吸血鬼の花嫁 destinアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/06〜08/10
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●本文
――吸血鬼。
それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。
そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。
――って感じの、深夜特撮番組の役者さんを募集してます。
前回のストーリーがスポンサーに結構好評でして。このままの調子が続いて、連続ドラマに! ‥‥とかならないかなー、なんて、えへへ。
で、今回の話の筋なんですが。
『幼い頃に吸血鬼に両親を殺され、復讐を誓うヴァンパイアハンターの主人公は、愛していた花嫁を亡くし、失意に落ちているヴァンピールの二人と出会う。そして、二人の前に強力なトレートル・ヴァンピールが現われ‥‥』
って感じでして、これを大幅に外れないように、皆さんで自由にストーリーを考えて頂ければと思ってます。
それで必ず決めて欲しいのは、『主人公とヴァンピールと、敵役』なんです。もちろん、亡くなった花嫁役とか、その他の役を作って頂いても構いませんからね。
では、ここに設定を記した書類を置いておきますね。あ、よりわかりやすくなるようにと変更した部分もありますから。皆でいい番組作りましょうねー。
設定
●セリバテール
血を吸う前の吸血鬼。人間の数倍以上の嗅覚、視覚、運動能力を持つ。特殊な薬剤でしか回復しない慢性的な貧血症を持つ他は、治癒能力や寿命など人間と同じで、太陽光や銀も平気。ニンニクは食べても害はないが、匂いが苦手なものが多い。血を吸うのが嫌で、セリバテールのまま生涯を終えた吸血鬼もいる。この時は人間と変わらない成長速度だが、ヴァンピールになると極端に成長速度が遅くなるため、たいていは20歳ごろまではこの状態で過ごす。この状態であっても、吸血鬼同士は感覚でわかる。
●ヴァンピール
花嫁の血を吸って生きる吸血鬼。セリバテール時の能力に加え、動物への変身、翼(形は様々)での飛行、肉体及び血液の硬質・武器化と強力な再生治癒能力を持つ。銀や激しい太陽光に触れるとその部分が熱傷となり、放っておくと骨まで溶ける。銀・太陽光で全身の50%が溶ける、頭・心臓が吹き飛ぶ、失血死、寿命以外の死因はない。平均的寿命は200年、最長寿記録は350年。貧血症の症状はなくなり、極端に血液を消費する戦闘や怪我などをしない限りは、一ヶ月に一回の血液摂取で充分となる。契約した花嫁であれば、その者がどこにいても場所を知ることができる。花嫁が死亡した場合、次の花嫁が見つかるまでの期間は薬剤で過ごす。一回の吸血に必要な血液量は400CC程度。
●トレートル・ヴァンピール
花嫁の掟を破ったり、人間社会の法律に基づく犯罪を犯した吸血鬼。アンバサッドより派遣されるヴァンピールにより、消去(死刑執行)または逮捕される。(掟破りは被害者の数に関わりなく死刑)また、トレートルから人間を守る組織として人間が設立した『ヴァンパイアハンター』という組織がある。この組織の多くは吸血鬼に憎しみを持っている者であり、情状酌量関係なく消去する体制なので、アンバサッドとは仲が悪い。両者の小競り合いも多く、協力体制を取ろうとするハンターもいるが、稀。一般の人間には伝わってはいない。
●サクリフィス
吸血鬼が持つ特殊なウィルスが感染した人間。吸血鬼の牙から感染する。感染した人間は自我を失い、極度の貧血症となり、それを補おうと人の血を求める。サクリフィスになると回復する見込みはないが、ウィルスは潜伏期間である2時間の間に抗生物質を投与すれば救出できる。因みに、抗生物質で助かった人間が花嫁となることはない。
