衝撃ツンデレ女!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
9人
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サポート |
0人
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期間 |
10/29〜11/02
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●本文
「ところで監督? この10月24日から人集めの衝撃ツンデレ女! って何」
「まだ、脚本上がってないけど、きっとどうにかなるさ‥‥」
──等というものは台湾のドラマ制作現場で、脚本家がタイトルだけ決めて逃げ出した、番組、恐怖ツンデレ女収録直後に交わされた会話である。
そして、今『衝撃ツンデレ女!』の脚本が上がってくるはずの日から3日が経過していた。
脚本家はまたもや逃げ出していた。
監督は決断した。
「また、若いスタッフを雇おう。きっと‥‥きっと、今度も台湾に奇跡は起きるさ。クリスマスにはふた月早いけどな」
こうして、電子回線から口コミまで監督のコネを使ってスタッフ募集──俳優、裏方両面に渡る人的支援要請のメッセージは広まった。
タイトルだけ決まっているから、そこから自由な発想でドラマを1本仕上げてくれ。
しかし、時間は有限である。TOMI−TVの首切りが早いか、作品の完成が先かのデッドヒートが始まろうとしている。
カット37スタート。
●リプレイ本文
「映像や造型の裏方職を勉強中の雨宮慶です。
早速ですが監督、スタッフの数が足りません。
ええ〜、雨宮は撮影を担当させていただきたいと思って来たのですが、人員の必要人数が不足していますので幾つか兼業させていただきます。
無論キャストの方々も手の空いている方はADの様な事をして頂くという事で宜しいでしょうか?
宜しければそのまま、問題が在るようでしたら人員の補充をお願いします」
「スタッフはお願いすれば振ってくるわけではない」
と、小柄な体躯に似合わぬ胸を揺らしながらの雨宮慶(fa3658)が放つ理路整然とした言葉に、混沌とした現実で返す監督。
「では、デスマーチですね。
各種必要素材の手配は人海戦術で進めて行けば何とか間に合うかもしれません。
撮影場所は過去に撮影歴のある場所を片っ端から当って許可を得れば何とでもなるでしょう‥‥多分。
衣装や小道具は学園物なので学生陣は皆様のサイズに合せた制服やスーツをレンタル、それ以外は各自が各々持ち込むなりレンタルなりで調達すれば大丈夫でしょうし、メイクもキャストの方々自身にお願い、と何だか皆さん大変な事になりそうですね」
「というか十二分に大変な事態になっているのだが」
「撮影の方は特に難しい事はせず、2〜3度光量とアングルを変え試した後に本撮り。という少々丁寧なやり方で撮影という方針で。
映像処理の方で特にCGを使う予定も有りませんし、多少時間を食ってもギリギリで何とか間に合わせる事が出来ると思います」
「それはまともな現実の時に言うべき言葉だ。台本すら決まっておらず、皆がやりたい事を言い合っているだけの現状では、そんな時間のゆとりはない」
「奇跡は起きます! 起こしてみせます!!」
ツンデレ一代女の理緒(fa4157)が、腰に手を当てて立ちふさがる。
「またツンデレシリーズでドラマですって!? 冗談じゃないわ!! 私が参加しなきゃ誰がツンデレを演じるのよっ。まあ、打ち合わせは曖昧でしたけど‥‥」
現状で殆どの俳優が他人の役名すら覚えていないのが事実である。
とある高校の数学の授業から舞台は幕を開ける。
羅刹王修羅(fa0625)演じるところの数学教師が脱線しまくった授業を繰り広げ、チャイムが丁度鳴るタイミングで──。
「まぁ、当然テストには出んがなぁ」
と締めくくられ、“社長”こと小野田有馬(fa1242)の家庭科の授業に出る秋月理緒が長束 八尋(fa4874)演じるところの不器用な、青みを帯びた黒髪も相まって少女めいた容姿の廣瀬要から、移動授業の合間に廊下の隅で告白の言葉を受ける。
「ずっと前から憧れてました‥‥俺と、付き合って下さい‥‥っ!」
「──要くん、私のことが好きなの‥‥?? ほんと?」
思いもよらぬ一発オッケーに要の脊髄を衝撃が駆け抜ける。
葉月 珪(fa4909)演じるところの級友が、嬉しそうに恋の成就に祝福を送る。
そんな光景をフォーティア(fa2516)演ずるところの、蒼月悠美がじっと遠くから見ていた。
しかし、要少年には辛い日々の始まりであった。
朝、玄関の前で出くわす──回転延髄蹴り。
(うぅ痛い‥‥でも、わかってるよ。理緒の気持ちは、複雑骨折する位伝わってる)
コンクリートの壁に食い込んだ要少年の脇から出てきた、要少年の兄である、廣瀬 広治──(演者:ディルム・スティルダー(fa2093))に理緒は笑顔全開で、大きなお弁当箱を渡す。
「お弁当作ってきました☆」
学校の周囲の目があるところでは過剰なまでにデレデレする理緒だが、一方──学校からの帰り、手を繋ごうとする間合いに要少年が近寄ろうとすると無言で笑顔のまま殺気を放つ。剣道部の要少年にはその殺意は明らかであった。
そのギャップに悩み──。
「理緒は、皆の前だと態度が違うんだ! 皆は理緒の本性を知らない‥‥理緒はみんなを騙してる」
要少年に理緒との悩みを相談され広治は──。
「バカだな、そんなの当たり前だろ?
心を許した相手以外に本性を見せる奴なんていないよ」
「そっか‥‥そうだよね。じゃあ、あのラリアットも延髄蹴りも、愛情の裏返しなのかな!?」
と、血の繋がった兄に冥府魔道に突き落とされた事も知らずに、天然ウルトラポジティブシンキングのスイッチが入った要少年。
(さすが‥‥広治様──私のお慕いしている方、あの弟を踏み台にした甲斐があったわ)
手近な家屋の屋根の上、カモフラージュネットの下から、愛する“広治”様を理緒はただ、舐めるように見渡すのであった。
だが、彼女がフォローしきれない時間があった。それは広治のキャンバスライフ──。 ある休日に理緒は家に招かれひとりの木刀をもった女性を紹介される。
白虎(fa0756)演ずるところの西虎白銀(さいこ・しろがね)であった。
人当たりの良い美女だが、広治が入ってくると、途端に醒めた表情に切り替わる。
白銀を紹介するのに広治は手短に──。
「大学卒業したら結婚するんだ」
と、理緒と要少年に告げる。
すると白銀が無言で、広治を突き飛ばし、壁に激突──するところを理緒が庇う。
「おいおい、将来の弟と妹になるかもしれないふたりの前なんだからそんな照れなくて良いよ」
と苦笑しながら体勢を立て直した所に、白銀が理緒ごと突き飛ばして壁に激突。
「まあ、そのうち彼女も馴れると思うから仲良くやってくれよ」
と体の汚れを払いながら要とヒロインに笑顔で言って彼女と立ち去る──。
──立ち去った後の事は書かれていなかった。台本は白紙なのだから。
書き直すスタッフも時間もなかった。
結局、衝撃ツンデレ女! の枠には別の番組が入った。
理緒だけはやる気満々であったが、珪ちゃんは行動指針を失い。途中まで収録された作品はお蔵入りとなる。
無論、報酬が出るはずもない。
これが業界の非情な実体であった。
『未完』