ElDorado/dormitorioアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
06/30〜07/04
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●本文
龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
その世界には5つの国があった。
氷雪の国、ノルド・ノルテ。
常夏の国、ユーク・スール。
鉱山の国、デュシス・オエステ。
芸術の国、オスト・エステ。
黄金の国、セント・セントロ。
セント・セントロ魔法学校。世界中から魔法使いの素質を持つ者達が集まる場所である。
各国から生徒達がやって来る為、魔法学校には二つの寮があった。
一つはクレシエンテ。座学が得意で、研究に没頭するタイプの生徒が多い寮。
一つはエストレージャ。実学が得意で、感覚や本能に任せるタイプの生徒が多い寮。
二つの寮生達は、お互いのその性格からか、事あるごとに対立し、教師達を悩ませていた。
そこで教師達は一計を案じた。普段は対立せず協力すると約束させる代わりに、年に一回、寮対抗の魔法合戦にて鬱憤を晴らす事を許したのだ。
爽やかな空の下。互いの寮を代表する生徒達が、火花を散らして見詰め合っていた。
彼らの足元には教師達が作った魔法陣が描かれている。それは複雑な構成をしており、その魔力は代表者達の身体を包んでいた。
魔法陣の効力は『魔力の吸収』‥・・教師の決めた規定値以上の魔力を発動した場合、規定値以下まで威力を下げる為のものである。規定値、すなわち、死なない程度に。
ルールはシンプル。武器・道具の使用は認められず、杖は学校指定の物を使う事。自らの魔力のみで作成した魔法人形・武器は例外として認められる事。使用出来る技は魔法のみである事。代表者全員が気絶、及び魔力が空になった時点で敗北が決定する事。制限時間120分を超えた場合、教師達による判定によって勝敗を決める事。
勝利した寮に与えられるのは、自らの信念が間違っていなかったという自信。
敗北した寮が胸に刻むのは、まだ自分は未熟であると自身を奮い立たせる気持ち。
さて、今年はどちらの寮が勝利するのだろうか。
●必須キャスト
(性格・能力などは自由に考えて頂いて構いません。ただし、公式設定の都合上、使用できない設定があった場合は使いませんので、ご了承下さい)
・主人公 1名
どちらの寮でも可。描写は主人公視点となります。
・主人公と同じ寮の代表者 2名
・主人公のライバル 1名
事あるごとに主人公と対立するライバル。
・ライバルと同じ寮の代表者 2名
必須キャストの方は、互いにライバル寮・個人に対する、気に食わない所を考えて下さい。コメディ路線で撮影していこうと思っていますので、『本人たちからすれば重要だけど、他人から見ればくだらない事』をイメージしてお願い致します。面白ければどんな理由でも構いません。好みが合わないだとか、痴話喧嘩みたいなものでも結構です。
●その他キャスト
・試合観戦者(自分の寮を応援する者、主人公の友人など) 数名
・教師(試合の行く末を見守る者、判定する者など) 数名
●世界設定
・5つの国
セント・セントロ
魔法学校がある、世界の中心国。守護龍は金色の双頭龍。
ノルド・ノルテ
セントロの北に位置する、永久凍土が名物の冬の国。守護龍は白龍。
ユーク・スール
セントロの南に位置する、自然豊かな常夏の国。守護龍は赤龍。
デュシス・オエステ
セントロの西に位置する、山に囲まれた鉱山の国。守護龍は黒龍。
オスト・エステ
セントロの東に位置する、広い土地と数千のアトリエのある芸術の国。守護龍は緑龍。
・竜王の争い