●花嫁(ヌーヴェル・マリエ)
吸血鬼のウィルスに対する抗体を持っている人間。性別に関係なく、こう呼ばれる。花嫁か否かは、吸血鬼であればその者の血の匂いや体臭(匂いは様々)でわかる。その吸血鬼にとって好きな匂いが、自らに合っている花嫁と言われる。花嫁は突然変異ではなく遺伝的なもので、隔世遺伝もある。
吸血鬼が花嫁の同意を得て首筋から血液を摂取すると、花嫁の首筋にその吸血鬼の羽を模した痣が現われる。痣は花嫁が死亡するか、『花嫁』の義務を放棄することを吸血鬼に伝えた時点で消える。これを『花嫁の儀式』と呼ぶ。
●アンバサッド
各国で吸血鬼の統括をしている機関。ヴァンピールに仕事や住居を提供したり、吸血鬼たちの生活に大切な薬や太陽光対策の商品(日傘やジェルなど)の通信販売もしている。ここから仲介される仕事は主にトレートルやサクリフィスの消去、要人警護、スパイなどの危険な仕事。(仲介なしで人間と同じ仕事をしている者もいる。例えばホストやホステスなど夜の仕事)トレートルの消去にあたる人材を『サンクシオン』と呼ぶ。
●吸血鬼の認知度
全世界の70%の人間が『伝説上の危険な化け物』と認識、本来の姿を知るものは30%程。そのうちの20%が花嫁。ヴァンピールと人間の子供は50%の確率で人間か吸血鬼にわかれ、セリバテールと人間との子供は100%人間。混血児である吸血鬼の血も通常の吸血鬼と変わらないが、偏見(混血児は弱いとか、劣っているとか)などは存在する。
●花嫁の掟の内容
ヴァンピールはヌーヴェル・マリエの血液のみ摂取を許され、血液を提供したヌーヴェル・マリエに対しその身を守ることを約束し、何らかの要因によりヌーヴェル・マリエが血液の提供の義務を放棄する場合、ヴァンピールはそれに従わねばならない。
ヴァンピールは生涯において幾人かのヌーヴェル・マリエを持つことが許されるが、同時期に1人以上のヌーヴェル・マリエを持つことは許されない。
ヌーヴェル・マリエはヴァンピールに対し、自らの意思で血液の摂取を許可することができ、また拒否することもできる。
ヴァンピールとの儀式を交わしたヌーヴェル・マリエは、そのヴァンピールに対し定期的に血液を提供する義務を持ち、1人以上のヴァンピールに血液を与えてはならない。
この掟を破りしトレートル・ヴァンピールは、ヴァンピールの手によって消去する。
●リプレイ本文
●真夜中の病院
廊下をストレッチャーが走って行く。看護婦の声が廊下に響き、それを洸耶(橘・月兎(fa0470))が追いかける。
「心肺停止しました!」
「沙流! しっかりしろ! 沙流!」
洸耶が叫ぶが、ストレッチャーは緊急治療室へと入って行く。
静かになる廊下。洸耶が後ろを振り返るとエレノア(ユフィア・ドール(fa4031))が立っている。
「エレノア・・・・沙流が、暴走して来た車に撥ねられて・・・・」
「・・・・何があっても・・・・守り抜くと約束したのに・・・・」
洸耶の言葉に、エレノアが呟く。
●悪夢
真っ暗な部屋。静かに鳴り響く電話の音。血溜まりに倒れている男性と女性。女性に縋り付く子供。それを見下ろす影。
子供が女性を揺さぶり、泣いている。
「お母さん、お母さん・・・・」
影の長い爪が子供を指差し、牙を光らせてにやりと笑う。
「彼らはお前のせいで死んだ」
●ノエルの部屋
がばりと起き上がるノエル(リュシアン・シュラール(fa3109))。ベッドのサイドテーブルで携帯電話が鳴っている。電話を取るノエル。
「はい、ノエルです・・・・リヒャルトさん・・・・はい・・・・大丈夫です、すぐ向かいます」
電話を切ってベッドを降りるノエル。サイドテーブルに家族の写真が立っている。ノエルはそれを一瞥し、写真立てを伏せる。
●真夜中の道路
バイクを運転するノエル。道端に女性が蹲っているのを見つける。不審に思ったノエルがバイクを止める。
