粋! ツンデレダンディアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
難しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
03/28〜03/30
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●本文
ツンデレは韓国起源であるという説がある。少なくとも〈いつも〉酷い目にあっている台湾の某監督はその言葉を鵜呑みにした。
きっと、中華4千年より奥の深い、まったりとして、それでいてコクのある───そんなシナリオを仕上げてくれると信じていた。
そして、現在撮影開始5日前。
シナリオの目処は全く立っていなかった。今回はタイトルさえ知らされなかった。焦るスタッフ───もちろん監督自身の発散するそれを含む───の中、監督は手近な辞典を開き、目を瞑ってそのまま、稲妻の如き勢いで指を突き立てた。
「これだ、これが俺の昇華すべきテーマだ!」
そこにはダンディと記されていた───。
「決まったぞ今回のツンデレはダンディだ! 決まったと俺が決めたからには決まったのだ!」
循環論法にもなっていない発言を繰り返しながら、監督はスタッフ一同に今すぐにでも声をかけられる面子を至急あつめろと宣言した。
カット53スタート!
●リプレイ本文
諏訪光孝(弥栄三十朗(fa1323))が床にはいつくばって、何かを探している体の柊恋香(葉月 珪(fa4909))と出くわしたのは単なるデウス・エクス・マキナ───。
「何か落としたのですか?」
スーツをピシッと着こなしたナイスミドル。神経質で一見取っ付きにくそうに見える光孝の外見も、恋香の視界では半ばぼやけて見える‥‥何故なら。
「すみません、コンタクトレンズを落としてしまいまして」
「それは大変だ。私も手伝ってあげよう」
やがて、コンタクトレンズは見つかり恋香は紳士的なその姿に一目で恋に落ちる。しかし、その時は、立ち去ろうとする光孝の背中に名前を伺うのが精一杯。
「ありがとうございます。あの‥‥せめて、お名前を‥‥」
去り行くその背中にそっと呟く
「諏訪光孝さん‥‥素敵な方‥‥」
沢渡霧江(fa4354)が演じるところの十和田 尚美(とわだ なおみ)は柊東欧サービスと名の付く、東欧の品物の貿易を主な生業とする大会社の幹部である。
尚美自身も自覚しているが、彼女の地位も半分は自分の母方の血筋である柊家のものであるが、残り半分を解説できたものはいない。
「あら、諏訪さん。鼻の下がびろろーんと三メートルほど伸びていらっしゃいますけれど、何かいいことでもありましたか?」
「いや‥‥良いことなのでしょうか?」
「そうですか、警察沙汰にならないのでしたら、どんな事に頭を悩ませていらっしゃっても結構ですけれど、テレビで報道されるようなことにはならないようにしてください。会社にもイメージというものがありますから」
彼女が暴風の様に去った後、高柳 徹平(fa5394)演じるところの諏訪雅孝が現れた。彼は光孝の部下兼息子である。
そんな彼が、そこはかとなく浮ついた状態の光孝の姿に疑問を抱き───。
「何かありましたか?」
「いや、コンタクトレンズが落ちていたので」
「父さんはコンタクトを為されるほど、目を悪くしてはいないのでは?」
事情を尋ねるが返答は疑問を解く類の物ではない、雅孝は思わずその姿にツッコミを入れる
「まるで恋愛中の中学生のようですよ?」
「十四歳病などではないつもりだがね?」
一方、家では───。
「いい年こいてデレっとしてんじゃねぇよ!」
とか言っちゃったりもする諏訪雅治(百鬼 レイ(fa4361))は雅孝の末っ子である。実は光孝の幸せを願う優しい一面もあるが、それを表に出せない現在ぶっちぎりで進行中の反抗期真っ最中である。
「べっ‥‥・別に心配してるわけじゃないんだからなっ」
数日後、恋香は友人と買物中に光孝と、偶然再会し、益々運命を感じる。
「先日はありがとうございました。またお会い出来て嬉しいです」
一緒に居る坂口朋(虹(fa5556))を紹介。
「こちらは私の親友の坂口朋さんです」
朋さんにも嬉しそうに紹介。
「こちらの方は先日、親切にして頂いた諏訪 光孝さんです。お話ししましたでしょ?」
「ああ、お話は伺ってます。握手したいのですが、格下のものから手を出すのは不作法というものでしょう?」
「これは実に紳士的な方ですね。今後ともよろしくお願いします」
光孝の勘違いは朋を中性的な青年と取ったことであった。
「なあ、奏」
柊奏(ベルシード(fa0190))に相談する雅治であった。同じ柊姓であり、恋香とは従姉妹であり、奏はといえば、諏訪一族が勤める会社の会長の孫であり。同時に悪戯好きで策謀家の為に周囲からはトラブルメーカーとして認識されている。
もちろん、恋香も彼女に悩みを打ち明けたクチである。
「これで線が一本に繋がりました」
最初は恋香から聞いた男が諏訪だとは気付かなかったが、諏訪の家族から諏訪の様子がおかしいという話を聞き、更に細かい事情を聞く内に、恋香の話と重なる部分がある事に気付き、恋香の言っていた男が諏訪である事や諏訪の様子がおかしい原因が恋香にあるなど現状を把握。
そして───
「これはこれは‥‥‥‥かなり面白くなってきたね」
───と策謀家の血が騒ぎ『ニヤリ』という擬音が聞こえてきそうな悪そうな笑みを浮かべつつ、面白おかしく二人をくっつけようと悪巧みを画策する。
具体的には近々開かれる自分の誕生パーティーで二人の再会を演出しようと画策。勿論、面白そうという理由で諏訪にも恋香にも相手の事は一切告げない。
「何を?」
「ヒ・ミ・ツ」
そして、條紫(七瀬紫音(fa5302)ピアノ担当)のオーソドックスなバースデーナンバーと共に、柊奏のパーティーは始まった。
しかし、舞台上で繰り広げられる自称若手ナンバー1という触れ込みのマジシャン、
リーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)演ずるところの上月紫苑が芸事にはまるで嗜みもなく、CG合成する時間もないので、ひたすらヘマをやらかしている中、やけくそになって、恋香と光孝は壇上に上げられる。
「それでは拙い芸の最後としまして、ここにいるふたりをば恋に陥らせてご覧に入れましょう」
「君は───しかし、君には朋君という人が居る。こんな身の出張る真似が出来ませんよ」
「朋さんですか? あれは女性ですよ」
と、フォーマルにドレスを着こなした朋を壇上に上げる。
そ、そうか───と納得する光孝。
「どうやら、最後の芸は大成功のようで。これが私からの会長の孫へのプレゼントとさせていただきます」
そして紫のバラードと共に膜は締めくくられるのであった。
そんなサプライズを用意した奏は驚く一同にサムアップサインを後ろでに示すのであった。