横浜山海経アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 成瀬丈二
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 10/23〜10/27

●本文

「いいね、この夜景──実にいいね」
 今年45になる香港アクション映画の元アクション俳優にして、現アクション“イロモノ”監督である竜人、ファーナス・王(−・うぉん)は新作アクション映画、『香港山海経』の人材スカウトに日本に立ち寄った折、食事に招かれた日本の小中国、横浜中華街の夜にすっかり魅せられた様である。
 日常生活に於いては、質実剛健。謹厳実直を岩塊から削りだしたような──と評される人となりと外見であったが、映画に関しては、その場のノリと、映像として面白ければそれでいいじゃないか、という非常にはっちゃけた作風で知られる。この辺りがアクション“イロモノ”監督という肩書きがつく所以であろう。
「ねえ、ダド? ここで一本何か撮っていくの?」
 尋ねるはファーナスの息子。ファーナスの妻であるイギリス人である母の血の方が強く出て金髪碧眼。すらりとした肢体が可愛らしい竜人、リューキ・王(−・うぉん)11才。
 リューキ自身も子役として、アクションから歌まで一通りこなすマルチタレントである。
 悪戯気に笑って答えるファーナス。
「そうだな、有志がいたら1本ゲリラ撮影をやってみるか? 面白そうとはいえ、具体的なロケハンはここらの地元民の方が詳しいだろう。有望な奴がいたら、香港山海経の主役でも何でもくれてやる──獣人には国境などあるものか」
「でも、シナリオとか、今から日本語で書くの大変じゃない?」
 リューキの問いはシリアスっぽく返された。
「大事な事はノリとイマジネーションだ。シチュエーションが判れば、後は周りと呼吸を合わせて、その場の勢いで突き進む。それが出来ない奴は私の映画に出る事など適いはしない」
 カット1、スタート。

●今回の参加者

 fa0027 せせらぎ 鉄騎(27歳・♂・竜)
 fa0104 水守竜壬(24歳・♂・竜)
 fa0108 風月  陽炎(21歳・♂・竜)
 fa0154 風羽シン(27歳・♂・鷹)
 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0437 畑ヶ谷惇子(35歳・♀・兎)
 fa1005 ポップンスクワール(17歳・♀・リス)
 fa1385 リネット・ハウンド(25歳・♀・狼)
 fa1575 アリシア(9歳・♀・虎)
 fa1746 霧生 湊(21歳・♀・蝙蝠)
 fa1761 AAA(35歳・♂・猿)

