WarCry3−3アジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
21.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/06〜02/20
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●本文
「ねえ、ダド?」
と、父親ファーナス・王に甘えるリューキ・王。ちなみにリューキの誕生日は3月14日であり、バレンタインデーのお返しに関する絶対の防壁となっている。
「何だリューキ?」
「次回作の構想立っていないんだよね?」
「ああ、この映画と香港山海経で手一杯だったからな。ま、生き急ぎすぎたようだ。四十を超えたのだから、もう少し落ち着かなくては。たまにオーパーツハントをするのも悪くはない。さて〜あれから何年経った事か」
と、ファーンは過去を思い出すかのようにゆっくりと首を振る。
ともあれ、WarCryは浮上した海底神殿でのよつ巴の戦いが予想される。誰かが立ててくれなければリューキ演じる若長ハロルドの出番は少ないだろう。
一応、これでも主役なのだから、全員が自分の役だけに拘泥せず、互いを立てるように演技する『当たり前』の事が出来なければ、互いに噛み合って、最後に忘れ去られた様な勢力がぶつかりあって、残ったものがヒロインと『ミーミルの首』を左右するという構図になるだろう。
ファーンは前回のリハーサルを見て、それを危惧していた。
「しかし、ルークの奴も自分の首をすっ飛ばしてくれとは──実はやつはマゾだったか?」
そんなぼやきとは裏腹にラストシーンの撮影が始まる。
カット45スタート。
●リプレイ本文
沖から古代より眠りし神殿が浮上する。
その神話的な威容を見ても尚、戦いの手を休めない『赤毛のバルガス(烈飛龍(fa0225))』!
「野郎共! ここであのくずどもを海の藻屑にしなければ、わが一族の名折れだぞ! 気合入れていけ!
命を惜しむな! 名こそ惜しめ!
ヴァルハラへの道は俺たちに約束されて居るぞ!」
「ゆるさん、エイリークめ──俺の友を‥‥よくも。俺の家族をよくもよくも──バッフィンランド族をよくもよくもよくも!」
先程の襲撃で妻子の死を看取った、ムント伊藤達朗(fa5367))、この──強い茶色の顎髭を蓄え、頬に古い刀傷が走っている──バッフィンランド族の中堅所の武人はベルセルク──盾の縁を囓る者として、大槍の脇に添えた、丸く木目が判らないように鮮やかに染め上げられた盾の縁を囓っていた。
尚、盾が鮮やかに染め上げられているのは、単に装飾の為ではない。
木目に水平に斬れば、鮮やかに一刀両断されるが、木目に垂直の場合、10メートル上から落とした斧の刃でも割る事は能わないのである。
つまり木目が読めるか否かで盾の価値は大きく変わるのだ。
「エイリーク! 許さんぞ! この命に代えてもきさまらを討ち滅ぼす!」
「ムント、無念の思いはぼくも同じです──大神オーディンも照覧あれ! 我が剣がエイリークの腑を引き摺り出す様を!!」
怒りに燃えて黄金の柄の剣に誓いを立てるハロルド少年(リューキ・王(fz1001))。
その血気をバルガスは窘める。
「若長もムント殿も力を無駄にするな! その力はあの口にするのも汚らわしい、『あの』くそ野郎共に当たるまで内に漲らせておけ! 此処にいる誰もがふたりと同じ気持ちだ!」
バルガスも自分と同じ想いと気付き、ムントも同調して同胞を叱咤する。
「ミーミルの首が何だか判らない──しかし、黙ってアクセルの奴や、エイリークに渡して、ろくな事になるとは思わねえ──世界のためとかいったご託はいらない、アクセルとルシアが連れ去っていったラルに笑顔を取り戻す、それだけでも俺たちは戦う意味がある。いや!? それで十分じゃないか?」
飛びかかるエイリークの配下を大槍で突き倒しながら、ムントが一世一代の大弁舌を振るう。
「いくぞ、みんな! 見た事もなく、これからも会う事のないだろう、どこかの誰かの微笑みのために──叫べ『War──Cry』!!」
「ウォー!」
「若長万歳!」
「狼に死を!」
「バッフィンランド族の勇者達──皆の者、我に続け!」
ハロルド少年がバッフィンランド族の象徴である黄金の林檎を染め抜いた旗を旗艦に掲揚させると、バッフィンランド族のロングシップは楔上に形勢を立て直す。
バイキングのロングシップはこの時代だけあって逆風でも風を切って風上に回れる三角帆ではなく、四角帆であるが、同時代の多種の船と違って、帆に穴を空けてロープを通す事で同様の逆風への対応能力を得ている。
これが最初の戦い──イギリス沖の戦い──でも乱戦に持ち込めた一因であった。
「やったぞルシア!! 一番乗りだ!」
ラル(燐 ブラックフェンリル(fa1163))を拉致してきた山師もとい冒険商人のアクセル(九条・運(fa0378))は神殿にロングシップを乗り上げさせて強引に嵐と雷をやり過ごし、後先考えず(正確には後続連中のロングシップを奪ってトンズラするか、さもなくば絶対的な何かを得ているだろう、というギャンブルは漠然と考えていたが)、神殿への一番乗りを果たした。
そんなアクセルに相棒のルシア(新井久万莉(fa4768))が、絶叫する!
