逆襲! ツンデレ婆さんアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
0.3万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/18〜12/22
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●本文
台湾と言えどもクリスマスは来る。祝うかどうかが問題ではない、祝えるかどうかが問題なのだ。
ここにツンデレシリーズの監督がいる。前のツンデレ作品で、役者からツンデレなお婆ちゃんって面白そうですね、と話を振られ、次はそれで行くか! と、決意し、相も変わらずツンデレとはなんぞや? と七人の侍の如く、出逢った者に石をぶつけるが如く、ツンデレ魂を確かめ合った同志をシナリオライターに据えて、制作は真っ最中、クリスマス過ぎに公開される筈の作品であったが、また‥‥シナリオライターからの音信が途絶えた──もう、これで4回目である。
いい加減教育しろよ──と、誰もが突っ込みを入れたい状況だが、突っ込みを入れて、現状がどうにかなるとは到底思えず、スタッフが個人的に知り合っていた様々な知り合いに急ぎ、メール、電話、電報、手紙、狼煙、毒電波、その他諸々の手段で、作品を事実上ゼロから造りあげられる面子を募集した。
果たして、この監督に来年はあるのか? そしてツンデレシリーズの来年の行方は!?
待て次号!
●リプレイ本文
赤崎カネ子(エマ・ゴールドウィン(fa3764))は、通称ゴッド婆さんと言われていた。
この高齢になっても化粧品会社アカサキの会長として実権を手放さないためである。
その為、息子の赤崎時人(茜屋朱鷺人(fa2712))がM&Aで会社を広げようとする動きを制止に入っていた。
「最近疲れを感じるのよね〜」
カネ子はぼやきながら、時間を作っては、時人の娘、赤崎花鳥(花鳥風月(fa4203))とデートである。
もう、孫が高校生になって、デートというお婆ちゃんも珍しいが、花鳥にしてみれば、生まれつきの習わしである。
また、カネ子は孫達への英才教育にも力を入れている。花鳥には、本人の意向もあって、テコンドーを習わせていた。
花鳥も漢らしい性格であり、風貌もカネ子の亡くなった夫に似ている為、初孫という事も相まって一番の彼女のお気に入りであった。
ところが帰り道、カネ子には義娘であり、母である異国人のスー・赤崎(ラマンドラ・アッシュ(fa4942)・女装)に関して辛くあたるのに耐えられない。愛する母と祖母、そのどちらかを選ぶ事などできやしない。
スーを想う花鳥の訴えにカネ子は愕然。
その必死さは強く心に堪え。
やがて気絶する程の痛みを誘う。
何か周囲でざわめきが聞こえたが、カネ子が気がつくと白い天井。
「あら、真田さん。今日は病棟勤務なのね」
いつも世話になっている看護士の真田南央(南央(fa4181))に向けられたカネ子の言葉は疑問形ではなく確認である。
「軽い発作でしたから──」
「そう、なの。
‥‥私。どうしたらいいかしら。
息子夫婦はきっと家の中と会社を好き勝手しだすでしょうし。
そうね。いっそ時人達の本音を引き出してやりましょう。
花鳥、グライス叔父さん(グライス・シュタイン(fa4616))には貴女が連絡して。
ええ、真田さん。僅かな時間だから」
「分かりました。病状を偽ったりすることは出来ませんが、協力します」
カネ子はそのまま酸素マスクをあて両目を閉じる。
グライスはその頃、メールで状況を確認していた。決して、タイマンではない、時人が動くのは今ではないかと、そして──アカサキがタダのブランド名に堕する事を許さなかったのだ。
「何をやっているんです? 時人義兄さん」
「グライス、今の内に婆さんの株を売買して、一山当てるんだ。アカサキブランドにはM&Aの価値があるからな」
「ここまで会社を食い破って恥ずかしくありませんか?」
「トッキー、ここに居たの?」
普段着のまま、スーが現れた。どうやら、時人と一緒に向かうつもりだったようだ。
「これはチャンスだ判るだろう。今の一瞬なら何でも出来るんだよ」
「スーと結婚したのも、そう? グランマを説得して、何度でも、何度でも。結婚の果てにあるのがこれじゃ、結婚した意味って何」
「泣くなよ──。アカサキはゴッド婆さんの元に安泰だ」
「ならば、急いでいこう。車が回してある」
グライスが手早く社の車を乗り回した。
「大丈夫よ。あなた達はお婆ちゃん好き?」
うるうるする赤崎信希(武田信希(fa3571))、そこへウェットティッシュで、南央が鼻をかませる。
信希の双子の兄弟である赤崎帯刀(帯刀橘(fa4287))がおろおろして涙を流すのを見て、南央がハンカチを取り出す。
「ぼく、お婆ちゃんが大好きだから、死んじゃいやだ!」
言って、それを押さえようとする信希。
ウィルフレッド・赤崎(ウィルフレッド(fa4286))が自分がまだ子供なのを泣いていた。
自分の薬学の知識が完璧で、年齢的にも人から認められるものなら、何か手を打てたかもしれない。だが‥‥。
異国の血を強く残したアルフ・赤崎(アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776))はバイオリンケースから愛器を取り出し、せめてもの看病にしたいが、もちろん彼にも常識はある。
バイオリンの弦だけをとりだして、まるでそこにバイオリンがあるかのような型を演じる。
しかし、南央は──。
「すみません、そろそろ面会時間が終わりますので」
と、お引き取りを願おうとするが、そこへ、グライス、時人、スーの3人が飛び込んできた。
「お願いです。一言だけ、一言だけでいいのよ、義母様に会わせて──」
と、スーが訴えかける。
「母さん」
と花鳥も言葉も添える。
「なら、ひとりだけ、ですよ」
「グライスさん──お願いするわ、私達夫婦にいかせて」
扉は音もなく開かれた
「すみません、私に日本の常識がなくて。だから、叱責されるも仕方ありませんね。でも、孫達はさすが、カネ子の孫だと言われるように、立派に成長させて見せます。だから、今はゆっくり休んでいてください‥‥今度はどんなに苛められてもめげません」
「お袋、M&Aの件は白紙に戻す。アカサキのブランド銘は永遠不滅だ」
「あら?
スーさんの言葉は意外ね。
まぁ、涙まで」
「どんな意地悪しても構わない訳ね?」
「母さん!」
「ご免なさい、そういう事だったの──黙っていてご免なさい」
と、花鳥の介添でカネ子はゆっくり起床。
スーには女神の如き、時人には悪魔の様な微笑を浮かべ。
「期待にお応えして、意地でも元気になってみせるわ」
それから婆さんチクチク時人苛めまくり。
ただスーへの言葉は僅かに柔らかく、甘えが混じるようになったとさ。
そして、カネ子退院。
南央は笑顔で花束を贈り見送る。
「お孫さん達と仲良く、身体を大事にしてくださいね」