蹲っていたのはエレノアだった。「どうかしたのか」と聞こうとして、ノエルはエレノアの足元に花束が置かれているに気付く。
「あんた・・・・」
「その子、あなたの花嫁?」
「花嫁? じゃあ、あんたまさか、ヴァンピール・・・・?」
ノエルが話しかけようとしたそのとき、後ろから声がかかった。振り向くと、キアラ(エルティナ(fa0595))がいる。ノエルが花嫁という言葉に反応すると、エレノアが目尻を拭いながら立ち上がる。
「どちらにしろ、あなたには関係のないことでは?」
「それがあるのよね。あたしは、その子を殺しに来たんだから」
キアラが薄く笑って、2本の鉄扇を広げた。
硬い音がして、コンクリートが割れる。一瞬先にノエルを抱えて回避したエレノアが、裂けた肩から血液を大鎌へと変えて取り出す。
「あなた、なぜこの子を・・・・」
「それこそ、あんたには関係ないことじゃない?」
「ヴァンピールには関係ないが、私には関係あるのだよ。彼は私の部下でね」
鉄扇を振り上げようとしたキアラが跳び退る。直後、銀の弾丸がコンクリートを穿つ。
「リヒャルトさん!」
現れたのはリヒャルト(フェイテル=ファウスト(fa0796))だった。ノエルが駆け寄る。
「2本の鉄扇・・・・キミが報告にあったトレートル・ヴァンピールだな? 我々はヴァンパイアハンターである。・・・・そっちのヴァンピールは違うようだな・・・・二人組みと聞いたが?」
「もう一人は今頃、別の花嫁を殺してるよ」
「・・・・なんだと?」
「貴様っ!」
リヒャルトの目が厳しくなり、キアラに向かって銃を撃つ。ノエルも日本刀のような銀刀を抜き、飛びかかる。
「花嫁を狙っている・・・・? なぜ・・・・!」
エレノアの問いにキアラは楽しそうに笑うばかりで答えない。三人の攻撃を楽々と避けるキアラ。その姿にリヒャルトが宙に指を滑らせた。銀糸が月の光を弾きながら、キアラの身体を貫く。驚くキアラに向け、リヒャルトが銃を撃った。銀弾が打ち込まれた場所から、煙が吹き上がる。
苦しむキアラだが、銀糸が身体に絡まって逃げることもできない。そこにノエルの銀刀が迫る。
瞬間、槍が空から降って来て、ノエルの刀が弾かれる。同時に銀糸も切られてしまう。
「ロスト・・・・!」
「何遊んでるんだい? キアラ」
突き立てられた槍を軽々と引き抜いたのは、ロスト(ヴォルフェ(fa0612))だった。
●アンバサッド
「トレートル・ヴァンピールが花嫁を殺害して逃走したらしいわ。見つけ次第、消去をお願い」
「オッケェー。それじゃあ、行ってくるねー」
セフィリス(月 美鈴(fa3366))がヤム(メイ・エル(fa3076))に仕事を頼み、ヤムがそれを受けて部屋を出て行く。入れ違いに洸耶が入って来る。
「また、花嫁が?」
「ええ・・・・未確認だけど、花嫁を狙う組織があるらしいわ・・・・もしかしたら今回のも・・・・」
「花嫁を・・・・何の目的で・・・・」
洸耶の脳裏にストレッチャーの音が響く。伸ばされる血塗れの手。血に汚れた紙切れに書かれた『Inovelch』の文字。
はっと気付いたように洸耶が呟く。
「イノヴェルチ‥‥まさか、沙流、お前も‥‥」
●深夜の戦闘
槍を構えたロストが、リヒャルトに迫る。ノエルがリヒャルトを庇おうとするが、ロスとに軽々と吹き飛ばされてしまう。反射的にエレノアがノエルを支えるが、諸共崩れ落ちてしまう。武器を生成したせいで貧血が起きたのだ。やはり薬剤では充分な戦闘はできないと、エレノアの脳裏に沙流の記憶がフラッシュバックする。ノエルも、そんなエレノアの様子に気付く。
リヒャルトが銀糸を張り巡らせ、ロストを近づけさせまいとする。だが、ロストは驚異的な身体能力で銀糸を避けると、リヒャルトの背後に迫った。槍が深々とロストの腹を貫く。
ノエルがリヒャルトの名を叫ぶ。倒れ込むリヒャルト。その姿に、血溜まりに倒れる父親の姿が重なる。