「アクセル! 後ろ! 危ないって!」
と、ハリウッドの殺人アンドロイドよろしく執念深く艫にしがみついてやってきていた、イレーネ(ランディ・ランドルフ(fa4558))が、海坊主の様に濡れそぼった身体を現す。
「これだから、金勘定の判らない信仰屋っていうのはっ!」
アクセルが飛びかかってきたイレーネの打撃を受けきれず、そのまま地面に転がる。
「褒められたと思っておこう!」
イレーネが不敵に肩幅に足を開き、拳を胸に上下に重ねる形の型を取る。転がりながらもアクセルはブロードソードとジャマルハルを抜き放つ。
どちらも黄金の龍、東洋における王権の象徴である所の象眼が施されている。久万莉会心の力作である。
「ルシア、ラルを連れて先に行け! 俺はこいつの相手をする」
「アクセル‥‥さん?」
ラルが心細げに言葉を発する。
「ほら、行くんだよ! アクセルは必ず来る、あいつはそういう男だよ!」
「一体、私はどうすれば──」
「──言う事を聞くんだよ。そうしたら、分け前をやってもいい。もっとも、ミーミルの首を分ける訳にはいかないけどね」
彼女たちの背後で激しい戦いが繰り広げられていた。
冷水に体を浸し、体力を損なっているものの、イレーネは拳での打撃主体の格闘戦。アクセルに対して利があるとするば、アクセルの体勢がまだ崩れている事だろう。
「かくあれかし!」
激しい打撃を浴びせていくが、刃物で受けられれば、自分の拳も只では済まない。
双刀の龍、それが今のアクセルの姿であった。
「ふ、勝手につぶし合いをしている様だな、キリスト教徒など勝手に殉教していればいいし、商人風情に『ミーミルの首』の何たるか等判るはずもあるまい」
銀髪を暴風に靡かせた『エイリーク(ルーク)』がもっとも頼りになる配下──。
「義兄弟! 連中は任せたぜ! ワシは例のお宝を狙う!!」
スレッジハマーを構えた『ファゾルト(モヒカン(fa2944))』と槍を携えた『赤目のウルベルト(スラッジ(fa4773))』──に言葉を向ける。
「そうは上手く行くかな」
逆光を浴びて颯爽と登場するバルガス、ハロルド少年、ムント。
「ちょうどいい、金髪の小僧、お前の首をぶら下げて、ミーミルの首の代わりにしたいところだと丁度思っていたところだ」
ウルベルトが赤目を爛々と光らせて、遠い間合いから一気に踏み込んで、ハロルド少年に一撃を浴びせる。
盾で弾き、執念の一撃を辛うじて致命打から逸らすハロルド少年。
逆に抜きはなっていたブロードソードを構えて一呼吸で間合いを侵略しようとするが、何度も同じ手でやられるウルベルトではない。
逆手に持った槍の柄でハロルド少年を突きを入れ、間合い取りの牽制とする。
一瞬の攻防に割って入るは『赤毛のバルガス』であった。
「若長、こんな所で関わっていては、大事に触ります、ここはこのバルガスにお任せを」「バルガス殿、俺も戦わせて貰うぞ、ファゾルト──貴様を討つ」
「そんな、相手していられるか、エイリーク様、お先にお宝を確保しておきます」
既に距離を取っていたファゾルトの声が響く。
「『赤毛の──』、貴様とは一度決着をつける必要があると思っていた所だ」
不敵にスクラマサクスを抜き放つエイリーク。蛇が絡みついた様な刀紋はバイキング独自の鍛え方の証し。バイキング、いやゲルマン民族は剣を蛇に例える事が多くあった。
「ファゾルトの邪魔をするなら──戦いあるのみ、いや丁度良いからまとめて潰す」
ウルベルトがムントと向かい合う。ムントもまた、黄色の肌の元、光の神『バルドル』の加護を受けている身であった。
「長、後で行きますから、ちっと待っていてくださいよ」
言って赤毛のバルガスが双頭斧を構えて、エイリークに斬撃を浴びせようとする。鋭い火花が刹那、神殿の中を照らす。
ハロルド少年がファゾルトの後ろを追いかける中、ムントも自らの狂気を完全に放出し、文字通りの狂戦士となって、自分の追跡行の邪魔をするウルベルトへと突きかかっていった。技巧も何もない。ただ本能だけの戦い。
