新人強化合宿・如月アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
02/21〜02/25
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●本文
『棒の手』とは、剣術・棒術・薙刀術など、日本武術の形を踊りにした伝統芸能日本舞踊である。主に棒や木太刀を使い、2人から4人の演技者が型に従って対戦するものだ。所によっては、無形民俗文化財になっていることも多い。
そんな『棒の手』だが、これも他の民俗芸能の例に漏れず、後継者の確保に悩まされているらしい。
「そこで、芸能人の方々に棒の手に挑戦して貰って、その楽しさを広めて貰おうかと」
にっこりと笑う師範の手には、180センチほどの長さの細めの棒がある。今回はこの棒を使って、基本となる型を体験して貰うらしい。
「棒の手なんて、あんまりやった事ある人いないと思いますが。興味があるなら、是非」
●棒の手について
今回、皆さんに体験して頂く型は『差合』という基本の型で、2人1組になって行います。
背丈が同じ位のパートナーとの方がやりやすいと思いますが、強制ではありませんので、お友達とお気軽にご参加下さい。
棒の長さは180センチが基本ですが、参加する方の身長によっては長さを変える場合があります。
そんなに重くはないので、女性の方も大丈夫です。
怪我のないように教えますが、棒はちゃんとした硬いものですので、無茶な扱いをしないように気をつけて下さい。
●リプレイ本文
「今日は宜しくお願い致します」
丁寧に頭を下げる師範に、参加者達が挨拶をして頭を下げた。その期待に満ちた目に、師範がにっこりと笑う。それに、軽く手を挙げて質問をしたのは冬織(fa2993)だった。
「今回学ぶに当たり、多少の予習はしてきたのじゃが『差合』は剣対棒の攻防じゃと見たのじゃ。此れは流派に由って異なるのかえ? 其れとも此度は初心者ゆえに棒対棒になっておるのか?」
「差合は我が流派の基本となる型で、仰る通りに剣と棒で行います。ですが、まずは基本中の基本である棒を覚えて頂いて、それから剣の方に移って行きたいと思います」
言って、180センチの細い棒が配られる。その棒を見上げ、志羽・明流(fa3237)が溜息を吐いた。
「うわあ、長いなぁ。俺の身長と殆ど変わらないや」
「最初に型を覚えます。一緒にゆっくりやって行きましょう」
師範の弟子だという人が、剣に見立てた短めの棒を持ってそれぞれの相手へとつくと、師範が両手を肩幅に広げ、棒を横に持って構える。そして掛け声を掛けながら上から来る剣を防御し、再び構え、棒を斜め縦にして下からの剣を防御。
「ここから、攻防が激しくなって行きます」
「わー、何か興奮して来た!」
姫野蜜柑(fa3982)がわくわくと棒を構えた。師範の動きを真似て、棒を後ろに振り被って身体を引き、打ち下ろしてくる剣を防御した。上段で防御する剣に棒を振り下ろし、切っ先を下に下ろして一度身体を引くと、今度は肩上で切っ先を下に構える剣へ向かって、上段突きを繰り出す。
「腕を伸ばして、背筋は真っ直ぐにして下さい。型が美しく見えるようにね。ああ、いいですねぇ」
「有難う御座います」
褒められて、照れたように微笑み返したのは烏丸りん(fa0829)だった。一つ前の構えに戻り、上段で振り下ろす剣と交差するように上段突き。そして、振り下ろされる剣から身体を引いて、肩上で構える剣へ下段から突く。
「ヤーで剣が上段に構えますから、棒は腕をいっぱいに広げて胸元で持ち、剣に切っ先を向けます。この時、左手は棒の端を持って下さい」
「よっと‥‥こんな感じか? ん、こっちの方が格好いいか」
「こ、こうかな? ‥‥あうっ。あわわわ‥‥落としちゃった」
