吸血鬼の花嫁 fait1アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
02/25〜03/01
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●本文
――吸血鬼。
それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。
そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。
前シリーズ『guerre』が終了し、今回は『アンバサッド設立の真実』に迫ります。
‥‥が、出演者の方がなかなか集められなくて、撮影が伸びっ放しでして‥‥このままだと打ち切りにな‥‥出演者の方を再々募集しております。
それでは、ここに次回予告のコンテと設定がありますんで、是非見て行って下さいね。
●次回予告
イノヴェルチ壊滅より数ヵ月後。平和を満喫するAS。
そんな時、AS最上位幹部である長老が殺害される。
そして主人公が、その犯人として疑われてしまう。
無実の罪で処刑されそうになる主人公を助ける仲間たち。
何とかASを抜け出した主人公は仲間の協力を得て、真犯人を探すことにする。
「私達は、あなたを信じてる」
必須配役
主人公VP:無実の罪で死刑になる所を逃げ出す(1名)
主人公花嫁:主人公を信じ、協力する(1名)
仲間:主人公を信じ、助ける(数名)
連続配役
人間の刑事:主人公を信じ、匿う
VH幹部:ASの異変を感じ、主人公を見張る
強力なTV:何者かの命を受けて暗躍している
通常配役
AS:主人公を疑い、逮捕しようとする(数名)
SC:主人公を追いかけるも、何故か捕まえるに至らない(数名)
NPC配役
AS幹部:クレーエ・フォン・アーベントロード
背の高い白髪の男。AS上位幹部である『デュック・シス(6人の公爵)』の一人。主人公が尊敬する上司であり、主人公を助けようとしている。
(主人公は前回シリーズの出演者がやる場合、AS又はSC役だった方のみ可。仲間はAS所属の有無、吸血鬼・花嫁、関係なく配役可能。ただし一般の人間・VHは不可です)
(必須配役は連続出演可能な方を希望しております。連続配役は前回シリーズでその役をやった方が出る場合、その役でお願い致します。必須ではありません)
設定
●セリバテール(略=CV)
血を摂取していない吸血鬼。
能力:人間の数倍の嗅覚、視覚、身体能力。
体質:慢性的貧血症(3歳位から始まり、特殊な薬でのみ回復)。他、殆ど人間同等。
補足:大抵20歳頃まではこのまま。CVで生涯を終えた者もいる。感覚で同士が判る。
●ヴァンピール(略=VP)
血を摂取した吸血鬼。
能力:CV時の能力、動物への変身、翼(形は様々)での飛行、肉体及び血液の武器化、強力な再生治癒能力、個々の特殊能力。
体質:戦闘等で失血した場合、又は1ヶ月に1回の血液摂取(400CC程度)が必要。極端に遅い成長速度。平均寿命200年、最長寿350年。
弱点:激しい太陽光、銀。触れると熱傷が起き、対処なしだと骨まで溶ける。
死因:弱点による全身50%の熱傷、頭・心臓の機能停止、失血死、寿命。
補足:花嫁死亡の場合、次の花嫁の発見までは薬で凌ぐ。その間、能力の変化はないが貧血症再発。契約した花嫁の場所を感覚で調べられる。
●アンバサッド(略=AS)
各国で吸血鬼の統括をしている機関。
仕事:VPへの仕事や住居の提供、生活に必要な薬や太陽光対策商品の販売等。
仲介:TVやSFの調査・消去・逮捕等。戦闘人員を『サンクシオン(略=SC)』と呼ぶ。
爵位:人間には関係ないが、吸血鬼間での領地は存在する。
補足:仲介なしで人間同等の仕事をする者もいる。深夜や室内での仕事等。
●トレートル・ヴァンピール(略=TV)
花嫁の掟を破る、又は犯罪(人間社会の法律に基く)を犯した吸血鬼。
掟破り:被害者数に関係なく消去(死刑)。
犯罪者:逮捕後、ASで裁判(人間社会に酷似)を受ける。
補足:『イノヴェルチ』という組織が存在したが、現在は壊滅。
●ヴァンパイアハンター(略=VH)
人間が独自に設立した、軍隊の様な対吸血鬼組織。一般人に認知なし。
活動:全てのTVの即消去。
補足:組織員の多くが吸血鬼に憎しみを持つ。その苛烈な活動内容によりASと仲が悪く、両者の小競り合いも多い。吸血鬼と協力しようとする者は稀。
