がきちんとアドバイスして下さるので、修行の場としての参加も可能です。
 
 曲目・楽器は自由、声楽の方も参加可能です。ご自身の好きな楽器で、好きな曲をご披露下さい。ただし、原則として一般に発表されているクラシック以外の曲は使用禁止です。(定義として、一般に言われる古典音楽の他、現代音楽としてのクラシックが入ります。ジャズやポップス・オリジナルなどは禁止です。例外として『ジャズ風や民族音楽風に作曲されたクラシック』などは認めます)

 合格した場合、オーディションで演奏して頂いた曲で撮影を行います。
(尚、合格者内で曲が重なってしまった場合、撮影では他の曲をお願いしたりする事があります)

※オーディションでは複数での参加も可能です。ただし、その場合はそのグループ全員での審査となり、グループの中から誰か一人のみ合格という事はありません。声楽の場合も、伴奏者との1グループとします。

 曲をどのように演奏するのか、どこに気をつけるのか。しっかりと考えて演奏する事が合格への第一歩となります。

●楽器について
 自身の持っていない楽器を使いたい場合は、スタッフに相談して頂ければ極力用意致します。が、必ずしもその方にあった楽器を渡せるわけではありませんので、基本的に自身の使い慣れた楽器を持ち込みをして頂いております。
 例外として、ピアノなどの持ち込みが不可能な大きなものは、こちらで最善のものを用意しております。
 声楽の方は、オーディションではマイクなしでやって貰っています。撮影時は、こちらで用意したマイクを使用して頂きます。

●審査員
 審査員の中には著名な指揮者である、ジャン・ダイイ氏(fz1036)をお呼びしております。

●今回の参加者

 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0597 仁和 環(27歳・♂・蝙蝠)
 fa0964 Laura(18歳・♀・小鳥)
 fa1126 MIDOH(21歳・♀・小鳥)
 fa1257 田中 雪舟(40歳・♂・猫)
 fa2457 マリーカ・フォルケン(22歳・♀・小鳥)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa3960 ジェイムズ・クランプ(22歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●1組目
「まず一人目は、篠田裕貴(fa0441)さん。プッチーニの『トゥーランドット』から、『誰も寝てはならぬ』です」
 ステージに上がって来た篠田は、背筋を伸ばして深呼吸すると、ゆっくりと口を開いた。出て来るのは伸びやかなテノールだ。静かに抑えた声で、姫へと囁くように紡がれる歌に、ジャンとプロデューサー達が期待を込めた目で見つめていた。
 歌はだんだんと盛り上がりを見せ、徐々にクレッシェンドがかかっていく。トゥーランドット姫への愛をカラフ王子が高らかに歌い上げる部分に入り、篠田は力強いフォルテッシモを披露した。まるでカラフ王子になりきったかのようなその歌声に、ジャンが思わず背を伸ばす。
 途中、コーラスが入る部分も高い声で囁くようにきっちり歌い上げた篠田は、終盤へと向けて力を増して行く。そして、クライマックスを自信に満ち満ちた声で高らかに絶唱すると、ぎりぎりまで伸ばし、歯切れよく終えた。
「いやいや、なかなか聞き応えがありましたネ」
「コーラスまで歌い上げてくれましたしねぇ」
「力強さもあったし、気持ちも充分込められて、いいと思いますヨ」
 笑顔で頷くジャン達を横目に、篠田は満足気にステージを降りて行った。


●2組目
「続いてプッチーニの『蝶々夫人』から『ある晴れた日に』、仁和 環(fa0597)さんと千音鈴(fa3887)さんです」
 ステージ上で頭を下げた千音鈴は、斜め後ろで琴を構える仁和に目配せをした。それに仁和が答え、静かに弦を弾き始める。『花梨』という名前の通り、涼やかな透き通る音を鳴らす琴に、ジャンが頬を緩めた。
 琴の音色に、千音鈴のソプラノが重なる。初めは少し押さえ気味に歌っていたが、次第に気持ちが込められると同時にだんだんとテンポを落とし、ピアノからメゾフォルテ、フォルテへと情熱的に変化させる。
 夫を待つ様子を思い浮かべさせるかのように情感たっぷりに歌う千音鈴の声に、仁和の琴が可憐な音色を奏でる。時折入るトレモロで伸ばされた音やアルペジオが、琴の音を最大限に生かしている。
「琴の音色がいいですネェ」
「声もよく伸びてますし、このレベルでしたら申し分ないんじゃないでしょうか」
 クライマックスに向け、千音鈴がはっきりとした声で高らかに主題を歌い上げる。最後は押さえ気味に張り上げず、余韻を残すかのようにゆっくりと終えた。ビブラートのかかる琴の音が静かに空間に消え入る。
 ジャン達に丁寧に頭を下げ、ステージを降りた千音鈴と仁和は、お互いの顔を見合わせて、楽しげに笑った。


