WarCry2−2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
成瀬丈二
|
芸能 |
4Lv以上
|
獣人 |
2Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
19.8万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
1人
|
期間 |
12/06〜12/10
|
●本文
「さて、ロケハンの地は押さえた──後は北欧と風土が違うとか抜かす連中を力業でねじ伏せるまでよ‥‥」
年末の香港、ファーナス・王はブランデーグラス片手に海を見ていた。なお、グラスの中身はウーロン茶である。
ファーンは別に下戸という訳ではないが、単に気分を出すだけの小道具に金をかけすぎるのもアレだな、というだけである。
「で、どうだ。リューキ?」
バイキングの衣装を着込んだ、リューキ・王が現れた。
出で立ちはリンネルのパンツと短袖シャツ。幅広でゆったりしているが、膝下あたりで紐で縛り、すねのラインを浮きだたせたズボン。
上着は羊毛で織られており非常に重く、シャツのように、上半身部分は現在のシャツの様にぴったりとしていたが、膝下まで届く裾はウエストの辺りから末広がりになっていた。
その上からマントを羽織り、幾つかの黄金の装飾品を目に見える様に纏っていた。
これがバイキングの平時の服装である。
「結構重いね。似合っているかな?」
と、未だに声変わりしない甘い声を、金髪碧眼の少女めいた面貌から発するリューキ。
「大丈夫、十分似合っている。まあ、今回はハロルドの土地である平時のパッフィンランドが、エイリークに襲撃される話だからな。
後は、ミーミルの首がどうなるかは、商人連中の動き次第で変わるだろうからな──入念にリハーサルをやっておきたい所だ」
「やっぱり、チャンスが2度あるのって大きいよね」
リューキの言葉に、ファーンはブランデーグラスを静かに揺らすのであった。
──カット43スタート。
●リプレイ本文
──自分が鍵だから親切にしてくれているのか、それとも‥‥。
燐 ブラックフェンリル(fa1163)演ずるところの謎めいた少女、ラルの心はパッフィンランド──若長ハロルドの治める地にても、熔ける事無く、凍てついたままであった。 そんな顔しないで──と村娘のベスがほほえみかける。
そんな居候たちにアンナ(蕪木薫(fa4040))は、干した果物を投げてよこして──
「今造ってる船の仕上げ、手伝ってくれる?」
「そういうの判りません‥‥」
「いいよー!」
「ベスはいいけど、ラル──ものは試しでしょ? おや、若長に『赤毛の』バルガスお帰りだね」
アンナが声をかけた、そちらの方に視線をやるラル。
臓腑を抜いた猪の身体を抱えて持ってくるバルガス(烈飛龍(fa0225))と、臓腑を抜くのに失敗したのか、血塗れになって戻ってきたハロルド(リューキ・王(fz1001))であった。
その血塗れの姿に追憶がフラッシュバックするラル。目眩を感じて倒れそうになるラルを支えるアンナ。
「ほら、しっかり食事しないからね──あたしの食事は美味くないけどね、そりゃ」
「ごめん‥‥なさい、アンナのせいじゃないの、魔女‥‥だから」
そこへ、呼びかける声。
「父ちゃん、凄いね!」
「お帰りなさい、あなた」
バルガスの息子と妻である。
「なーに、全部若長がやったのさ、俺は持って帰ってきただけ」
もちろん、嘘である。
「さすが、若長だな──」
と、血の匂いを嗅ぎつけた、異国情緒溢れるアクセル(九条・運(fa0378))が現れる。
同じく旅商人の相方、ルシア(新井久万莉(fa4768))がバルガスの奥方に向かって──。
「さて、奥さん、良い交換品が手に入ったわね。どう、バルガス、奥さんに贈る金の腕輪なんかどう?」
「どうしようかしらね? あなた」
「さて、若長の裁断を待とう」
「腕輪をふたつもらおう。ひとつはバルガスの奥方に、ひとつはラルに」
ハロルドの声に、ルシアは──。
「ま、大まけにして、手を打つとするわね」
と、手を伸ばす。
「おいおい、赤字だぞ?」
とルシアの言葉にアクセルは舌を打つ。
「世の中には先行投資って言葉もあるのよ」
続けて打ち鳴らされる鐘の音。
「里に何が!? 行くぞ、バルガス!」
ハロルドの声にアンナも──。
「あたしも行くよ!」
と、ハンマーを手にする。彼女もまた雷神『トール』の加護を得る身であった。
投げ込まれた壺が割れる音、それから漏れだした匂いの判別をするまでもなく、松明が放り込まれ、赤々と燃え上がる。狂戦士ファゾルト(モヒカン(fa2944))の鼻歌交じりの進撃である。
飛びかかる戦士達を豪腕一閃なぎ倒すスレッジハンマーの強撃! 骨が砕け、手足がへし曲がる!