●サクリフィス(略=SF)
吸血鬼が持つウィルスが感染した人間。牙から感染する。
ウィルス:潜伏期間は2時間。発病すると自我を失い、極度の貧血症となって人の血を求める。回復の見込みはない。
治療:潜伏期間中の抗生物質の投与(ASのみ保持)。これで助かった人間が花嫁になる事はない。
●花嫁(ヌーヴェル・マリエ)
吸血鬼ウィルスに対する抗体を持つ人間。呼び方に性別関係なし。突然変異はなく遺伝的(隔世遺伝)なもの。第二次成長期に覚醒。
判別方法:吸血鬼の嗅覚により、体臭(匂いは様々)で判別。
花嫁の儀式:吸血鬼が花嫁の同意を得て首筋へ吸血行為を行うと、そこに吸血鬼の羽を模した痣が現われる。痣は花嫁の死亡か、花嫁の義務を放棄する事を吸血鬼に伝えた時点で消える。
抗体:ウィルスを造血剤へと変える作用があり、吸血によって消費された血液は3〜6時間の間に回復する。その後、抗体は20日間ほど能力低下状態となり、その間の吸血行為は危険とされる(SFにはならないが、負担が大きい)。
補足:吸血鬼と花嫁の関係はあくまでも契約であり、契約したからと言って恋人や家族になる必要はなく、また親兄弟親族での契約も障害なく可能。
●吸血鬼の認知度
全世界の70%の人間が『伝説上の危険な化け物』と認識、20%花嫁、10%吸血鬼・花嫁の関係者。
混血児: VPと人間の子供は50%で人間か吸血鬼にわかれ、CVと人間との子供は100%人間。混血児の血も通常の吸血鬼と同等だが、貴族などの純血種による偏見(弱い、劣性等)は存在する。
補足:花嫁の血を引く吸血鬼の血に異変が起きる例は皆無(吸血鬼として生まれた時点で抗体は無くなると予想される)。
●花嫁の掟(吸血鬼のみに伝わる)
ヴァンピールはヌーヴェル・マリエ(以下、花嫁)の血液のみ摂取を許され、血液を提供した花嫁を守る事を約束し、何らかの要因により花嫁が血液提供の義務を放棄する場合、それに従わねばならない。又、生涯において幾人の花嫁を持つ事が許されるが、同時期に1人以上の花嫁を持つ事は許されない。
花嫁は契約したヴァンピールに対し、定期的に血液を提供する義務を持ち、自らの意思で血液摂取の許可否をする事ができる。又、健康保持の為、1人以上のヴァンピールに血液を与えてはならない。
この掟を破りしトレートル・ヴァンピールは、サンクシオンの手によって消去する。
●リプレイ本文
●アンバサッド、薄暗い廊下
書類を片手に、セフィリス(月 美鈴(fa3366))が歩いていた。他に人気はない。そのうち、突き当たりにあった一つの部屋へと着くと、セフィリスはドアをノックした。
「長老、セフィリスです。何か御用でしょうか?」
声をかけるが、返事がない。セフィリスが眉を顰め、もう一度ノックをしようとした時、突然ドアが開いて、中から人が飛び出した。ぶつかって、セフィリスが尻餅をつく。
「貴方‥‥ディアン! 待ちなさい!」
自分にぶつかってきた相手はディアン(日宮狐太郎(fa0684))だった。ちらりと見えた真っ青になった顔に、セフィリスが驚き、慌てて制止の声を上げるが、ディアンは怯えたように一目散に駆け出して行く。
立ち上がったセフィリスは、部屋の中を見て息を呑んだ。沢山の蝋燭が揺れる下で、一人の老人が倒れている。顎を上げ、仰向けとなった身体は、銀色に鈍く光る剣に心臓を突き刺され、絶命していた。
●長老の部屋
「長老‥‥」
青いシーツのかけられた老人を見下ろし、アルベルティーア(ルナティア(fa5030))と楸(日乃 葉響(fa5253))が愕然と呟いた。周りでは沢山の人が現場を調べている。その中から、セフィリスが近づいて来た。
「ティファ。‥‥ディアンは今どこにいるか、知ってるかしら?」
「今日はまだ会っていないけれど‥‥それはどういう質問かしら、セフィリス」
「長老を殺したのが、ディアンだという事だ」
セフィリスに剣呑な目を向けるアルベルティーアに答えたのは、長髪の男だった。その後ろにも5人の男女が並んでいる。
「デュック・シス‥‥」
「何でそういう事になるわけ!? ディアンがそんな事する訳ないじゃない!」
「まだ断定するには早過ぎませんか?」
現れた6人の男女にアルベルティーアが眉を顰め、楸が声を荒げると、その内の一人、白髪の男が長髪の男へ進み出た。
「長老の部屋にディアンがいた事はセフィリスが見ておるし、それ以外の者がこの部屋に来た形跡もない」
