湖の音楽祭07Juneアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
不明
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
06/16〜06/18
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●本文
緑溢れる森の中にある、湖の畔。
町民のジョギングコースにもなっている、長閑な場所だ。
湖の淵に沿って設置されているベンチには、散歩中の人たちが腰をかけ、静かに揺れる水面を眺めている。
普段は風にさざめく木々の音や人々の話し声しか聞こえないこの場所だったが、以前はここでクラシックコンサートが行われていたらしい。
風の冷たい季節になり、コンサートが休止してから数ヶ月。暑い日差しが降り注ぐようになると、再び湖に楽器の音が響くようになった。
しかし、それはお世辞にもコンサートとは呼べない、拙いものだった。まるで楽器に触れた事のない者が、恐る恐る弾いているような。
それもその筈。楽器を奏でている者達は確かに素人で、普段は楽器と関係のない生活をしている者達ばかりなのだ。
それでも、悪戦苦闘しながら楽器に向かう姿はとても楽しそうで、見ている者も笑みが零れて来る。
そうしていると、いつしか美しい音楽が流れて来た。著名な指揮者であるジャン・ダイイのタクトに合わせ、小さなオーケストラが曲を奏で始める。そのメンバーの中には、名のある音楽家もちらほら見えた。
涼しい風の吹く中、湖の畔で、貴方も楽器に触れてみませんか?
●内容
前半部:楽器に触れよう!
後半部:オーケストラ演奏
今年の湖の音楽祭は、『クラシックに興味を持って貰おう』をテーマに活動して参ります。
普段は楽器に触る事のない生活をしている方も、楽器を弾いてみたいけど上手く行かない方も、皆一緒に楽器に触れてみませんか? プロの方が優しく楽しく指導して下さいます。
楽器を弾いてみたいという気持ちがある方でしたら、どなたでも参加可能です。
楽器は『クラリネット、フルート、サックス、ヴァイオリン、ギター、ハープ、ピアノ、木琴、鉄琴』を用意しております。好きな楽器を選んで下さい。
単に音を出して楽しむ他、簡単な曲が弾けるように練習をする事も出来ます。
また、プロの方でオーケストラのメンバーとして演奏して下さる方も募集中です。
今回演奏する曲は
『ラプソディー・イン・ブルー(G.ガーシュイン)』
『第1組曲ガイーヌより レスギンカ(A.ハチャトゥリアン)』
の2曲です。ご自分の得意な楽器でご参加下さい。
楽器はあまりにも高価なものでない限りはこちらで用意も出来ますし、使い慣れたものを持って来て頂いても大丈夫です。
クラシック楽器以外の楽器でも参加可能です。その際はどのパートで参加したいかを連絡下されば、ダイイ氏が編曲して下さるそうです。
演奏メンバーの方は、参加者の方の指導もお願い出来ると嬉しいです。勿論、演奏メンバーの方も前半部に参加者として来て頂いても構いません。
尚、演奏メンバーの方の報酬は2万円となっております。
水鳥企画 『湖の音楽祭』担当、原嶋東子
●リプレイ本文
●前半部
サラサラと風が吹き、木々が揺れる中、木琴と鉄琴の弾むような音が響く。各々のマレットを握り締めて、木琴と鉄琴を叩く子供達の中心でニコニコと笑っているのはエルティナ(fa0595)だった。
「今日はきらきら星を覚えてみようか。皆、きらきら星は知ってる?」
問えば、明るい返事が返って来る。それに頷いて、エルティナはマレットを木琴の上に置いた。
「それじゃあ、一緒に叩いてね。はい、ドードーソーソー‥‥」
ギィィィと、鳥肌が立つようなノコギリ音がして、仁和 環(fa0597)は思わず耳を両手で塞いだ。隣にいる深森風音(fa3736)も困ったように苦笑している。
「どうですかっ?」
ヴァイオリンを手に、やたら満足気に振り返ったのは七瀬紫音(fa5302)だった。それにEUREKA(fa3661)が何事もない顔で指導する。
「そうね。ちょっと持ち方が低いわね。こう‥・・水平になるように‥‥」
七瀬が言われたように直し、弓を弾く。未だ雑音は残るものの、先程よりはヴァイオリンらしい音が出て、七瀬の顔がパッと華やいだ。
「ん‥‥難しいですね・・・・」
七瀬への指導を横で見ていた深森が弓を弾く。七瀬ほど豪快には弾かないものの、やはり雑音が気になる様子だ。ダイレクトに耳に響くノコギリ音に眉を潜める。
2人の持つヴァイオリンには、指板の部分に音程の目安にとシールが張られていた。そのシールを確認しながら、2人は音符を探して行く。楽しそうに楽器に向かう2人に頷き、EUREKAが振り返る。
「さて、環くんはビシバシ行くわよ」
にっこりと笑うEUREKAに、二和がビクッと肩を揺らして、持っていたヴァイオリンを抱き締めた。正直な所、先程のノコギリ音で苦手意識が刺激され、大分腰が引けているのだが、朗らかながら目が真剣なEUREKAの招きに逆らうわけにも行かない。
