WarCry3−2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
12人
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サポート |
0人
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期間 |
01/21〜01/25
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●本文
「ねえ、ダド?」
映画監督ファーナス・王に、息子のリューキ・王は仕事部屋で尋ねた。
「ん? 何だリューキ」
「いや、この後の映画の予定──WarCryじゃないよ、その次回作の予定立っているの?」
気まずい沈黙が流れた。その空気を打ち破るようにファーンは手を打って。
「そうだな、最近まで2006年だったから、考えていなかったな。ほら、日本の諺でいうだろう。来年の話をすると鬼が笑う‥‥って」
まあ、今年になってから13日も経ったので、考えても良い頃合いだろう、とファーナスは続けた。
「とりあえず、アジアが舞台、獣化オッケーな世界設定、大抵のことはノリで許せると言った所か?」
「アバウトだね‥‥ダド」
「臨機応変と言ってくれ──だが、その前にWarCryが残っている。ルークが真っ先に死ぬというのは案としてはびっくりしたが、後の収拾をつけてくれる案を皆が出すならそれも良かろう。まあ、冒険商人が悪党になってしまう訳だが、何だか判らんがとにかく良し──」
こうしてWarCry3−2のリハーサルが始まるのであった。
●リプレイ本文
「野郎共! ここであのくずどもを海の藻屑にしなければ、わが一族の名折れだぞ! 気合入れていけ!」
赤毛のバルガスを代役で演じる、伊藤達朗(fa5367))がハロルドと共に海底神殿に我先にと突入しようとする、ロングシップと艦隊戦を繰り広げる。
「『赤毛』の!」
エイリーク(ルーク)がサクスを構えて迫ってくる。双頭斧を不敵に構えて、バルガスが、若長ハロルドに向かい叫ぶ。
「若長は──神殿に先に、俺はこの白ずくめをあしらっておきますわ」
「この場は任せた──ラルが心配だ!」
「吠えていられるのはいつまでかな? バルガス」
「若長! 前向きに進んでください、振り返らずに!」
サクスと双頭斧のぶつかる音を背に、ハロルドは荒れ狂う自然の真ん中へと、ロングシップを強行突破させた。
雷光と波頭の寄せる中、海底からリヴァイアサンの如くせり上がってきたパルテノン神殿を百倍にスケールアップした様な海底神殿へと、冒険商人のロングシップが風を切り走っていく。
そのロングシップに乗せられたラル(燐 ブラックフェンリル(fa1163))は、己を強引に連れてきたルシア(新井久万莉(fa4768))に問うた──いや、運命の渦に翻弄されるラルにはルシアとその相棒に問う事しか許されなかったのだ。
「何が目的? 何のために」
「うっさいねえ、冒険商人がお宝求めて何が悪いのさ、あんたは必要だから連れてきた、ただそれだけ」
「何故‥‥私にそれを語るのか」
「聞いたから答えてやっただけだろう? 答えを聞きたくないなら喋るな、口を開くな」
ラルの望んだ答えではなかった。
皆が戦い、自分だけが戦う覚悟もなく取り残されて、それでも世界は自分に意思の決定を迫ってくる。
生臭い、潮の匂いのする、この場所で。
(──私にはどんな想いと願いがあるのだろう)
そして、神殿の最奥部、しわくちゃのミイラの首が安置された──静謐な広間にたどり着いた。
そして、唐突にミイラがラル達の方を向いて、喋り出す。
「幾星霜経ったものか──我はミーミル。智慧の守護者、過去、現在、未来好きなものを写しだそう」
「俺の望む未来はー!」
