山手線山海経アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
フリー
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
なし
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参加人数 |
12人
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サポート |
0人
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期間 |
11/03〜11/05
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●本文
「ねえ、ダド、せっかく日本に来たんだし、ボク、オーサカとかナゴヤとか見て回りたい」
香港から来た、金髪碧眼な竜人。眉目秀麗な11才のリューキ・王(−・うぉん)は、同じく竜人である、中華系の血が露骨に出ている筋骨逞しい父親の45才、ハッタリアクション映画監督のファーナス・王(−・うぉん)にねだった。
「リューキ、ここは横浜だ。それに大阪、名古屋では遠すぎる。東京にしなさい、前の撮影で仲良くなった者もいるだろう。彼らに連れて行ってもらうといい。ダドはまだ用事が残っている。それを済ませてから、即帰国だ。あまり長逗留はできん」
「えー、東京ファンタジーランドとか、ファンタジーシーに行きたいのに? ボク」
「我が儘を言うな。遊ぶ場所は山手線内に限定だ。十分に若い者が遊べる場所がある筈だ」
「ちぇっ! ダドの意地悪、マムに電話で言いつけてやる」
「好きにしろ。だが、携帯電話を忘れるなよ」
「はい、はい」
「はいは一度だけだ」
カット2スタート。
●リプレイ本文
横浜から私鉄を乗り継いで、30分程度、そこは若者の街渋谷であった。
「ま、お前さん結構目立つ顔立ちだしな。不自然じゃない程度にゃ変装した方が良かろ」
ファーナス・王との別れ際に風羽シン(fa0154)は自前の帽子を、目立つ風貌のリューキ・王に被せている。
11才の子供には多少大きめなようだ。
「まぁ『ローマの休日』とまではいかないが、充分楽しんでもらおうじゃねぇの」
言いながらシンはポケットの中のICレコーダーのスイッチを確認する。
ラフなジャケット姿の烈飛龍(fa0225)は粘り強くファーナスと確認をしあう。
「あくまでウチの子が自分で遊びに行きたい、と言いだし。それへ皆さんが自由意志で同行するという事になるのですから、それぞれが自腹を切るのは当然でしょう」
「それはリューキの財布の範疇を超えた、行動はさせない──という事で、いいのだな」
「無論、いざとなったらキャッシュカードを使うなりなんなりの手はあるだろうが、基本的にあいつの財布の範疇で──甘やかしは良くない。もちろん、帰りの渋谷からホテルまでの電車賃くらいは持つがね」
そこへショッキングピンクの声。
「ああ‥‥会いたかったわ。会いたかったわファーナス!!」
渋谷で待っていたAAA(fa1761)がファーナスと、リューキに抱擁をかます。
「色々あるかもしれないから、メールアドレスの交換をお願いできません──?」
「そういう事なら結構」
それを皮切りに渋谷駅で待ちかまえていた一同は銘々に携帯電話の番号や、メールアドレスを交換確認しあう。
そんなエースにリューキが笑みを投げかける。
「エースさん。またよろしくお願いするね」
「リューキが笑ってる‥‥ああ、あのダイヤモンドの笑顔がアタシを狂わせるのね」
「また会ったね、リューキくん、ミンナ♪」
驚くリューキに後ろから抱きつきっ♪ をかますのはアリシア(fa1575)。最早、ロシア人顔負けだろうという一同への抱擁の嵐を吹き荒らす。
(そういや観光なんて滅多にしねえな‥‥仕事ついでにその辺見ておくかな)
ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)はフェイロンに少々重いが、トランシーバーを貸し出し、いざという時の押さえにする。
「偉くアナクロだな」
「携帯のエリアを外される──無理矢理圏外にされるという事を考えれば安い保険だろうな」
「判った借りておく」
(‥‥別行動始める前にリューキの奴を構ってやるか)。
リューキの頭を、『ぽむ』っとやろうとするが、見事な首捌きで避けられる。
「それなら、大丈夫そうか? 一応俺も見とくけど、あんま他の連中から離れんなよ?」
一方、白夜 涼乃(fa1734)は、というと。
「この辺り、行った事ないんだよね〜楽しみ、楽しみ♪ どこに連れて行ってくれるのか知らないけど、それは行ってからのお楽しみだね。え? お金? 私、財布なんて持ってきてないよ? やだな〜、女の子が男混じりで遊びに行く時はそれが基本じゃん☆ あっ、あれなんだろう」
と、とてとて、ショーウィンドゥーの前に歩き。
「あ、これ欲しいな‥‥」
お金もってそうな男性陣をじ──っと見つめ‥‥。
「え? 買ってくれるの?」
と、ニコニコと笑みを浮かべるが、獣の世界はそこまで甘くない。
20代の彼女も当然ストライクゾーンの水守竜壬(fa0104)は笑みを浮かべると、赤毛をかき分け。
「キャッシュカードの手数料くらいなら出してやるんだがな?」
「それ、女の子に言う台詞?」
「女の“子”には手を出さないようにしているんだがな」
「ふーん、じゃあ、お連れさんは?」
と、竜壬の隣にいるポップンスクワール(fa1005)に眼をやる。(どういう風に見えるのかな‥‥どきどき、お連れさんって微妙な物言いだし)
ポップンスクワール──いや、今はプライベートなので栗原ゆいか──が竜壬の側で小さな姿態を竦ませる。
「ま、前回世話になったし。それにちまっこいから、なんか見ていてほっとけないっていうかな。‥‥これはこれでプチデートみたいで悪かないだろ?」
「それはそれで構いませんけどね──で、本当に行くの駆くん?」
竜壬ののろけには付きあっていられないと、一同のマネージメントを努めるベアトリーチェ(fa0167)が、若干11才の──この一同の中では最年少記録をリューキと一緒に作っている少年──芹沢駆(fa1281)に尋ねた。
茶色い瞳を伏し目がちにしてカケルはオズオズと、地図を指す。渋谷駅からバス一本で行けるそのカップル向け? の観光スポットには『目黒寄生虫館』とあった。その他にも彼女の観光メモには、東京タワーを昼夜両方鑑賞(遠くまで見える昼間と、ライトアップされた夜間では趣きが違うだろうとの一同の判断)、あと、日本の最重要地点、秋葉原がリストアップされていた。
「大人数で東京観光も面白そうなんだけどな、リューキも有名人だ。
さすがにそいつは目立つだろうし、マズいだろうな」
シンはそう言いつつも観光はスタートした。
バス代をベリチェが回数券をまとめ買いする事で、安く上げ、そのまま寄生虫館へGO! ちなみに寄生虫館は入館料は無料である。
──2時間後、寄生虫館の地上2階から、地下1階までを制覇し、ブーメランの如く戻ってきた、渋谷のイタメシ屋でフェトチーネのサーモンマリネあえを平らげていた。
九条・運(fa0378)は一生懸命、リューキに──。
「少年、目先のアレさに誤魔化されては駄目だ。心眼を開き本質を視るんだ」
と、自分も腹一杯にしながら説得していた。
「次は東京タワー下で、醤油出し汁ベースの蕎麦を食べよう」
「うん。たまには蕎麦づくしというのも悪くないかもね」
明るく返すリューキ。
「その後、小腹が空いたらもんじゃ焼きを食べるとか、日本ならではの食べ物は幾らでもある──それに、だ」
と、背中に回した長い包みを触りながら。
「はっはっはっはっは〜〜何処の土産物屋にも木刀という物は置いてあるな〜〜、流石日本は武士の国! 俺達一般庶民にも手軽に近接戦闘武器が入手できる様にお上が計らってくれてるよ〜〜」
と、顔で笑いながらも、自分に言い聞かせるは、後は東京タワーに、秋葉原との観光だ! 初めての所は心を空にして思うままに感じればさまざまな発見がある!
