絶妙! ツンデレ少女!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
01/16〜01/20
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●本文
台湾のとあるテレビドラマの監督は空しく電話の呼び出し音を聞き続けていたが、携帯電話のバッテリーが切れかかるに至り、時間を無駄には出来ないと悟った。
「初春からこれかよ‥‥これが、これが、これが逆境だ!!」
もう、脳の中身が彼岸を越えてしまっているのか、周囲のスタッフも遠巻きにしてみている。
「で、監督、シナリオライターまた、捕まらないんですか?」
『また』を幾たび繰り返せばいいのかは、そのスタッフは面倒くさいので数えていなかった。
とりあえず、シナリオライターには逃げられた。
完成までの日時は9日を切っている。
もはや、新春のおみくじで大吉を引き当てて、一発逆転を狙うしかない。
もはや、タイムアタックであった。スタッフ達も監督の知己のみならず、自分の知り合いにまで声をかけている。
シナリオ作りから編集までの、もちろん俳優を含む面々の募集である。
タイトルだけはインターネットや番組情報誌に載せられている。
絶妙! ツンデレ少女! である。
カット49スタート──。
●リプレイ本文
「さあ、サクサク進めましょうか」
(すでに監督が『こういう人』であることはわかっているので、そこはもう今さらツッコミません)
と、巻 長治(fa2021)は裏方コンビのトシハキク(fa0629)の肩に手を置いた。
「俺は撮影と大道具の用意をメインに参加しよう。
話の筋に合わせて必要な舞台を用意するか。
一番の目玉は魔王の城とその謁見の間になるかな。謁見の間には鏡を置いて、勇者達の様子を映し出す感じのスクリーンも兼ねる感じなのかな?」
「シナリオで合わせます」
マキさんは断言した。
しかし、中世風の城のセットはくみ上げるのはギリギリとなりそうであり、出演者の衣装はもっとギリギリになりそうであった。
それまではCG素材作成と、一同のディスカッションに費やされる。
絶妙! ツンデレ少女! のストーリーラインがマキさんにより、手早く展開される。 ドタバタファンタジードラマ。
魔王(佐武 真人(fa4028))に呪われた神子、ティア(南央(fa4181))。
本来は聖なる加護の力で、魔物の攻撃は放った本人に跳ね返す体だが、今回魔王の渾身の呪いで癒しの力と神の竪琴を奏でる能力を封じられてしまった。
加護の力は健在だが神子どころかモンスター状態。
呪いを解くため一行と魔王城を目指す。
神子は、魔王にその呪いを解かせるべく、勇者シリス(十軌サキト(fa5313))たちとともに旅をしていた。
ツンデレ神子にのんびり勇者。
お目付役の剣士、文月 舵(fa2899)演ずるエレノアに、冷静だが、苦労人の弓使いジーク(ミッシェル(fa4658))。
そしていつの間にかいた魔法使い(で実は魔王の部下)フェン(真喜志 武緒(fa4235))のパーティーは、途中で魔王の手下『キラ(七瀬紫音(fa5302)』の襲撃を受けるも、神子の『魔物の攻撃を跳ね返す能力』と、『握手』でこれを退けるなど、なんだかんだとドタバタしつつも魔王の城に到着。
魔王の側近(?)、ハシェ(倭和泉(fa5320))を一蹴し、謁見の間に乗り込む一行。
結局最後の最後でやっと勇者らしくなったシリスの活躍により、魔力が底をついた魔王はあっけなく白旗を揚げる。
無事に呪いが解けたティアは、密かに(?)想いを寄せていたシリスからの告白を受け、彼の手を握り返すが、すでにティアには『あの』握力が彼女自身のものとして身についていた。
それから──3日後、ジスの腕力的なセットのくみ上げが終了し、クランクインが強行される。
「あ〜今日も冒険日和ですねぇ」
キラののんびりとした声と共に、勇者一行は魔王の城を目指す。
「聖なる器よ、闇の力をその身に宿しては救いの音を奏でることも儘なるまい」
と魔法の遠見の鏡で勇者一行を見る魔王。
(魔王様ったら‥‥あんな神子のどこがいいのよ!