「ファゾルトだな!」
と、バルガスが声を荒げて、自分に注視させる。
「『赤毛』の‥‥──スルトの加護にかけて、お前を焼き尽くしてくれる」
スレッジハンマーとスパイクシールドを構え直し、山嵐の様に、巨体を戦闘体勢へと移行させるファゾルト。
双頭のバトルアックスを構え直すバルガス。
「テュールの加護に賭け、貴様を倒す!」
激しく打ち鳴らされる鋼と鋼!
一方、アンナはイレーネと向かい合っていた。イレーネ(ランディ・ランドルフ(fa4558))は教会神聖騎士である素性を隠し、エイリークがわに参陣していたため、男装であることを隠し通すべく、細身の身体の上から更にマントを羽織っている。
徒手空拳のイレーネの見慣れない戦闘スタイルにとまどいを隠せないアンナ。
「素手で戦おうなんざ、見通しが甘いよ」
先手必勝とばかりにしかける。パワーとスピードに全てを賭けた介者武術である、いや武術というのもおこがましい。
それをイレーネは素手で受け流そうとするが、パワーに任せた攻撃を押し切れない。
「これがペイガン(異教)の加護だというのか!? 認めん!」
そこへ避難とばかりに、アクセルとルシアがラルの手を引きずって、戦場の端から、自分たちのロングシップに移動する様が見て取れる。
「ラル──来るんじゃない!」
そこに出来た隙にイレーネが回転運動を加えて、アンナの身体を空中で一回転させると、受け身も取らせないまま大地に叩き伏せた。
そのまま、ダッシュして、アクセル達に追いつく。
ラルが戦場を突っ切っているのを見て、バルガスも声をあげる。
「アクセル‥‥何を隠している? この際、若長と俺に包み隠さず話して貰おうか!
言えぬとあらば、こちらもそれ相応の態度に出ざるを得ないからな」
そこへ横合いから銀色の疾風が襲いかかる!
「エイリーク、貴様──か!?」
「やっかいな駒は潰すのに時間がかかるのでな。不意打ちをさせてもらった」
『無髭公』エイリーク、銀色の魔狼の姿がそこにはあった。
しかし、次の瞬間、エイリークは双手にそれぞれ持ったスクラマサクスで、自らを襲うナイフの正確な投擲を、はじき飛ばす。
しかし、3発目の短剣がエイリークの頬をかすめる。
「ハロルドか! しばし、見ない内に出来るようになったか!」
「ふ、伊達に俺と山に籠もって猪と戯れていた訳ではないからな」
バルガスの言葉にハロルドは盾を構えながら──。
「バルガス、ここは任せて」
同時に、長剣を抜き放ちエイリークに相対する。
「ふ、猪相手に大口の修行でもしたのか? ファゾルト、この小僧はお前に任せる手足を引きちぎるなり、オモチャにするなり好きにしろ」
一方、アクセル達は追いついてきたイレーネに対し、ルシアは向き直って──」
背中に手を回すと──。
「商人に喧嘩売る時はよく考えなよ?」
「何を──」
「さっきの技は見せてもらった、だがね北欧じゃあ2番目だ」
「じゃあ、1番は誰だって言うの?」
思わず唾を飲み込むイレーネ。
「さあ? 知らない。だから、言ったでしょう、特に商人相手に押し売りは利かないからって。じゃね♪」
と、ロングボートに乗り込む。
「これがさっきのゴタゴタに紛れて持ってきた、ミーミルの首の鍵だ」
逃走経路(?)であるオーディンの祠にあった、一枚の木の葉を模した、銀板がルシアの手にある。煤け汚れて、とても神体とは思えない。
「これを運命の女神──ノルンの加護を受けた──あんたと一緒に沖の所にある赤い岩、海底に眠るミーミルの首を祀った神殿の上で呪文を唱える。
『アブトル、ダムラル、オムニス、ノムニス、ベル・エス、ホリマク!
われとともにきたり、われとともに滅ぶべし』」
次の瞬間、赤い岩から閃光が一筋の柱となって天空に突き刺さった。
「さあ、これが『過去、現在、未来、好きな場所を覗きたいだけ覗ける』知恵の神ミーミルの加護の顕現だ!」
エイリークはほくそ笑んだ(ミーミル、オーディン、ロキが三位一体という事も知らぬ愚か者達が、我がそこに行くまでに僅かな未来を楽しむがいい)
「何が楽しい、エイリーク!」
ハロルドが出来た隙に鋭い打ち込みを入れる。
辛うじて、捌ききるエイリーク。
「全てだよ。全てが滑稽で楽しくてしょうがない」
海が荒れ始めた。天には雷、大地には震撃!
かくして、ミーミルの首の封印は解かれたのであった。