しかし、決定的な差はあった。槍と大槍の差である。ムントの方がリーチが長く、興奮状態で疲労を感じずに重い武器を振るえるとしても、ウルベルトの方が狡猾なのだ、激情に駆られたムントに対し、海底の底に在ったときから生えていた海草を目つぶし代わりに蹴り上げる。
そんなものは無視して、防御しなかった代償として、視界を遮った所を一撃して、致命打を浴びせるウルベルト。しかし、狂気と引き替えのカンでムントの大槍はウルベルトを貫いていた。
「ぐはっ!」
「息子達よ、お前よ見たか──父は、敵は取ったぞ‥‥先にヴァルハラで待ってますぜ、バルガスの旦那‥‥」
ムントは正気を取りもどし、涙が止めどもなく流れ出る血を洗い流していく。
口の端にのぼせるは今は亡き妻子の名前。彼らは戦士ではないので、オーディンの待つヴァルハラには行かず、霧の国『ニヴルハイム』で永久の眠りにつく。
しかし、ヴァルハラの扉は未だ、ウルベルトの前には開かれなかった。臓腑をこねくり回され、それでも苦痛だけが生きている事を教える。
血と共に吐き出す言葉は──。
「エイリーク様!」
「良くやった、後でヴァルハラに送ってやる。この赤毛を送ってからな!」
「お喋りが過ぎるんじゃないか? ええ、無髭公よ、それとも野良犬公の方がいいかい? 自分の影に尻尾を振っている野良犬にな!」
「ファゾルトに家族や身内を殺されて逆上しているのはお前も同じ、失ったものが多いほど強くなる? それでは最初から何も持たず生まれてきた者はどうする?」
「貴様と問答する気はない! 貴様と語り合うのはこの斧だけだ」
「ふん──認めたくはないが‥‥確かに貴様の腕力には敬意を表さざるを得ないようだ──しかし、それだけで私は倒せんよ!」
「赤毛のバルガスの名に掛けて! 行かせないぜ! 若長はいずれ全バイキングの頂点にも立たれる逸材。此処で散らせる訳にはいかないんでな。
貴様には此処で自らの罪を償って貰おうか。我がバッフィンランド族の無辜の民の命貴様らの薄汚い命では到底引き替える事も出来ないがな。戦士は闘争本能こそ全て!」
「私は超支配欲によって立っている。神だろうが、運命だろうが、我が膝元に屈させる力をな。我が守護神はロキ──神々の道化よ、そして、神々の黄昏をもたらす者。神話の筋書き通り、バルドルは倒され──スルトは解き放たれた。世界樹は焼き払われ全てをリセットする時が来たのだ」
その今までの戦いの中でエイリークが浴びた返り血、それが彼自身の顔を覆っていた白粉を溶かしていく。
「貴様も神の加護を──ならば一層の事、ミーミルの首を渡すわけにはいかない、チュールよ加護を、我が守護神、隻腕のチュールよ!」
双頭斧を大上段に振りかぶり、そのままエイリーク目がけて真っ直ぐに振り下ろす。
技も精神論もない、ただ純粋な腕力に全ての命運を賭けた一撃である。
しかし、エイリークは超人的なサクス捌きでその攻撃を受け流しきった。
空いた下段から非人間的な体の柔軟さで膝蹴りを腹部に叩き込む。
「げほっ! ハロルド様!」
「ヴァルハラに先に行くのは貴様のようだな! バルガス」
そして、エイリークの無慈悲なスクラマサクスの一撃がバルガスの命脈を絶ち斬る。
一方で、アクセルとイレーネの攻防も最期を迎えていた。
イレーネの僧衣がブロードソードの一撃により裂かれてしまい、形の良い乳房が姿を半ば現していた。
「ひょっとして──女だったのか?」
「キリストの栄光に殉じる身に男も女もない!」
「うわー、天然培養の本物の狂信者? 初めて見た! サインしてもらえる!?」
「戯れ言を!」
繰り出す拳を剣の刃で真っ向から受けるアクセル。微動だにしない中、イレーネの血だけが落ちていく。
「もう見切った。しかし、やっぱ女だったのか‥‥たく‥‥どうして俺に関わる女はタフなヤツばっかなんだよ。まあ、ラルは女の子だし、ノーカウント」
言いながらも風のような連打を浴びせるアクセル。