魔王様、どうか見ててくださいよ。このキラが遠見の鏡を見て、勇者達が来るのにため息を漏らす日々を終わらせるからね──そして、あの憎きティアを葬っちゃうからね)
と、リスの尻尾ふさふさのキラが唐突であるが、旅の最中の勇者を襲う。
壁の上に登って、唐突にマジックハンドがうにょ〜いとフェンをつまみ上げる。
「魔法使いは厄介よね♪」
ジークがすかさず矢を番えるが、フェンが盾になって、攻撃できない。
「行けエレノア、シリスと共に壁の上に向かえ!」
「何時までも同じ所にいないよ」
エレノアとシリスが回り込んだところで、壁から飛び降りるキラが、ティアを襲撃。
しかし、マジックハンドが逆転してキラを掴む。
神子の聖なる力である。
「そういえば、そんなのもあったよね(ぽむ)、忘れていたよ」
「さて、ボケは終わりだぜ」
自分から捕まった形のキラにジークが弓を向ける。
「魔王様!」
「戦いはよくありません。シェイクハンド、ラブ&ピース」
言ってティアはキラと握手のつもりで、アイアンクロウをかます。無論シリスに他意はない。
「はっ、又やってしまった。ご免なさい!」
言って周囲が笑い転げる内にキラは魔力で送還される。
「それにしてもシリス、何やってたの? エレノアは追いついてたわよ」
「それはですけど──」
ティアの冷たい視線がシリスに向けられる。
返す言葉のないシリス。一方──。
「キラは誰と間違えて攻撃したんでしょうね? 全く慌て者です‥‥」
フェンはそう呟くが、魔法使いを──と指定して攻撃したのだから、ジークが突っ込む余地は十分にあり、遺憾なくその毒舌を発揮した。もちろん、マキさんのシナリオ通り。(これをどうにかしろってか‥‥)
ジークはフェンの正体にひとり気付くが害意もなさそうなので便利な魔法使いということにしておく。
(大体、名前を何故しっているんだ。フェン? あんな魔法を使う『人間』は、そうそういないけどな)
ジークだけがフェンが魔法を使って送り返す現場に気づいていたのだ。
「申し訳ありません、魔王様この雪辱はいつか?」
「困った奴だ」
微笑を浮かべる一本角の魔王。
「ティア様、どうぞ焦らずに。ゆっくりと御考えください」
近くの泉で沐浴をするティアを護衛するエレノア、咄嗟の時に動けるのは、エレノアだけである。
「そうね、竪琴も弾けないし、神子としてもやっていけないわ」
「ではなく──ずばり、シリス殿の事です」
「な、何よ、あんな奴! 武勲のひとつも挙げられない、鈍い奴じゃない!」
「それでも勇者殿ですよ」
先程のティアの声に一同は駆け寄ってくる。
「な、何でもないわ!」
「そ、そうですか、それならよろしいのですが」
一礼してシリスは去っていく。
その背中に押し殺した様な声でエレノアは声をかける。
「御許しください。ティア様も色々と戸惑っていらっしゃるのでしょう」
そして、魔王の城が見えてきた。その塔の天辺にはネコミミ、ネコしっぽの魔王第一の側近『ハシェ』!
しかし、彼はマントを翻して、塔を降りていく。
天守閣では──。
「まっ、ままままままっ、まおっ、魔王さまあああああ!!!! 神子たちがきましたーー!!!」
と大騒ぎ、七転八倒しつつ報せに走る。
「シリス、エレノア──武人の本懐みせてもらうぜ、フォローはしてやる」
ジークが指示を出す。
「エレノアさん、先鋒は僕が──」
「任せた!」
ハシェが出てくると、剣が一閃、ハシェを一刀でなぎ倒す。
「傷ついて──いたわしい」
言いながらティアがハシェの尻尾を握る。
握力MAXIMUM!
