逆転! ツンデレ少女!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/08〜03/10
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●本文
台湾の夜、某ツンデレ監督は路頭に迷っていた。いや、正確にはこの表現は正しくない。彼には帰るべき家も、待っている家族もあるのだから。
「また、騙された───」
等と言っても、某脚本家に───
「またですか? 進歩がありませんね?」
と、一刀両断されるのは目に見えている。
アメリカ人自称脚本家に騙された彼は、今度は某人民共和国のシナリオライター自称から───。
「大丈夫、ツンデレ任せるアルね? 中国4千年のお家芸あるよ」
───と言葉巧み(?)に言いくるめられ、気がつくと、逆転! ツンデレ少女!と銘打ったタイトルだけ書かれたCDを渡されるのを最後に連絡が途絶えた‥‥。
「畜生ー! 何でみんなして俺を騙すんだよー!」
監督は月に向かって吠えるが月は応えない。応える月というのもかなりイヤなものがあるが。
監督がこうしている内に、スタッフ達は懸命に、伝手を頼って、メンツを集めるのであった。
カット50スタート。
●リプレイ本文
弥栄三十朗(fa1323)は恰も俄監督と成ったかのような忙しさであった。書類仕事から役者の管理まで、全体的統括作業を行う。
脚本家の巻 長治(fa2021)から挙げられた粗筋、出演者からの要望など齟齬を来さないようにきちんとした一つのストーリーへと仕上げる。エキストラ等が必要ならどのシーンにどれだけの人数が必要か、どういうセリフを割り当てるかなどを担当する。
その一方でマキさんは、監督に。
「タイトルだけのこれを脚本と呼ぶとすれば、それこそまさに中国四千年の神秘ですね」
と、情け容赦なく毒を吐く。しかし、彼の実働能力で話は着実に一本のラインにまとめられていった。
「オージェくんって無愛想よね」
白井 木槿(fa1689)演ずるところの受験生、でもフットサルに打ち込む女子高生『柊早苗』───は、フットサルの部室で、無言でボールを磨いている男子中学生オージェ・プリュメール(ノエル・ロシナン(fa4584))に声をかけた。
「悪かったな無愛想は生まれつきだ」
「なら、無愛想注意って看板首からでもぶらさげなさいよ」
そこですっくと立ち上がるオージェ。
オージェは鞄を肩から下げると、そのまま部室から出て行こうとする。
微妙な空気を孕んだまま、制服姿のまま、オージェの後ろから、ついていこうとするが、慌てて戸締まりをする早苗。立ち止まっているオージェ。
「か、勘違いしないでよね? 別に一緒に帰りたい訳じゃないわ。
今日はたまたまこっちに用事があるからよ!」
大きく首を横に振ると頭のサイドにある茶毛のお団子が激しく揺れる。
「それもそうだな、そうでなければ今までだって同じルートを通っているはずだ」
「じゃあ、何よ。何で鍵かけるまで見ていたの? さっさと行けばいいでしょう?」
「‥‥」
「無愛想魔神!」
校舎を出ようとしたところで、小さな影がオージェに飛びかかる。
リドル・リドル(fa1472)演じるところのブランシェであった。
「ジェーテーム☆ オージェ!」
中学生であるにもかかわらずゴスロリの私服姿、一旦家に帰ってから着替えたのだろう。右目が黒、左目が蒼のオッドアイが微妙な神秘さ加減をもたらしている。
そのままハグの体勢に入るブランシェ。
「オージェは誰にも渡さないもん!」
「ひょっとしてオージェくん困っている? でも、助ける義理はないわ、適当にいちゃつきなさい」
早苗がオージェに言葉を投げかける。
「先輩!」
「あんなツンツン女のどこがいいのぉ〜」
(‥‥あの子、誰‥‥? ‥‥まさか‥‥オージェくんの‥‥彼女?)