「お、お手柔らかにお願いします‥‥」
「楽器も奏法も理解してるんだから、今日はちゃんと音が出せるまで帰さないわよ!」
EUREKAの厳しい声に、二和の悲鳴が響く。その様子を見て苦笑しつつも、深森がゆっくりと音を探して行くと、ふと七瀬がいないのに気付いた。キョロキョロと辺りを見回すと、ポロロンと涼やかな音が聞こえて来る。
「何か、吟遊詩人になったみたーい」
「ふふ、そうですね」
ハープを膝の上に乗せ、うっとりと目を細める姫乃 唯(fa1463)と七瀬に笑顔を返したのはルナティア(fa5030)だった。その手には初心者用に簡単な楽譜があるが、今のところそれを使う機会はないようだった。音を出しただけできゃっきゃと喜ぶ2人に、ルナティアが苦笑する。
「本当はちゃんと楽譜も読ませたかったけれど‥‥」
呟きつつ、ポロロンポロロンとたどたどしい音を奏でては笑い合う姫乃達に、「ま、いっか」と思ってしまうルナティアだった。
「折角だし、簡単な曲デモ‥‥こんなのはドウ?」
言って、ピアノを弾き出したのは椿(fa2495)だった。その曲に、Laura(fa0964)がパチンと手を合わせる。
「あ、知ってます、これ。胃薬の」
「ソウ、胃薬の」
楽しそうに笑う椿とLauraの言葉に、田中 雪舟(fa1257)が苦笑いをした。
「私に弾けますかね?」
「大丈夫大丈夫。最初は片手ずつやってみましょうカ。Lauraサンが右手で、田中サンが左手。2人で一緒に、交代でネ」
椿が2人をピアノの前に座らせる。ゆっくり丁寧な指導に、Lauraと田中も真剣な表情で向かう。
「ちゃんと弾けるようになって帰ったら、皆びっくりするかしら」
「びっくりして貰えるよう、頑張りましょうか」
お互い顔を見合わせて、にっこりと笑う2人に、椿が上機嫌でリズムを取っていた。そこに、気の抜けるようなサックスの音が響く。3人が何事? と振り返ると、湖に向かって姫乃がサックスを構えていた。大きく息を吸って、サックスを吹く。
「ふはー! 気持ちいー!」
そのいかにも気持ち良さげな様子に、振り返った者達が微笑む。
「ジャンさん、そろそろお願いし‥‥口の周りが真っ赤ですよ」
腕時計を見下ろし、ジャン・ダイイ(fz1036)の元へやって来た原嶋東子は、Laura差し入れのハーブティを片手に、田中手作りのチェリータルトと水ようかんを口一杯に頬張っているジャンに溜息を吐いた。
●後半部
フッと、ジャンの持ったタクトが上がる。それに合わせて響き始めたのは椿の馬頭琴だった。本来ならクラリネットで弾かれる筈の冒頭部分を、馬頭琴の伸びやかな音が奏でる。続くピアノパートをエルティナのマリンバが奏で、併走するように二和の三味線が響いた。G.ガーシュイン作曲『ラプソディー・イン・ブルー』の始まりである。
曲はだんだんと盛り上がりを見せ、EUREKAのサックスとルナティアのヴァイオリンも入って来た。楽しげに演奏する演奏者達に、観客達の表情もにこやかだ。
聞き覚えのある有名な旋律に入ると、ベンチに座った観客達の身体もリズムを取り始める。腕を軽く振って身体を揺らす姫乃を深森が微笑ましく見ていると、ふと姫乃が辺りを見回した。
「あれ? シオさんは?」
「七瀬さんなら、何だか用事があるようで、慌てて帰られましたよ?」
首を傾げる姫乃に答えたのは、ハーブティを片手にのんびりしているLauraだ。その横には目を閉じて曲を聴いている田中が座っている。
オーケストラでは、素早い技巧を要するピアノパートを、3本と4本のマレットを使い分けたエルティナが見事にマリンバで奏でていた。それを補佐するように、二和も同じパートで三味線の弦を弾く。曲はどんどんと音を高め、歯切れよくクライマックスを迎えた。
そうして一曲を弾き終えると、ジャンはゆっくりと手を下ろし、一拍置いてまた手を上げた。力強い太鼓の音が響き、A.ハチャトウリアン作曲『ガイーヌ第1組曲より レスギンカ』が始まる。
太鼓の音に続いて現れたのは、EUREKAのサックスだった。素早い指の動きにも負けず、EUREKAがいかにも楽しげに軽やかなメロディーを奏でる。その見事な演奏に、観客から拍手が起こった程であった。そして主旋律を打ち消すかのような力強い対旋律に、曲は高まりを見せていく。
EUREKAのサックス、エルティナのマリンバ、二和の三味線が主旋律を担当し、椿の馬頭琴とルナティアのヴァイオリンが対旋律を担当している。それぞれがそれぞれのパートを楽しみ、演奏する様は、観客達をもだんだんと巻き込んでいく。
そのうち、リズムに乗っていた田中が手拍子を始めた。それを見たLauraや姫乃が同じように手拍子を始めると、深森やその他の観客達も一緒になって手拍子を始める。演奏に合わせて手拍子が響き、指揮をしていたジャンはにっこりと笑ってタクトを振り上げた。
手拍子と、オーケストラの演奏が一体となり、湖に広がっていった。