3000年前に起った戦争。当時の白龍が領地を広げようと他国を侵略し、5頭の龍とそれぞれの国が争った。最終的にセント・セントロの上空で双頭龍と白龍の戦いが始まり、双頭龍が白龍を制した。以後、5つの国に戦争らしい戦争は起っていない。
・守護龍
守護龍はその国の人々の思いによって生まれるため、その国民性が性格に現れる。
戦争時、常に冬の状態で厳しい生活を送っていたノルド・ノルテの人々が、他国に対して非常に強い妬み憎しみを持っていたが為に、前白龍のような冷酷な龍が現れたとされている。
・魔法
炎・水・風・土の四属性がある。光・闇の魔法は使用時に命を削られる為に禁呪とされ、限りなく不死である龍のみしか使う事ができない。尚、属性魔法の応用として他の生物へ変身する魔法を使う者もいるが、幻の発展系に過ぎず、力などに変化はない。
氷系は水魔法の、植物系は土魔法の最上級魔法となる。なお、炎の最上級魔法は光に、風の最上級魔法は闇になる為、魔法学校などでは教える事はない。
呪文は基本的なものの他は、自らが使いやすく、かつ相手に何の呪文なのかを悟られぬ為に、オリジナルのものを考えるのが通常である。
呪文は長ければ長いほど集中力が増し、強力になるが、使い難くなる。レベルが高いと呪文を短くする事もでき、龍や最高クラスの魔法使いになると呪文無しも可能になるという。
・基本攻撃呪文
左から初級、中級、上級、最上級(水・土のみ)魔法となる。
炎:フレイム、フレアル、フレアザード
水:アクア、アクオン、アクアリオン、グランキエース
風:ウィンド、ウィガル、ウィガリエン
土:ストーン、ストラガ、ストンリード、ウィールスクム
基本呪文では、どの属性・級でも火球・水球のように丸い形で生み出され、級が上になるにつれて球が大きくなる。この球の形を変える事がオリジナルの第一歩となる。
・基本補助呪文
炎:フォルティフィアン(魔法・物理の攻撃力を上げる)
水:エルステヒルフェ(傷を癒す ※回復力は魔法力に左右される)
風:ヴィズィオン(幻を見せる ※幻は魔法使いのイメージによって作られる)
土:クレフティヒ(魔法・物理の防御力を上げる)
基本呪文では、どれも単体のみに有効である。属性は合体させる事もでき、補助呪文では合体がオリジナルの一歩となる。
●リプレイ本文
「これより、寮対抗魔法合戦を開始する! 双方の寮代表者、魔法陣の中へ!」
審判である教師のフォレウト(タケシ本郷(fa1790))の声に、それぞれの寮代表者たちが魔法陣の中へ入った。瞬間、魔法陣を囲んだ観客の生徒たちから歓声が上がる。
「さて、今回はどちらの寮が勝つのかな」
「ふふ‥‥この雰囲気、懐かしいわね。ねぇ、スヴェン先生」
教師席ではスヴェン・メルヒオル(志藤拓朗(fa4644))とリーザ(椎名 硝子(fa4563))が代表者たちを微笑みながら眺めていた。
「テメェらー! 俺様を蹴落として代表になったからには、負けんじゃねぇぞ!」
「何が俺様だ! お前は未完成な魔法の発動に失敗して、自滅しただけだろうが!」
観客の中から野次を叫んだクラエス・アクセルソン(鳳雛(fa5055))の言葉に、エストレージャの代表であるセリム・アールト(虹(fa5556))が突っ込みを入れた。それに、クレシエンテの代表者たちがクスクスと笑う。
「クフフフ‥‥どうやら、エストレージャの代表選考はレベルが低かったようですね‥‥これでは、代表と言っても高が知れたもの‥‥」
「あんだと? ろくに身体を動かしもしねぇお前らこそ、代表選考はバトルもしなかったんじゃねぇの? くじ引きでもしたか?」
嘲るようなスレーヤ(シヴェル・マクスウェル(fa0898))の言葉に、リゲル・ディアス(星辰(fa3578))が返せば、2人の間に火花が散る。それに続き、スレーヤの隣でツキノン(月詠・月夜(fa5662))が呆れたように溜息を吐いた。
「全く、下品な方々ですわね。これだからメロンパンなど不味いものを食べている輩は」