●3組目
「次はLaura(fa0964)さんとMIDOH(fa1126)さん。曲はバッハの『主よ人の望みの喜びよ』です」
 ぺこりと頭を下げたLauraとMIDOHは、位置につくと視線を交わした。ピアノの前に座ったMIDOHが静かに鍵盤に指を置き、滑らかな指使いで曲を弾き始める。それにLauraが大きく息を吸い、ソプラノを歌い始めた。
 練習した成果を発揮しようと丁寧に弾かれるピアノは、緊張感も含めて重厚な音を響かせており、荘厳な雰囲気を醸し出している。合わせて響くソプラノ・ドラマティコが、嫌味にならないように、かつ存在感を強調するように紡がれた。最後の一音一音を余韻を残すように響き渡らせ、透き通ったトランペットの音色のように声を降らせる。
 曲はゆっくりと力強さを増していった。ピアノを弾くMIDOHの指にも力が入る。それでもLauraは叫ばないように気をつけつつ、あくまでも清らかで厳かに、太く重く、強いソプラノで歌い上げていった。神が自分たちに近しく、どんなに大事な存在であるかを、高らかに表現する。歌うLauraのその表情は楽しそうでいて穏やかな、自信に満ちた顔だった。
「なかなかいいですネェ。声もよく出ていマスシ」
「ドラマティコの経験が少ないみたいですが、問題ないでしょう」
「これからの伸びが期待できますね」
 ゆるやかに最後の音を響かせたLauraとMIDOHが頭を下げ、ステージを下りて行く中、ジャン達が顔を見合わせて頷いていた。


●4組目
「えー、田中 雪舟(fa1257)さん、ジェイムズ・クランプ(fa3960)さん。デンツァの『フニクリ・フニクラ』ですね」
 優雅に頭を下げた田中とジェイムズに、ジャンとプロデューサー達が期待に満ちた目で見つめた。ピアノの前に座ったジェイムズが和音のカウントを始めると、田中が大きく息を吸い、力強いテノールを響かせる。始まりを印象深く、強く歌ったかと思うと、次は語りかけるような抑えた声で歌を紡いだ。そして有名な旋律の盛り上がり部分は軽快に、歯切れ良く歌い上げる。伸ばした音も余韻も感じさせないように力強く歌う田中に、ジェイムズが負けまいと鍵盤を弾いた。
 田中の声が一際高らかに響き、ピアノのソロへと入る。ピアノの見せ場としてアレンジされたソロに、ジェイムズがひたすら練習した成果を見せた。それは田中に決して劣らぬ力強さで、聞いていたジャン達や田中も、口元に笑みを浮かべる。
 そして再び有名な旋律を2人で奏でる。これ以上ないほど明るく、力強く歌う田中に、ジェイムズも楽しそうにピアノを弾いていた。聞いているジャン達もメロディに合わせて身体を弾ませている。高く力強く伸ばした最後の一音が、ピアノの音と共に余韻も残さず歯切れ良く軽快に終わると、ジャン達は満足気に息を吐いた。
「いやー、流石ですね。これは決定でしょう」
「ピアノの彼も大分練習したみたいですネ。弾き込まれてて良かったですヨ」
 顔をつき合わせるジャン達に、ステージを下りた田中は、笑顔でジェイムズの肩をぽんっと叩いた。


●5組目
「最後はマリーカ・フォルケン(fa2457)さんで、『Amazing Grace』です」
 ステージに上がってゆっくりと頭を下げたマリーカは、祈りを捧げるかのように両手の指を組むと、静かに歌い始めた。
 神への感謝を、マリーカは心の底から歌い上げる。その表情は泣きそうで、それでいて幸せそうで、彼女の心の内を知るものでなくとも、その心情に引き込まれていきそうだった。何があったかは判らない。それでも、彼女が神の恩寵によって、運命によって救われた事を感謝している。
 この曲は、奴隷商人の前歴を持っていた作詞家が、死に直面した際に神へ助けを求め、一命を取り留めた事を感謝して作られた歌である。こんな愚かな、どうしようもない者をも神は救って下さった。その感謝の念を綴った曲を、マリーカは精一杯の思いを込めて歌う。それは、まるで乾いた土に染み入る恵みの水のように、静かに心の中へと入り込んで来るのであった。マリーカの歌声に、スタッフの幾人かが、思わず涙ぐみそうになって目頭を押さえる。
「‥‥あー、いいですネェ。もう、何も言う事はありマセン」
「気持ちの込められた歌は、何者にも勝りますね」
「技力もなかなかですし、彼女は採用でしょう」
 やりきった感じでステージを降りて行くマリーカに、目尻を軽く拭いつつ、プロデューサーが書類にチェックを付けた。


●審査中
「‥‥今回は、選別が非常に難しいな‥‥」
「バランスもいいし、何より気持ちが入っている」
「僕は全員合格でもいいかと思いますケド」
「全員合格ですかぁ‥‥しかしなぁ‥‥」
「でも、全員合格させたとしても、5組ですよ。枠的には問題ありません」
「この中から誰かを落とすとなっても勿体ないし、いいんじゃないですか?」
「そうそう、こういう日もありますヨ」


『LoveClassic』のメインであるオーケストラの演奏が終わり、若手演奏家たちのコーナーへと変わった。始めに現れたのは仁和と千音鈴だ。『ある晴れた日に』で美しい琴の音と、それに負けないソプラノを披露する。
 次は篠田が情熱的なテノールで『誰も寝てはならぬ』を見事に歌い上げた。LauraとMIDOHも、バランスの整った『主よ人の望みの喜びよ』を奏でる。続いてマリーカがオーディションの時の力の入れようもそのままに『Amazing Grace』を歌う。
 最後はしんとした舞台に、力強い『フニクリ・フニクラ』が響いた。田中の声とジェイムズのピアノが圧倒的な存在感を舞台に残す。
 こうして1コーナーが終わると、再びオーケストラの演奏へと戻っていく。たった十数分のコーナーだったが、それでもプロデューサーとジャンは非常に満足気な様子で笑っていた。