反撃の隙も与えられないまま、イレーネは全身を朱に染めて倒れ伏した。
「やれやれ、ミーミルの首も急がないと、バイキングどもに奪われち──‥‥」
後ろからしがみついたイレーネがそのまま、海へとアクセルを自分事ごと沈める。
ただただ、神への賛歌を口ずさみながら──。
──かくあれかし。
「嘘、アクセルが負けたっての!?」
「あの男は海に沈めた」
入り組んだ回廊を偶然、最短ルートで追ってきた、イレーネの姿を見て、ルシアは叫ぶ。中央の広間。絢爛であったろう日々を思わせる──その中心にそれはあった。
しわくちゃの老爺の頭部である。大きさは3メートル程もあろうか? そして、伸びた髭と髪は広間を隈無く埋め尽くしていた。
ラルに問答無用とばかりに、肘鉄で脳天を砕こうとするイレーネ。
しかし、そこへバイキングスパイクシールドをフリスビーの如く投げつけられ、はじき飛ばされ、気絶するイレーネ。余波を食らってラルにも襲いかかるが、ルシアはそれを庇い倒れ伏す。
ミーミルの首の影響で自分がこうするだろうという幻視が見え、凶器からラルを庇い今度こそ倒れるルシア。
「ドジ‥‥踏んだね、こうなるって見えちゃったん‥‥だ。
──ごめ‥‥ん、エレ‥‥ナ」
と、生き別れの妹の名を呟きながら倒れ伏す。そのシールドを投げたのはファゾルトであった。
「女がふたりか? いや、3人か!! これは楽しみだ──どちらから抱いて欲しい? 同時でも構わないぞ! むしろ、希望!!」
怯えるラル。
そして、広間に足を踏み入れた瞬間──無数のヴィジョンがファゾルトの脳裏をよぎっていく。死の目前に見えるという走馬燈の様に。しかし、流れ込んでくるヴィジョンは彼の支配欲を刺激するものであった。
「グふふふふ‥‥‥‥げっへっへっへっへ!!! ワシが世界大帝ファゾルド様だ!」
「げげっ!」
「ふ、愚か者が──」
別の廊下から現れるエイリーク。ミーミルの首から生えた髪を踏んでも何の変化もない。
「エイリーク、貴様のような小悪党をやっていた時代とは違うのだよ!」
「愚かな──しかし、スルトの加護が無ければ燃え尽きていたろうな」
「ニヴルハイムへ行け、3年間氷漬けにしてやる〜!」
逝った表情で逝った言動を繰り返し、エイリークに下克上を仕掛けるが、逆撃を食らい、スパイクシールドの木目を読まれ、呆気なく心臓にサクスを立てられるファゾルド。
「な‥‥‥‥ワ‥‥は‥‥世界‥‥‥‥様だ‥‥‥‥」
心臓が脈打つ度に血が流れていく。
「さて、これでミーミルの首を制する事が出来るのは私だけの様だな──」
「そうはさせない!」
ハロルド少年が両手にブロードソードを構えてエイリークの後ろから断固たる意思表明をする。
「まさか、相手になるとでも思っているのか? 神の加護なきその非力な身で」
「神の加護はなくても意志の力で未来は変えられる──いや、切り開かなくちゃいけないんだ!!」
「口だけは達者の様だな小僧」
言って、飛びかかるエイリーク。
「だが、私と戦うには──未熟」
「未熟でも戦わなくてはならない時がある! 愛する人の為、守って散っていった仲間の御霊に応えるため、戦士としての矜持の為、お前にはそのみっつ全てが当てはまる。だから、退かない!」
「言うようになったな、とはいえ──だ。口先だけで私を圧倒しようというのは正しい選択かな?」
「正しいというだけで選べない選択だってある!」
言って、スクラマサクスがエイリークの操るままに、鎖かたびらで覆われていない、ハロルド少年の顔周りを狙っていく。
身長差もあり、文字通り振り下ろされていく。
両手で剣を持つ事で、体重差のある一撃を何とか捌いていくハロルド少年。
しかし、最初からエイリークの目的はミーミルの首の体毛の範囲内にハロルド少年を追いつめる事であった。
自分はロキの加護があり無事でも、単なるバイキングのハロルドには加護は降りていない。
そう、唯一、加護が降りていない存在がハロルド少年であったのだ。
何という運命の皮肉だろうか?