槍を構えて唐突に走り寄って割り込む声、赤目のウルベルト(スラッジ(fa4773))であった。後ろから悠然と、エイリークが足を踏み出す。
「痴れ者が! 凡夫にミーミルの首は御せぬ!」
「やってみなきゃ、判らないだろうが! 俺の見たい未来は俺がバイキングの王になり──」
そして、ミーミルの首に触れるウルベルトは全身を青い雷に包まれ、髪を逆立て、白目を剥く。
「見えるー! 見える、俺はバイキングの絶対王だー!」
消し炭となってまでウルベルトの見た夢は誰にも共有されなかった。
「愚かな加護無き身では──到底御せぬ、警告したのに──使えない奴だ。さあ、浅ましい商人ども我と共に来い」
「これ以上ラルに辛い思いはさせない!」
「ハロルド!」
華奢な少年が剣を構えてエイリークの後ろから立ちはだかった。
「ふ、小僧が、笑わせる」
そこへ、飛んでくる巨大な双頭斧。
軽くエイリークの首をすっ飛ばした。
ルークが背中を割るのは美しくない、とファーナスに直談判した結果である。
「ば、馬鹿な──ロキの加護を得た私の力が無ければ、ミーミルの首は制御できぬ」
「ぼくはそんな力はいらない。バルガス! バルガスだろ、今のは?」
「若長」
痺れ薬を塗られたサクスで動きを封じられ、瀕死のバルガスがやってきた。
「もう、持ちません──お目付役もこれまでです。良い生涯でした。何より最後にエイリークを倒せたのは‥‥ああ、ヴァルキリーが呼んでいる」
「然らば、バルガス──ヴァルハラで会おう! ルシアさん、ラルさんを返して貰おう。彼女は物じゃない。確かに見つけたのはあなた達かもしれないけれど──ラルさんが拒むなら、ぼくは剣を以てでも、ラルさんの自由を購おう!」
「異教徒らが!」
既にルシアの片割れと戦い、満身創痍、服の合間から女性らしさを見せるイレーネ(ランディ・ランドルフ(fa4558))が無手の構えで現れた。
「教皇庁の認める奇跡にその様なものはない。存在しないものは力ずくでも消滅する、まずはその魔女だ!」
ラルに向かい、その凶拳を振るうイレーネ、しかし、その前にルシアが立ちふさがる。 まともにアッパーを食らう形になり、ルシアは倒れ伏す。
「これが神の正義というものだ! 異教の輩よ。今こそ天罰の地上代行の刻来たれり!!」
「ルシアさん‥‥なんで庇ったの‥‥」
「影が見えたのさ──ミーミルの首の影響かね? ──の」
妹の名を最期に呟くとルシアは息絶えた。
「さあ、小僧よ、改宗するなら、そこの肌の黒い女を斬れば洗礼を認める、さもなくば──」
「断る!」
ハロルドは剣を振るい。イレーネは一刀の元に切り倒される。
「キリスト万歳!」
最早、生きているのはラルとハロルドのみ。
「ラルさん──君はどうしたい?」
ハロルドからの問いかけ。
ラルは微笑んだ。
「過去も未来も、決まっていない。人の心の有り様で幾らでも変わる。きっと、ハロルドさんを見て最初に目にした血塗れの幻像は、猪狩りから帰ってきた時の幻像。私がその今を認めないから、気づけなかっただけ。ミーミルの首は触れるだけで災いを起こす──」「では、どうすれば?」
そう言えば、ルシアが相棒と何かの資料を持っていて、世界樹の葉を模した呪具をこの儀式の為に準備していたはず。
ルシアが握り締めていた呪具にラルは祈った。
──私にはどんな想いと願いがあるのだろう? でも、ひとつだけあるかもしれない‥‥それは。
「どうか、みんなが幸せであります様に」
ラルの祈りと共にミーミルの首が崩壊し、海底神殿が消滅していく。互いに首魁なく乱戦模様の海戦はハロルドの帰還で一気に形勢が変わる。
エイリークの手勢は算無く逃げていく。
白夜のフィヨルドにハロルドを迎えての凱歌が上がった。
「バルガスの斧にかけて誓おう。今から若長ではなく、族長であると──もう、幼年期は過ぎたのだ」
ハロルドの宣言と共に、伝承から、歴史へと舞台の有り様は変わっていく。
戦の雄叫びが上がった。