●リプレイ本文

「映画のプロモーションビデオ撮影の為、雰囲気に溢れる貴店の軒先を使わせて頂ければ、と考えています」
 霧生 湊(fa1746)はその口上で、中華街巡りをし、ロケハンをする羽目になるかと思っていたのだが、案に反して──
「やれやれ、一軒目で片がついた」
 という事になる。
 ミナトは、撮影の許可を出してくれた中華街大通りに面した中華料理店『公生和』に感謝する。
 同じく最終決戦場として、筆頭候補に挙げていた関帝廟を回って撮影許可を取った烈飛龍(fa0225)は、仕事が終わると、生活能力皆無者のミナトに代わり、ドスの利いた笑顔を浮かべ、マンゴープリンと、フカヒレ入り豚まんを注文。
(当然、みんなの分も買って帰るので、ファーナス・王の名義で領収書は切ってもらう)、地域に還元する。
 一応、ファーナスが横浜市の観光課を通じて、撮影などにより、地域振興を目指す、横浜フィルムコミッションいう、横浜市での映画撮影などの手続きを一元に請け負う組織に依頼していたのだが、それでも一般人はここまで早く出来はしない。
 フィルムコミッションにも芸能関係の組織として獣人が紛れ込んで、便宜を図ってくれたのだろう。
 その為、中華街は友好的に迎えてくれた──そこで撮影が始まる。
 プロモーションだけあって、前後の些細な違いに拘らないファーナスらしく、いきなり血塗れになって倒れているリューキが、AAA(fa1761)に“竜玉”を渡すシーンから始まる。
「駄目よ、あなたみたいな可愛い子が死ぬなんて」
(うふ。それじゃそろそろ始めましょうか?)
 抱きかかえた髭坊主のエースがリューキを懸命に揺さぶるが、リューキはそこで血糊を吐いて、最後に一言。
「この“竜玉”を使えばいかなる望みでも叶います‥‥使い方によっては神にも悪魔にもなれます。どうか──これを関帝廟」
 そこでリューキは目をつぶって死んだふり。せめて、竜玉をどうするか言えよ、位の突っ込みは許されるだろう。
「駄目よ。命を投げ出しちゃー!」
(ああ‥‥ファーナスがアタシを見てる‥‥カメラ越しにアタシを見てるぅうううううううう!!)
「愁嘆場はそこまでにしてもらおうか? オカマさん」
 水守竜壬(fa0104)が、赤毛を透かすかのような量のバックライトを一杯に浴びて現れる。
(願ってもない仕事、請けずにはいられないね)
 エースは反論する。
「オカマじゃないわ、乙女の心を持っているだけよ!」
 竜壬は不敵な笑みを浮かべ、緑色の目に殺気を浮かべる。
「じゃあ、乙女の心を持っているオカマさん。その“竜玉”を渡して貰おう、我がハーレムの欲望の為にね?」
 そこへ長大なふさふさな尻尾を揺らせながら、半獣形態のポップンスクワール(fa1005)が現れ、口上を述べる。
「『リスの惑星から来た正義のリス』がそんなはしたない野望など許しはしないわ」
 と、同時に壁を蹴って三角蹴りからのドロップキック!
(静止写真と活動写真‥‥静と動との違いはあるが、どちらも『今』を収める事にゃ違いあるめぇ?)
 鷹の半獣人形態のまま、風羽シン(fa0154)がアクロバティックな構図で空中撮影する。
 ポップンスクワールの蹴りを、地上でメガホンを取っているファーナスとの連携も考えつつ収める。
(まー、このDVCじゃ画質は見た目は若干劣るだろうが、街中が照明に照らされてるから、露光にそれ程影響は出ないものか。最近のAV機器は侮れないしな」
「こんなチビ助の体当たりが効くかよ‥‥じゃない?」
 ファーナスの画面では、アリシア(fa1575)が竜壬への攻撃を受け止めたかのように見える。
 気品溢れる黄金の髪の毛は、ふたつのボンボンにして、黒いチャイナ服に身を包んだ、アリシアはポップンスクワールの攻撃を受け止めた様に見えるが、体重の関係でそのまま弾き飛ばされる。
「痛いのー! フェイロン様助けて」
「フフフフ、竜玉は我が手にあらねばなるまい‥‥それが我が定め」
 高所にカメラがズームすると、ドライアイスの煙をたなびかせながら、黒一色のスーツに身を包んだフェイロンが屋根の上に仁王立ちしている。
 その顔は虎の半獣人のそれである。半獣人でも悪役顔はそのままであるが、不敵な笑みはより精悍に感じられた。
「てやっ!」
 半獣人の体力を信じて、そのまま屋根から飛び降り、ポップンスクワールに豪快な蹴りを浴びせる。
 ガタイが良いだけにポップンスクワールとはまた異なった迫力がある。
 更に虎のイメージ性も加わって、ポップンスクワールはここでやられなければ、嘘だという事に気づき。その浴びせ蹴りを受け止める。
 勢いでエースの所までポップンスクワールを吹き飛ばし、エースの手に渡った竜玉を奪取しよう上段回し蹴りを炸裂させる。
 しかし、そこへミナトが割り込む。
「私は関帝真君から、啓示を受けてやってきた者だ。おぬしの手にある竜玉は任せて欲しい」
「──頼んだわ。あたしももう長くなさそう──ここはあたしが足止めするから、急いで!」