止める間もなく、絶叫と共に城内に逃げ帰るハシェ。
「にぎゃああああああ!」
「‥‥かける呪いを間違ったか、まあ面白いからいいか。何だハシェ。俺はママではないぞ」
魔王が冷酷な言葉を告げる。
「魔王よ覚悟なさい。参りますよシリス殿! ジーク殿! フェン殿!」
きびきびと指示を出すエレノア。
「これさえ終われば‥‥俺の苦労が分かるかー!!」
エレノアが得物を構えると同時に、ジークが矢を番える。
シリスも魔王と対峙の時には芽生え始めた勇者の自覚により、エレノアの言葉に「おう!」と答え先頭にたち進む。
ティアに──
「神子ティアよ、あなたのために!」
とにっこり一言も忘れず。しかし、3テンポ遅れて感じるより剣で殴るような勝利。
魔王と神子が対峙する謁見の間まで、神子の正体に気が付かない。
ティア様は探している(可憐な)呪われた神子様ではない!という強固な思いこみがあるので、魔王様から直に聞かない限りは脳が拒否する。
「何処に神子が?」
「うつけが! お前はクビだ!!」
魔王はそう宣言した。
「今だ! シリス」
ジークが矢を撃ち放ち、その逃げるレンジをエレノアが剣で封じた隙を突いて、シリスの剣の一撃が入る。
倒れ伏す魔王。しかし、笑い声がする。
「まだ、やる気か魔王よ!」
「いや。まあ、もっとも呪いをかけるために結構な魔力を消耗していたのでな、あー‥‥まいった。降参。まあまあ楽しめたんでな。解いてやろう」
魔王降伏後、自分の為に戦ってくれたシリスの告白に感激。
「ティアさん、あなたが好きです。もし、もしこんな僕で良ければお付き合いしてください」
と左足跪いて、右手差出し。握られた手の握力に遅れて反応。
うっとり差し出された手を握り返すが‥‥呪いは解けてもパワー健在で惨劇。
「わたくしの為に‥‥キャ!? ど、どういうことですの!」
「ギャアアアア」
っと良い悲鳴をあげながら倒れて悶える。
なんかもう自分だめじゃないかと負の方向にマッハで進みジークに手当てしてもらいながら──。
「背負って帰れ‥‥」
──と言い出す甘ったれにシリスは株価転落。
呪いを解除したのに怒るティアに以下の説明。
「いや闇の力は取り除き、呪いも解いた。だが既にパワーが馴染んでいるようだ。
慣れればいつかは絶妙の力加減で何でも出来るように‥‥何だその顔は」
アッサリ言い切る魔王に眩い笑顔で振り向き‥‥豹変。
「前に出て下さる? ‥‥握手して差し上げますわ!!」
くわっと言い返すと魔王を追い回す。
握手からは逃げる。楽しそうにひたすら城内ダッシュ。
エレノアは最後の魔王と神子の握手追いかけっこは、そっとハンカチで涙を拭い見ないフリ。
片やジークは神子との握手で撃沈したシリスと、ついでにハシェの手当てをしながら周囲を見回し、鬼の握手を迫る神子から逃げ回る魔王というシュールな光景に乾いた笑い。
「もう帰っていいか」
「て、手当してくれ」
胃をさすり、ハシェの尻尾の包帯をチョウチョ結びにして退散するジーク。
フェンは、魔王様を追いつめるティア様を見て、魔王より魔王らしい、大魔王とも言うべき性格のティア様を主と決めて同行を願い出る。思いこみが激しいので勝手に付いていく勢いであった。
「ぜひ私の主に!」
「うん、いいねえ、実にツンデレはいいよ」
監督は完成した作品を見てそう何度も頷いた。
「まだ、懲りないんですか?」
マキさんは確認する。
「なに、この光の加減など絶妙ではないか? テレビ作品には勿体ないくらいだ」
「その辺りは全てジスの管轄です」
「まあ、確かに無理矢理、中世の城を使ったおかけで、無理が出ているが、テレビに出す作品なら百点満点だよ」
しかし、城のセットなどの中世関係の品の調達に思ったより、時間がかかったため、演出などでこれる時間が少なくなった。実際魔法を使うシーンなども一箇所しかない。
エキゾチックさを狙うか、親密感を狙うか、それは作品次第だろう。
今回は成功した部類にはいる。
ミッションコンプリート!