吸血鬼の花嫁 fait2アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
7人
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サポート |
0人
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期間 |
04/16〜04/20
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前回のリプレイを見る
●本文
――吸血鬼。
それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。
そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。
またもや撮影延期になってしまいましたんで、役者さん再募集です。ごたごたしすぎですよねぇ。これじゃあ、打ち切りになってもしょうがな‥‥あ、いやいや、う、打ち切りじゃないですよ? 違いますよ? え? 僕の力量がないからですか? あいたたー、それを言われると僕の繊細なガラスのハートにビキリとひびが。
と、まあそんな感じなので、何卒宜しくお願いしますよ。はい。
●次回予告
真犯人を探す主人公たちは、人間を襲う怪物の噂を聞く。
怪物がサクリフィスである事に気付いた主人公たちは、
サクリフィスを作っている人物が、真犯人に繋がっていると予想する。
「快楽、恐怖、絶望、憎悪‥‥」
「一体、そいつは何がしたいんだ?」
そして、サクリフィス出没に、VHも動き始める。
必須配役
主人公VP:無実の罪を晴らす為、真犯人を探す(1名)
主人公花嫁:主人公を信じ、協力する(1名)
仲間:主人公を信じ、助ける(数名)
連続配役
人間の刑事:主人公を信じ、協力する
VH幹部:ASの異変を感じ、主人公を見張る
強力なTV:何者かの命を受けて暗躍している
通常配役
AS:主人公を疑い、逮捕しようとする(数名)
SC:主人公を追いかけるも、何故か捕まえるに至らない(数名)
NPC配役
AS幹部:クレーエ・フォン・アーベントロード
背の高い白髪の男。AS上位幹部である『デュック・シス(6人の公爵)』の一人。主人公が尊敬する上司であり、主人公を助けようとしている。
(仲間はAS所属の有無、吸血鬼・花嫁、関係なく配役可能。ただし一般の人間・VHは不可です)
(必須配役は連続出演可能な方を希望しております。連続配役は前回シリーズでその役をやった方が出る場合、その役でお願い致します。必須ではありません)
●設定
詳しい設定は『第1話』を参照下さい。
●リプレイ本文
●洸耶の診療所
山積みの書類に囲まれ、洸耶(橘・月兎(fa0470))が真剣にパソコンへ向かっていた。多少疲れたような顔の洸耶が眼鏡を外し、眉間を押さえる。
と、突然部屋の電気が消えた。洸耶がハッとして後ろを振り向いた瞬間、洸耶は頭部に走った強烈な痛みと共に、意識を失った。
●ウィリアムの家
「ディアン〜朝だよ〜」
言いながら、ベッドへ近づいて来たのはウィリアム・ストーカー(森ヶ岡 樹(fa3225))だった。未だ毛布に包まったままのディアン(日宮狐太郎(fa0684))を起こそうとする。
「朝だってば〜。ほら〜、日差しが眩しいよ〜」
自身も寝ぼけ眼なウィリアムが、ディアンのすぐ近くにある厚いカーテンへと手を伸ばす。それに気付いたディアンは、慌てて毛布を跳ね除けて起き上がると、ウィリアムの腕を掴み、カーテンを開けようとするのを阻止した。そこで、ウィリアムが気付いたように口を開ける。
「あ‥‥あははー、冗談だよ、冗談。やっと起きたねぇ、ディアン」
「いや‥‥お前、今、本気だったろ」