呟きながら、烈飛龍(fa0225)が構えを調節している一方で、高白百合(fa2431)が棒を取り落とし、慌てて拾い上げた。
正反対な2人を見てにこりと笑った師範は、振り下ろされる剣に合わせて棒を下へ構え、右膝を折り曲げて地面に座り、左足を伸ばす。そのまま足が地面についた状態で棒を後ろに構え、素早く身体の向きを変えて地面についた膝を交換すると、上から振り下ろされる剣を止める。
「む? なかなか難しいな‥‥」
「少し跳ねる感じでやるといいみたいですよ」
足の動きのぎこちないマサイアス・アドゥーベ(fa3957)に、稲森・梢(fa1435)がアドバイスをしていた。その横で、深森風音(fa3736)が緊張気味に溜息を吐く。
「結構、実践的な動きなんですね」
「何か私、気を抜いたら足が出そうだよ」
月影 愛(fa2814)が笑いながら言う前で、師範が切っ先を下に構えて立ち上がり、相手と位置を交換する。下から振り上げる剣を、足で支えた棒を縦にして防御し、一旦離れる。そして、振り下ろされる剣へ、棒を横薙ぎに振り、相手と交差して終了する。
「一通り覚えたら、今度はペアになってやってみましょう。剣の方は特に複雑な動きもないので、大丈夫ですよ」
弟子が下がり、今度は参加者達の間でペアを作った。
●烈&マサイアス
先に棒を持つのはマサイアスだ。掛け声を掛けながら、烈の持つ短棒へと打ち込む。気合の入った声が道場へ響き、烈が楽しそうに笑った。
「いいねぇ。格好いいよ、マサイアスさん」
「お褒めに預かり、光栄である!」
ぐるんと棒を回して構えるマサイアスは背丈もあって、長い棒を持っていても見劣りがしない。動く時は動く、止まる時は止まると、魅せ方を考えながら動く様子は、まだぎこちないながらも確かな上達ぶりを見せていた。慣れればもっと力強い動きが出来るようになるなと、師範が見る。
交代して棒を持ったのは烈だ。アクションスターなだけあって、魅せ方を知ったキレのある動きを見せる。
「うむ! 流石であるな!」
「どうも! でも、やっぱり棒は間合いが難しいな」
言って、烈は棒の持ち方や持つ場所に気をつけながら型を進めて行く。身長が高い為に振り回されている感はないが、それでもあまり扱った事のない長さの棒に苦戦していた。だが、丹念に基礎を繰り返す烈は、確実に型を習得しつつあり、元々のアクションの技力もあって習得のスピードも速く、師範が満足気に頷く。
●烏丸&月影
先に棒を持つのは烏丸だ。型は覚えたものの、扱った事のない棒の長さと、怪我を恐れてか勢いが少し弱い。
「私は大丈夫だから、結構強めに来ても大丈夫だよ」
「あ、はい。判りました」
月影に言われて、烏丸が頷いて肩の力を抜いた。が、月影と身長差がある事で、どうしても型が崩れてしまう。
「もっと足を広げて、腰を低くしましょう」
師範のアドバイスに、烏丸が言う通りにすると、先程よりも随分と格好がつくようになった。笑みがこぼれる烏丸に、師範は満足気に笑った。
交代して棒を持ったのは月影だ。自分よりも身長の高い烏丸が構えた短棒に当てる為、棒を持つ場所を調整する。
「私、もう少し低い所で構えましょうか?」
「ん、大丈夫。あ、でもやっぱり、ちょっと下げてくれると嬉しいかも」
少し低めに構える烏丸に、月影が笑みを返した。その様子に、師範もにこにこと笑って見ている。どんどん上達して行く月影は、特に足の動きにキレがあった。その動きが、小柄な体系であっても力強く魅せる一因となっている。月影は棒の手をマスターするべく、真剣な目で向かっていた。
●稲森&志羽
先に棒を持つのは志羽だ。自分の身長ほどもある棒に初めは苦戦していたが、だんだん慣れて来たようだった。
「もっと強く来ても大丈夫ですよ。これでも一応、格闘の経験ありますから」
「でも、女の人を怪我させるわけには行きませんから」