「メロンパン‥‥美味しいですよ‥‥? ユクルンが焼いたの‥‥一口でも食べて貰えれば‥‥」
言って、小首を傾げるユクルン(湯ノ花 ゆくる(fa0640))を、ツキノンがぎろりと睨み付ける。
そんな仲間たちの中で、セリム・アールト(虹(fa5556))とカタリナ・ソレル(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))はジッとお互いを見ていた。睨み合うと言うよりは大人しく、見詰め合うと言うよりは力の篭った目。
「今日こそ答えを聞かせて貰うからな」
「何の答えですか? 私は貴方から何も質問など受けておりませんけれど」
「し、質問っつーか、俺への気持ちって言うか‥‥えっと‥‥」
冷たい口調のカタリナに、ちょっと頬を染めながらセリムが呟くと、カタリナは怪訝そうな顔をする。そこに、フォレウトの声が割り込んだ。
「全員、戦闘の準備を! ‥‥戦闘開始!」
魔法陣から立ち上る光が、白から薄い水色へと変わる。
「よしっ! 皆、エストレージャの結束力を見せ‥‥」
「先手ひっしょおおおお! ウィガル! フォルティフィアン!」
杖を構えたセリムの言葉を遮り、風の鎧を身に纏ったリゲルが飛び出した。何の作戦も考えず、一直線に突っ込む。
「うえっ!? ちょっ!」
「ユクルン、行きます‥‥メロメロメロンパントルネードー」
リゲルを制止しようとセリムが手を伸ばすと、隣でユクルンが杖を回す。巨大なメロンパンの形をした魔力の球体が現れ、ユクルンがそれに乗って浮かび上がると、メロンパンは竜巻を起こしながら進み始めた。1人取り残されたセリムは暫し呆然とした後、ハッと気付いたように走り出した。
「スレーヤ! 相変わらず、人形に任せて自分は後ろで震えてんのか!」
「‥‥あなたは、相変わらず筋肉馬鹿ですね‥‥クレイ・オー・フィグレ」
突進してくるリゲルに、スレーヤがぼそぼそと呪文を呟くと、その足元からもこもことジンジャーブレットマンのような土で作られた小さな人形が無数に現れ、リゲルの進行を塞ぎ始める。身体に纏わりつく人形をリゲルが払い除けている間に、スレーヤは魔力を練り上げ、学園の屋根をも越える巨大な人形を作り上げた。
「おおお! デケェー!」
「‥‥踏み潰してお仕舞いなさい‥‥」
巨大人形がドシンドシンと地面を揺らしながら近づいてくる。それにリゲルが必死に小人形を薙ぎ払い、リゲルを踏み潰さんと下りて来た巨大人形の足を受け止めた。
「ふぎぎぎぎっ‥‥うおりゃああああ!」
全体重をかけてくる巨大人形の足を、リゲルは顔を真っ赤にしながら押し返す。そして、それをスレーヤへ向かって投げ飛ばした。バランスを崩した巨大人形が、スレーヤの頭上へ倒れこんで来る。
「‥‥これは、ヤバイですね‥‥」
ぼそりと呟いて、スレーヤが人形を構成していた魔力を霧散させた。倒れかけていた巨大人形が砂となり、地面に落ちる中を、リゲルが突進して来る。
「‥‥あ、しまった‥‥ちょっと、待っ‥‥」
「どっせーい!」
無防備に立っていたスレーヤの頬に、リゲルの風を纏った拳がクリーンヒットする。軽く吹っ飛んでグルグルと宙を舞い、地面へ叩きつけられたスレーヤは完全に目を回しており、その横でリゲルが勝利の雄たけびを上げた後、力尽きたように倒れた。
「あーあ‥‥ひ弱過ぎますわ、あの男‥‥」
気絶したスレーヤを見て溜息をついたのはツキノンだった。ユクルンの繰り出す竜巻を炎の壁で相殺している。
「メロメロメロンパンカーニバルー‥‥」
「しつっこいですわねー。めらめら伊達眼鏡パン!」
ユクルンが振る杖に合わせて生み出される数個のメロンパン型風球に、ツキノンが呪文を唱えると、自身のかけている眼鏡が燃え出し、ツキノンが睨んだユクルンの風球も燃えて霧散する。
「これからはツキノンが編み出した、お洒落にも非常食にも出来る実用的な伊達眼鏡パンの時代です!」
