Klavier佳楽章アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/05〜03/07
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●本文
普段はオーケストラやオペラ、演劇など、多目的に使われるホールに、様々な撮影機材が運ばれていく。設置されたカメラに映し出されるのは、ステージの真ん中にあるグランドピアノだ。
その周りで、ピアノの調律を確かめたり、カメラの位置を直しているのは、ピアノ曲メインのクラシック番組『Klavier』のスタッフたちである。演奏者に、より良い環境で演奏してもらう為、スタッフたちが忙しなく動く。
そんな中、今回の撮影でピアノを演奏する演奏者たちが集まった。彼らの手にあるのは事前に渡された、6段階にレベルの分けられた楽譜集だ。演奏者たちには、自らに合ったレベルの中から一曲を選択し、演奏して貰う。その選曲如何で、番組の評価が決まるのだ。
さて、今回の演奏者は、一体どの曲を演奏してくれるのだろうか。
●楽器について
当番組で使用される楽器は、ピアノのみです。ピアノはこちらで用意したものを使って貰います。
基本的にはソロですが、曲目やアレンジによってはピアノを2台まで用意することが出来ます。
●選曲について
以下に記されたリストの中から、自分が弾く曲を一曲だけ選んで下さい。
その際、自分の技術レベルに合ったものを選ばないと、演奏に失敗し、番組の評価が落ちる可能性がありますので、よく考えて選曲して下さい。
★の数が多いほど、難易度が高いと思われます。選別の参考にして下さい。
演奏時には、その曲をどのように弾くのか考えて弾く事で、更にいい演奏になるかと思います。
原曲を壊さない程度のアレンジも可能です。
●曲リスト
★☆☆☆☆☆
ラルゴ(ヘンデル)
人形の夢と目覚め(オースティン)
ティロリアンヌ(ルムメル)
★★☆☆☆☆
トルコマーチ(モーツァルト)
花の歌(ランゲ)
マリー(リチャード)
★★★☆☆☆
狩の歌(メンデルスゾーン)
調子のよい鍛冶屋(ヘンデル)
蝶々(グリーク)
★★★★☆☆
トロイメライ(シューマン)
春の歌(メンデルスゾーン)
きらきら星変奏曲(モーツァルト)
★★★★★☆
月光の曲(ベートーベン)
雨だれの前奏曲(ショパン)
沈める寺(ドビュッシー)
★★★★★★
別れの曲(ショパン)
タランテラ(リスト)
●リプレイ本文
●人形の夢と目覚め(オースティン)
ノースリーブのワンピースを着て、ステージへ上がった門屋・嬢(fa1443)は、ゆっくりと鍵盤へ指を置いた。
気持ちよく、すやすやと眠りにつく人形の様子を表現するように、ゆったりと歩くような速さでメロディを紡いでいく。やがてテンポが速くなり、曲調もがらりと変わって明るくなった。人形が夢の中で楽しんでいるのを想像しているのか、門屋の口元には笑みが浮かんでいる。この曲はオースティンが作曲したサロン風のピアノ小品の中でも特に有名で、ピアノの発表会などでよく使われる、聞き慣れた弾きやすい曲である為、その表情には余裕も感じられた。
後半は更にテンポが速くなり、曲調も激しくなっていく。門屋は指がもつれないように気を付けつつ、弾むように奏でていった。ともすれば早くなりがちなところを適度に抑えつつ、程よい速さで進めていく。
そうして、駆け回るような人形の踊りを笑顔で弾いた門屋は、クライマックスを高らかに鳴らして椅子から立ち上がると、カメラへ向かって丁寧に頭を下げた。
●ティロリアンヌ(ルムメル)
ステージに弾むようなフォルテを響かせ、生き生きと弾き始めたのは悠闇・ワルプルギス(fa5167)だった。普段は指揮者として演奏を指揮する立場である悠闇だが、勉強の為とチロル帽を被ってピアノの前に座る姿は、なかなかに自然体であった。
前半はアレグレットで軽やかにステップを踏むダンスの如く、飛び跳ねるようなスタッカートを効かせて、楽しげに演奏する。最初は同じ調子の単純な曲調だが、途中でテンポが変わり、少し大人しくなっていく。短いけれど、甘く柔らかな曲調が印象的な部分を悠闇は丁寧に弾き終え、再び序盤へと戻って行った。
繰り返すフォルテも始めと同じようにきちんと弾いて、悠闇は特にミスをする事もなく、無難に進めていく。そして、最後の一音を歯切れよくスパッと終えた悠闇は、椅子から立ち上がると、スカートの裾を持ち上げて、優雅にお辞儀をした。
●トルコマーチ(モーツァルト)
ルナティア(fa5030)が深呼吸をして鍵盤に指を置くと、誰しもが一度は聞いた事があるだろう、有名な旋律が始まる。
やや速めのテンポで、ルナティアは交互に現れるピアノとメゾフォルテの強弱に気を付けつつ、軽快に演奏していった。モーツァルト自身はトルコ“風”として銘打ってはいるものの、明らかにそれと判るトルコのメロディが入った行進曲のテンポは、聴く者だけでなく、弾いている者の心をも弾ませる。
中盤へと向かうルナティアは、序盤の軽快なリズムはそのままに、勢いをつけて明るく活発な曲調をへて盛り上げていく。この番組の為に練習した成果を見せるべく、ルナティアは指がもつれないように気を付け、だんだんと早く強くなっていくメロディを弾いていった。