「状況証拠がこれだけ揃っておるのです。それにあの者、何かと反抗的な態度を取る問題児だったそうではありませんか。のう、アーベントロード卿」
杖をついた年配の男と、アジア系の女に言われ、白髪の男クレーエ・フォン・アーベントロードは辛そうに目を細める。それに、楸が部屋を駆け出して行くと、クレーエは静かに頭を下げた。
「‥‥部下の不始末は上司である私の責任。ディアンは私が必ず探し出して来ます」
「あたしんとこの奴等も使え。人手は多い方がいいだろう?」
「探し物でしたら、僕の部下の方が有能ですよ。セフィリス、卿のサポートをしてあげて」
「了解致しました」
短髪の女に続いた若い青年の言葉に、セフィリスが頭を下げた。それを見届けて去って行く男女へ、アルベルティーアが不安気な目を向けると、クレーエが苦笑気味に笑いかける。
「クレーエ様‥‥」
呟くアルベルティーアの肩を、クレーエが優しく叩いた。
●ウィリアムの家
カーテンの締め切られた部屋で、ディアンがベッドに眠っていた。ドアが数回ノックされ、寝ぼけ眼のウィリアム・ストーカー(森ヶ岡 樹(fa3225))が入って来る。
「ディアン〜。朝だよ〜、起きて〜」
言いながら、ウィリアムがベッド奥のカーテンを開ける。雪崩れ込んで来る光に、布団の中で目を擦っていたディアンは、慌てて布団に潜った。
「バカヤロッ! カーテン閉めろ!」
「二度寝は駄目だよ〜」
ディアンから毛布を剥がそうと、ウィリアムが格闘する。それにディアンが必死に抵抗していると、ひょいっと部屋を覗き込んだ楸(日乃 葉響(fa5253))がギョッとして叫んだ。
「何してんの、あんた!」
その声に振り向くウィリアムを押し退け、楸がカーテンを閉める。光が遮られたのを確認して、ディアンが安堵の溜息を吐きながら毛布から這い出て来ると、ウィリアムがふと気付いた様に罰の悪い顔をした。
「ごめん‥‥僕、寝ぼけてたみたい‥‥もうセリバテールじゃないんだものね」
しゅんとするウィリアムに、ディアンが「もうやるなよ」と睨む。そして、楸を振り返ると小首を傾げた。
「お前は?」
「ん、大丈夫。さっき見回り行く時に塗ったクリーム、そのままだから」
にぱっと笑う楸に、ウィリアムが気を取り直したように声をかけた。
「ご飯は出来てるよ」
狭い部屋で、ウィリアムとディアン、楸がパンを齧っていた。手元には大きさのバラバラな皿があり、スクランブルエッグとハムが乗せられている。
「昨日はビックリしたなぁ。正に飛び込んで来たって感じだったね」
「悪いな。ここしか思いつくとこ、なくてさ」
「いいんだよ。こっちこそ、狭くてごめんね」
ディアンに微笑み返して、ウィリアムがハムを食べる。
「それより、昨日はちゃんと聞けなかったんだけど、一体何があったの?」
問われて、ディアンと楸が顔を見合わせた。
「私も、ディアンの口から聞きたい。あいつらの一方的な話は信じてないから」
楸の言葉に、ディアンはぎゅっと拳を握り、口を開いた。
「おれ、あの時‥‥クレーエさんが来てるって聞いて、挨拶しに行こうと思ったんだけど‥‥」
●回想、アンバサッド、薄暗い廊下
「あっれー? 迷っちまった。こっちだって聞いたんだけどな」
ディアンは呟きながら、きょろきょろと辺りを見回すと、奥に部屋があるのに気づいた。
「ここって何の部屋だっけ? まあ、いいや。何もなきゃ戻ればいいし、誰かいたらクレーエさんのいる場所聞こうっと」
軽い気持ちでドアを開けたディアンは、目の前に広がった光景に動きを止めた。胸から剣を生やした老人にディアンが助けようと近寄るが、既に事切れているのに息を呑む。
「ど、どういう事だよ、これ‥‥」
呆然としていると、背後からノックの音が聞こえた。その瞬間、ディアンの頭には『この場から逃げる』という手段しか思いつかなかった。
●ウィリアムの家
「何よ、それ。じゃあ、あんたが第一発見者なんじゃない。何で逃げたりしたのよ」
「そこにいたら、絶対犯人扱いされて、捕まると思ったんだよ」
楸が言うのに、ディアンが返すと、ウィリアムが頷きながら話した。
「うん。楸ちゃんの話を聞くに、その幹部の人達はディアンが部屋にいた事と、他に出入りした人がいない事を指して、ディアンを犯人扱いしたんでしょ? 逃げた事については言及していない。という事は、逃げる逃げないに関わらず、ディアンを犯人と決め付けてたって事じゃない?」
ウィリアムの言葉に、ディアンと楸が感心の目を向ける。それに、ウィリアムは胸を張って「これでも刑事だからね。‥‥新米だけど」と答えた。