「‥‥伊達眼鏡は‥‥別にパンにしなくても‥‥いいと思います‥‥」
「伊達眼鏡パン、食べてごらんなさい! メロンパンより美味しいから!」
「ツキノンこそ‥‥メロンパン、美味しいですよ‥‥伊達眼鏡パンより‥‥食べやすいと思います‥‥」
「‥‥何だ、ありゃ‥‥とても魔法合戦には見えねぇな‥‥」
次々と繰り出されるメロンパンを、次々と伊達眼鏡パンが燃やしていく。延々と続くかに思われた攻防に、クラエスら観客たちが飽き始めたとき、痺れを切らしたのか、ツキノンが魔力を高めた。
「もー! 埒があきませんわ! これでお終いにします! もえもえ! 伊達眼鏡パンッ娘ファイアー!」
叫んで、ツキノンは杖を振りかざすと、くるんと回って、ポーズを取った。眼鏡の前にピースを作った指を構えると、右目側の眼鏡がカッと光って、火炎放射器のように炎が飛び出して来る。
「‥‥何の、こっちこそ‥‥メロメロメロンパントルネード、ハイパー‥‥」
炎に対し、ユクルンが乗っているメロンパンを浮かせている竜巻の勢いを強くし、大きくした。竜巻と炎がぶつかり合い、衝撃波が観客をも襲う。
そしてその衝撃が収まったとき、ツキノンとユクルンは2人揃って魔力切れで倒れていた。
「いやあ、今年はいつも以上に面白いなぁ」
「そうね」
戦闘を眺め、スヴェンとリーザがにこにこと笑う。
「エストレージャの魔法はいつ見ても面白いわね。個性の強い子ばっかり」
「クレシエンテも、自分の特性をよく研究して、理解しているよ」
わぁわぁと騒ぐ生徒たちの中心で、爆発音が響く。それに続いて空気を揺らす衝撃波が教師席まで届くと、スヴェンが楽しそうに笑った。
「あはは、派手だねー」
「あの頃のスヴェン先生も派手だったわよ。あの土魔法、抑えるのがやっとだったもの」
「あれはねぇ。リーザ先生にことごとく避けられるから、半ば自棄になってやったんだよね」
爆発音と歓声が響く中、2人は朗らかに顔を見合わせた。
「いつかあの子達も気付くかしら。ああして張り合える仲間がいるからこそ、お互いに切磋琢磨して自分自身を磨いて行けるんだって事。自分の力を知り、相手の力を認められた時に、本当の友が得られるのよ。私達の様に」
生徒たちを見る2人の目は、とても柔らかで、優しいものだった。
ドドドドッという音と共に、地面に数匹の炎の鳥が突き刺さる。それを飛行魔法で避けたセリムは、炎の鳥を繰り出したカタリナを見た。
「くっそー、近づけないな。流石カタリナ」
「お褒めに預かり、光栄ですわ」
洩らした呟きに、当然といった感じで返され、セリムが苦笑する。そしてチラリと横目に周りを見ると、仲間がそれぞれ倒れているのが判った。カタリナも同じように確認し、セリムに目を戻す。
「どうやら、残っているのは私たちだけのようですわね」
「そうだね。もう少しカタリナと遊んでいたかったけど、そろそろハッキリさせないとな‥‥」
言って、セリムが魔力を集中させると、セリムの身体が宙にふわりと浮いた。そして数個の小さな水球が現れ、セリムの周りを浮遊したかと思うと、一つ一つが水色の線で繋がり、結界を作る。
一方で、カタリナも魔力を集中させ、自らの背中に炎の翼を生み出した。身体を軽く包めそうなほど大きな翼を作ったカタリナは、ばさりとそれを広げる。
「お得意の結界ですか‥‥ですが、守ってばかりでは、私には勝てませんわよ?」
「ホント言うとさ、勝ち負けとかはあんまり気にしてないんだよね。ただ、この魔法合戦に出られたら、自信つくかなって思って」
照れたように頭をかくセリムに、カタリナが怪訝な目を向けるが、気を取り直したように翼を動かした。
「行きます! 焔羽乱舞!」
バッと、翼から無数の羽根が飛び出し、セリムを襲う。セリムはそれを水の結界で防ぎ、カタリナの魔力切れを狙うが、思っていたより強い羽根の威力に、結界が綻び始める。