そして終盤、一番の盛り上がりの部分で、ルナティアは軽やかでありつつ、フォルテの勢いも強くマーチを歌い上げる。クライマックスを高らかに響かせ、歯切れよく終わらせたルナティアは、満足気に頭を下げると、ステージを下りて行った。
●花の歌(ランゲ)
ゆっくりと、流れるように曲を弾き始めたのは紅雪(fa0607)だった。普段は弦楽器・アジア民族系楽器専門の彼女ではあるが、この日の為にしっかりと練習をしてきており、ピアノを弾く指は滑らかで、特にぎこちなさは見えない。
序盤を繰り返した後、曲は一拍置いてメゾフォルテからフォルテへと激しさを増した。力強い旋律を奏でた後は、優しく撫でるようなメロディを挟み、今度は踊るような軽快なリズムへと変わる。何気ない仕草で次々と変わっていく曲調を、紅雪は指運びに気を配りつつ、強弱をハッキリ現すように、正確に丁寧な弾き方で進めていった。その間も楽譜は一切見ておらず、完全に暗譜している様子である。
終盤へと入った紅雪は、軽やかに弾むように、それでいて優しく歌うように最後のメロディを奏でていく。クライマックスではフォルテを力強く奏で、そしてゆっくりと落ち着くようなピアノで余韻を持たせつつ、終わりを迎えた。
椅子から立ち上がった紅雪は深々と頭を下げると、軽くほっと安堵の溜息を吐いた。
●蝶々(グリーク)
ステージへ上がって来た剣橋深卯(fa1030)は、緊張をほぐすかのように一度大きく深呼吸すると、静かに鍵盤へ指を置いた。跳ねるような高音が響き始める。
ひらひらと不規則に舞う蝶を想像させるこの曲は、通常であれば結構な速さのテンポなのだが、剣橋はそのテンポを落とす事で一音一音をしっかりと弾く事に集中しているようである。
途中、メロディが速くなったり遅くなったりと不規則な部分が出て来るが、そこは落ち着いた姿勢で調子を崩さずに乗り越えた。
だが、いざアルペジオの部分になると、練習の時でも上手く弾けなかった事を思い出したのか、剣橋は少しだけ戸惑うような表情を見せた。そして、結局アルペジオを避け、無難な演奏してしまう。ミスこそなかったものの、少し悔やまれる演奏をしてしまった剣橋は、曲を弾き終えてステージを下りると、軽く肩を落として溜息を吐いた。
●トロイメライ(シューマン)
胸に白バラのコサージュを飾った黒いロングドレスを着たマリーカ・フォルケン(fa2457)は、ゆったりとピアノの前に座ると、落ち着いた様子で鍵盤を弾き始めた。
静かな調子でゆっくりと始まった旋律が、まるで水が染み渡るようにステージに広がっていく。マリーカは左右の手が奏でる和音のバランスに注意を払いつつ、メロディに余韻を持たせるように、紡がれる音が濁らないよう、ペダルの踏みに気を配っていた。
原曲を崩さないように丁寧に弾きつつも、作曲者の心情を考えながら、マリーカは自らの思う『トロイメライ』のリズムやテンポを混ぜ、情感豊かに演奏していた。それはアレンジと呼べる程のものではなく、マリーカの心の内から自然に現れたリズムであった。その名の通り、夢の中ででも弾いているかのようにリラックスしているマリーカは、ペースを崩さないまま、始まりと同じように静かに終わりを迎えた。
●きらきら星変奏曲(モーツァルト)
まるで子供が弾いているかのようにたどたどしく始まった可愛らしい旋律は、誰もがよく聴き慣れたものだった。それが突然、何の脈絡もなく軽快な素早いリズムへと変わる。変則的なこの曲を弾いているのは、淡いローズのシンプルなドレスを着ている千音鈴(fa3887)だった。
駆け回るかのような速さだったのが落ち着いたテンポへ変わったかと思うと、今度は弾むようにコミカルなリズムになったり、急に力強いフォルテへと変わったり。12もの違うリズム、そして弟子の教育用にと作られた目的によって沢山の対位法が含まれた、非常に難しい曲であったが、千音鈴はそれすらも楽しむように笑顔で弾いていた。
普段から職業柄上、様々な曲を様々なリズムにアレンジしている千音鈴は、この曲に親しみを持っているようだった。『ママ、私の恋の話を聞いて!』と目をキラキラと星のように輝かせる乙女を思うかのように、どの変奏でも軽やかに楽しげに弾いていく。
そうして、最後の変奏を力強く華やかに弾き終えた千音鈴は、満足気にステージを下りて行った。
●タランテラ(リスト)
重厚な印象の旋律を奏で始めたのは、中世イタリア風なデザインの黒いドレスを着たEUREKA(fa3661)だった。始まりからして指がもつれそうな程の素早いリズムに、EUREKAの肩が小刻みに揺れる。アルペジオは勿論、大量のトリルにトレロモ、パッセージと、超絶技巧で埋め尽されたこの曲に、EUREKAは気合充分で挑んでいた。
低音の重厚さと、煌めくような高音とのアクセントの調和を大切に意識しながら、序盤の重々しい旋律を弾き終えると、今度は比較的落ち着いた感じの旋律へと変わる。 が、その旋律における左手は全て装飾音符という、指がつりそうな部分を、EUREKAは滑らかさを損なわないように気を配りつつ、見事に歌い上げていった。
そうして終盤へとやって来たEUREKAは、めまぐるしく踊り回る音符に負けじと素早い指の動きを見せ、最後まで気を抜く事なく一気に弾ききった。
強弱は最弱から最強まで揃い、テンポ幅も広い曲を見事に弾き上げたEUREKAに、撮影スタッフや他の出演者達から盛大な拍手が送られ、EUREKAは額ににじむ汗を拭きながら誇らしげに笑った。