不思議! ツンデレ少年アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
難しい
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報酬 |
0.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/23〜11/27
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●本文
台湾ではひとりの監督が身もだえしていた。先日の放送事故の汚名を返上すべく、次の仕事に勤しんでいた折の出来事である。
「また、また逃げられたー!」
酒場で知り合って、ツンデレとはなんぞやと論議した“自称”脚本家に連絡を取ろうとしても、まるで応答がない。自己申請による、自宅と仕事場を当たっていても、人っ子ひとりいなかった。
「い、いかん‥‥このままではまた放送に穴が空く。なんとかせねば──」
この監督に学習能力があったかは定かではない。
ただ、この監督に出来ることは手近な情報媒体を使って、SOSの伝言を知る限りの面子に当たる事であった。
カット41スタート。
※ピンポンパンポーン
不思議 ツンデレ少年はタイトルしか決まっておりません。キャスティングも自由です。その為、打ち合わせ段階で内容が決まってないと(例、キャラクターの名前を互いに認識していない、ラストが決まらずその場の成り行きでどうにかしようとする)、結果が悪い方向に加速的に進んでいきます。
この番組は皆様に丸投げですので、皆さんが決めていないことは、結局決まっていないものとして処理されます。
ドラマをゼロから作って完結させる気概の方をお待ちしています。
●リプレイ本文
「‥‥で、今度はどこの詐欺師に騙されたんですか?」
脚本を一気呵成に書き下ろした巻 長治(fa2021)のジャパン印な絶対零度の剃刀に泣きついてきた監督は言葉に詰まったようである。
「ともあれ、安心してください、シナリオは万事練ってあります」
と、マキさんは今回、演出を務める孔雀石(fa3470)の方に視線を投げかける。
──こうして、物語は始まった。
タイトルは『不思議! ツンデレ少年』である。
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★配役
マリアーノ・ファリアス(fa2539):瀬良宗司(せら・そうじ)
西村 哲也(fa4002):西田東(にしだ・あずま)
南央(fa4181):巴志穂(ともえ・しほ)
Iris(fa4578):荻野信(おぎの・まこと)
各務聖(fa4614):瀬良芽衣(せら・めい)
金緑石(fa4717):曳舟敦(ひきふね・あつし)
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マリス少年は赤毛を日本人役らしく、と黒く染め、ついでにカラーコンタクトも黒いものを装着し、今までと随分と印象が違って見える。
そんな彼が演じる宗司少年は従姉妹の芽衣の家を訪れていた。
世界的な富豪の一族である宗司少年から見れば、自分の家の押し入れにも相当しないようなせせこましい家であったが、その購入は芽衣の家族からすれば乾坤一擲の大勝負であった。
そんな廊下の中を芽衣が志穂を連れて歩いている。
「ごめんなさい、宗司くん──急に芽衣のトモダチがやってきちゃって──」
そんな芽衣の母親の声も宗司少年の耳には届かない。
今まで感じた事のない動悸の速さが少年の精神を支配していた。
翌日、芽衣の通う私立高校にて──。
「という事で今日から皆と一緒に勉強する、瀬良宗司君だ瀬良は‥‥いや、こういうと瀬良芽衣と混同するからな‥‥どうしたものか」
荻野先生は教師としては新米のため、やる気に溢れているものの、何かと空回りすることも多い。
学級目標にそのものズバリ『皆仲良く』を掲げ、自らも遠慮なく生徒と言い合える教師になろうとしているが如何せん少年少女の方が精神年齢が高いのか、逆に生徒に見守られている部分も。
宗司少年の転入に、新しい仲間と楽しい毎日を! と意気込んで行くが、
「いいよ、芽衣と宗司で‥‥」
荻野先生はあっけなく片付けられ思わず拳を握り締める。
(かわいくない‥‥っ!)