そんな事ないよーと笑うウィリアムをディアンが睨み付ける。そこに、「ご飯できたよー」という、楸(日乃 葉響(fa5253))の明るい声が届いた。
「アンバサッドから逃げ出して、今日で5日目かぁ。今のところは、この場所もまだ見つかってないみたいね」
「クレーエ様やティファ達が隠してくれてるのかな‥‥」
「多分ね」
「ディアンの上司の人だっけ? いい人だねぇ。あ、ディアン、ピーマン食べれるようになったんだ」
「当たり前だろ? 幾つになったと思ってるんだ」
「生の人参はまだ食べられないけどね」
「楸! 言うなよ!」
「えー? 人参美味しいのになぁ」
野菜炒めを中心とした朝食を食べつつ、3人がわいわいと話をしていると、ウィリアムが時計を見た。
「僕、そろそろ行かなきゃ。大人しくしてるんだよ、ディアン」
「判ってるよ」
「最近物騒な事も増えてるしね」
「物騒な事?」
首を傾げる楸に、ウィリアムが頷く。
「最近通り魔が出てるんだ。目撃者の話だと犯人はゾンビみたいな怪物らしいよ。まあ、ホラー映画じゃあるまいし、見間違いとか、そう見えただけって感じなんだろうけど。でも物騒な事は物騒だから、気を付けてね」
言って、出かけていくウィリアムを見送り、楸とディアンが顔を見合わせた。
「それって、まさか‥‥」
●アンバサッド
「サクリフィスよ」
硬質な声で告げたセフィリス(月 美鈴(fa3366))に、ルナ(紅雪(fa0607))とアルベルティーア(ルナティア(fa5030))が顔を引き締めた。
「‥‥現在、3班と5班が収拾に当たっているわ。‥‥全く、暫く出ないと思って安心していれば、こんなときに出てくるなんて‥‥正直、手が足らな過ぎるわ」
「‥‥それで? 私達はどうすればいいの?」
「‥‥ディアン捜索に当たっている者の一部を、サクリフィス消去に回せないかという私の案は却下されたわ‥‥上はサクリフィスよりも長老殺害の犯人消去の方が優先事項らしいわね‥‥」
少し苛立たしげなセフィリスは、鋭い目でこちらを見ているルナと、不安げなアルベルティーアを見る。
「‥‥そこで、ディアンの捜索に相応しくない者‥‥つまり、ディアンと親しい関係であり、逃亡の手助けをする恐れのある者を、サクリフィスの消去に回す事にしたわ‥‥」
「セフィリス‥‥貴女は、ディアンが犯人だと思っているの?」
悩むように俯くアルベルティーアを横目に見て、ルナがセフィリスに問う。
「‥‥信じたいとは思っているけど‥‥私の立場も考えて頂戴」
「それに、これは私の提案でもあるんだ」
「クレーエ様」
現れたのはクレーエ・フォン・アーベントロードだった。驚いたように顔を上げるアルベルティーアに、クレーエが微笑みかける。
「クレーエ様。私は何も聞いていませんが」
「すまない、ルナ。急遽提案した事で、君に相談する時間がなかった。‥‥君達を疑う声が強くなって来てしまってね」
その言葉に顔を見合わせるルナとアルベルティーアに、クレーエが続ける。
「君達を外せば、一先ずは収まるだろう。それより、気になる事があってね」
クレーエとセフィリスが目を合わせ、セフィリスが頷く。
「‥‥サクリフィスが出没し始めたのは、長老が殺されてから2日目‥‥ディアンは現在、契約中の花嫁を持たないヴァンピール‥‥アンバサッドから供給される薬なしではろくに動く事も出来なくなる‥‥人間の血が必要になる、という事‥‥」
「ちょっと待って! サクリフィスを作っているのが、ディアンだって言うの!?」
「そういう風に考える人も出て来るだろう、という話だよ、ティファ。このタイミングでサクリフィス出没‥‥少し偶然とは思えなくてね」
激昂するアルベルティーアを制止してクレーエが続けると、ルナがハッとしたように口を開いた。
「まさか‥‥真犯人が、ディアンを犯人に仕立てあげる為に‥‥?」
「その可能性もある。だからこそ、君達にサクリフィスを生んでいる犯人を見つけて欲しいんだよ」