というわけで一見退屈そうな所に行く事になっても、少年には心を空にしてもらい感じてもらおう。
まあ、運自身も自分も少年だし、上京してきた身では何があっても、心を空にしなくてはやっていけないだろう。
片や達観し──。
(ま、たまには自分の街を別角度から見て回るのも悪くはないし、この街を好きになってもらうのも良い事だ)
と、ひとりごちるは、護衛組に回った亜真音ひろみ(fa1339)‥‥本業はリベライトに所属しているバンドのヴォーカルだが、長身といい見事な骨相といい、アクションスターと間違えられるのも無理はない派手さだった。
そんな彼女も食事を平らげる。
まずは昼の東京タワーに渋谷から山手線で逆時計回りで向かう一同。
「へー、途中までしか行けないんだ?」
展覧室から周囲数百キロを睥睨するも、リューキはあまり、感慨はないようであった。そんなリューキを挑発する訳ではなく、カケルはボソリと。
「いくら何でも、ここから上に行こうなんて言わないよね?」
(今回は一緒に楽しむけど、次に会うときは絶対僕のほうが売れてて、人集まっちゃって一緒に観光なんてできないんだから、なんて実はちょっと思ってるけど、今は負けてるのが分かってて癪だから言えないよね)。
拳で掌を打つリューキ。
「こらこら、無理するなリューキ」
フェイロンがふたりの頭を抑える。
その後、地上1階の水族館を見て回り、リューキが巨大なアロワナを欲しそうに見ているが、検疫の関係で、どうやっても、まともには香港には持ち帰れそうにないのを一同で説得。
僅かな苦笑を浮かべながらフェイロンはつい。
「俺には子供が居ないが、子供を持ったらきっとこんな風に振り回されるんだろうな。これもまたいい経験だな」
さすがに秋葉原でメイドが堂々とビラを配っているのを見て、日本の“MOE”文化にカルチャーショックを感じるリューキ。
「あ、シアもビラ、貰ってくれば良かった。で、今度の興行、トラノアナ宜しくお願いしまーす☆ ってやるの。でも同人誌屋さんだと思われちゃうんだろーなー、きっと」
自分の今、着込んでいるひらひらした黒服を見下ろしながら呟くシア。
カルチャーショックから立ち直ったリューキが逆に興がってか、メイド喫茶を一巡りした後、一同は相当サイフに消耗感を感じる。
その為、遊びは日本発祥のカラオケに方針を転換。
晩飯はサイフに優しくをモットーにして、運が言い出しっぺな、もんじゃ焼きを食べ、再び夜の東京タワーへと。
山手線から、ライトアップされた東京タワーを見てリューキは
「うわー、クリスマスツリーみたいだね」
「冬が近いからだもんね」
「あー、それ、シアの台詞!」
カケルが聞いて来たような事を言う。ちなみにネタの発源地はシアである。
ちなみに、自分は9歳とプロフィールになっているシアの方が、11歳とプロフィールではなっているカケルより、身長が10センチも高いが、これは売り出しの際、シアがここまで大きくなるとは思われていなかったのだろう。
一方、ヘヴィは『荷物持ちもやるぜ』と言ったため、リューキの買った免税店での荷物持ちをやる羽目になっている。
電気器具は結構莫迦にならず、ひろみなどに手伝って貰っている羽目になる。
「やれやれ、面目ない所見せたようだ」
「貸しはいつか返して貰うからね」
「クリスマスか、正月に返してやろうか?」
「‥‥やっぱり我慢できないわ。プリクラ! プリクラ一緒に撮りましょうリューキ! 東京タワー限定でなくてもいいから」
エースの声に同意するリューキ。
光の森の中に雄々しくそびえ立つモミの木を見ながら、一同は観光の終焉を予感するのであった。
冬が始まる──。