徹底! ツンデレ少女!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.5万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
02/10〜02/12
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●本文
台湾の某監督は涙でしょっぱいコーヒーを飲んでいた。
「ちくしょー! どいつもこいつも俺にシナリオタイトルだけ押しつけて、逃げやがってー!」
マスターは悠然と監督の前に角砂糖を滑らせ──。
「まあ、いいんじゃないですか? 大抵シナリオは上手くいっているんでしょう? 急ぎの仕事で」
「だが、質がいいというだけで選べない選択だってある──実際問題、一回落としているし」
そんな監督を降板させない局も相応に行き詰まっているのだろう。マスターは細めた目でそんなメッセージを訴える。
そして、タイトルだけは決定していた『徹底! ツンデレ少女!』である。
もう、TV雑誌(もはや廃れ行く感のあるが)で取り返しのつかない程、宣伝を打っている。
もちろん、この監督の自信作としてである。ツンデレを徹底したらどうなるか? その深遠なる課題にこの監督は挑もうというのだ。
しかし、人がいない。こればかりは動かせない真実。
監督がこうしてコーヒーに酔っている内にスタッフは知り合いに声をかけまくっているのだ。
カット47スタート。
●リプレイ本文
日々多忙なベスとは日頃からメールのやり取り。そして今日も。
「確か今日は歌番組の収録があるっていったな。そろそろ終わった頃か‥‥?」
頃合を見て、皮ジャンから携帯を取り出し、ベス(fa0877)へメールを送る。『二十一時五十分頃にいつものライヴ会場『スムースクリミナル』の裏口でな。そこで待ってる。三十分以上遅れるなよ?』
という赤毛のミュージシャンの卵である若者、そして、ベスとは微妙な立ち位置の『関係者』テル(瑛椰 翼(fa5442))からのメールを、ベスは近くのアイドルに見られて───。
「いいなぁ私もテルにチョコをあげようかな」
最近売り出し中のライバルのやっかみ半分のその言葉にベスはいきり立ち、
「あなたがチョコ渡すなら、ライバルとして黙ってられないんだから!
あたしだってテルにチョコあげるわよっ!!」
と発止とにらみ合いの形に入る。
「別にライバルって、ほら日本には義理とか本命とか色々あげるわよ」
「やらせない! 貴女になんか! 本命でも! 義理でも!! コップの底の欠片でも!!!」
ベス自身の言動とか支離滅裂だがそれに気付かない程動転してるという事らしい(笑)という事にしておこう。
そこに空気を読めないハルナ(春雨サラダ(fa3516))というスタイリストさんが、更に火に油を注ぐ。
「でもさ、彼、たくさんチョコとかもらうんじゃない‥‥?」
「うっきー! ‥‥‥‥オフ30分在ったわね、チョコ買いにちょっと街に出てくるわ鳴美!」
若くしてベスのトップマネージャーである飛弾鳴美(ひだ・なるみ/ブリッツ・アスカ(fa2321))が笑顔で送り出す。
「やれやれ、騒動を起こしそうだな」
予想通り、ベスが繁華街に出ると騒動になった。
「本物?」
「ベスさーん」
「写メール撮る、今が撮影の刻だ!」
「握手してくださいー、出来ればサインも!」
「L・O・V・Eベース、ギブミーチョコレート!!」
人が人を呼び、あっという間に半分がた暴動状態になる。
そこへ大型バイクが横滑りに車体を倒しながら滑り込んできた。
まるで、出エジプト記のモーゼの奇跡のように人波が割れていく。
ベスにとって敵か味方か(連れ戻しにきたのか、逃がしてくれるのか)不明のまま、
ヘルメット(インカムつき)を軽く放って渡し、後部座席を指して───。
「乗れ」
───と一言。
正体はベスのマネージャーの鳴美である。しかし、そんな事はベスは気が回らない。
意を決して、ベスが乗ったら、鳴美は体勢を立て直すや否や、そのまま一気に追っ手を振り切った所で。ようやく、やや『ツン』気味に味方宣言。
「行き先はどこだ? たびたび問題起こされてもかなわねぇし、やることあるなら済ませてこい」
お互いに全然、素直じゃないので、端から聞くと口喧嘩っぽくなるものの、それを───ヘルムを被っているのと、後ろからでは見えないので───笑顔で楽しみつつ、メールで見た『スムースクリミナル』のところへ。
『スムースクリミナル』に静かに到着すると、鳴美はありあわせのチョコレートの箱を渡し。
「あなた、一体───誰? ううん、ありがとう」
「礼なんかいいからとっとと行ってとっとと戻ってこい!」
───と送り出し、
ベスさんが行ってしまってからヘルメットを外し、「‥‥頑張れよ」と本音をぽつりと。
その前までテルは、
「あっ‥‥そういや今日はバレンタインか‥‥バレンタイン‥‥‥‥、まさかベスにチョコくれって意味のメールに見えた‥‥!?」
チョコ嫌いのテルはさーっと血の気がひくも振り払う。
待っている間、道行く綺麗なファンのお姉さんに思わず視線が。でも頭ぶんぶんと振り払う。
「‥‥何やってんだ俺は。いけねいけねっ」
必死に何かと戦っていた。周囲から見たら十二分に怪しい。
テルは目の前で突如バイクから降り立ったベスの姿に口をポカンと呆然になる。
「‥‥で、渡したいもんってなんなんだ? 別に誕生日ってわけじゃ‥‥ふがっ! ‥‥───?」
苦手のチョコを口に突っ込まれ卒倒寸前、テルは滝のように涙を流す。そして頭の周りにはヒヨコがピヨピヨ。
「何よ、嬉しそうにしちゃって」
果たしてそのチョコが、本命なのか義理なのかは闇の中ならぬ、口の中ってヤツ?
そんな光景を遠巻きに見ていた(もちろん、メールを見たので落ち合う場所は知っていたのだ)
「あーあ、チョコを渡せただけで、そこまで幸せ爆発するかな〜」
ボタンとレバー連打状態のテル、彼のどこをどこをどう見れば、それが幸せに見えるのか、小一時間問いつめたいハルナであった。
幸せな人は幸せなバレンタイン、そうでない人もそれなりのバレンタイン。
この喜劇は来年も繰り返されるだろう。