真剣に頷くルナとアルベルティーアに、クレーエは自然な笑みで微笑み返した。
●街
楸が公衆電話で受話器を耳に当てている。だが、暫くして諦めたように受話器を戻した。
「どうしたんだろ、洸耶‥‥寝てんのかな? ‥‥まさかね」
肩を竦めて、楸が電話番号の書かれたメモを見下ろす。そして、一つ頷いて公衆電話を後にした。
●警察署
「通り魔、かぁ‥‥」
デスクに肘を付き、書きかけの書類の上でペンを回すウィリアムがそう呟くと、隣にいた先輩が覗き込んできた。
「何だぁ? お前、もしかして、犯人は怪物とかいう噂、信じてんのか?」
「いや、そういうわけじゃないんですけどね‥‥」
言いながら、ウィリアムがファイルを取り出す。そこには通り魔の被害状況がまとめられた書類が入っており、ウィリアムがぼんやりとそれを眺める。と、そこにニヤニヤと笑う別の先輩が、ウィリアムの名前を呼んだ。
「お客さんだぞ」
言われて、首を傾げたウィリアムは、そこににこやかに手を振る楸の姿を見つけた。
「彼女か?」
「ふえっ!? ち、違いますよ! 楸ちゃんは幼馴染で‥‥」
「照れんなよ。そうかあ、お前もやる事はやってたんだなぁ」
「だ、だから違いますってば!」
からかう先輩達から逃げるように、ウィリアムが楸に駆け寄る。すると、楸はにっこりと笑って手を差し出した。
「通り魔の資料、貸して」
「貸してって‥‥一応、機密事項なんだけど‥‥」
「いいから。私達に関係のある事かもしれないんだ」
言われて、ウィリアムは少し悩んだ後、楸を連れて別の部屋へと入った。そして、そこで書類をコピーすると、こっそりと楸に渡す。受け取った楸が礼を言って去って行き、少し疲れたようなウィリアムが自分のデスクに戻ると、ニヤニヤ笑う先輩達に加え、課長までが満足そうに頷いていて、ウィリアムは思わず頭を抱えた。
●アンバサッド
ルナとアルベルティーアが、廊下を歩いている。と、一つの部屋の前で、ルナが立ち止まった。
「先に行ってて。私は少し調べ物をしてから向かうわ」
「調べ物?」
問いかけるアルベルティーアに、ルナが少し深刻そうな顔で斜め下を向く。
「ちょっとね‥‥以前、組織だったトレートルが起こした事件があったのは、ティファも知ってるでしょ? もしかしたら今回もその組織の残党か何かが関わってるんじゃないかと思って。‥‥それに‥‥」
ふと、ルナの脳裏に、洸耶の言葉が蘇る。
『アンバサッドは、本当に吸血鬼達を『保護』する為に作られた組織なのか?』
言いかけて口を噤んだルナに、アルベルティーアが首を傾げる。それに、ルナは「何でもない」と軽く笑って、部屋の中へ入った。
●ウィリアムの家
「あー! くそー、何で俺だけ留守番なんだよー!」
ベッドの上で、ディアンがつまらなそうにゴロゴロと寝転がっていた。布団を蹴飛ばし、枕を抱き締める。
「楸の奴、あんたは見つかったらヤバイんだから大人しくしてなさい! なんて、見つかったらヤバイのは自分だって同じな筈なのに‥‥駄目だ。じっとなんてしてられっか」
言って、ディアンは跳ねるように起き上がった。
●夕方の街
「あーあ‥‥結局、先輩達も課長も、楸ちゃんとの事、誤解したまんまだし‥‥はぁ‥‥」
とぼとぼと歩くウィリアムは、一つ溜息を付いてファイルを取り出した。
「まあ、いいか。とりあえず、ディアン達に関係あるらしいし、ちょっと通り魔についてもう一回調べてみようかな。えーっと、通り魔が出現したっていう地域は‥‥あれ?」
呟きながら書類を捲るウィリアムに、近づく影がある。
「これって、うちの近くばっかり‥‥っていうか、この近くじゃ‥‥」
直後、ウィリアムは妙な気配を感じて振り向いた。眼前には、血走った眼を見開き、牙を剥く女性がいる。
「うわあぁ!」
驚いて飛び退くウィリアムに、女性が飛び掛る。それを必死で避けると、女性は更にウィリアムに手を伸ばして来た。と、女性が誰かに殴られたように吹き飛んだ。