保健室へ向かって走り出す早苗、相談役を求めて、その相談役である天羽遥(fa5486)演ずるところの南先生は───。
保健室で早苗の話を聞いていたのかいないのか解らないように、
「柊さん、ハーブティーは好きかしら?」
そう言いながら、ラヴェンダーティーを勧め、早苗の気分をほぐそうと試みる。
「ラヴェンダーよ。精神を安定させる効果があるの。誘眠効果もあるっていうけど、実感はないな。時を駈けたりもできないし」
そう、南先生は微笑む。
ティーカップに軽くつけていた唇を離すと、何という事は無いかのように尋ねる。
「柊さんはそれでいいの?」
「もっと素直で可愛い女の子になりたいな‥‥」
「今の柊さんは十分素直で可愛いわよ」
「だって、素直に言ったらショタコンよ!」
「今は14と18でも、3年経てば17と21。十分にお釣りは出るわ。未来に先行投資していると思えば?」
そこへブランシェに追われて、保健室に飛び込んで来るオージェ。
早苗はとっさにベッドのカーテンの後ろに隠れる。
南先生は怯えるオージェに話しかける───。
「逃げてるの? 可愛いお嬢さんなのに?」
声変わりもまだな、甘いボーイソプラノの声で応えたオージェ曰く───。
「ブランシェは可愛い。それは認めるけど、可愛いだけじゃ恋愛感情には結びつかない。僕は早苗の方が、いや‥‥聞かなかった事にしてくれ」
南先生はクスリと笑いながら、『じゃあ、どうするのかしらね』と誰にともなく呟く。「南先生、オージェ見なかった?」
「廊下は走っちゃ駄目って言っておいてね。あっちの方に行ったわ。転んでも治療してあげないから」
「南先生、鬼───」
ブランシェが行くのを待って、オージェが保健室を出ていく
そして、カーテンに隠れていた早苗に南先生は『これでも?』と聞きながら『私の前みたいに話せない?』と保健室から連れ出し、彼が向かった方へ背中を押す。
「後はあなたの心ひとつよ」
「うん」
早苗を送り出した後。
「ねえ、先生、本当にオージェあっちに行ったの?」
「‥‥本当よ。見つからなきゃ少し落ち着きましょう、ティータイムよ。砂糖は何杯? クリーム、それともミルク?」
オージェを探しに来たブランシェに、手を振って呼び、紅茶に誘いながら、苦いチョコを渡す。
「はい」
「わーい、ショコラだ───苦い」
「こういう味のチョコもあるでしょ?」と微笑んで南先生はブランシェの頭を撫でる。
「私、ブランショコラの方が好き!」
彼女の恋愛の子供っぽさを現したかの如き言葉であった。
一方、先生に後押しされた早苗は、オージェを追いかけて行き告白しようと―――。
人気のない教室に隠れているオージェ。
そこに背後から早苗が声をかける。
「先輩か───」
「‥‥オージェくん! ‥‥あのね‥‥信じて貰えないかも知れないけど‥‥あたし、あなたのことが好き。‥‥‥‥大好きなの!」
振り返らず立ち上がる途中の姿勢で固まるオージェ。
「べ、別にあなたがあたしの事‥‥どう思ってるかなんてどうでも良いけど!
‥‥でも‥‥好きになってくれたら‥‥嬉しい‥‥」
早苗は強がりながらも、体の震えを隠そうと、ぎゅっと自分の手を握りしめ、震える声でオージェに必死の告白。
「ぼくだって好きだ。早苗先輩」
「え!」
立ち上がりざまに首を横抱きにするオージェ。
両想いだと判る早苗は泣きそうになるが、
「‥‥め、目にゴミが入っただけよっ!」
「───今取ってあげるよ」
それを遠目に見たブランシェにはどういう光景に見えたかは言うまでもないだろう。
「‥‥そのさよならは、オールヴォアール? それとも‥‥アデュー?」
少女は一粒だけ涙を零す。
一方、オージェの豹変ぶりに───。
「‥‥え? え?」
と、早苗は困惑しつつも、惚れた弱みか───まぁ、いっか‥‥と幸せそうに微笑む。
「フットサル部入ったのも先輩が目当てだったんだ───」
オージェの甘い声がいつ果てるともなく続いていた。