 何を急ぐのかは言わない。こんな些細な事で流れを止めるのはファーナスの視線が許さなかった。
「させません!」
 赤い瞳を輝かせながら風月  陽炎(fa0108)が割り込んでくる。
「それはこちらの台詞よ!」
 死にかかっているはずのエースが、立ち上がりトリッキーな動きで彼を翻弄する。
 その攻撃をあえてかわさず受け止めて、血糊を吐きながら陽炎は笑みを浮かべる
「ふ、決死の攻撃とはやります──しかし、拳が軽すぎる‥‥‥‥な、何、既に死んでいたのですか?」
 エースは陽炎に拳を突き込んだ体勢のまま、絶命していた。
 死亡確認。
 そこへ金髪の少年、九条・運(fa0378)が、エースが手塩にかけてメイクした格好──衣装‥‥というか上半身裸。それで蛍光ペンで梵字の様な取り敢えず良く判らないマーキングを左半身に一杯描き。左手に木刀装備!
 下半身はジーパンのみ! 足は素足!! 口を半開きにし声は喉と舌の動きだけで発声する。
 日本一の名探偵役を目指している十代がこれでいいのかはさておいて、当人としては良し! コレで見るからに取巻きのヤラレ役な悪役が出来る!! と、感慨に耽っていた。
 当人の志向するヤラレ役らしく叫ぶミナトに台詞は──。
「逝けやナマモノ キルユーイエローマウンテンモンキー!」
──等々、後に行けば行くほど理性崩壊全開な台詞を吐いて
 木刀での演義基本をあえて無視し、チンピラっぽさを全開で出したアクションでミナトに迫る。
 だが、そこに決まるポップンスクワールのフライングニープレス
「リスの星の正義の名に於いて!」
「ハックウー!」
 後方からの一撃で派手に運は蹴散らかされる。
 しかし、黄金の竜人へと変化する運に(実際は1分かかるが、放映時には、ダレるので6秒で放映)、白い肌が照明に目映い、リネット・ハウンド(fa1385)が、相手の膝を足場にして跳躍し、顔面に蹴りを入れるシャイニングウィザードを叩きつける。
「出番、これだけー!?」
 運が死亡したのを確認する間もなく、ミナトはそのまま(なぜか)路肩でエンジンを暖気したまま止めておいた、KDDX250に跨ると、どう考えても関帝廟には遠回りになる、倉庫街に走り出す。
 それを見た、風羽シンは絶叫する。
「監督、バイクチェイスのシーン、空中からの1カット撮りで!」
「行け、骨は拾ってやる! せせらぎ、フォローに入れ!」
 ファーナスも絶叫した。
 せせらぎ 鉄騎(fa0027)は早速機材一式を持って倉庫街に移動する面子の指揮に当たる。
 一方、風羽シンのカメラのフレーム内には──ミナトが驀進する中、追いすがるはZXP400に跨る、畑ヶ谷惇子(fa0437)。
「行こう──マッハドレイズ号」
 彼女は口紅とアイシャドウとファウンデーションでデコレートされた左目の眼帯を確認すると、趣味の悪さ大爆発なピンクのスーツにミニスカートでサドルに跨る。
 足が風に晒されても、愛車にかけた言葉以上に口を開かず、スロトッルを開ける。
「何者!」
 ミナトがお約束の言葉を発しても、何も言葉を語らずに全力で追いすがってくる。
 しかし、ここで残念だったのが、風羽シンの撮ろうとする倉庫街でのバイクチェイスは、彼の飛べる限度を遙かに超え、遙か遠景をテールライトが流れていく、別の意味では風情ある映像しか撮れなかった事である。
「監督──すまない」
 そのまま舞台は関帝廟に移る。
 倉庫街のチェイスシーンはカットバック的に挟み込まれるのみである。
「待っていたぞ」
 フェイロンが黒衣を風に靡かせてミナトを出迎えた。竜壬とアリシアを後ろに引き連れてである。
ポップンスクワールも息を切らしながら、関帝廟に現れる。畑ヶ谷も愛車のヘッドライトでミナトを後ろから照らし出す。
「見よ、我が再生獣人を!」
 運が黄金の竜人形態をとって現れる。
「ゾンデ・ギゾバ!!」
 夜目にも鮮やかな黄金の翼が広がる。両肩の鱗が激しく隆起し、肩当ての様に人々には見えた。
 そこへ女子レスラーふたり組。リネットと、ポップンスクワールの意心合気──。
「行くわよ、リスの星の戦士!」
「オッケー☆」
 言いながらリネットは狼の獣人へ、ミナトは蝙蝠の獣人にへと姿を変えていく。シンがカメラを回す中、一同は小休止。
 そして──1分後。
(関羽様ご免なさい)
 リネットは地壁走動で関帝廟の壁を駆け上がると、フライングボディーアタック。
 ポップンスクワールは止めの大技フランケンシュタイナー。
「ちくしょうー! また、出番これだけーかっ!?」
 運はまたしても、女傑の前に葬り去られる。
「ツープラトンで行くわよ」
「ダブルドローップー──」
「キーック!」
「させないよっ!」
 陽炎が辛うじて、波光神息を吐き出すが、運動エネルギーの前には無意味であった。
 しかし、破壊光線を浴びて、アスファルトの路上に転倒し、行動不能となるポップンスクワールとリネットであった。
 相打ちであった。