稲森の言葉ににっこりと笑い返して、志羽が棒を振るい、稲森の剣を受け止める。手付きはまだぎこちないが、少しずつ上達して来ていた。性格もあってか、攻撃の型よりも防御の型の方が得意そうに見える志羽を、師範が面白そうに見ていた。
交代して棒を持ったのは稲森だ。くるんと棒を回して構える様は、長身痩躯の身体を引き締まったように見せる。
「おお、何か稲森さんが持つと格好良く見えますね」
「そうですか? ‥‥では、参ります」
志羽の言葉に照れたように微笑み返し、稲森は気を引き締めて棒を振るった。武器の扱いになれた感じは見受けられるが、少し緊張気味にも見える。だが、型を進めて行くうちにそれも次第に解けて行っているようで、慣れれば適度なものになるだろうと師範は見た。
●高白&姫野
先に棒を持つのは高白だ。不安気な様子で棒を扱う高白に、姫野が小首を傾げる
「動き自体はいいと思うんだけど‥‥」
「あの、すみません‥‥」
何で謝るのーと笑う姫野に、高白が眉尻を下げる。確かに動き自体はキレもあり、棒の扱いにも慣れている様子はあるのだが、表情が情けない感じで、師範も苦笑する。
「命を絶つものではなく、自らの命を神へ魅せるものとしてやってみたらどうですか?」
言われて、高白が驚いたように目を見開いた。そして、次に棒を構えた時、表情は変わっていた。
交代して棒を持ったのは姫野だ。楽しそうな表情で棒を握る姫野に、高白が短棒を感触を確かめた後で頭を下げる。
「えっと、宜しくお願いします」
「高白さんに負けないように頑張るからね!」
棒を構える姫野は、元々運動神経がいい事もあって、構え方に無理はなかった。多少、格好を気にしている部分もあったが、それは舞いとしてプラスな事なので、師範は何も言わず、そのまま眺めていた。緊張も解れた様子の高白に棒を打ち込む様は、師範の期待通りに棒の手を楽しんでいるように見えた。
●冬織&深森
先に棒を持つのは深森だ。先程、棒にぶつけてしまった額を摩りながら、改めて構え直す。
「平気かの? 深森殿。傷が残らなければいいのだが」
「ああ、大丈夫です。‥‥後で治しておきますから」
にっこりと笑う深森に、冬織が笑い返して短棒を構えた。打ち下ろす冬織の動きに合わせて、深森が棒を振るう。円を描くように棒を回す深森は、動きはそれほど上手いわけではないが、凛とした立ち居振る舞いと雰囲気が、演舞を美しく見せていた。その姿に、師範は満足気に頷いていた。
交代して棒を持ったのは冬織だ。くるんと棒を回して構える冬織の顔はいきいきとしていて、実に楽しそうであった。
「それでは、お願い致しますね」
「うむ、宜しくなのじゃ。ふふ‥‥心が躍るのぉ」
そう言って微笑んだ後、冬織は表情を引き締め、深森へ棒を打ち込む。冬織の自信に満ち溢れた強い掛け声が道場に響き渡った。その声に、師範が感心したように目を向ける。
リズムよく打ち返す冬織の舞は、技術こそ乏しいものの軽やかで、楽しそうに見えた。
一通りの基礎を覚えた参加者達は、幾度かペアを変えて演舞を行った。大分余裕が出来てきた様子の参加者達を、師範がにこにこと見守る。そんな中、姫野が思いついたように振り返った。
「そうだ、師範! 何か殺陣ばりのカッコイイ演舞がありましたら、ひとつ手本をば!」
その言葉へ興味を示す参加者に、師範は少し思案した後、弟子を呼んだ。
「それでは、私が得意としているものをやらせて頂きましょうか」
言って、弟子から受け取ったのは、子供用の舞傘だった。対する弟子は鈍く光る刃のついた槍を持っている。緊張する参加者達の前で、師範が傘を構えた。
次々と繰り出される槍を、素早く傘を動かして受け流していく。傘に槍が突き刺さる度、緊張が走るが、師範は軽やかな動きで槍を交わして行った。ひらりひらりと槍を避ける師範の動きに、参加者達が拍手を送り、またその動きを学ぼうと真剣な目で見つめていた。