ノエルがエレノアの手を振り払い、銀刀を振りかざしてロストに迫る。強力な剣撃を繰り出すが、ロストは余裕の笑みでそれを避けた。そこに、まだ傷口から煙を出してはいるが、銀は取り除いたらしいキアラが再び鉄扇を持って参戦してくる。ノエルの首に鉄扇が迫った。
あと一秒で首に鉄扇が喰い込むというとき、頭上から銃弾が降り注ぎ、鉄扇に穴が開いた。
「あれぇ? トレートル・ヴァンピールが二人? しかもこっちはもしかしてヴァンパイアハンター? 聞いてないよぉ、そんなの。話がちがぁうってカンジィ」
言いながら、翼を広げて空から銃を乱射しているのはヤムだった。適当に撃っているように見えて、しっかりキアラとロストのみを狙っているのは流石と言えるだろう。だが、キアラとロストもその雨のような弾丸を何とか避けている。
「リヒャルトさん! しっかりして下さい、リヒャルトさん!」
ノエルがリヒャルトを抱きしめて叫ぶ。だがリヒャルトの意識は戻らない。このままでは死んでしまう。
ノエルが見上げた先に、エレノアの姿が映った。白い顔が貧血で青白くなっているのを見つつ、ノエルはエレノアに話しかける。
「あいつらを倒せるか?」
「‥‥花嫁の血があれば‥‥」
そう言って、エレノアがノエルを指差す。それにノエルが眉を顰めた。吸血鬼に血を吸われるなど、両親の敵に力を与えるなど、屈辱にも等しい行為だった。だが。
ノエルは息の荒いリヒャルトを見下ろす。本当に許せないのは、無力な自分だから。
「あいつを倒せるなら‥‥今宵だけの花嫁になろう」
花嫁の儀式が始まった。
●最後の戦闘
ロストに拳銃を叩き折られたヤムのダガーの投擲を避けつつ、ロストはノエルとエレノアの儀式を見ていた。その口元に笑みを浮かべ、ヤムから、そしてキアラからも大きく距離を取る。
キアラはヤムに穴だらけにされた鉄扇を捨て、もうひとつの鉄扇で応戦していた。力量は互角。いや、懐に入られれば、ヤムの方が危ない。
そこに、大鎌が入り込んだ。エレノアの舞うように振り回す鎌がキアラに迫る。それにヤムがダガーでキアラの逃げ道を塞ぐ。手に刺さったダガーにキアラが鉄扇を取り落としたとき、大鎌がキアラの腹を抉った。キアラが血を吐きながら崩れ落ちる。
「あーあ、駄目だったか」
「次はあんたってカンジィ?」
「いや、俺はもうお暇させてもらいますよ。‥‥お前たちが望む答えは、もうすぐわかる」
謎の言葉を残し、闇に消えていくロスト。それを追おうとするノエルだったが、戦闘で負った傷と、吸血行為による貧血で倒れてしまう。
●アンバサッド廊下
「まさかヴァンパイアハンターを匿うことになるとはね‥‥」
言ったのはセフィリスだった。洸耶がエレノアに近づく。
「あの子と・・・・契約を?」
「一度きりという約束で・・・・ね。あの子が起きたら、契約を破棄するわ‥‥容態は?」
「大丈夫。そのうち目覚めるわ。・・・・このことは他の仲間たちには伝わらないようにしておくわ。ハンターに対して良いイメージを持っている者は少ないから・・・・」
去っていくセフィリス。残された洸耶が、エレノアに沙流のことを話す。
「エレノア・・・・もしかしたら沙流は‥‥」
●アンバサッド病室
隣り合うベッドで、ノエルとリヒャルトが横たわっていた。リヒャルトはノエルを気遣わしそうに見るが、ノエルは宙を睨んだままだ。
「花嫁としてヴァンピールと協力しなければ勝てない自分は嫌いでしたが、貴方を護れた自分は嬉しかったんです‥‥」
ともすれば泣きそうになるのを堪えて、ノエルが呟く。それにリヒャルトは無言のまま頷いた。
●異端者たち
真っ暗な部屋だった。そこに人がいても、影にしか見えないほど暗い。そこにロストがやってきて、周りの影を見渡した。
「以前、お前達が見逃した花嫁と遊んで来たよ。随分と・・・・美味しそうに育っていた」
そう言ってロストはにやりと笑った。
END.