「でも、それだったら尚更最悪。何考えてんだろ、あの人達。ティファやルナ‥‥洸耶は大丈夫かな‥‥」
「ティファは判るけど‥‥」
「私達が逃げるのを手伝ってくれた人。クリームとかお金とか、色々用意してくれて‥‥」
楸がウィリアムに説明しているのを聞きながら、ディアンは逃げ出した時の事を思い出していた。
●回想、アンバサッド
「探せ! 絶対に逃がすな!」
バタバタとサンクシオン達が走って行く中、それを影から見ていたディアンは小さく舌打ちした。
「くっそー。奴ら完全に俺の事犯人扱いしてやがる。これじゃあ、説明するにもできねぇじゃんか」
呟いて、何とかこの場から離れようと様子を窺った時、後ろから誰かに口を押さえられた。慌てて振り解こうとして、相手がルナ(紅雪(fa0607))である事に気付く。
「こっちよ」
促されて、ディアンがルナに従う。連れて来られたのは裏口だった。
「ディアン!」
「姉さん‥‥」
駆け寄って来たアルベルティーアが、ディアンを抱き締める。楸も嬉しそうにディアンの頭を撫でた。
「お話してる時間はないわ。クレーエ様がこっちに誰も近づかないようにしている内に、早く逃げるのよ」
「クレーエ様が‥‥」
「ディアン、行こう」
自分の為に動いてくれている上司の名を呟くディアンを、楸が促す。
「ティファ‥‥あんたは行かないの?」
「私はここで、貴方達のサポートをするわ。楸‥‥ディアンをお願い」
アルベルティーアの言葉に、楸が頷く。それに、ルナがディアンに振り向いた。
「まずは洸耶の所へ行きなさい。後は彼が何とかしてくれると思うから」
ルナに頷き、ディアンと楸はアンバサッドから逃げ出した。
●ウィリアムの家
太陽光を防ぐクリームを、ウィリアムがしげしげと見ていた。
「これって、普通に売ってるのとは違うの?」
「それは人間用でしょ? これは吸血鬼用で強いの。人間が使ったら、すぐに肌がボロボロになっちゃうよ」
楸の言葉に、ウィリアムが少し顔を引き攣らせながら、クリームを返す。
「こういうのはアンバサッド以外だと闇ルートでしか買えないから、洸耶には感謝しなきゃ」
そう言う楸を見ながら、ディアンは洸耶の事を思い出していた。
●回想、洸耶の診療所
「ルナから話は聞いた。とりあえずの資金と、必要最低限のものを揃えてある。持って行け」
洸耶(橘・月兎(fa0470))に渡された袋を受け取ったディアンは、不安気な顔で洸耶を見上げる。それに洸耶は少し笑って、ディアンの頭に手を置いた。
「そんな顔するな。ルナも俺も、君が犯人でない事は判っている。今はまずアンバサッドから逃げる事だけ考えろ。何かあったらここに連絡すればいい。ごく近しい者にしか教えていない番号だ」
●ウィリアムの家
ディアンは洸耶から渡された紙に書かれた携帯番号を見つめ、「なあ」と呟いた。その声に、ウィリアムと楸が振り返る。
「俺、どうなんのかな‥‥」
「どうにもならないわよ。‥‥私達がどうにもしない」
不安気に呟くディアンに、楸が強い口調で答えた。じっとディアンを見つめる。
「私達は、あんたを信じてる」
真剣な目の楸と、頷くウィリアムに、ディアンは「有難う」とはにかんだ。
●洸耶の診療所
「助かったわ。有難う、洸耶」
カルテ片手の洸耶に、ルナがコーヒーの入ったカップを差し出す。それを受け取り、椅子に座った洸耶はルナを見上げた。
「君は大丈夫か?」
「私は大丈夫よ。クレーエ様も協力して下さったし‥‥」
「デュック・シスか‥‥」
呟く洸耶に、ルナが小首を傾げる。洸耶はコーヒーを一口飲み、難しい顔をした。
「ルディがあんな事になって、君の花嫁を辞めて、アンバサッドを離れた所から見るようになって、ずっと頭の片隅に引っ掛かっていた事があったんだが‥‥今回、ディアン達に渡す道具を揃えていて、それが疑問に変わった」
洸耶がルナに振り返る。
「セリバテールの薬も、ヴァンピールが日の下で暮らすのを手伝う道具も、全てアンバサッドが独占している。まるで、吸血鬼達がアンバサッド無しでは生きられなくするように」
●ウィリアムの家
テーブルに乗せられたクリームを見ながら、ウィリアムが呟いた。
「生きる為に必要な道具が、一つの場所からしか手に入らないなんて、不便なんだね。何だか縛られてるみたい」
何気なく言われた言葉に、楸とディアンがきょとんとした顔で振り返った。
●洸耶の診療所
「アンバサッドは、本当に吸血鬼達を『保護』する為に作られた組織なのか?」
真剣な目で呟く洸耶に、ルナが息を呑んだ。