しかし、ファゾルトの血の匂いを背中に感じながら、ハロルド少年は乾坤一擲の一撃を浴びせる。
腰だめにして突きに入る。
通常なら、この程度の攻撃、体重差で十分凌げる筈であった。
──しかし、バルガスとの戦いで知らずに追っていた負傷の蓄積が、気迫に押されて無視できない程のダメージとなってエイリークを襲う。
激しい返り血がハロルド少年に浴びる。それはラルが以前見た幻視と同じであった。ただ、違うのはハロルドが無事な事。
「ラル‥‥さん?」
「はーはっはっは!」
そこへウルベルトが最後の力を振り絞って現れ、ミーミルの首を目指した。
髪の毛を踏んだ刹那!
「ミーミルよ! 俺に力をくれ!!
ハロルドさえ倒せればなんだってくれてやるっ!!
‥‥は! はは!? 力が流れ込んでくる!! 見える、見えるぞ」
最後は炎に包まれ絶叫しながらラルの方へ手を延ばし崩れ去る。ウルベルト。
「あれ? ルシアさんは?」
彼女の姿はなく、横たわっていた場所にはアクセルのブロードソードが突き立っていた。
「この力、封じるべきだと思います」
ラルがようやく自己主張した。
「ミーミルの恒久的に封印するために神殿に残ります。
きっと帰るから待っていて」
彼女の意志とシンクロするかのように神殿内で倒れ伏した全てのものが息を吹き返した。
「もう、殺し合わないで。この首の力は封じました。今の癒しの力で殆どの力を使いました。後は海に沈めるだけの力しか残っていません」
「私は諦めない──いつか、ミーミルの首の封印は必ず解く」
エイリークは宣言して、部下達を連れて海へと戻った。
ルシアも現れて──。
「もうミーミルの首も使えないし争う事はないさ。土産がないのは残念だけどね?」
「そんな事はないぜ。お疲れ〜御蔭様で首尾通り目的達成できたぜ」
とアクセルは神殿から持ち出した宝を見せびらかしながら道化る。
急に真面目な顔になって集落から持ち出した銀板をハロルドに放り投げ──。
「返すぜ、そいつが有ればお前の会いたい人が会いに来る道標になる」
と、自分のロングシップを海に出し、最後に呟く。
「それは本来そういう物だ」
そしてルシアは何の手土産も無いことにがっかりしていたら、アクセルがお宝をくすねて来ていた事に感激。抱きついて頬にキス!
ただし、あっさり離れたその手には一番いいお宝が握られてたり、それをラルに放り投げて。
「餞別だよ。最後はよく頑張ったね!
いろいろあったけど楽しかったよ。また何か儲け話があったら参上するから。じゃね♪」
後ろでぎゃあぎゃあ言ってるアクセルと共に遠ざかっていく。
「待て!! 貴様らは絶対ゆるさん、地の果て、海の果てまで追いつめる!」
イレーネは生き延びた末に冒険商人達を追撃し続ける。
それから、数ヶ月、春になって、復興した集落で長として働いているハロルド少年、いやハロルドは海の見える丘であの出来事を想う。
ルシアがイレーネに追っかけられながら、アクセルと共に集落に訪れ、、持ち出した宝が鳴ってると言って、その言葉の次の瞬間、出現した光と共にラルは『帰って』きた。
「これが私の答えだよ、ただいま」
春に咲き始める花の如く、ラルは笑顔で再会するのであった。
WarCry−END