「大丈夫か!? ウィル!」
「ディアン!」
腰が抜けたように座り込むウィリアムを庇うように立ったのはディアンだった。ゆらりと立ち上がる女性に、ディアンが構える。
「サクリフィスか‥‥くそっ、こんな時に‥‥」
「ディアン! ちょっと、何なの、一体!」
そこに楸が駆け寄って来て、ディアンの横に並ぶ。と、サクリフィスの背後にある影の中から、一人の男が現れた。影から出て、姿のはっきりと見えた男の姿に、ディアンと楸が息を呑む。
「こ、洸耶‥‥? 何してんの?」
信じられないように呟く楸に、洸耶がにこりと微笑む。すると、サクリフィスが楸へ飛び掛ってきた。
「楸!」
ディアンがサクリフィスを殴り飛ばす。が、サクリフィスは地を転がっても痛がる様子もなく、再び向かって来る。
その時、どこからかふわりと霧が漂って来た。覚えのある霧に、ディアンがハッとなって振り向いた瞬間、霧に巻かれてボーっと立っていたサクリフィスを白銀の光が切り裂く。
「今のうちに戻りなさい。すぐにサンクシオンが来るわ」
「ティファ!」
すらりと抜いた細剣を洸耶に向けていたのはアルベルティーアだった。サクリフィスは絶命したようで、地に伏している。
「洸耶‥‥これはどういう事? まさか貴方が‥‥?」
アルベルティーアの問いに、洸耶は微笑むだけだった。
●アンバサッド、一室
ルナがパソコンの前に座っている。そして何かを発見したらしく、驚いたように椅子から立ち上がった瞬間、携帯電話が鳴り響いた。相手はディアンだった。
「ルナ! 大変なんだ! ティファがサクリフィスと‥‥ていうか、洸耶が!」
それにルナが眉を顰め、ディアンとの通話を切ると、洸耶へと繋げる。が、応答はない。ルナは弾かれたように部屋を飛び出した。
●洸耶の診療所
「洸耶! 洸耶! いるの!?」
ドンドンとドアを叩き、応答がないと判ると、ルナは合鍵を取り出してドアを開けた。そこには頭から血を出して倒れている洸耶がいる。
「‥‥どういう事?」
慌てて駆け寄り、苦しげに呻く洸耶を抱いて、ルナが呟いた。
●夕方の街
霧が晴れていく中、洸耶らしき男とアルベルティーアは対峙していた。洸耶の後ろからは先程倒したのとは違う2人のサクリフィスが現れる。その、サクリフィスを従えているような洸耶の様子に、アルベルティーアが細剣の柄を持つ手に力を入れた。
「ティファ! そいつは洸耶じゃない!」
ルナに電話したらしいディアンがティファに告げると、洸耶らしき男は醜悪な笑みを見せると、サクリフィスに合図を出した。飛び掛ってくるサクリフィスを、アルベルティーアが一刀両断にする。サクリフィスが地に崩れ落ちると、洸耶らしき男の姿は消えていた。
●アンバサッド、長老の部屋
血の跡が残る床を見つめたセフィリスは、ゆっくりと顔を上げると周りを見渡した。
「‥‥どうも、違和感を感じるのよね‥‥何かしら‥‥」
呟いて思案するセフィリスは、ふと気付いたように目を見開く。
「そうか‥‥あまりにも綺麗過ぎるんだわ、此処‥‥長老が抵抗していれば、周りの物が壊れていてもいい筈なのに‥‥抵抗しなかった? いえ、抵抗出来なかった‥‥それは親しい者だったから? 不意打ちだったから? ‥‥あの剣は銀の剣だった。隠し持つには大き過ぎる‥‥剣を携えたまま長老の部屋に入る事が出来て、自分を殺すわけがないと長老が信頼を寄せる相手‥‥まさか‥‥」
●アンバサッド、一室
つけっ放しのパソコンの前に、一人の男らしき人物が立った。パソコンの画面には、ルナがパスワードをハッキングしたらしき後を示す黒いウィンドウと、『吸血鬼監視組織設立について』と書かれたウィンドウが開かれていた。
男は徐に指を伸ばすと、キーボードを打った。ピーっという電子音が鳴り、画面に『DELETE』の文字が現れると、男は白い髪を軽くかき上げ、にやりと笑った。