 そこに絶叫があがる。
 竜壬の首筋にアリシアが噛みついたのだ。味の良くない血糊を吐き出すアリシア。
「ハーレムが欲しいなんて──“ぱんてぃー”で良かった幾らでもあげるのに」
 リネットが獣人化している隙に、アリシアと畑ヶ谷も変身していたのだが、一同が驚愕する中、フェイロンが獰猛な形相を崩さずに、一発パンチをアリシアに入れる。
「おのれ、我が娘と思って好き勝手にさせていれば」
 今、決まったらしい(笑)、ファーナスが何やら合図したようだ。
 死んだふりをするアリシア。
 踏みにじったふりをして、高笑いするフェイロン。
「来い、ミナト!」
「先約アリ」
 一方、ミナトがフェイロンと正対しようとするが、畑ヶ谷がZXPで間に入り込む。
 畑ヶ谷の獣人化した姿は、右耳が半分ちぎれ、左目が醜く潰れた兎であった。
 右腕にもったルージュを開けると、その先端が火を噴く(オンエア時にはミサイルが飛び出すCGで合成されている)。
 次の瞬間、ミナトが虚闇撃弾を放ち、迎撃した(様にCGが合成されている。ON−AIR時にはミサイルを貫通した)爆発に巻き込まれ、畑ヶ谷は爆死、退場する。
 バイクがいつの間にか消えているのはご愛敬である。
「ふふふ、さあ最後の勝負だ!」
「それはどうだろう──勝負は最後まで判らないぞ? 出でよ竜よ! 私の望みを叶えよ」
 ミナトは竜玉を掲げて祈りを捧げた。
「1分待ってくれ!」
 ファーナスはそう言うと竜人形態に変身する。
 一分後、黒い鱗を持った竜人が現れた。
「さあ、関帝聖君の使者である私がどんな願いも叶えてやろうぞ」
「願いは──ひとつ、こいつをやっつけろ!」
「ま、待て!」
 フェイロンが否定しようとするが、ファーナスの口が開かれた。 雌雄は決した。
「カーット! 後はテロップを──」
「きゃー! ミナトちゃんオトコ前だったわよ」
 ファーナスの言葉に、死亡して見学モードだったエースが抱擁&接吻の嵐を誰彼構わず降らせまくる
 ポップンスクワールは力任せに抱擁から逃れると、ファーナスに──。
「監督、音楽関係のデータのアドレスはメールしてありますから、そちらで確認してください」
「感謝する。いやー、テストで選んで貰ったやつもセンスよかったし、音楽関係のディレクターやってみないかい? 二枚看板で売り出せるかも?」
「監督、海に落ちたかったのよ」
 ファーナスへの、畑ヶ谷からのクレームに際しては──。
「じゃあ、別撮りでやるから、後で港まで付きあって、シン君のカメラでどうにか出来るだろう」
「最後のあれはどうかと思うんだが」
 フェイロンの抗議にはうなだれるファーナス。
「‥‥予算が無かったんだ──」
 一方、シンは、自分の編集プロダクションでの独占インタビューを監督に申し出る。
「いやー。ほら、うちって弱小だから、どんな小さな縁だって骨の髄までしゃぶり付くくらい利用させてもらうぜー♪」
「まあ、次回作に向けて、露出が多いのは悪いことではない」
「んじゃオッケーという事で。映画が完成したら、絶対見させてもらうなー♪」
「自分で撮るという考えは──ないのかね?」
「ニヤリ」
「撮影終了、シンと畑ヶ谷を残して撤収ー!」
 スタッフの声が響く。
「さて、また、巻きが入るぞ──」
 シンは意味ありげな笑みを浮かべる。
 テイク1終了。
 このPVは香港を中心にインターネットで広く配信されたのであった。