金緑石が眼鏡を外し、髪をワックスで立て気味にして演じる曳舟敦は、立ち上がりながら荻野先生に──。
「え、こんな飛び級って日本でアリなんですか!?」
──思わず突っ込まずにいられない。
ついつい指さした先には宗司少年の、ランドセルと半ズボン姿があった。
服装と合いまった体格などから、敦の目に映る宗司少年は小学生だろう。ひいき目に見ても第二次性徴を迎える前の中学生だ。
「曳舟‥‥大人には色々と辛い事があるんだ──」
今朝になって理事長、校長から直に伝達された決定事項に荻野先生も逆らえなかった。
「あれ、お前どうかした?」
座りながら自分も10年経つとああなるのかと納得せざるを得なかった敦も、芽衣の顔に何かを感じたらしい。
「──ううん。なんでも──」
そして、授業を終えて──何とも信じ難い事にトラブルはそれまで起きなかった──掃除の時間が始まる。
それでも志穂は宗司少年のマセた態度に『なんだか不思議な子だな』と思っている。
掃除の場所分けで宗司少年と志穂は班分けで同じになったのだが──正確には宗司少年が無理矢理割り込んで自分と同じ班に志穂を引きずり込んだのだが──笑顔で志穂は宗司に話しかける。
「よろしくね」
「べ、別にお前と一緒になりたくて、この班に入ったんじゃないからな! ‥‥ただ単に面白そうだったから!」
「え!?」
突き放されたような言葉に志穂は驚きを隠せない。
そこへ芽衣がフォローに入る。
「ほ、ほら面白そうなのって敦くんよ。ホームルームでもあんな事やってたし、ね? 宗ちゃん? 掃除、始めようよ! ね!?」
「掃除? 何で?」
「だって、自分たちの学校は自分たちで綺麗にした方が気持ちいいし‥‥」
「じゃあ、自分たちで──っていうのが大事なんだな。おい、そこの」
と、手近に暇そうにしていた生徒を呼び止めると宗司少年は懐から、金の表紙の小切手帳を取り出しすらすらと6桁の金額を書くと渡してしまう。
「終わったよ。自分たちで綺麗にしてくれるってさ」
「ちょ、ちょっと今の──?」
と、敦がツッコミを入れる。魂の形だしょうがない。
「ん? 少なすぎたかな」
と、やっていると後ろから声が──。
「今の騒動は君たちですか」
と生活指導の西田先生が現れる。
「学生らしからぬ、高額の金品のやり取り──生活指導として見過ごす訳にはいきませんね」
銀縁の眼鏡にスラリとスーツを着こなし、髪は軽く七三分け。
レンズと一緒に嫌味も光る数学教師。とても厳しい男。
それが西田東であった。
どこで聞きつけたのか気が付くと騒動の場に現れ、口喧しく注意を出しては、最後にクイと眼鏡を上げ、フフンと鼻で笑って去っていく。
「どうかしましたか? ひ・が・し先生」
「あ・ず・ま、だと何回言えば分かるんですか!」
荻野先生が声を出すと、自身のコンプレックスを刺激され低レベルな話し合いになってしまう。
しばしの論議の末、西田先生が我を取り戻す。
「‥‥いやいや、随分な騒ぎですね、荻野先生?
クラスなど関係ありません。私は一生活指導教師として申し上げるだけですよ。
こちらのクラスは今ひとつ協調性に欠けるようですね」
と鼻で笑い、眼鏡をくいっと押し上げる。
それを見ていた志穂は荻野先生と西田先生のやりとりは毎度のこと『喧嘩するほど』と見ているが、言い負かされた荻野先生を慰めに入る。
「あれ? 宗司ちゃんは?」
芽衣が周囲を振り返るが、肝心のトラブルの種はいない。
やはり、何人かの学生を引き連れているようである。
「いやー、疲れそうだから、飲み物買ってきたんだ。みんな何が好きか判らないから、適当にやってよ。しかし、学校の店ってキャッシュカード使えないんだな」
天地開闢以来の秘密を明かすかのような口調で宗司少年は芽衣に話しかける。
「宗ちゃん、そんな事しちゃダメだよ〜」
「不思議な子だね、芽衣ちゃん」
「な、なんなんだろうね‥‥志穂ちゃん」
それから一週間が経った。
宗司少年の小切手乱発で学園内経済は小切手の使用法を知っている者と知らない者に二分され、小戦国状態であった。
「宗ちゃん、お金じゃ気持ちは伝わらないよ? 女の子には優しくしてあげなきゃ?」
と、芽衣が宗司少年に告げ、事態の打開策を図るが──当の宗司少年はキョトンとしたままであった。
「そうだよ、優しくしてあげたいんだよ!」
呟きがどれほど、宗司少年の心中に届いたかは計り知れないものの、芽衣は急ぎ教室に帰り、皆の課題を集めて持った志穂とすれ違う。
心ここにあらずの宗司少年が志穂とすれ違ったのはそれから3分ほど間を置いてのことであった。
「きゃっ!」
バランスを崩して課題を廊下にぶちまける志穂。
芽衣の言葉が宗司少年の脳裏を走り抜ける。
(女の子には優しく‥‥女の子には優し──)
「手伝ってやるよ」
ひとめまとめにして志穂に課題を渡す宗司少年。
「あ、ありがとう」
「まどろっこしくて、見ててイライラしてきたから手を貸しただけだよ」
ほら、急がないと遅れるぞ、と宗司少年が言っていたのが、志穂の脳裏では果てしなくリフレインしていた。
その表情が宗司少年の網膜に焼き付いて離れない。
そして、放課後、荻野先生が志穂の元を訪れる。
だが、志穂は何も言えない。
「何かあったか? 俺で良ければ聞くぞ」
「敦──俺、志穂に嫌われたかも」
一週間の間に仲介役に色々回ってくれた敦の所にブルーな空気を吐き出しに行く宗司少年。
「あーあ、そういう事か? 年上の彼女は辛いもんだな」
「か、彼女って!?」
「あれだけべったりくっついて回ってりゃ大概判る。なーに、女を落とすのなんて、少し──ほんの少しだけ自分の気持ちを伝えれば済むことだ。やってみれば判るさ」
「判る‥‥か」
「ほら、志穂が来た」
宗司少年の背中を一押しする敦。
「俺、さっき悪いところみせたな」
「ううん、愚図だったから」
「いや、別に‥‥‥‥」
「別に──?」
志穂が俯いた宗司少年の顔をのぞき込むようにかがみ込む。
顔をぷいっと横に向ける宗司少年。
「別に俺はお前の事嫌いじゃないから──」
「良かった!」
志穂は嫌われていたのではないと知ってて安堵。
「それじゃあ、これからも仲良くしてね」
「ああ、これからはな」
そして──どちらからともなく、ふたりの手がそっと重なり合い‥‥。