今夜は猪鍋だ!ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
フリー
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
08/19〜08/21
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●本文
ギリシャ、某海岸。
地中海に面したその地にて、全長3メートルはあろうかという6本脚のイノシシを目にしたのが事の始まりであった。
一部からは七本脚ではないかという説もあったが、心臓の上辺りに強固そうなコアがあるだけというのが、写真を見た専門家からの一般人に知られざる返答であった。
無論、その専門家とはWEAに所属している獣人の科学者である。
WEAとしては情報を隠蔽する一方で、このナイトウォーカー、コードネーム『シシガミ』を討つ欧州の獣人を集める事に腐心していた。
最近、欧州でのナイトウォーカーの数が増加傾向にあるのではないか? という疑心からである。
それは欧州に集中気味のナイトウォーカー関係の依頼の数が裏付けていた。
この『シシガミ』1匹を討った所で、状況が好転するとは思いにくいが、少なくとも獣人の天敵である以上、これを放置しておく訳にはいかない。
WEAとしては、人員をプールしておく以外に道はなかった。
幸い『シシガミ』はあまり徘徊していないが、それがコアを分解して、移動に備えている可能性も零ではなかった。早期に手を打つ必要がある。
そして、呼ばれたものは──。
●リプレイ本文
中性的な少年、宮間・映(fa0082)の容貌が1分間かけて狼のそれに変わっていくのが、ベルシード(fa0190)の双眼鏡に映る。
鷹人に半獣化して空中を周回していた志羽・明流(fa3237)が──。
「お目当てが来たよ、皆、準備はいい?」と連絡。
「さては、映が『シシガミ』一番乗りかな? でも、『シシガミ』なんてコードネーム一体どういうセンスの人が名付けたんだろうね。あ、のんびりしていられない」
狐獣人に完全獣化したベルは喜び勇んで一塊の灰から、自分の分身を創り出して、『シシガミ』に向かわせる。
一方、完全獣化した映少年はどうやって現在位置を知らせたものか悩みつつ、まだ日が高く、動きが活発でない『シシガミ』を遠巻きに見守っていた。
「6本足のイノシシかぁ‥‥体は動物でも、つくりは昆虫って感じだね、全然違うみたい? カナは戦闘はあまり得意じゃないけど、野放しにはしておけないし、頑張って戦うよ」
ベルから早速に連絡を受け、やはり狐獣人に完全獣化した桐沢カナ(fa1077)がヴァイブレードナイフ片手に『シシガミ』を追いかけ出す。俊敏脚足で速度を上げたカナはあっという間に『シシガミ』に接敵し、頭部にナイフを突き立てようとするが、どうにも当たらない。根本的な地力が露わになったという所だ。
しかし、敵対存在が明らかになった事で、『シシガミ』は興奮し出したようだ。
『シシガミ』はカナに襲いかかろうとするが、猿獣人のAAA(fa1761)が見事な側転で『シシガミ』の目を引きつけ、自分の方に攻撃の矛先を向けさせる。
「うーん、話には聞いていたケド、こっちの方は随分NWが頑張っちゃってるみたいね?」
イギリスから依頼を受けて、ギリシャまでやってきた身ではあるが、舌はまだ満足していないようだ。
深森風音(fa3736)が真夏の太陽の光をアルキメデスの火に集めて『シシガミ』に着火する。
身もだえする『シシガミ』。
「折角こっちに来たんだし、どうせなら美味しいギリシャ料理のお店に行きましょうよ」
「何を呑気な?」
エースの言葉に、急いで駆けつけたので、オールバックにした髪からほつれ毛がひとつの、ダン・バラード(fa2603)は舌打ちひとつ。突っ込んでいった面々のせいで愛銃の向けどころがない。
「カナさん、ベルさん。近くに寄って同調するんだ!」
狐獣人達の切り札である飛操火玉の一斉砲火である。
ひとつひとつは小さな火だが、3人分のそれを会わせれば、炎どころではない大炎となるだろう。
「ゲット・レディ!! レッツバーニング・JUSTICE!!!」
そこへ叫びと共に熊獣人の姿が──モヒカン(fa2944)である。
アマレスの脚狩りタックルの要領で『シシガミ』の動きを止めるが、止まったのは一瞬の事。人間と違って脚は6本あるのだ。
そのまま押し切られるモヒカン。しかし、シャウト!
「ぶるらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
絶叫が力となり、『シシガミ』と拮抗する。
「柔を以て剛を制す!! これぞクレイジー柔術!!!」
某流派と紛らわしい上、何か間違っているような気がしないでもないが、『シシガミ』の動きを変幻自在に逸らしまくり、足止めを完璧に行うモヒカン。
「そんな攻撃など効かぬ! 通ぜぬ! 自分を打ち滅ぼしたければ3倍は用意しろ!! 革ジャン着て改造バイクで暴走行為を働いていた時、遭遇した拳法家の拳に比べれば微風に等しい!」
「いいぞアパッチ(誤記憶)! いやー、後は任せたよキミ達」
と、早切 氷(fa3126)がヤニを吹かせば、黄金竜の姿のグレイス・キャメロン(fa3627)が首筋にソードを突きつける。
「3メートルで6、7本の脚がある猪なんてちょっと私の想像力の限界を超えてたけど、目の前にしたら信じるわね。その為にこんな無粋なソードなんてわざわざ買ったんですからね」
「OK! OK! 一緒に前に出よう」
とコーリ。
「昆虫に近い姿だって聞いたから、胸から脚が6本生えていると思ったのに、肩、腹、腰から1対ずつなんて──」
グレイスがそう憤慨しながら、モヒカンが食い止めている『シシガミ」の後方に回り、ソードで後ろ足を断とうとするが、そう簡単に切れるシロモノではない。
‥‥三振り、四振り──。
そこへカナ、ベル、ダンが漸く集結し、周囲に合計、数十個の狐火を浮かべている。囁き、祈り、詠唱──念! その青白い炎の固まりが、『シシガミ』を直撃した。抵抗しきれず、炎に包み込まれる『シシガミ』。
モヒカンが力任せにコアを何度も何度も蹴りつぶし、止めを刺す。
戦いは終わった。
モヒカン曰く。
「獣化している今の内に、どの店に行くかは知らんが幸運付与を使用し期待させてもらう」
それに応えてグレイスは──。
「あら、ギリシアワインの赤ワインですごくおいしいのがあるのよ? ものすごく甘口だけど」
「ギリシャの地元料理は外国人むけに調整されている物以外は少々慣れが必要そうだが、エーゲ海の恵みとオリーブの香りに彩られた絶品揃いだ」
ど」
「そうね。ワインもね、レッツィーナワインだけじゃなくて白でも赤でも、安くておいしいの。それにムサカ、あれもおいしいわよね。それからやっぱりタラモサラダかしら? 言っておくけど、マヨネーズで混ぜるなんて邪道よ、邪道」
こうして獣から人へと立ち戻った面々は、戦いを楽勝で終え、凱歌を歌いに行くのであった。