「くそっ‥‥!」
苦しげにセリムが舌打ちする。そこに、観客の生徒たちの中から、クラエスの声が届いた。
「行っけー! セリム! ドーンと一発、お前の愛の力を見せてやれ!」
「え?」
その声に、カタリナが一瞬呆けたような顔をする。それに気付かず、セリムは気力を振り絞って魔力を高め、叫んだ。
「君の全てを受け止めるから‥‥! カタリナ! 大好きだぁぁぁぁ!」
甲高い音が響いて、セリムの水の結界が大きくなる。同時に、セリムを襲っていた羽根が霧散し、耳まで真っ赤になったカタリナが見えた。
ゴォッと周りの空気が燃えて、カタリナの翼が大きくなる。カタリナの制御を越えた翼の威力に、魔法陣の結界にひびが入った。
「これはまずい! 先生方、結界の補正をお願いします!」
カタリナの魔力に、フォレウトが倒れている代表者たちを抱えて魔法陣の外へ逃げ出した。それにスヴェンとリーザが魔法陣へ手を伸ばし魔力を送ると、魔法陣の光が強くなった。観客の生徒たちが、焦ったように魔法陣から逃げていく。
「セリム!」
「うおおおおっ!」
クラエスの心配そうな叫び声に、セリムは残る全魔力を込めて結界を強化した。そこに、カタリナの翼から放たれた数個の火球が襲い掛かる。
魔法陣の中が真っ赤に光り、学園の建物を揺らすほどの余波が結界を越えて生徒や教師を襲う。教師が必死に結界の崩壊を抑え、魔法陣の中が落ち着いてきたとき、炎と水の魔力のぶつかり合いによって生まれた霧の中で、カタリナが呆然と立っていた。カタリナの周りには、セリムと同じ水の結界が張られている。そしてその目線の先には、尻餅をつきながらも自身の結界を崩していなかったセリムがいた。
「へへっ‥‥何とか受け止めたよ、カタリナ」
言って、はにかむセリムに、カタリナが糸が切れたように崩れ落ちる。慌ててセリムが結界を解き、カタリナへ駆け寄る。
「カタリナ! 大丈夫!?」
「‥‥ちど」
「え?」
か細い声に、セリムが心配そうに座り込むカタリナを覗き込む。それに、カタリナは顔を真っ赤にしながら、呟いた。
「‥‥もう一度、言って下さらない? ‥‥さっきの‥‥言葉‥‥」
言われて、今度はセリムの顔がぼっと赤くなる。そして、照れるように視線を泳がしたかと思うと、急に顔を引き締め、カタリナの肩を掴んだ。
「カタリナ、大好きだ。‥‥俺のお嫁さんになって下さい」
真剣な瞳で言われた言葉に、カタリナが息を飲み、そして嬉しそうに笑った。
「‥‥最後のは、さっきは言ってませんでしたわよ」
照れ隠しのように呟いたカタリナに、セリムはにっこりと笑った。
「カタリナ・ソレル、魔力切れにより戦闘不能とし、よって最後まで立っていたセリム・アールト、エストレージャ寮を、今回の魔法合戦勝者とする!」
フォレウトの宣言に、生徒たちから大きな歓声が上がる。
「やったな、セリム! 告白まで成功させやがって、このぉ! 憎いね、色男! 結局両思いだったってのが無性に腹立つけどな!」
「祝福してんのかそうでないのか、どっちなんだよ」
クラエスが嬉しそうにセリムの肩を組み、笑いあう。それに、スヴェンが代表者たちを見回して微笑む。
「見ごたえのある試合だった。勝った方は奢ることなく精進を続けて、負けた方は自分たちに不足しているものが何かをよく考えるようにね」
その言葉に、代表者たちが頷く。
「お前に不足してんのは筋肉だな! あと体力!」
「貴殿に不足しているのは頭でしょうね‥‥クフフフ」
「ま、まあ? あんたもそれなりにやるみたいだし? い、一度くらいは食べてあげてもいいわよ‥‥メロンパン」
「‥‥うん‥‥私も、伊達眼鏡パンって‥‥食べてみたいです‥‥」
騒ぐ生徒に揉まれながら、代表者たちがそれぞれの相手と話している。その中で、セリムとカタリナはお互いの顔を見合わせてにっこりと笑った。
そんな2人の手は、少しぎこちないながらも、優しく繋がれていた。